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めぐりあい

1968年、東宝、山田信夫脚本、恩地日出夫監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

川崎にあるオリエンタル自動車の組立部で働く江藤努(黒沢年男)は、毎朝、駅からの通勤者たちの列をかき分けながら工場へ急ぐ元気者。

時々、通勤途中の女の子にちょっかいを出したりするヤンチャ振りも発揮。

一方、金井ベアリングと言う個人商店に勤めている今井典子(酒井和歌子)も、同じ、川崎駅を利用していた。

ある朝、いつものように、朝から調子づいた努は、通勤途中の典子の背後から近づき、ふざけてその肩を突いた所、典子は前に転倒、膝に軽いケガを負ってしまう。

さすがに、努もやり過ぎたと謝るが、典子は睨み付けるだけ。

その日、会社の社員食堂で、努は、ミス・オリエンタル自動車と呼ばれている石井綾子(進千賀子)と同じテーブルに座り、彼女にデートを申込むが、あっさり振られてしまう。

終業後、大学出の白井(田村亮)と連れ立って帰る綾子の姿を観た努はくさってしまう。

その後、仲間たちと、駅前の麻雀屋にしけこんでいた努は、帰宅途中の典子を発見、嬉しくなって声をかけ、一緒に電車に乗って帰ろうと誘ってみる。

しかし、何となく努に満更興味がない訳ではない典子は、互いに定期を見せあって自己紹介をしあったが、それ以上、努の誘いには乗って来なかった。

そんな努が、毎日、帰宅を急がないのには理由があった。

満州から引き上げて来た父親(桑山正一)が、今の小さな個人会社に就職して20年、本当はすでに3ケ月前に定年を迎えているのだが、専務の川村氏の恩情で、まだ何とか働かせてもらっていると言う状態。

努の給料を加えても、母親(菅井きん)、中学生の妹友子(工藤富子)、高校生の弟、宏(黒沢博)を抱えた家族を支えるのがやっとで、 特に大学に行きたがっている宏は、その夢が叶いそうにもない事に苛立っており、始終、家の中でもめ事を起こしていたからである。

その姿は、4年前の努の姿と同じであった。

彼も又、大学に行きたがったが、経済的に叶わず、結局、今の工員生活に甘んじなければならなかったのだ。

今の宏は、兄と同じ道を歩む事を嫌がっているのだ。

一方、父親を亡くしていた典子の家庭は、保険の勧誘員をしている母親(森光子)と、中学生の弟、一郎(池田秀一)の三人暮らしだった。

その母親は、夜、唯一の楽しみである晩酌をしながら、亡き父親の命日に、その弟に当る伯父の正治(有島一郎)の住む益子に、墓参りに行こうと言い出す。

そんな所に、当の正治がやって来る。

一郎は、伯父さんの事が好きなようだが、伯父と母との関係に何かを感じ取った典子の気持ちは弾まなかった。

努は、その月の給料日、思いきって、典子の会社に電話をかけ、デートを申込むがあっさり断わられる。
あきらめ切れない彼は、金井ベアリングの店まで押し掛け、客を装って出て来た彼女を口説き落とそうとするが、店の中にいる社長(若宮忠三郎)の手前、努を友達と思われたくない典子は、適当に会話をごまかすばかり。

結局、努は、いりもしないオートバイ用のベアリングを一箱買ってしまうはめに。

ふて腐れて帰る途中の努は、こっそり、気になった典子が付いて来ているのに気づく。

怒った努は、その場にベアリングの箱を叩き付けるが、結局その行為が、二人の心を結び付け、互いに吹き出すのだった。

その後、典子の馴染みの歌声喫茶に出かけた努だが、店の雰囲気に馴染めず面白くない。
つい、テーブル上の「ピーナッツ自動販売機」から出したピーナッツを、歌っている歌手の顔にぶつけるいたずらを始める始末。

その後、今度は、努馴染みの居酒屋に典子を連れて行くが、今度は、典子が店の雰囲気に面喰らうばかり。
おまけに、努の悪友たちまで、店に入って来て、彼らを発見してしまうので、努は面白くない。

