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堂堂たる人生

1961年、日活、源氏鶏太原作、池田一朗脚本、牛原陽一監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

浅草の観音様を案内したたガイドに「美代ちゃん!」と声をかけて来たのは、友人で寿司竜の看板娘でもあるいさみ(芦川いづみ)だった。

二人が、観光客もそっちのけで会話している時、足元に走って来た自動車のおもちゃに足を取られ転んだ美代を見たいさみは、怒って、いたずらした犯人を捜す。

すると、あっさり謝って来たのは、「老田玩具」の企画部に所属する中部周平(石原裕次郎)という青年だった。

何でも、おもちゃが壊れたと泣いていた子供がいたので、修理して動かしてみただけだというが、いさみは承知しない。

そこへ現れたのは、周平の同僚の紺屋小助(長門博之)、ちゃっかりその場にいた観光客に自社製品の宣伝をして、その場を和ませるのだった。

その後、馴染みのバー「サレム」に出かけた小助は、先ほど、美代の足に踏まれて潰れてしまった自動車のおもちゃを、馬鹿正直に子供から買取って来た周平の態度に呆れていた。

そんな周平に声をかけて来た男がいた。

大阪に本社を持つ興和玩具の東京支店長竹平雄一(藤村有弘)だった。

彼は、周平の才能にかねてから眼を付けており、うちの会社に来ないかと誘いをかけて来る。

しかし、周平は、独創性で勝負する今の会社の方が性に合っているので、と断わるが、独創ばかりにこだわり会社として立ち行かなくなっている老田と、アイデア面では他社に遅れても、確実に商売に繋げて利益を上げているうちの方が良いのではないかと皮肉るが、周平は乗って来ない。

その頃、老田玩具の社長老田(宇野重吉)は、寿司竜で店主の親父さん(桂小金治)から、娘のいさみを、御社で雇ってもらえまいかと頼まれていた。

それを聞いた老田は、今、うちの会社は不況なのでと、やんわり断わる。

そんなところへふらりやって来たのが、「サレム」のホステス弘子(中原早苗)を連れた周平。

彼は、自社の社長が来ている事に気づき、バツが悪くなって帰りかけるが、社長は引き止める。

しかし、そんな周平を睨み付けていたのは、お茶を運んで来たいさみだった。
昼間の事を覚えていたからだ。

ところが、周平は、そんな事は気にしていないようで、突然、自分に、寿司を握らせてくれないかと主人に申し出る。

何でも、学生時代、バイトで握った事があり、評判も良かったので、今日は握りたくて仕方ないと言う。

結局、老田社長と弘子が食べてやると言い出し、周平は、さっそく、露骨に迷惑がるいさみから母親(清川虹子)を紹介された上に、「父親が味に合格を出したら、交換条件として、自分を会社に雇ってもらえるよう働きかけてくれ」と言われ、当惑しながらも、上っ張りと鉢巻きを借りて握り出すが、その格好の良さに、入って来た若い女性客もどんどん注文し出す始末。

試しに味見してみると、これが本当に旨いので、さしもの主人も苦い顔。

その夜、浅草の観音様の前で、自動車のおもちゃを走らせていた周平は、会社に入れるようお参りに来たと言ういさみと再会、一緒に参拝するのだった。

翌日、出社した周平は、小助から、いさみが来ている事を教えられるが、当のいさみは、会社の大久保彦左衛門と言われている支配人の堅田(中村是好)の猛反対にあって、あえなく入社は断わられてしまう。

一方、同じ部屋に呼ばれた周平はと言えば、大阪に出張して200万円の金策をして来いと、社長直々の指令がおりる。

何でも、先代社長が恩を売っている興和玩具に行けば、貸してくれるのではないかと言うのだが、企画部社員に過ぎない周平には気が重かったが、社命とあっては仕方がない。

結局、親友の小助も伴い翌朝、東京駅から大阪へ出発する事になるが、その列車に、あのいさみが乗り込んで来たではないか!

何でも、昨日の入社試験は無事合格し、今日は早速、あなたたちと一緒に、大阪出張を命じられたと両親に嘘を言ってしまったので、見送りに来ている母親に口裏を合わせてくれと言う。

