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打倒(ノック・ダウン)

1960年、日活、宮田輝明+柏木和彦脚本、松尾昭典監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

元フェザー級チャンピオンで、引退後の今は野中建設の社長をやっている野中修一(大坂志郎)は、ボクシングへの夢立ち難く、新しいチャンピオンを育てようと、野中ボクシングジムのマネージャーもやっていたが、期待して育てて来た大山三郎が、相手の白坂(滋野定夫)に仕合で破れさるのを見て、大山を見限る事にする。

大山にはテクニックはあっても、強烈なパンチ力がない事を知っていたからだ。

そんな野中に声をかけて来たのは、中原(岡田真澄)という業界ゴロ。

その中原が掘り出し物を知っていると言うのを聞いた野中は、さっそく、その人物がいると言う大学を訪ねる。

アメラグと拳闘部を掛け持ちしている高野昭(赤木圭一郎)という学生は、電子工学の基礎を学んでいるインテリだったが、そのパンチ力は確かにずば抜けていた。

さっそく、昭を口説いた野中だったが、相手は全く興味を示さない。

その昭には、太平洋電子工業という会社で技術者をやっている兄と叔父がいると、中原から聞き込んだ野中は、そちらにも手を回すが、兄雄介(二谷英明)も乗り気ではないし、叔父(殿山泰司)を使っての説得も成功しなかった。

昭は、大学の教授(浜村純)から、翻訳を頼まれるほど、将来を嘱望されている秀才だったのだが、彼に、知り合いの野中がボクサーにならないかと声をかけている事を知った同じ大学に通う、料亭の娘ひろ子(和田悦子)は、急に昭に興味を持つようになり、クラブ・ハイソサエティへ彼を招待するのだった。

同じく、そのクラブへやって来た野中に一本の電話が入る。

その内容に驚いた野中は、カウンターで休憩していた昭に声をかけ、一緒に病院へ出かける。

聞けば、昭の兄、雄介が、ヤクザものに大怪我をさせられたのだと言う。

さらに、その雄介が研究中だった長時間電池そっくりの論文がライバル社から発表された事を知った社長は、それを雄介が洩らしたのではないかと疑っているらしく、主任技師の立場から平社員に降格すると通達してくる。

雄介に怪我をさせたヤクザはすぐに自首して来て、事件はあっさり解決しかかるが、それに納得がいかないのが昭、ただのチンピラ相手の喧嘩にしては、兄の重傷は不自然、自首して来た犯人も腕力はなさそうで身替わりなのではないかと疑いを抱き、その事を警察に訴えても相手にされなかった昭は、釈放されて新宿警察署から出て来たチンピラを空き地に連れ込み、本当の犯人の名を聞き出す。

ダンスホール春でバーテンをやっている石垣という新犯人を呼出し、こてんぱんに叩きのめした昭は、傷害罪で今度は自分が捕まってしまう。

これが、新聞沙汰となってしまい、通っていた京南大学は無期退学、信任熱かった教授からも見放されてしまうのだった。

そんな昭を、東京地方検察庁から引取ったのは野中だった。

しかし、大学の友達たちは、そんな彼を勇敢な英雄として迎え、歓迎パーティを開くのだが、昭はそんな馬鹿騒ぎにも乗れなかった。

そんな昭に近づいて来たのがひろ子だった。
彼女は平凡な事が大嫌いで、ボクサーとして才能がありそうな昭を盛んに焚き付けて来る。

やがて、入院中だった雄介に手術が必要と言う事になり、病院に出向いた昭に、野中からの見舞金が届く。

それを一旦野中に返した昭は、兄の研究費を出してくれる事を条件に、ボクサーになる決意を伝えるのだった。

こうして、昭は、野中ジムで練習を始めるが、そのトレーナーとなった大山は、まだ選手としての自分に未練があった。

こうして稼いだ金を、兄に渡そうとした昭だったが、雄介は喜ばない。
自分の研究費を出してもらう条件にボクシングを始めたのなら止めてくれと言うのだ。

自分の気持ちが巧く兄に伝わらない事に苛立った昭は、ボクシングの練習も荒れ、手を焼くトレーナーたちやの中を尻目に、遊びに誘いに来たひろ子と共に息抜きのドライブに出かけ、その晩はひろ子のアパートに一晩泊まる事になる。

