1960年、日活、木戸礼原作、山崎巌脚色、野口博志監督作品。
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雨の中、横から狙撃しようとした男の右腕と対峙していた中国人らしき相手の足を撃った若い男は、今夜限り、「抜き撃ちの竜」というあだ名を忘れてもらうと宣言する。
その後、自首して刑期を終え、北陸刑務所から出所して来たその青年、竜(赤木圭一郎)は、金沢に向う列車の車中、ダイヤが強奪された「天宝堂事件」を報ずる新聞を読んでいたが、向いに座ったポップコーンを食べ続けている奇妙な男(宍戸錠)のバッグが荷物棚から床に落ちた際、チャックが開いて、大量の札束が覗いたのに気づく。
コルトの謙と名乗るその男は、金沢駅に一緒に降り立った竜を、一目でムショ帰りと見抜く。
竜が来ていた服が、2年前に流行りものだったからだ。
謙は、この街は、今や浜田組と船場組に分かれていると教えた後、独りタクシーで香林坊へ向うのだった。
その後、竜は街角で、浜田組のチンピラたちからショバ代を寄越せといじめられていた、かつての弟分、三島五郎(青山恭二)を助けるが、その五郎は、竜の顔を見るや、何故か一目散に逃げ出してしまう。
浜田組の社長浜田(藤村有弘)は、トルコ風呂「メトロ」の個室でマッサージを受けていた。
今や、彼は、竜に撃たれた右足が不自由になっていた。
同じく、配下の相原(山田禅二)は、竜に撃たれた右腕が使えなくなっていた。
そこへ到着したのが、コルトの謙だった。
組の軍資金を運んで来た彼の口から、竜が出所して来た事を知った相原は、すぐさま自分が殺してやると息巻くが、謙は、それは俺の役目だと言って牽制するし、浜田も軽はずみな行動を許さなかった。
その頃、横安江町アーケード内にあるとある洋装店に立ち寄った竜は、懐かしい元恋人佐伯ユリの姿を発見し喜ぶが、その相手は、彼の姿を見ても不思議そうな顔をするだけ。
どうも様子がおかしいので尋ねてみると、彼女はユリにそっくりな妹の博子(笹森礼子)だと言う。
竜がムショに行った後、街を出たがっていたユリは、駅で列車に轢かれて亡くなったのだと言う。
明らかに、自分を責めている博子に対し、自分は明日にでも街を出るつもりだと竜は答える。
かつての古巣の船場組が支配するナイトクラブに出かけた竜だったが、元仲間の源(鹿島貞夫)や鉄(深江省喜)の態度は冷たかった。
妹、則子(吉永小百合)の事を尋ねると、五郎と出来て、船場組から逃げ出したと言う。
その後、何者かに襲撃された竜に、車でやって来た謙が、竜に拳銃を投げ渡して掩護してやる。
竜を殺すのは、自分以外には許さないと考えている謙のやり方だった。
警察に向った竜は、ユリの死因を担当の刑事に問いただすが、どう調べてみても、あれは自殺だったと言う。
納得がいかず、駅で考えに耽っていた竜が出会ったのは、旅行から帰って来た船場(二本柳寛)だった。
かつての雇い主に誘われるまま、竜は、船場が連れていた女と共に組事務所に向う事に。
船場は、竜に、天宝堂事件で盗まれた4千万円分のダイヤが、廻り廻って自分の手元に入ったので、これをルートを持っている浜田組にさばかせようと思っていると自慢げに話すが、強盗の上前をはねるようになっちゃこの組もお終いだと、竜は呆れて帰ろうとする。
その背中に、船場は、ユリを駅で突き落としたのは浜田組だと、聞きづてならない言葉を投げかけるのだった。
その足で、靴磨きをやっていた五郎に再び会いに行った竜は、妹の則子が住んでいると言う彼のアパートへ案内させる。
兄と再会して喜んだ則子から、五郎とは、10万円溜めて結婚するまで、互いにきれいな関係なのだと聞かされ、竜はちょっと一安心するのだった。
今度は、洋装店の博子を訪ねた竜は、富山の空襲で両親を亡くした自分と則子は、船場に拾われ嫌々ながら育てられて来たのだが、その妹をあんたの店で雇ってはくれまいかと頼んでみるが、竜の事を、姉を死に追いやった張本人だと思っている博子は、承知しようとしなかった。
博子自身、その船場から、30万と言う借金をしている身でもあったからだ。
そんな話をしていた二人を付け狙っていた船場組の連中を、どこから現れたのか、コルトの謙が救ってくれた。
その謙に連れられて、ホテル「メトロ」の社長室に出向いた竜は、自分に銃口を向けている浜田と再会する。
しかし、浜田は竜を殺す気はなかった。
ユリの事を聞くと、あんたに足を撃たれただけで命を救ってもらった自分が、その仕返しをするはずがない。ユリは、船場がやったのではないかと思うと浜田は答えるのだった。
