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続大番 風雲篇

1957年、東宝、獅子文六原作、笠原良三脚本、千葉泰樹監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

昭和7年、鐘紡株に失敗し、多額の借金を背負ったまま都落して、故郷の宇和島に帰って来た丑之助(加東大介)だったが、会う人は、そのばりっとした洋装に騙され、故郷に錦を飾りに帰ったものと勘違いする。

港で、出会った森家の番頭(多々良純)もその一人。
内心、冷や汗をかく丑之助のカバンを自ら進んで持ってやったりして、新築した丑之助の実家まで付いて来る。

両親(谷晃、沢村貞子)、妹タツエ(上野明美)、義弟長十郎(太刀川洋一)らも、突然の丑之助の帰郷を大歓迎する。

それもそのはず、景気の良い頃、家を新築するよう大金を送ってくれた本人だからだ。

しかし、その時の丑之助の所持金は、わずか96円25銭だった。

そんな丑之助を驚かせたのは、父親が持って来た郵便預金帳。

何と、家を新築した残りの金を、丑之助に言われた通り、貯金していたのだと言う。

見ると、その残高は770円もあるではないか。

今の丑之助にとっては思ってもみなかった大金だったが、父親に対しては、大した額ではないと見栄を張る。

その金を長十郎に引き出させた丑之助は、急に気持ちが大きくなり、偶然再会した勝やん(三木のり平)には、盆相撲大会用の寄付として50円、小学校の校長に対しては100円寄附し、それらの人々や森家の番頭も誘い、色街の料亭「築地」でどんちゃん騒ぎを楽しむのだった。

そうした丑之助に対し、東京で心配するおまきさん(淡島千景)や新どん(仲代達矢)は、心ばかりの援助金と同時に、不義理を働いた相手方たちの態度も最近軟化して来たので、そろそろ戻って来てはどうかと便りが届く。

丑之助も、そうした助けのお陰で再上京する決意をするが、調子づいた彼は、「築地」で馴染みになった芸者梅香(青山京子)に身請けしてやるから、一緒に東京に出ないかと誘うのだった。

出発前夜、丑之助は、昔は身分違いで、側に寄る事すら叶わなかった森家の主人(柳永二郎)から招待を受ける。

宴席で、あれこれ株の話を聞かせる内に、すっかり彼を信用するようになった主人は、東京で有島伯爵(平田昭彦)に嫁いでいる、娘の可奈子に、好物の「青海苔」を持って行ってやってはもらえまいかと頼まれる。

こうして、丑之助は七ヶ月振りに上京。憧れの君、可奈子に会える絶好のチャンスをもらった丑之助は、さっそく有島邸を訪れ、可奈子に対面するのだが、短い礼の言葉と共に、丑之助は「靴下」を返礼として貰い受けて帰る事になる。

久々に出会った可奈子の、あまりにも近寄り難い美貌に感激した丑之助は、あの方は「観音様」であり、自分が付き合う所の身分ではない。このまま自分は、あの方を観音様とあがめ、一生独身で過ごそうと心に誓うのだった。

おまきさんや、富士証券の木谷(河津清二郎)に戻って来た挨拶をしに出かけた丑之助は、自分は又、サイトリからやり直しをすると伝える。

兜町では、偶然、かつての盟友、由どんとも再会。
彼は、今ではカドマサの幹部社員になっていると自慢する。

やがて、日本は国際連盟を脱退。

金が値上がりするのではないかと読んだ丑之助は、木谷とも相談の上、しばらく日産株で様子見をする事にするが、これが堅調に推移し、少し利益を得る事になる。

その後、その金から、取引所に勤めていた新どんを含め、不義理を残した人たちにも、少しづつ金を返していく作戦を取った丑之助はその策が当り、思惑通り、その金額よりも誠実さで、又信用を取り戻してゆくのだった。

そんな年の暮れ、おまきさんの家に居着いていた丑之助の元に、国元から一通の電報が届く。

何と、芸者の梅香が上京して来ると言うのだ。

おまきさんには親戚の妹とごまかし、正月、東京駅に迎えに行った丑之助だったが、家に連れて来てからの態度で、同居しているおまきさんの母親に二人の関係を勘付かれてしまう。

それを知ったおまきさんは怒り心頭。
今まで自分がこんなに尽くして来たのに、その答えがこれかと迫られた丑之助は開き直るが、おまきさんは堪忍袋の緒を切り、これで別れると言い出す。

明けて25歳になった丑之助は、少し、小銭が貯まって来たので、この辺で自分の店を持ちたい、ついては、自分の相棒として一緒に店を手伝ってくれないかと新どんに持ちかける。

新どんは、引き受ける代わりに、おまきさんとの仲を修復せよと言い返すのだった。

梅香には、小川旅館の女中として勤めさせる事にした丑之助は、春駒のおまきさんを訪ね、手を付いて平謝りするのだった。

そうした態度で心を溶かしたおまきさんは、今、この春駒の女将さんが店を売りたがっているから、自分は何としても自分のものにしたい。ついては、自分の貯金5000円だけでは足りないので…と相談すると、丑之助もすぐに10000円を出して、店を買うように進言するのだった。

