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NANA

2005年「NANA」製作委員会、矢沢あい原作、浅野妙子脚本大谷健太郎脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

大崎ナナ(中島美嘉)は、北の街で、パンクバンド「BLACK STONES」通称「ブラスト」のボーカルをやっていた。
ベースのレン(松田龍平)とは恋人関係だったのだが、ある夜、演奏が終わって帰る途中、その彼には他のメンバーには話しているが、ナナには話してない事がある様子だった…。

東京に向う列車の中、席を捜していた小松奈々(宮崎あおい)は、偶然、ナナの隣の席に座る。

奈々が、カレシに電話をかけているのを聞いていたナナは、自分達が同じ名前である事を教える。

雪に閉ざされ、止まってしまった列車の中で、人なつっこい奈々は、自分が、東京の多摩美に入学した章司(平岡祐太)を追って上京して行く所だと言う事を嬉し気に話し続ける。

東京駅に着き、章司ら迎えに来てくれた旧友らと再会できてはしゃぐ奈々だったが、何時の間にか、ナナの姿は消えていた。

そのまま、章司のアパートで、同棲気分で過ごしはじめた奈々だったが、その女房気取りに違和感を感じた章司は、奈々に、自分で仕事やアパートを捜して、自立するように注意する。

そのため奈々は、不承不承にアパート捜しを始める。

ようやく、自分好みのマンションを発見し、その707号室へ不動産屋と出かけた奈々は、別の不動産屋に連れてこられた女性を見て驚愕する。

何と、上京列車の中で一緒だった、あのナナではないか!

元ブラストのドラマーで、今は弁護士になっているヤス(丸山智巳)と連れ立ってやって来ていた彼女の方も、この部屋を気に入ったようで、どっちがこの部屋を借りるかともめそうになるが、結局、二人で一緒に借りるという形に落ち着く。

こうして、二人のナナの同居生活が始まるが、その頃、章司は、バイト先で知り合った同じ多摩美生の彼女との交際が始まりかけていた…。

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

人気コミックの映画化。

少女マンガと聞いて、ほとんど共感できる世界ではないだろうと、恐る恐る見始めたのだが、冒頭の北の街の情景から情感たっぷりで、すんなり物語の中に気持ちが入り込めた。

野望と挫折を描いた青春ストーリーでもあり、一途な純愛ストーリーでもあり、さらに大人の観賞にも耐えるしっかりした大河ドラマ風の風格さえも感じられる、その懐の深さが魅力的。

おそらく、原作自体にすごく力があるのだろうが、実写版になった事で、絵柄などで少女マンガは苦手と感じていた男性にも分かりやすくなった事は確か。

よく考えてみると、哀しい生い立ちを持つ無口なハードボイルド少女ナナは、70年代の梶芽衣子とどこか重なるキャラ。

しかし、そのクールな見た目とは裏腹に、熱いハートを持ったキャラクターというのは、昔から、男女共に人気があるものである。

若者たちの生き方の、一つの理想像だからだ。

一方、寂しがりやで人なつっこい奈々の方も、一見、どこにでもいる若者の平均像のように見えて、実は、こちらも一つの理想像であると思う。

ナナのような人物は、現実にはほとんど見かけないが、実は、奈々のように、明るい家庭に育ち、人を疑う事もなくあけっぴろげな人物も、実はいそうで、意外といないものである。

つまり、ナナと奈々というのは、普通の若者の心の中にある二つの理想像を、分かりやすく別々のキャラクターに置き換えたものであろう。

そして、二人の全く正反対のキャラクターに見えるNANAは、実は「孤独」な部分で共通なのであり、それは、おそらく、全ての若者にも共通する感情だと思う。

だから、観客は、どちらのキャラクターにも感情移入できるのだ。

雪の駅で、東京に旅立つレンを見送るブラストのメンバーたちの切ないシーンは、過去、日本映画に良く使われてきた設定ではあるものの、この作品でも、印象深く出色の名シーンになっている。