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宇宙快速船

1961年、ニュー東映、渡辺昭洋原案、森田新脚本、太田浩児監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

世界的宇宙研究者谷川博士(松本克平)の片腕、立花真一(千葉真一)は、博士と同行してモスクワに行き完成させた、新しい人工衛星ルーニク2号の完成映像を、宇宙研究所の一室で、谷川博士の息子健一(山本哲平)とその友達たちに映写して見せていた。

研究所から外に出て来た子供たちは、頭脳優秀でハンサムな立花だが、この前、与太者から因縁をつけられた時ぶるっていたとか、見かけ倒しな所があるのが玉にきずだと噂し合う。

あの立花さんが、喧嘩も強くて、スポーツカーも運転できるようなすごい人だったら良いのにな~…と夢想する子供たちは、そう言うヒーローがいたら何と言う名前にしようと相談しよう。

「はやぶさ三郎」「ジェットタイガー」など意見が出るが、どれもピンと来ない。

そこに出たアイデアが「アイアンシャープ」と言うネーミングだった。

タイトル

子供たちは浅香山に望遠鏡を持ち込み「少年宇宙研究会」と称して、キャンプを張ろうとしていた。

ノンキものの忠雄くん(小園江五)は、望遠鏡でアベックを覗いたりしている。

その時、健一くんは、遠くの空を落ちて来る光る物体を発見し、人工衛星が落ちたに違いないと皆に教えると、他の子らと一緒に落ちたと思しき林の中に走って行く。

林の向こうに発見したのはルーニク2号とは全く違う、地球では見かけない宇宙船だった。

気がつくと、不思議な格好をした宇宙人らしきものたちに、子供らは囲まれてしまう。

危うく捕まりかけたその時、風が吹いて来て、不思議な空飛ぶ車が降り立つ。

そこから降りて来たのは、マント姿の謎の青年だった。

マントの青年は、宇宙人たちと戦い始めるが、やがてサイレンの音のようなものが響き、宇宙人たちは宇宙船に全員乗り込む。

すると、一天にわかにかき曇り、雷が落ち始める。

マントの青年は、宇宙船に向け、腰に下げた光線銃を発射する。

その効き目があったのか、宇宙船は子供たちが見ている前で、空高く飛び立って行ってしまう。

子供たちは、青年に近づき、おじさんは僕たちが夢見たヒーローと同じだねと話しかけ、名前を尋ねるが、青年は、ボクの名前は君たちの方が良く知っているのではないかな?と言いながら、車に乗り込み、そのまま飛び立って行ってしまう。

子供たちは、今の青年が、自分たちが夢見た「アイアンシャープ」なんだと直感して喜ぶ。

谷川博士の娘洋子(水上竜子)は、風邪を押して父親が研究所にいるのに気づき、寝ていなくてはと注意するが、20分前くらいから異常な電波が検知されているのだと博士は聞く耳を持たない。

そこにやって来た立花も、電子頭脳が動かなくなったと報告する。

その頃、取材から社に戻って来た毎朝新聞記者やまさんこと山形雄吉(亀石征一郎)とカメラマン進藤栄治(岡本四郎)は、会社の玄関にかけてある時計の針が逆回転している事に気づく。

ジュークボックスの前で踊っていた若者たちも、レコードが止まったので起こりだしていた。

その時、空に奇妙な音が聞こえていた。

線路工事をしていた労働者二人は、接近して来た電車が、急に逆走し始めたのを見て驚愕する。

そこにも、奇妙な音が響いていた。

東京中の電気が、20分間に渡り止まった事が明らかになり、宇宙研究所の谷川博士に新聞記者たちが共同インタビューを行う事になる。

博士は、今回の現象は天然現象ではないと発表。

そこに、浅香山から戻って来た健一たちがやって来て、宇宙人を見たと報告するが、もちろん、記者たちは笑って相手にしない。

立花だけが目で合図をし、健一たちを廊下に出して訳を聞いてくれた。

それに気づいたのは山形、半信半疑ながら、カメラマンの進藤を子供たちに同行させ、現場写真を撮って来るよう命ずる。

研究所の方では、また怪電波が感知されていた。

極超短波かと尋ねる柳田理学士(江原真二郎)に、立花は、その電波がシグマ電波だと教える。

その立花は谷川博士から呼ばれ、アメリカのジョンソン博士から、アメリカでも極超短波を感知したとの連絡があったと教えられる。

立花は、この怪電波は、日本から宇宙に向かっており、宇宙人が彼らの遊星との連絡をしているのではないかと推測をしてみせる。

谷川博士は、時彼らの動きを探知する事が必要、自分たちにはエレキバリアがあると答える。

その頃、カメラマンを連れ、再び浅香山に戻って来た健一たちだったが、もう、宇宙船があった場所には何もない。

最初から信用していなかったカメラマンが、形だけ写真を撮ろうとカメラを構えた瞬間、光るものを発見した健一は、カメラマンが一人で帰った後、その光の原因となった物体を見つけ出し、他の仲間と一緒に研究室に戻る。