謙は、竜に対し、勝負をしようと申込み銃を手渡すが、隠れて二人を狙っていた船場組の鉄によって邪魔されてしまう。
その後、船場の元へ出向いた竜は、一度だけダイヤの取引を手伝う代わりに、博子の借金を棒引きしてやってくれと願い出る。
博子は結局、則子を雇う事にする。
中華料理店で落ち合った船場と浜田は、用心棒役で連れて来た謙らを遠ざけ、二人きりになると、竜を消したいと相談しあうのだった。
後日、借金を返せと、船場組の連中に連れ出されそうになっていた博子を救ったのは謙だった。
ダイヤの取引場所である採石工場では、ダイヤを持ってやって来る竜を狙撃しようと浜田組の相原らが待ち伏せしていたが、謙の連絡によってやって来たパトカーのサイレンで異変を気づいた竜は、間一髪、難を免れるのだった。
竜らに持たせたダイヤは偽物で、金とダイヤの両方を頂こうと鉄と事務所で話し合っていた船場は、情婦の秋枝(南風夕子)に盗み聞きされた事を知るが、そこへ戻って来たのが竜。
彼は、船場に50万もらえれば、もう一度取引の手伝いをしても良いと申し出る。
再び、取引の場所で出会った船場と浜田は、前回の警察介入は、誰か密通者がいたはずで、それは竜ではないかと疑うが、それを否定したのは一緒に来ていた謙だった。
彼は、自分以外の人間に竜を殺させるのは好まないから、自分が警察に連絡をしたのだと言い、取引場所の情報は、鉄を痛めつけて吐かせたと告白する。
さらに、200万出してくれたら、俺が竜を倒すとも持ちかける。
すっかり自分の失態を知られて面目をなくした鉄だったが、後日、そんな鉄に、船場は名誉挽回のチャンスとして、天宝堂事件の生き証人である三島五郎殺害を命ずるのだった。
その頃、見附海岸で五郎と出会っていた竜は、金を渡して、妹と一緒にこの街から逃げろと忠告するが、五郎は逃げられない訳があると言い出し、自分が天宝堂事件で盗んだダイヤを神戸で売り捌いた事を打ち明けるのだった。
それでも、竜の説得に負け、駅まで竜に送ってもらって来た五郎と則子は、逃げる列車が駅構内に到着する直前、何者かによって二人とも背中を押され、線路に落ち大怪我をしてしまうのだった。
そんな事になっているとは知らない竜は、その後、洋裁店の博子を訪ねると、残りの金を渡して、船場からの借金をこれで返してくれと言い残して去るのだった。
街を上げての祭りの中、竜は船場らと共に、小舟に乗って、新しい取引場所として浜田が指定して来た無人島に向う。
一方、無人島で待ち受けていた浜田は、相原や謙らに、船場一行襲撃の手はずを教え込んでいた。
相原には鉄を仕留めさせ、竜の始末は謙に任せると言う。
やがて、やってきた船場が取り出したダイヤを鑑定し出したのは、意外にも謙だった。
彼が鑑定し終わると、これで無事取引完了となりかけるが、その場で打合せを破り、竜を撃とうとした相原を、謙は自分が撃ち殺してしまう。
謙は、ダイヤが全部ガラス玉だった事も見抜いていた。
互いに騙しあっていたのだ。
無人島の洞窟内で、互いの組の撃ちあいが始まり、謙と竜は、船場を追い詰めるが、そこに現れたのは、妹と五郎の事故を知らせにやって来た博子だった。
その博子は、船場の人質になってしまい、謙と竜は、互いの銃を捨てざるを得なくなる…。
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赤木圭一郎主演のシリーズ第3弾。
今回は、金沢を舞台に、ロケーションもたっぷり使用されており、さらにスケールアップした感じになっている。
クライマックスの祭りのシーンの挿入等、後の石原プロ「西部警察」の玄界灘編を想像させる勇壮さ。
この作品にも、可愛らしい吉永小百合が、主人公の妹役として登場している。
その吉永小百合が、後半、駅から突き落とされるシーンは、今の感覚からすると予想外で、衝撃感がある。
大女優も、デビュー当時は、こういう役もやっていたのかと感慨ひと塩。
ヒロイン役としては、少女っぽい清純派のイメージとして笹森礼子と、大人っぽい女のイメージとして南風夕子が加わっている。
今回の宍戸錠は、ハンチング帽を目深にかぶり、たえずポップコーンを食べているというキャラクター。
竜の腕に惚れ込み、自分以外の人間には殺させないと、たえず彼と勝負したがりながらも、結果的には、彼のピンチを救う憎めないライバルと言う役所はいつも通りである。
この宍戸錠と主人公の関係は、この作品の前年に始まった、小林旭主演の「渡り鳥シリーズ」から流用したものだろう。
個人的には、シリーズ中、一番面白いと感じた作品である。