本当に見送りに来ていた母親の顔を見ると、本当の事も言えず、やけっぱちになって、いさみの同行を事実上容認する二人であった。

大阪に向う列車の中で、周平は一人の男性から声をかけられる。

大学時代、同じラグビー部だった高宮(小野良)だった。

今日は、先生(神山勝)のお供で、ロケット用の固形ガスの実験報告に行く所だと言う。

その頃、寿司竜へやって来た老田社長と堅田支配人は、主人の話から、いさみが無事入社したと嘘を言っている事を知る。

大阪に着き、目的地の興和玩具に向う途中、周平は、路上でおもちゃ遊びしている子供に気づき、壊れて動かないと言う機関車を直してやる。

その際、子供は、機関車なのに煙を吐かないと正直な不満をこぼして行く。

その話を聞いていたいさみは、おもちゃにはガス動力のものはあるのかと聞いて来る。

すぐに、列車内での高宮の話から思い付いた事だと気づいた周平だが、いさみが言うのには、何のアイデアもなく乗り込んでも、融資話を断わられるのは必至。

ならば、何とか、向こうの気を引くアイデアでも持って行けば、可能性が少しでも出て来るのではないかと言うのである。

そのアイデアに乗った周平と小助に、いさみは得意げに、まだ完成すらしていないガスの名前を「XYZガス」としようと、勝手に命名するのだった。

こうして、目的の興和玩具の社長室に乗り込んだ三人だったが、竹平社長(桑山正一)の第一声は、いさみにすぐさま東京に帰れと言う意外なものであった。

懇意の堅田支配人からすでに連絡があったと言うのだ。

しかも、200万の融資は無理だとも言う。

その場から、寿司竜の主人に電話をかけたいさみだが、騙されたと知った両親の態度は頑だった。

周平は、仕方がないので、新開発のガス事を、ちらり竹平社長に臭わしながら、いさみを預けて、小助と二人で部屋を後にする。

彼らがその日、宿泊場所として向った先は、バー八千代という、周平馴染みの店だった。

そこのママ八千代(浦里はるみ)は、若い周平に首っ丈なので、二階に泊める事を喜んで承知するが、小助も一緒にと頼まれて渋い顔をする。

しかし、ともかく二階に泊まらせてもらう事になった二人だったが、深夜、八千代が、寝ている周平を起こして誘惑しようとしている最中、時ならぬブザー音が響く。

今日は来ないと思われていた、ママのパトロンがやって来たのだ。

覚悟を決めた二人は、布団の上に正座したまま、パトロンの出現を待ち受ける事になる。

入って来た男は、原大作(東野英治郎)という老人だった。

大作は、二人を睨み付けるように着替えを済ますと、二人に、やましい事がないのなら、俺の眼を2分間睨んでみろと言い出す。

承知した周平と小助は、大作とにらめっこを始めるが、恐怖のため、途中で気を失った小助とは対称的に、周平は最後まで眼を逸らせる事はなく、その態度ですっかり、周平を気に入った大作は、彼らと酒を酌み交わしながら、200万の融資もしてやると言い出す。

ただし、それには条件があり、1年間で400万円にして戻せなかったら、担保としてお前を貰い受けると言う。

つまり、ぜひとも周平を自分の元で働かせたいと言うのだ。

その条件を飲み、周平は、大作から200万円を受取る事にする。

翌日、再び興和玩具を訪れた周平は、昨日もらった200万は高宮の研究費として渡すつもりだったので、竹平社長からも、もう200万融資させるつもりだった。

廊下で落ち合ったいさみが言うには、社長の癖や性格は分かったので、会話の途中で、ここぞ売り込みのチャンスと思ったら合図をすると打合せを終え、社長室へ乗り込んだ三人は、竹平社長が昨日とは違い、少し、こちらの話に興味を持っているのに気づくと、ここぞとばかり、じらし作戦に入り、その甲斐あって、250万もの融資を受ける事に成功する。

かくして、めでたく実績を認められたいさみは、老田玩具の正式社員に採用され、三人は200万を持って高宮に渡しに行く。

金を感謝して受取りながらも、大学時代から優秀だった周平が大会社に入らず、今のような中小企業に入ったのを不思議がる高宮に対し、その方が全身で仕事にぶつかっていけるし、堂堂たる人生が送れると信じたからだと周平は答えるのだった。

いさみは、その際高宮に、ぜひともガスが完成したあかつきには「XYZガス」と名付けてくれと頼むのだった。

かくして、大仕事を終え、寿司竜に集った三人だったが、何時の間にか、いさみの事が好きになっていた小助は、わざと彼女の前で、「サレム」の弘子の所へ行ってやれと周平に言うのだった。

仕方なく、タクシーに乗った周平だったが、「サレム」に向う途中、おもちゃのアイデアが閃き、会社にとって帰ると、徹夜でイメージ図を描き上げてしまう。

それは、煙を吐いて走るウエスタンスタイルの機関車のおもちゃだった。

ところが、その無理が祟ったのか、翌日、周平は風邪をひいてしまい、独りアパートで寝込む事になる。

そんな所へやって来たのがいさみ。

今日は給料日だったので、社長に頼まれて持って来てやっただけと言う。
「サレム」の弘子とやらの事でお冠の様子で、態度もどこかよそよそしい。

しかし、周平が昨日から何も食べていないと弱気を見せると、急に、自分がチキンラーメンを作ってやると言って台所に立つのだった。

さらに、自分もお腹が好いてから御相伴したいと言い出し、一緒に仲良くラーメンを食べはじめた所へやって来たのが、「サレム」の弘子だった。

その姿を見るや、いったん晴れかかったいさみの表情が一瞬にして曇り、部屋を飛び出して行くのだった。

その後、布団の周平に甘えかかる弘子の前に、再び姿を見せたいさみが、チキンラーメン代だと言い、小銭を渡すと、周平の左頬をビンタして帰る。

その姿に呆れた弘子だったが、どうやら、周平の心が今のいさみの方にあると感じ取るや、今度は自分が、周平の右頬をビンタして帰ってしまうのだった。

その後、周平は興和玩具の東京支店長竹平雄一に呼びつけられ、大阪本社の社長である父親を騙したと言い掛かりを付けて来る。
どうやら、XYZガスの事を全くのデタラメだと思っている様子。