典子も、その場にいたたまれなくなって、ベアリングを努から買戻すと、帰ってしまうのだった。

そんな典子を待っていたのは、母親からの再婚の相談だった。
今日、正治から求婚されたと言うのだ。

しかし、自分の気持ちを、その承諾の判断材料にしようとする母親に、典子は反発を感ずるのだった。

一方、電車で帰宅途中だった努は、酔ったチンピラたち(阿知波信介)に絡まれていた綾子を発見する。
その横には、白井が座っていたが、彼は何も言い出せない。

周りの乗客たちも知らんぷりをしているのを観た努は、そこに近づき、緊急停車レバーに手をかけて、チンピラたちを追い払う事に成功する。

綾子は、そんな努を誘って、次の駅で降りて、ゴーゴー喫茶に入るのだった。

努は、あんなにだらしのない白井等と付き合っている綾子の気持ちが理解できなかった。
やはり、大学出という所が重要なのらしい。

綾子は、そんな努の問いかけに何も答えず、ただ踊るだけだった。

ある夏の日、自宅にいた努は、母親から仕事の手伝いを頼まれイラ付いていた。
その日は、彼の23回目の誕生日だったのだが、母親がすっかりそんな事さえ忘れていたからだった。

面白くない彼は家を飛び出し、仲間たちがいる会社の寮などへ出かけるが気持ちは晴れない。

そこで、急に思い立って、典子の自宅を訪ねてみる事にする。

しかし、自宅にいたのは、「ブルーシャトー」を合唱する一郎とその友達だけだった。
姉は、今日も仕事に出いていると言う。

そこで、青森から上京して来た親戚を偽って金井ベアリングへ電話をかけ、典子を呼出す事に成功する。

自動車修理工場に勤める友人の前田(柴田昌宏)に、車を用立ててくれないかと頼みに言った努だったが、ようやく貸してくれた車は、何と運搬トラックだった。

しかし、今の二人には、そんなドライブも愉快だった。

二人で海に出かけ、泳ごうと言う典子の言葉に従い、水着を買いに出かけた努は、戻って来て、典子の姿を見失う。

必死に彼女の姿を捜す努は、やがて彼女の姿を発見し怒るが、典子が彼に差し出したものは、彼女が海から拾って来たらしい可愛らしい貝殻数個だった。

先ほど電話で呼出した時、今日は自分の誕生日だと打ち明けていた典子の、それがプレゼントだと分かった努は、すっかり機嫌が良くなって彼女と思いきって泳ぎまくる。

岩場でくつろいだ二人は、互いの境遇について打ち明けあうのだった。
努は、4年前の自分も、今の弟と同じように、大学に生きたくて泣いた思い出、典子は、母親の再婚を許してやろうかと考えている事などを話す。

しかし、裸で一緒にいる自分達の今の状況に目覚めた典子は、急に怖くなって身を引いてしまう。

帰りは雨だった。

典子は、走るトラックの荷台に乗って、決して運転席に乗ろうとしない。

その理由が分からない努は、ヤケになって、荷台を傾け、車をとめると、そのまま立ち去ろうとする。

傾斜した荷台の上部にしがみついた典子は恐怖で叫びだす。

立ち去りかけていた努だったが、トラックを振り返ると、気分が高まり、走って帰ると、荷台に跳び移り、典子を滑り下ろして抱きとめると、二人は土砂降りの中、熱い接吻を交わすのだった。

すっかり、雨と泥で、汚れた格好になってしまったものの、何となく気分が晴れやかになって、自宅に戻って来た典子は、一郎が留守番していたはずの家の玄関に鍵がかかっている事に戸惑う。

すると、隣のおばさんが彼女に、母親が大変な事になったと知らせに来る。
慌てて、隣のテレビを観てみると、臨時ニュースが流れており、益子のバス転落事故で、乗客だった母の雅枝が亡くなったと報じているではないか。

一方、努の方も、家に帰ってみると、父親の様子がおかしい。
今日、頼りにしていた専務が辞めたため、自分も会社を首になったのだと言う。

もはや、一家を支える大黒柱は、自分しかいなくなった事を知った努は、そんな重圧を背負わされるのはごめんだと独白し、弟、博は、自分の大学受験の夢もついえたと荒れはじめ、努と大げんかを始める。

その様子を観ていた父親も、努に思わず出て行けと思わず怒鳴ってしまい、売り言葉に買い言葉で、努もそのまま家を飛び出す事になる。

益子の伯父の家に安置されていた母親の遺体に対面した典子は、伯父の口から、再婚の話は、母親の方から断わられたと聞かされる。
それほど、母親は、自分の事より、子供の事の方を気にかけていた事を知った典子は号泣するのだった。

