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錆びたナイフ

1958年、日活、石原慎太郎原作+脚本、舛田利雄脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

西日本にある仮称「宇高市」は、軍需産業が戦後、平和利用に転じ発展した新興の工業都市で、古い文化と新しい文化が混在している中に暴力がはびこっていた。

今日も、子分の傷害事件を理由に、表面上運送会社を装いながら、実質的には、街を牛耳るギャング団のボスであった社長の勝又(杉浦直樹)を警察が連行して行ったが、それを見送る群集の間からは、どうせ又、証拠不足ですぐ釈放してしまうのだろうと、諦めの言葉が漏れていた。

取材のため警察署に殺到した新聞記者たちも予想した通り、結局、勝又は、いつも通り釈放されてしまう。

新聞紙上には、捜査を担当した狩田検事(安井昌二)の、市民からの証言を強く望む談話が空しく掲載されるのみだった。

東京のあるバーで、その記事を読んでいた男が、愛人の陽子(天路圭子)に便箋と封筒を持って来させる。

数日後、狩田検事は、その男からの手紙を読んでいた。

その文面には、数年前、自殺した市議会議員西田は、実は他殺であったと、驚くべき事が書いてあった。

手紙の主は当時、宇高市で落ち目になりかけていた三島一家に所属していた人間だが、賭博用の資金を持ち出そうと、仲間二人と一緒に西田邸に押し入った際、すでに絞殺した西田の遺体を首吊りに偽装している勝又組の現場を目撃したのだと言う。

その狩田検事の手紙と同じ内容の、もう一通の手紙を読んでいたのは勝又だった。

違うのは、口止め料として20万の金を要求している事だけ。

勝又は、当時、三島組にいた橘(石原裕次郎)、島原(宍戸錠)、寺田(小林旭)の三人を思い出し、金の送り先に指定してあるのが東京と言う事で、手紙の主が島原であると気づき、すぐに子分たちに指図するのだった。

東京で郵便為替を受取った島原は、陽子に手紙を託し、もし10日後に、自分がこの店に戻って来なかったら、この手紙を出してくれと頼んで宇高に出発するが、郵便局からすでに、彼の動きは勝又組に見張られていた。

列車で宇高駅に到着した島原だったが、数人の警察を名乗る男たちに囲まれ、勝又組が狙っているので、身柄保護のために次の駅まで送るといわれ、再び列車の中へ連れ込まれる。

しかし、彼らは勝又組の連中だった。

デッキで拳銃を突き付けられた島原は、向いの列車がすれ違う直前、彼らによって、線路に突き落とされてしまう。

約束通り、10日後、陽子が投函した手紙は狩田検事の元に届き、検事は、8日前の身元不明の轢断事件の被害者が島原の末路だった事を悟るのだった。

しかし、検事は、手紙に書かれていた橘と寺田と言う、当時の仲間二人の目撃者を知る事になる。

その頃、橘幸彦がマスター、寺田マコトがバーテンとして働いている「キャマラード(男友達)」というバーでは、橘の学友だった真野明(弘松三郎)が、恋人の西田啓子(北原三枝)と一緒に飲みに来ており、前科のある橘に、東京で出直してみないかと誘っていた。

橘は、昔、恋人を傷つけられた相手の男を刺し殺してしまい、5年間、ムショ暮しをしていたと言う苦い過去があるのだった。

そんな店にやって来たのが、勝又たち、もちろん、橘が口を割らないように牽制のため来たのだが、堅気になっている橘は、全く、勝又を普通の客としてしか扱わなかった。

さらに、狩田検事たちもやって来たのに気づいた勝又は、そんな橘の様子を見て、安心して帰って行く。

橘の態度は、狩田検事たちに対しても同じで、昔の事は一切忘れたと、証言を一切拒否するだけだった。

しかし、店で、狩田が洩らした「西田議員殺害」の言葉に驚いたのは、その場にいた啓子だった。
啓子は、西田議員の娘だったからである。

彼女は、今の今まで、父親は自殺したものだとばかり信じ込んでいたのだった。

その日、「キャラマード」が店じまいした頃、先に休んでくれと言って、橘を送りだした寺田は、橘が付き合うんじゃないと警告していた恋人の由利(白木マリ)と落ち合って遊びに行こうと外出した所を勝又組の連中に捕まり、由利諸共事務所へ連れて行かれる事になる。

勝又は、橘は口が堅いと見たが、若い寺田の方は危なそうだと踏んで、金で口封じしようとしたのだ。

結局、寺田は10万の金を勝又から受取り、呼出された警察でも、一切かこの事はしゃべらなかったが、その日から、由利と連れ立って派手に遊び歩くようになる。

警察では、そんな寺田の様子を観察しており、勝又から買収されたと読んでいた。

一方、狩田たちは、西田啓子からも証言を得ようとするが、当時、大学寮で生活していた彼女は、一切、父親の事を知らなかったと言う。

今は、暴力と言うテーマでルポを取っているのだとも。

その後、念のため、橘にも金を掴ませようと、再度キャラマードを訪れた勝又組の人間から、寺田がすでに金を受取った事を聞かされた橘は苦悩する。

さらに、その後やって来た啓子は、橘が、父親殺害の目撃者でありながら、証言を拒否している事を責めはじめる。

彼女は、ルポで得た録音テープを彼に聞かせるのだが、そこに入っていた女性の声が言うには、橘のかつての恋人だったユキという小料理屋に勤めていた女性を誘い出して辱め、それが原因で彼女を自殺に追い込んだのは、複数の男たちだったと言う。

