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姑獲鳥の夏

2005年、「姑獲鳥の夏」製作委員会、京極夏彦原作、猪爪慎一脚本、実相寺昭雄監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

昭和27年夏、今は風俗雑誌等に書く雑文などで生計を立てている売れない小説家、関口巽(永瀬正敏)は、「20ヶ月も妊娠している女」という不思議な噂を聞き付け、その謎を解明してもらうため友人の古書店店主京極堂こと中禅寺秋彦(堤真一)を訪ねる。

しかし、京極堂は、二人が良く知る探偵の榎木津礼二郎(阿部寛)に相談しろとにベもない返事。
榎木津は、戦争で失った左目で、人に見えないものが見える能力を身に付けた男だったが、その言動行動は常軌を逸した変わり者だった。

仕方なく榎木津の探偵事務所に向った関口は、そこで、久遠寺梗子の姉、涼子(原田知世)と出会う。

遅れて、事務所に戻って来た榎木津は、関口と涼子は互いに知り合いなのかと奇妙な事を言い出すが、関口には全く覚えがなかった。

そんな関口と榎木津は、久遠寺に訪れ、涼子の妹で、20ヶ月も妊娠し続けているという梗子(原田知世-二役)に会おうとするのだが、彼女は一人だけにしか会わないという。

結局、関口が部屋の中に入る事になるのだが、その部屋の中は、真夏だというのに異常に寒かった。

しかも、部屋の外にいた榎木津は、無気味な映像を幻視していた。

一方、警視庁の刑事、木場修太郎(宮迫博之)は、薬品中毒死した戸田澄江という女の事件を追っていた…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

登場するキャラクターたちの面白さと、ミステリでも妖怪ものでもない、いわば読者を面喰らわせる衒学の森とでもいった感じの京極ワールドを映像化しようとした企画自体に、最初から無理があり過ぎるように感じた。

本格ミステリを、スプラッタホラーと大仰な女優芝居劇に仕立て上げて成功した横溝正史の金田一シリーズのような展開を狙っていたようだが、本作には、そういう「映像化して見ごたえがありそうな要素」がほとんど見当たらないからだ。

事件そのものも、曖昧とした謎のようなものはあるが、特に、はっきりとした惨劇のようなものが次々に登場する見世物要素もなければ、観客が気軽に犯人捜しを楽しむような単純な設定にもなっていない。

だから、そういう原作を知らないで映画を観た観客には、その奇妙な世界観そのものが、良く理解できないのではないだろうか?

逆に、原作を知る者としては、良くも、あの迷宮のような世界を2時間程度にまとめたな〜…と、妙な感心をするばかり。

原作の「簡潔な説明」にはなっているような気がするが、原作にこだわりがある人にとっては、すっぱり切り捨てられてしまった他の部分の方が気になるはず。

実相寺作品としても、意外に、オーソドックスに撮られている印象を受けた。(同時期の作品「乱歩地獄」の中の「鏡地獄」などと比較してみると、良く分かるはず)

大衆向けを意識したと思われるその分かりやすさが、逆に、どこか物足りなく感じる原因となっているようにも思える。

では、単純なだけの凡作なのかと言うと、そうとも思えない。

それなりに、最後まで一気に見せて行く手練手管には長けた作品になっているのだ。

あえて言えば、本作はストーリーそのものよりも、目眩坂など、凝ったセット美術などを楽しむ作品と割切って観た方が良いようにも思える。

個人的には、木場修太郎(宮迫博之)と、京極堂の妹、敦子(田中麗奈)は、ちょっとイメージが違った。

敦子はもっと、清楚で大人っぽいイメージで読んでいたのだが、田中麗奈はちょっと可愛い過ぎ!。

木場修は、もっと体育会系でがたいがでかく、がっしりしたタイプの男だと思っていた。

原田知世は、いつまでも可愛らしく好ましい。

いしだあゆみの老けようは、ちょっと哀れだが、やはり久々のスクリーン登場は嬉しい。

その夫役のすまけいなども、懐かしかった。

やはり、これはこれで、色々原作ファンにとっても、あれこれ気になる作品ではある。

若い頃の「水木しげる」役で、水木コレクターでもある原作者本人が出演しているのも見所。

紙芝居の「墓場の鬼太郎」も画面に登場するので注目!(髪で、左目を隠していないやつ)