今後の身の振り方を伯父から聞かれた一平は、伯父の元に世話になる事になり、典子は、川崎で、寮のある新しい勤め口を捜し、一人で頑張ってみると伝える。

友人、前田のアパートへ転がり込んだ努は、再会を約束していた典子が来なかった事に腹を立て、仲間と連れ立って野球場等へ気晴らしに出かけるが、面白くない。

鬱憤晴らしに佐々木(当銀長太郎)と悪所に出かけた努だったが、いざ、女と寝る時になり、脱ぎかけたシャツのポケットからこぼれ出た貝殻を見つけて、自分の愚かさを悟るのだった。

翌日、努は工場でミスを犯してしまう。
前夜、あれから、酒でごまかそうと飲み過ぎてしまったのが原因らしい。

しかし、理由とどうであれ、ミスをした工員の行き先は決まっていた。

「タン壺」と呼ばれているバンパー型抜き作業場、そこは、溶けた鉄を型に流し込んで鍛える辛い作業場だった。
今まで、先にミスを犯し、そこで働くようになったため、どこか見下していた井上(峰岸竜之助)に、逆に励まされる努だった。

そんな事は知らず、会社に訪ねて来た典子に、努は、母親が家に呼び戻しに来たのだろうと、会おうとしなかった。

翌日、再び、努の帰りを待っていた典子は、彼がミスを犯して配置替えになった事を聞き、自分も母親を事故で亡くして、会いに来れなかった事を打ち明ける。

しかし、前途に絶望した努は、彼女とのやり直しを考える余裕もなく、その場から逃げるように立ち去るのだった。

典子は、横浜ドリームランドという遊園地で子供相手の世話係を始めていた。
その事を記した短い手紙を努宛に送ったが、努はその後も会いに行こうとしなかった。

時々、前田のアパートを訪ねて来る母親に、少ない給料袋から生活費を渡す努。

そんな努だったが、アパート横に置いてあったトラックが荷台を上げた様を見ている内に、いつしかの典子との熱い抱擁を思い出し、やり直す事を決意する。

そんな努が自宅に帰ってみると、弟の博が、自立すると言って家を出る所だった。
そんな博を、努は暖かく見送ってやる。

その後、横浜ドリームランドの典子の元に、やって来た努の姿があった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

貧しい境遇にある若い二人を巡るラブストーリー。

夢が叶わないばかりか、不幸ばかり訪れ、絶望する二人だが、その不運を、二人の愛で乗り越えようとする展開は、日活の青春ストーリー等でもお馴染みのパターン。

当然ながら、主役を演じている酒井和歌子も黒沢年男も若い。
黒沢は、クリクリした大きな目が印象的な陽性の青年だし、ワコちゃん(酒井和歌子)も、お肌ピチピチ。まだあどけなさが残る少女といった感じ。

若いと言えば、ワコちゃんの母親を演じている森光子も、ドラマ中では40才と紹介されており、まだ顔の張りもあり瑞々しい。

対称的に、貧しい家の主婦を演じさせたら天下一品の菅井きんは、この頃から年齢不詳というか、今とあまり変わらないようにも見える。

ワコちゃんの爽やかな弟を演じているのがシャア(池田秀一)、黒沢年男の弟を演じているのが本当の弟、博。

黒沢博、ヒロシ&キーボーで「3年目の浮気」を歌っていた事は知っていたけど、兄貴と一緒に映画にも出ていたとは…。

兄弟ゲンカのシーンでは、二人のアップが重なるが、さすがに本当の兄弟だけあってそっくり。

電車の中で、黒沢と喧嘩しかかるチンピラが、ソガ隊員(阿知波信介)、野球場で、黒沢ともめそうになるのが一平君(西條康彦)、黒沢が家に帰って来た時、テレビの音だけが聞こえていて、それがどう聞いても「ウルトラQ」の「カネゴンの繭」の後半部分。

この辺はやっぱり、黒沢が「海底原人ラゴン」に出ていた関係か?

後、おそらく、タイアップなのではないかと思うが、同じくテレビから流れて来る「資生堂MG5」のCMの音で、この当時から、男性化粧品MG5が売られていた事が分かる。

登場場面は少ないが、黒沢と後半、同じ職場になる峰岸竜之助(=徹)も、そのギラギラした目付きが印象に残る。