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続々大番 怒濤篇

1957年、東宝、獅子文六原作、笠原良三脚本、千葉泰樹監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

昭和13年初秋、65万もの借金を作り、再び、都落し、故郷の宇和島へ帰るため、船に乗ろうとしていた赤羽丑之助(加東大介)は、ばったり勝やん(三木のり平)と出会う。

帰りの船の中で聞いた所に寄ると、最近の勝やんは漁業組合の金の取り立てで大阪によく出ていると言う。
一方、帰郷の理由を聞かれた丑之助は、思いつきで、神経衰弱になったので静養しに戻って来たとごまかす。

二人がバス島に戻ってみると、大勢の人が旗を持って待っている。
何事かと思った二人がバスを降りると、森家の番頭(多々良純)や校長(村上冬樹)が来ており、若様である有島伯爵(平田昭彦)が来られるのだと言う。

先に帰っていた可奈子お嬢様(原節子)が迎えに言っている所だと聞いた丑之助は、にわかに嬉しくなり、その場で待っていると、ほどなく、二人を乗せた自動車がやって来た。

通り過ぎる車に、思わず深く頭を下げた丑之助に気づいた伯爵は、以前、列車であった事がある丑之助を思い出し、「赤羽君じゃないか、元気ですか?」と気さくに問いかけて来る。
側で、この会話を聞いていた勝やん、番頭、校長たちは驚愕する。

華族であらせられる伯爵から気軽に声をかけられるほど、丑之助が立派な身分になったのだと勘違いしたのだ。

その事に気づいた丑之助も、「東京では友達付き合いさせて頂いている」などと、大袈裟な事を言って自慢するものだから、周りの彼に対する目つきも変わってしまう。

折から、その場に来合わせていた新任の署長(十朱久雄)まで、彼に頭を下げて来る始末。

母親(沢村貞子)にさえ、都落して来た本当の理由を話せない丑之助は、再び、この地で農業でも始めようかと、久々に、父親(谷晃)、妹タツエ(上野明美)、義弟長十郎(太刀川洋一)らが働いている段々畑に久々に上ってみるが、もう体力が付いていけず、農業に転身する事も難しくなったと悟るのだった。

ある日、漁業組合の事務所前を通りかかった丑之助は、勝やんと女房のお浜(若水ヤエ子)が表で派手な喧嘩を繰り広げているのを発見する。

聞けば、毎日毎日、同じカンコロ飯の弁当ばかりを持たされる事に愚痴った勝やんが原因らしい。

何とか、その場は取りなした丑之助は、組合事務所の中で、統制経済で、今や、いりこは安くなり、軍手や足袋などは高くなったと勝やんから聞かされる。

それを聞いた丑之助は、自宅に勝やんを招いて、いりこを大量に大阪で売り、その利益で軍手や足袋等を仕入れて、島で売ったら儲かるのではアイデアを出すが、運搬用の船がないと言う。

今では、船の油も配給制になったため、漁に出られなくなった漁民たちが多かったのだ。

そんな中、遊んでいる船と言えば、森家の万栄丸があるが、そんなものを頼めるつてはない。

ところが、そんな所に、森家の番頭がやって来て、今度、森家で、お嬢様里帰りの宴会を開くので、丑之助に取り持ちとして来てもらいたいと言って来る。

渡りに船と考えた丑之助は、さっそく森家に出向くと、主人(柳永二郎)にその事を持ちかけ、快諾される。

その後、張り切って宴会客の世話係をし始めた丑之助だったが、主人から、夫の有島伯爵が忙しくて遅くなり、顔見知りが他にいない可奈子の相手をしてやってくれと頼まれ、嬉しさに舞い上がりながら、可奈子の相手をするのだった。

森家から船を借り受け、闇商売を始めるようになった丑之助は、ある日、ひと袋のいりこを東京のおまきさん(淡島千景)に送ってやる。

それを受取り、喜んでいたおまきさんだが、新どん(仲代達矢)から、今度出征する事になったとの知らせを受取る。

紀元2600年を祝う鶴丸小学校で、来賓として挨拶をした丑之助は、その帰り道、大阪の支店長を任せておいた勝やんが帰って来ているのに出会う。

訳を聞くと、大阪に長逗留してばかりいるので、女房からやいのやいのと文句を言われているのだと言う。
ついては、誰かと、役目を変えてもらえないかと言われた丑之助は、それなら自分が大阪に出ようと言い出す。

大阪の堀江新地という場所で、勝やんに、取引相手の茨木忠吉(若月輝男)と稲川留太郎(丘窮児)を紹介された丑之助は、彼ら二人に食事と芸者を驕ってやると言う太っ腹な所を見せ、信用を勝ち取る。