そのテープを聞いた橘は衝撃を受ける。

今まで、ユキを辱めたのは、呼出した宮本という男一人だけだったと思っていたからだ。

橘が殺害したのはその宮本だったのだが、犯人が複数いたと言う事は、自分がとんでもない勇み足だった事を物語る。

啓子から、そのテープの声の主であるパーマ屋のマダム(新井麗子)の所へ案内された橘は、事件の本当の目撃者は、かつてこの店に勤めていた玉枝(渡のり子)だと聞かされ、今は、大島村に嫁入りしてしまったと言うその女性に、詳しい当時の話を聞きに出かけるが、頑な玉枝からは何も聞きだせないまま追い返される事になる。

その頃、啓子は、現在、後見人として世話になっている明の父親、真野真吾(清水将夫)から、橘のような前科者とは付き合わない方が良いと警告を受けていた。

しかし、啓子は、かつて父親の政敵であった真野の事を、今一つ信じ切れていなかった。

その夜、由利と遊び呆けてキャラマードへ遅れて戻って来た寺田は、店に「休業」の貼り紙がしてあり、店内を覗いてみると、橘が珍しく酒を飲んでふさいでいる姿を目撃し、これ幸いとばかり、自室に潜り込んで由利といちゃつきはじめる。

部屋に戻る途中、その物音に気づいた橘は、寺田に、何故、勝又から金を受取ったかと問いつめるが、寺田はその言葉に、今まで溜めていた鬱憤を晴らすかのように反抗し、あんなの恋人を辱めた張本人は勝又だったのだと洩らした後、自分はもうあんなのドレイじゃないんだから、自由に生きて行くと、由利を連れて店を飛び出す事になる。

その頃、勝又は、謎の人物から、寺田と橘を始末するよう無線で指示を受け取っていた。

そんな勝又の事務所にやって来たのが、寺田と由利。

寺田は無鉄砲にも、勝又から20万円強請ろうとして、逆に子分たちに袋叩きに合い、そのまま、トラックに乗せられて、海に捨てられに行く。

ちょうどそんな所へやって来たのが、勝又への復讐を誓った橘だった。

彼は、すれ違うトラックに寺田と勝又が乗っているのを発見すると、自分も別のトラックに乗り込み、追跡を始めるのだった。

カーチェイスの末、勝又たちのトラックを、路肩に追突させ停めた橘は、勝又を殴りつけて、寺田を救い出す。

しかし、立ち直った勝又と壮絶な殴り合いが始まり、橘は、気絶していた寺田を起こすと、すぐさま、狩田検事の所へ駆けつけて証言するんだと叫ぶ。

寺田はその言葉に従い、トラックで警察署へ乗り付けるが、狩田検事はすでに帰った後だった。

勝又組の連中に襲撃されないかと気が焦る寺田は、高石刑事(高原駿雄)に勧められるまま個室で待機させられるが、連絡で呼び戻された狩田検事と、ちょうど勝又を引き連れて警察署の玄関口までやって来た橘の前で、何者かによって狙撃されてしまう。

その後、橘は西田議員殺害事件の目撃証言をし、勝又は拘留される事になるが、ある日、面会に訪れた男から差し入れられた菓子を食べて死亡してしまう。菓子に毒が仕込まれており、勝又もそれを知った上での自殺だった。

これで、何もかも終わり、街には平和が戻ったかに思えたが、警察署内の寺田の遺影の前で、橘と狩田検事は、何か釈然としないものを互いに抱えていた。

それは、勝又の背後には、もっと巨大な悪が存在しており、自分達は、その相手に踊らされていただけだったのではないかと言う疑惑だった。

狩田検事は、そうだとしても、証拠がなければ、自分達としてはどうする事も出来ないと、現実的な意見を言い、橘は、それだったら、自分のような者が独自に解決してみせると決意するのだった。

そんな橘は、警察署の窓から不思議な光景を目にする。

外にいた勝又組の口がきけない子分と、警察署内の別の部屋にいた高石が、何かを秘かに連絡しあっているのだ。

橘は、瞬時に何事かを悟る。

高石がスパイだったのである。

橘は、すぐさま口が不自由な男を取り押え、彼が持っていた通信用の手帖を奪い取ると、警察署に戻って、高石を問いつめる。

啓子も伴って高石の部屋に出向いた橘は、そこに無線機を発見する。

高石の言葉によると、毎夜、9時になると、謎の人物から無線で指示があるのだという。

その夜、まんじりともせず、無線機の前で待っていた橘、啓子、高石の前で、無線機から声が聞こえて来る。

その声を聞いて驚いたのは啓子だった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

前科を持ちながら、堅気になっていた男が、自分が過去犯した事件のからくりを知る事になり、その復讐を果たそうとするサスペンスドラマ。

通俗ものと言えば通俗ものだが、若き石原慎太郎原作、脚本だけに、なかなかしっかり構成されている。

石原裕次郎、小林旭、宍戸錠という、人気者が顔を揃えているのが見物だが、この当時は、まだ旭や錠さんは、裕次郎にくらべると格下だったようで、特に、錠さんの登場シーンは短い。

どう見ても頼りない検事役だが、二枚目の安井昌二が粋に演じているので、それなりに決まっている。

「必殺シリーズ」の藤田まことの妻りく役で有名な白木マリは、この頃から、今とあまり印象が変わっていないのが驚き。

本作では、ズベ公という設定。

杉浦直樹のギャングのボス役は、今観ると、特に怖そうにも見えず、少し迫力不足のようにも思えるが、上背があるので、当時はこういう役が多かったのだろう。

主題歌も有名な作品である。


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