それは、アイアンシャープが宇宙船を光線銃で撃った際、欠けて落ちた宇宙船の破片らしかった。

その頃、一足先に戻ったカメラマンから現像した写真を受け取った山形は、それを立花に見せていた。

そこには山の中の一隅に強い光が写っていた。

山形が帰った後、健一たちが浅香山で拾った金属破片を見せる。

その直後、窓から強い光が差し込み、遠くに原子雲が立ち上ったのが見えた。

茨城県西海村の原子力発電所が爆発事故を起こしたのだった。

防衛隊は、緊急対策会議を招集する。

防衛庁側は、攻撃対象はレーダーに写らない人工衛星からの攻撃ではないかと推測し、今そういう事ができる大国は一つしかないと決めつけているようだった。

その場に、体調を崩している谷川博士の代理として出席していた立花は、子供たちが目撃した宇宙船の話を疲労するが、それを聞いた榎本博士(白河青峰)は、子供たちの言動などに惑わされないようにと釘を刺す。

その時、外伝が届き、アメリカの原子力発電所でも爆発事故が起き、アメリカ政府は直ちに、ソ連大使に帰国命令を発したと言う。

この措置に対し、憤慨したソ連側は、このままでは第三次世界大戦が起きる危険性もあると警告を発する。

こうした緊迫した世界状況に対し、健一たち子供たちは、大人たちって本当に戦争が好きだと呆れていた。

研究所で、宇宙船の破片を分析していた立花は、その成分がロギウムとパギウムと言う地球上にはない金属の合金と分析、その成分がある海王星の産物だと断定する。

谷川博士は、ウィルソン博士もシグマ電波を確認したと立花に伝え、日米両科学者そろって、今回の怪事件はすべて海王星の仕業であると世界に向けて発表する。

その放送を、地球に接近中の宇宙船に乗った海王星人たちも傍受していた。

記者会見に臨んだ谷川博士は、地球にはエレキバリアがある事を説明する。

エレキバリアの防御力と防衛範囲は反比例の関係にあり、広い範囲を防衛させようとするとその防御力も弱まると解説する。

エレキバリアの中心は、装置が設置されている宇宙研究所。

その夜、都会の電気がすべて消え、宇宙船がミサイルを発射して来るが、エレキバリアのおかげで防御する事に成功する。

バリアに接触した宇宙船自体もそれ以上地球の圏内に侵入する事ができず傾いてしまい、やむなく退散して行く。

子供たちは歓声を上げ、街には再び明かりがともった。

しかし、その直後、谷川博士は、防衛軍の幹部らと次の作戦会議に出席し、宇宙船は、もう一度襲来するはずだと予測を語る。

こちらから相手への攻撃は不可能。

防衛隊は、プラスα電子を相殺するマイナスα電子を利用した攻撃のアイデアを出すが、宇宙船が地上に墜落したら大変な事になる事になると博士から指摘される。

一方、健一たち子供たちは、翌日も「アイアンシャープ」の唄を歌いながら、元気に宇宙研究所にやって来る。

庭先では、各社の新聞記者たちが、新たな発表を待っているのか休憩をしていた。

しかし、研究所の谷川博士は忙しいのか、入って来た洋子と健一たち子供を部屋から追い払ってしまう。

仕方ないので、健一は、ジョンソン博士からお土産としてもらった反転レーダーのおもちゃを友達に見せる事にする。

その最中、ベランダに出た健一は、研究所の横の通路に不思議な物体を発見したので、みんなで近くに見に行く事にする。

小さな金属の球体のような物体は、かたかた音を立てている。

健一はその球体に付いているスイッチみたいな突起を押したりしてみたが、すぐに立花たちに見せに行こうと決意する。

子供たちの動きに気づいた記者たちも、一緒に研究所の中になだれ込む。

その物体は、宇宙人が送り込んだレコーダーのようなものだった事が判明する。

そこから聞こえきたメッセージの内容は「エレキバリアは海王星人に適わない」と言う不敵なものだった。

研究所に出向いていた防衛庁の藤本一佐(山本麟一)たちに、柳田理学士は、宇宙船は10万キロメートル上空から日本に向かって来ており、このスピードだと12時30分には東京上空に到達すると報告する。