かくして、春駒改め「揚巻」と名を変えた待ち合いの女将になったおまきさんと丑之助は、又、元の仲に戻る。

一方、出納係に新どんを迎え、ようやく自分の店を持った丑之助の元に、意外な人物が顔を見せる。

小1年、病気で臥せっていたと言う、恩人チャップリンさん(東野英治郎)だった。

しかし、久々に兜町の様子を見に来たと言う彼の口から出たのは、開店祝いどころか、この店はもう時期潰れると言う不吉な言葉。

今年度末には恐慌が来るので、どんなに足掻いてもそれには太刀打ちできないと言い残して帰る。

その言葉通り、やがて証券不況が来て、丑之助の店はあっさり潰れるが、店は新どんの名義に変えて、丑之助本人は姿をくらます事にする。

昭和10年、久々に、木谷の元へ挨拶に出かけた丑之助は、今は国の動きを見ろ。鐘紡は見込があると言われ、おまきさんら知り合いから集めた金を全て鐘紡に注ぎ込んでみる。

その鐘紡を売り出しているのはカドマサだと分かると、ライバル意識も手伝い、さらに買進める丑之助だった。

しかし、そんな最中に勃発したのが226事件。

そのあおりを食って、株式市場は停止。

結果的に、木谷や丑之助は一時的に損をしてしまう事になる。

そんな丑之助をさらに落ち込ませたのは、小川旅館で働いているとばかり思っていた梅香が、見習い板前と一緒に遁走したと知った事。

一旦は損したかに見えた木谷だったが、その後も挫けず各地の仲間を尻押しし、さらに鐘紡株を強気で買い続けた結果、その後の値上がりで莫大な利益をあげる事になる。

丑之助個人も139万円という一財産を儲けてしまう。

久々におまきさんと「揚巻」で喜びを分かち合おうとした丑之助だったが、木谷主催の一流料亭「新喜楽」での大宴会に招かれ、その場で出会った加納屋の小花(中田康子)という芸者に、又、悪い虫がうずきだすのだった。

その頃、おまきさんは、新しく大きな店を見つけたいと言っていた丑之助の為に、馴染みの武林(有島一郎)さんに紹介してもらった屋敷を購入する事にする。

その屋敷で、書画骨董の類いまで集めるお大尽のようになった丑之助だが、おまきさんは、彼がこっそり小花に対し、月700円も貢いでいる事を嗅ぎ付け悔しがるのだった。

それでも、丑之助は悪びれるでもなく、後日、小花に請われるまま、湯河原に旅館を持たせてやる事になり、二人で現場を見に出かける。

そんな二人が乗った列車で、丑之助は偶然、同じ車両に乗って来た有島伯爵と可奈子夫婦の姿を発見し、思わず、小花を次の駅で下ろして、次の列車に乗り換えさせ、自分は一人で旅行している風を装って、いそいそと可奈子に挨拶しに行くのだった。

相変わらず、可奈子の方は丑之助の事等何とも思っていなかったが、丑之助の方にしてみれば、観音様との久々の嬉しい再会であった。

それからしばらくして、世の中は支那事変が勃発、丑之助は、今まで通り、強気で鐘紡株を買い続けるが、統制経済が始まり、綿紡績株も全て統制されてしまう。

これにより、木谷と丑之助は、共に致命的な打撃を受けてしまい、損失を追わせた相手から逃げるため、一時期、兜町から姿を消していた丑之助だったが、木谷にだけは詫びの挨拶に出かける。

その後、小花が女将となった湯河原の「花のや」に身を潜めるため出かけた丑之助は、翌朝、東京から新どんを呼び寄せ、善後策を考えるのだった。

会社の社員や小憎たちには、給金を払ってやって欲しいと言う新どんの言葉に頷いた丑之助は、急ぎ、東京に帰り、屋敷を売り払って、その給金に帰る事にする。

ところが、東京に戻り、毎日のように借金取りに押し掛けられていたおまきさんの所へ出向き、土下座して迷惑を詫びていた丑之助が聞いたのは、ラジオから流れて来る「木谷、箱根宮ノ下ホテルで自殺」のニュースだった。

木谷の告別式に出席した丑之助は、大きな心の支えを失った哀しみに打ちひしがれてしまい、おまきさんと新どんに対し、自分はもう、株の世界から足を洗うと言い出すのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

加東大介主演「大番」シリーズ2作目。

この回でも、どちらかというと、故郷にいる間のエピソードの方が面白い。

三木のり平など、楽しい役者がいる事もあるが、情景的にも変化があって楽しめる。

それに比べ、東京でのエピソードは、春駒、富士証券の木谷の部屋など、お決まりのセットシーンが増え、あまり、絵的な変化がない。

丑之助も、もう、走ったり、場立ちをしたりという派手な動きのシーンがなくなり、落ち着いて来るので、若干、初回の青春篇に比べ、単調な回になっている。

それに、献身的なおまきさんがいるのに、平気で浮気をしてしまう丑之助の態度にも、今一つ、共感できないものがある。

大金を使うと、豪快に使ってしまう丑之助のキャラクターと言ってしまえばそれまでだが、彼が心の中で理想化している可奈子の存在もあり、余計、観客としては、おまきさんの方に感情移入してしまうのだ。

丑之助の心の師となる木谷役は、温厚なインテリで、度量の広い好人物として描かれているため、演じている河津清二郎としては、相当な儲け役だと思う。

出番は多くないものの、可奈子の婿になる公爵役の平田昭彦もピッタリの雰囲気。

この回の見所は、丑之助が想像する可奈子の観音様イメージのシーン。

今で言えば、一種のコスプレとでもいうべき雰囲気で、原節子が観音様の衣装を着て出て来る。

今観ると、ちょっと珍妙に見えるのだが、原節子は、東宝時代、色々な事をやらされていたのだな〜と感心した。