そんな昭を心配して迎えに来た野中。

こうして迎えた始めてのウェルター級のデビュー戦で、昭は一旦ダウンを奪われながらも逆転で勝利。
その後も連戦連勝で、期待の新星現わるとマスコミにもてはやされるようになる。

そうしたニュースを喜んでいたのは、田舎に引き込んで研究に没頭していた雄介と、常々昭に思いを寄せていた美知子(稲垣美穂子)だった。

雄介は、マイペースで続けていた研究の成果が実り、特許を二つも取得していた。

美知子は、赤坂の料亭に昭を訪ね、そんあ兄の近況等を報告に行くが、その店の娘であるひろ子が、露骨に昭との仲を見せつけるのでいたたまれなくなる。

雄一の新しい研究を認めた社長は、又彼を主任として迎える事になる。

そして、昭の方は、白坂との東洋チャンピオンを賭けた戦いに臨む事になるのだが、そんな中、雄一に怪我を追わせたのは中原の差し金だったと言う事を野中から聞かされる。

もちろん、昭をボクサーにさせるため、中原が独断でやった事で、野中は全く預かり知らなかった事。

結局、中原は野中の元から追い払われ、白坂側に付く事になるが、そんな中原の元に、昭側の情報を電話で知らせて来た男がいた。

選手としてカンバックを願いながらも、どうしても野中に相手にされなかった大山の仕返しであった。

かくして、白坂と昭の仕合が始まる。

同じ頃、太平洋電子工業の本社では、雄介が新しい機械の実験を始めようとしていたが、どうした訳か調子が悪い。

冷静に機械を点検した雄介は、信頼して任せていた同僚の天川(佐藤慶之助)が、巧みに電波を変調させていた事に気づくが、悪事がばれ、退社を言い出した相手を、ライバルがいた方が張り合いがあると、雄介は許してやるのだった。

一方、仕合には勝った昭だったが、倒した相手の白坂が脳内出血で危険な状態になったと知り、衝撃を受けるのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

赤木圭一郎主演のボクシング青春映画。

ボクシングへの夢を捨て切れない元ボクサーが、逸材の新人も見つけ、それを育てようとするパターンは良くあるものなのだが、本作では、それに、電子工学の技術者である兄のエピソードを絡ませ、ちょっと異色の展開になっている所がミソ。

クライマックスも、ボクシングの仕合と、電子機械のランプが点滅する実験シーンが交差するという、ちょっと奇妙な演出になっている。

物語も、単純なサスセスストーリーではなく、ほろ苦い終り方になっているため、いわゆるスポーツもの特有の爽快感はあまりない。

トニー(赤木)のボクシング姿は、どう観ても強そうには見えず、他の要素を絡めたのは、こうした事も見越した苦肉の結果だったのかも知れないが、映画としてはちょっと中途半端な印象で、パンチ不足の観は否めない。

主役は一応トニーなのだが、キャラクターとしては、誠実な兄雄介の方が魅力的に描かれているため、ちょっと不利。

ただ、学生服姿のトニーは、初々しく魅力的。
学生同士のパーティのシーン等も、一見東宝の若大将シリーズなどを連想させるが、からっとした東宝カラーとは明らかに違う独特の雰囲気になっている。

兄雄介を妬むライバルとして、後半ちょっと登場する佐藤慶之助とは、もちろん佐藤慶の事。
クライマックスの仕合のシーンでは、観客として、ちらっと榎木兵衛が顔を見せている。

セリフはほとんどないものの、トレーナー役として登場する高品格は、丹下段平を彷彿とさせ雰囲気はピッタリ。

逆に、大坂志郎はどう観ても元ボクサーには見えないし、主人公に絡む女優たちが皆魅力的に見えないのは残念。

強引に迫って来るひろ子役はともかくとして、美知子役は、もう少し観客が素直に感情移入できる可愛いタイプの女優さんであって欲しかった。