そこで、周平は、高宮と交わした契約書を見せて納得させる。

一方、いさみの口から、周平をビンタしてやった時かされた両親は、二人の関係を気づきながらも、娘の肩を持つ振りをして、久々に店を訪れた周平を、今後出入禁止だと追い出すのだった。

その頃、狡猾な雄一は、周平から見せられた契約書に不備がある事に気づき、XYZガスの権利だけではなく、この際、一挙に、老田玩具そのものを乗っ取って、それを足場に財界に伸し上がろうと企てる。

しかし、そのためには3000万ほど必要で、その融資先がないかと尋ねた相手は、たまたまそのホテルにやって来た原大作の姿を見ると、暴力団のボスであり、あらゆる世界の黒幕でもあるあの人に頼めば、金主になってくれるのではないかと雄一に教える。

こうした策略が進んでいる中、周平、小助を連れて寿司竜にやってきた老田社長は、いさみとその両親らに、今、会社は資金繰りがつかなくなっており、その窮地に乗じ、自分は専務に降格、堅田支配人は馘首と言う条件で3000万を出そうと言う人物が現れたと打ち明ける。

それを聞いた周平といさみは、一時休戦協定を結び、間もなく開かれる、臨時株主総会を潰そうと意見がまとまる。

やがて、開かれた臨時株主総会の席に、いきなりちん入した周平は、自分が考案した煙を吐く機関車の模型の試作品を株主たちに見せて、まだまだ、老田玩具はやれると言う所をアピールするのだった。

こうして、総会は何となく流れてしまい、それを知った雄一は、その新しいおもちゃを、明日来日するドイツの玩具王イミール・シュテッカー(ピーター・ウィリアムス)に見せまいと、友人と画策する。

その会話を偶然小耳に挟んだ弘子は、ライバル関係であったはずのいさみの元へ電話で教えて寄越す。
その際、周平があなたの事を好きだと行っていた事を正直打ち明けて、逆に、いさみを励ます弘子だった。

しかし、その弘子の行為を知った雄一は、さらなる作戦を練る事になる。

翌日、ホテルに泊まったシュテッカーに取り入り、その世話係をする事になった雄一は、訪れて来るおもちゃメーカーの売り込みに飽き飽きしたシュッテカーから、特に、周平たち老田玩具の周平たちの売り込みを完全にシャットアウトしてしまうのだった。

しかし、そこで負けないのが、周平、小助、いさみの仲良しトリオ。

あれこれ作戦を立て、とうとう、怪し気なインド人に変装した周平といさみが部屋に入る事に成功、シュテッカーに、自慢の機関車を見せる事に成功する。

一目でその製品を気に入ったシュテッカーは、周平との交渉の結果、一台880円の言い値で、2万ダース購入する事を約束するのだった。

その後、小助が得た情報から、今回の黒幕が、あの原大作だったと知った三人は、すぐさま、大作の屋敷に乗り込んで詰問する。

その迫力に圧倒された大作は、素直に自分が、雄一のアイデアに乗るつもりでやったと認めると共に、本当は自分はおもちゃなんか興味がないと、会社乗っ取りから手を引く事を約束するのだった。

その後、周平考案のおもちゃの売れ行きは凄まじいと、さらにシュテッカーからの2万ダースの追加注文を受け、無事、会社の危機を脱出させた周平たちには、さらなる社長命令が待っていた。

ニュールデンベルグで開催される世界玩具市に招待されたので行って来いと言うのであった。

その場で、さらなる休戦協定の延長を申込んだ周平は、この間のお返しと、いさみの頬をビンタするのだった。

それで、気分が晴れたいさみは、素直に、周平との休戦条約にサインすると、笑顔で答えるのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

源氏鶏太原作の明朗サラリーマンもの。

子供心を失わないで、ひたむきに働くファイとある青年サラリーマンを、若き石原裕次郎が演じている。

その友人で、眼鏡をかけたひょうきんな青年を演じているのが長門博之。

その二人と、ひょんな事で知り合い、やがては同僚として共に働くようになる、勝ち気な下町娘に芦川いづみ。
この作品では、美しいだけではなく、ちょっとユーモラスな表情も見せる明るいタイプの娘を演じているのが珍しい。

後は、当時の日活の常連組が、がっちり脇を固めている。

おもちゃ業界と言う設定にまず夢があるし 全体的に明るくテンポも良いし、登場して来る人物たちはほとんど全員良い人ばかり、さらに話の骨格がサクセスストーリーなので、楽しく観れて、後味も良い。

青春娯楽映画の見本のような作品と言えよう。