その頃、航空宇宙局特別用地には、マイナスα電子ロケットが準備されていた。

宇宙研究所の上では、健一たちが望遠鏡を備えて空を監視し、建物の周囲は、防衛隊が固めていた。

12時半、レーダーを見ていた柳田理学士が宇宙船が消えたと報告。

その直後、宇宙研究所の近辺に巨大な砂煙が舞い上がる。

天候も怪しくなったので、外に出ていた記者たちや防衛隊員たちも、建物の中に避難する。

その間、近くの大木に落雷し、その大木から防衛隊の格好をした数名が出現する。

その後、異常がなかった事から、防衛隊は元の配置場所に戻るが、発電所近辺にいた偽防衛隊員たちから襲撃される。

自主的に発電所近辺を調査に行った子供たちは、防衛隊員たちの姿がない事に気づく。

そこに、偽隊員たちが出現したので、本物と思い近づいた所を襲われそうになる。

その時、アイアンシャープが空飛ぶ車でやって来て、光線銃で応戦してくれる。

光線銃に当たった偽隊員は、宇宙人の姿に戻り消滅する。

残り2人の偽隊員たちを追って発電所の中に入ったアイアンシャープは、「危ない!逃げろ!」と子供たちに叫んで遠ざけた瞬間、爆発に巻き込まれてしまう。

そこに、柳田理学士たちが駆けつけて来る。

その後ろから女性研究員がやって来て、谷川博士に異常があった事を知らせる。

子供たちや柳田理学士が研究所に戻ると、谷川博士はベッドに寝ているではないか。

診察していた医者が言うには、強烈な電気ショックによる者だと言う。

洋子が説明するには、警備隊員の姿をした宇宙人がやって来たので、抵抗した谷川博士は、マイナスα電子砲のスイッチを入れて倒れたのだと言う。

その後、研究所は急激な気温の低下に襲われる。

この異常気象はヨーロッパでも起こっているとの連絡が入る。

東京都民は、この異常気象に怯える。

健一たちは、アイアンシャープがやられちゃったと落胆している。

しかし、その後、気温は上昇、滝田防衛長官(神田隆)は、異常気象は海王星からの電波のせいだったと発表する。

今後、エレキバリアがある航空宇宙局が狙われる恐れがあるため、都民に避難勧告が出される。

一斉に逃げ出す都民たち。

日本上空に飛来した宇宙船から、小型円盤が二機発進する。

東京上空に接近した小型円盤は、ガスタンクや東京タワー、丸の内ビル群などを破壊していく。

車で郊外に脱出途中だった健一ら子供たちの車も小型宇宙船に狙われる。

その時、アイアンシャープの乗った空飛ぶ自動車が飛んで来て、小型円盤と空中戦と空中戦を始める。

墜落した小型円盤が、航空宇宙局に墜落、マイナスαロケット用の液体酸素装置故障、発射が一時中断してしまう。

柳田理学士たちが必死に修理を始めるが、立花の姿が見えない事に気づく。

そこに、どこからともなく立花が現れ、修理の手伝いをする。

かくして、発射装置は修復し、時間通りマイナスαロケットが発射する。

ロケットは、接近していた宇宙船に命中、撃破する。

事件が解決し、立花、洋子らと話し合っていた健一ら子供は、将来、アイアンシャープのような車を作って火星探検がしてみたいなどと夢を語り、みんなで手を組んで「アイアンシャープ」の唄を歌いながら歩き始める。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

アバンタイトルの展開から、この本編は「子供が空想する夢物語」…、つまり、最後は「ああ、夢だった」と言う夢オチで終わるとばかり思って観ていたら、そうではない所がちょっと落ち着かない妙な作品。

スーパーヒーローものとしてみるとテンポが遅く、期待したほどには「アイアンシャープ」の活躍場面が多くない事もあり、当時の雰囲気を知らないものにとってはちょっと退屈かも知れないが、空想科学物語としてみると、「エレキ(電磁)バリア」の登場など、なかなか興味深い部分がある。

何より「特撮映画」としての完成度には驚かされる。

東映特撮ものの最高峰と行っても過言ではない。

以前、樋口監督も雑誌で誉めていたけど、円盤による東京襲撃シーンの合成は、どこでマスクを切っているのか分からない。

ビルなどミニチュアの精度も高く、どこまでが実写で、どこまでがミニチュアなのかにわかに判別しにくいほど。

宇宙研究所のロケ地は、特撮ものではお馴染みの長沢浄水場。

当時、新人同士だったとは言え、江原真二郎が、千葉真一主演映画の脇役をやっていると言うのも、ちょっと意外な感じがした。