世の中は、東條内閣が成立し、軍国主義へひた走る時代になる。

丑之助は、ある日、大阪の闇屋の大将と言われている人物の話を聞き、その人物に会わせてくれまいかと茨木に頼み込む。

やがて、茨木に連れて来られた帝塚山の屋敷で紹介された大将(山茶花究)に、伊予かんを10満貫調達できるかと尋ねられた丑之助は、不利な値段だったが承諾するのだった。

ところが、その伊予かんを運んでいた万栄丸が、途中でエンジントラブルを起こし、大阪到着が大幅に遅れてしまう。

電報で延着の知らせを受けた丑之助は、心配して、到着の朝、直接、船を迎えに茨木と出向くが、恐れていた水上警察の臨検に引っ掛かってしまう。

ところが、船に乗り込んで来た検査官が見た荷物は、腐ってガスを出しているミカンの山だった。

何とか、それで難を逃れた丑之助だったが、その後、詫びに出かけた大将に、今度は、サッカリンやズルチンが手に入らないかと相談するが、又、足元をみられて、高い値段を吹っかけられる。

それでも、気分直しにと、茨木と連れ立って出かけた料亭で、呼んだ芸者の顔を見て驚く丑之助。

何と、竹千代と名乗って、座敷に現れた芸者は、かつて、東京に呼び寄せた後、板前と駆け落ちされた梅香(青山京子)だったからだ。

思わぬ再会に、その不義理を責める丑之助だったが、竹千代の言い訳と媚びに負けて、又、だらしなく元の鞘におさまってしまうのだった。

そんな丑之助は実は翌朝、大阪にやって来ると電報をもらったおまきさんを迎えに駅まで出かけなければいけなかったのだが、ズルズルと竹千代と一夜を明かしてしまい寝過ごし、その時間に遅れてしまう。

慌てて、大阪の定宿にしている伊予常に戻ってみると、ちゃんとそこに、おまきさんは到着していた。

久々の再会に喜ぶ丑之助だったが、彼女の口から、出征する新どんが、明日の午後、列車で大阪を通ると聞き、翌日、土産片手に会いに出かけるのだった。

もう互いに、これが最後の別れになるかも知れないと感じる丑之助と新どんであった。

その後、久々に伊予常で、おまきさんと鳥鍋を突つく丑之助だったが、おまきさんはすでに、丑之助の新しい女の噂を宿の女将(本間文子)から仕入れており、丑之助を追求する。

そんな所へやって来たのが稲川で、茨木が経済警察に捕まったのだと言う。

慌てて、帝塚山の大将の所へ、保釈の力添えをして欲しいと頼みに行った丑之助だが、つれない返事をする相手に見切りをつけ、あれこれ自分で手を回した末に、茨木は出征する事になり、その事はおさまる。

しかし、そんな丑之助の仕事を怪んだおまきさんは、彼を問いただし、今では闇屋をやっている事を知ると、自分が見込んだ男がそんな事をしているとは情けないときつく説教するのだった。

今は、時期が悪いのだ…と、その場はごまかした丑之助だったが、翌朝、おまきさんから叩き起こされる。

その日は昭和16年12月8日、アメリカとの開戦を知らせるラジオ放送が聞こえて来る。

今こそ、勝負の時が到来したと感じた丑之助は、久々に大阪の証券会社を訪れると、「東新」を売りまくりはじめる。

店員(藤木悠)が、今は買い時ではないかと心配する中、一時期は買手が殺到するであろう鉄鋼株は、やがて暴落すると見込んだ丑之助は、どんどん売り続ける。

東京に戻ったおまきさんも、その丑之助を助けようと、店を担保に、武林さん(有島一郎)から一万円の融資を受けると、その金を持って、大阪へ駆け付けるのだった。

しかし、伊予常にはもう丑之助の姿はなかった。

見込が外れ、大損をした丑之助は、一足違いで島に帰ったのだと知る…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

シリーズ3作目。

今回は、島に戻った丑之助が、勝つやんの言葉から闇商売を思い付き、大阪を拠点にその商売で金を作っていく過程が描かれている。

絵柄的にも、宇和島、大阪と変化に富み、時代背景も戦争が始まる前後と言う、正に劇的な変化の時代。

いかにも、うさん臭い闇屋の大将を演じる山茶花究、島の新任署長を演ずる十朱久雄、さらに、大阪での商売仲間を演じる若月輝男と丘窮児など、新しい顔ぶれも加わり、展開も面白い。

相変わらず、女にはだらしない丑之助が気になるが、当時は、男の甲斐性として、大衆にも許されていたのかも知れない。

この回、一番、活躍しているのは、勝つやんこと三木のり平ではないだろうか?

出番も多く、どのシーンでも、ひょうきんな仕種で存在感を見せつけてくれる。