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ミラーマン REFLEX

2006年、バップ+円谷プロダクション、小中千昭脚本、小中和哉監督。

「子供騙し」という言葉があるが、最近は「オタク騙し」とでも言いたくなるような作品が増えている。

この作品もその典型例だろう。

これが、例えば、地方テレビ局の深夜放送枠等で人知れず放映された作品だと言うなら、ちょっとオカルトヒーローっぽくて、その手のジャンル好きの人には、興味を引かれる作品かも知れない。

それは、深夜放映された「ウルトラQ‾dark fantasy‾」を、オリジナルの「ウルトラQ」とは全く別種の面白さがあると言うようなものであるし、それはそれで別に構わないと思う。

しかし、それは、あくまでもテレビで『タダで』観れば…という前提での話ではないか?

「ウルトラQ‾dark fantasy‾」だとて、新作映画として金を取られて見せられたとしたら、一体どれほどの人が本心から満足したと言えるだろう?

はっきり言ってこの「ミラーマン REFLEX」も、一新作として、とても金を取って人に見せるようなレベルの物とは思えない。

いくら、基本的にはオリジナルパッケージ化目的の作品で、劇場公開はその宣伝用だったとは言っても、正直、これほどチープな出来だとは想像できなかった。
おそらく予算も「億」はかけていないのではないかと思われる。

当然ながら、小中監督が何本か過去手掛けて来た「劇場版ウルトラマンシリーズ」のようなレベルには遠く及ばないし、下手をすると「ウルトラQ‾dark fantasy‾」よりチープかも知れないとさえ思える水準なのだ。

画像は、解像度の粗いビデオ画質だし…。

オリジナルの「ミラーマン」とは全く異質の世界なのは別に良い、それは承知の上で観ているのだから。
しかしそもそも、こんなに予算をかけないで「巨大ヒーローもの」が面白く描けるだろうか?

結局、「ミラーマン」の名を使って、ごく一部の往年のファン達の好奇心に訴え、そうしたオタク層を呼び寄せようとする「オタク騙し」目的で作られたと考えても仕方ないのではないかと思う。

内容的には、等身大着ぐるみアクション要素、巨大ヒーローもの要素、オカルト要素等、少女趣味…いくつかの要素が混合し、冥界と現世の狭間にいるヒーローが、人間界に侵攻しようとする魔界の怪物と戦うという設定で、三つのエピソードから成り立っている。

ヒーローの成り立ちと彼が伴っている少女との関係等は、一話づつ解きほぐされていくような構成になっており、それに、同一のヒロインが絡む展開。

発想そのものは別に悪くないと思う。
ただ、予算を全くかけていないので、見せ場がほとんどなく、どちらかと言えば、巨大ヒーローというよりは、低予算の等身大変身ヒーローものに近く、全体的に思わせぶりなだけで、テンションが低いドラマが続く印象になっているだけである。

しかし、三話構成にしているのがせめてもの救いで、下手な長篇物ほどダラダラした感じはない。

ミニチュア等もほとんど登場せず、ビデオ合成で、実景にはめ込まれただけのミラーマンや怪獣に、どれほどワクワク感があると言うのだろう?

確かに、オリジナル版の主役、石田博之は登場するし、ミラーマンのコスチュームデザインも、テレビ放映が始まる前、学年誌に掲載されていた初期デザインを踏襲しているなど、マニア泣かせな部分はある。

後半、オリジナル版のテーマソングを連想させるようなメロディーも一瞬流れ、ほんのちょっぴりだが、心ときめきかける部分もないではない。

好意的に観れば、確かに、小中監督は、厳しい予算枠の中で、それなりの新しい世界観を最低限構築していると言えなくもないだろう。

しかし、それでもなお、この作品を「ミラーマン」の名で公開した事に、最後まで違和感は拭い切れなかった。