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黒い花びら

1960年、東京映画、川瀬治+原島正夫脚本、瑞穂春海監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

銃声が響き、撃たれた男(黒岩竜彦)の死体を川に捨てる男たち(堀江幹二、阿部博)の姿。

それは、仲間を裏切ったヤクザが始末された殺人事件だった。
翌日、その被害者の母親が身を置く安アパートに新聞記者たちがたかっている。

故郷の家をたたみ、息子と暮そうと上京して来た母親に、残酷な質問を突き付ける記者たち。

そういう取材に注意する男が一人戸口に現れる。
同じアパートに住む並木弘(水原弘)だった。

そんな並木が自室に戻ると、外から彼の名前を呼ぶ声が聞こえる。
近所の小学生、新二(島米八)が友達を連れて遊びに来たのだ。

新二は、並木を尊敬しているらしく、いつもアパートに遊びに来る。
その時聞かせた、満州からの引揚時の話が気に入ったらしく、それを友達にも聞かせたかったらしい。

並木は、自分が子供で満州から引き上げて来る時、匪族に襲われ、両親を亡くした時のエピソードを西部劇調で面白おかしく聞かせてみせる。

新二が、そんな並木に親近感を覚えているのは、自分も幼い頃、大阪の親戚の家に里子に出されたため、今、実の両親と暮していても、今一つ、しっくりいっていなかったからであった。

今日も、不機嫌そうな母親(菅井きん)と、守衛の夜勤に出かける父、雄作(織田政雄)から、ガラクタばかり拾って集めている新二は叱られてしまう。

兄嫁まさ江(麻生鮎子)までもが新二の悪癖を注意する始末で、新二にとって、家の中には理解者が一人もいず面白くないのだ。

一方、並木は、バーテンとして勤めているキャバレー「グランドパレス」の踊り子たちに、化粧品をセールスしていた恋人の光子(水野久美)を表に呼出し注意する。

しかし、光子は、並木との結婚への憧れに幸せいっぱいで、そんな小言も気にならない。
近々、二人で住む家を見に行こうと約束する二人だった。

そんなある日、いつものように遊びに来た新二が、並木に、自分の宝箱を預かってくれと持って来る。
拾い集めたガラクタが詰まったものだが、新二にとっては「宝物」だったのだ。
そんな気持ちを察して、並木は快く預かってやる。
新二の方も、光子が買ってくれたプレゼントを並木から渡され、帰り道で出会った出勤途中の光子に礼をいうのだった。

その後、家賃7000円という借家を見に行った並木と光子は将来の夢を語り合うが、その仲の良さには、付き添った周旋屋(中村是好)さえ照れて側に近付けないほどだった。

そんな並木の部屋に、ある日、旧知の中西(川合伸旺)が黙って上がり込み、新二と親し気にしている様子を観て不機嫌になる。

並木は、泊めてくれという中西の申し出を拒絶するが、中西は、恋人の光子に昔の事をばらされても良いのかと脅して来る。

その後、訳ありげな中西は、並木のアパートの近所にある東和製機という工場の様子を見に行くが、そこで守衛長の父親に弁当を持って来た新二と出会い、彼の父親がここで働いている事を聞くと、その偶然にほくそ笑むのだった。

実は、明後日、その会社のボーナス1000万円が運び込まれて来る事になっており、中西たちは、その強奪作戦を練っていたのであった。

翌日、仕事中の並木を外に呼出したのは、かつて、ふとした事から彼の仕事の手伝いをさせられてしまったギャングたちとそのボス(太宰久雄)だった。

ある事件の見張りと運転手をやらされた並木は、それを警察に知らせたため捕まり、その事を根に持つギャングは、再び彼を仲間にしようと持ちかけて来たのであった。

中西がいうには、新二の父親から、守衛の服を借りて来るだけで良いのだという。

しかし、どうしても仲間に戻らないと言い切る並木をギャングたちはその場で痛めつけるが、その様子を近くで偶然観たのは、光子と同じパン屋の二階で同居している同僚の愛子(奥村恵津子)だった。

アパートへ戻った並木は、遺骨を抱いて郷里に帰るあの息子をヤクザに殺された母親に出会い、心ばかりの餞別を送る。

その亡くなった哀れな男に自分の今を重ねた並木は、遊びに来た光子に、いきなり、東京が嫌になったので、北海道へ行って何もかも新しく始めようと言い出す。

間もなく二人だけの借家暮しが始まると楽しみにしていた光子は、突然の並木の言葉に驚き戸惑い、訳を話して欲しいと問いつめるが、並木はそれには答えず、今までの事はなかった事にしても良いなどと、冷たい言葉を返すのみ。

そこへ中西がやって来たので、いたたまれなくなった光子は帰ってしまう。

帰宅した光子は、並木の突然の心変わりに絶望、憔悴するが、その様子を見かねた愛子は、今日目撃した並木の様子を話し、あの人は、昔の悪い友達の誘いを断わる勇気ある人なんだと勇気づける。

翌日、グランドパレスで、一人ピアノを弾きながら「黒い花びら」を歌っていた並木の側へやって来た光子は、もう理由なんか聞かない、自分はあなたにどこまでもついて行くと伝えるのだった。

その頃、ギャング団たちは計画を実行していた。

手に入れた守衛の服を着て、会計係の護衛として一緒に銀行にやって来たギャングたちは、銀行から1000万を引き出した会計係からカバンを奪うと、そのまま深川方面に逃亡する。

そのギャングたちは、何も知らない並木のアパートへ入り込んで来る。

しばらく警察の目をくらませるためのアジトにしようというのだ。

一方、中西から、貸した父親の守衛服を返してもらった新二は、こっそり、その服を元のタンスへ戻しに帰るが、その日、風邪で会社を休んでいた父の元へ、会社から給与強奪の知らせが入っていた。

やがて、刑事たちもやって来て、雄作から事情聴取しはじめた様子を観ていた新二は、どうやら、今度の事件の責任を取らされて、父親が首になるかも知れないという事実を知る事になる。

あれほど信頼していた並木に自分が騙されていたと思い込んだ新二は、すぐに並木のアパートへ出かけると、預けていた宝箱を返してもらうのだが、もうそんな宝箱への執着すら失せ、河原で投げ捨てるのだった。

ところが、壊れたその箱の中から大量の札束が転がり出る。

そんな事とは知らず、光子と北海道へ出かける駅で待ち合わせの約束をしてアパートへ帰って来た並木は、部屋をギャングたちが荒し回っている姿を発見する。

どうやら、新二に返したあの箱に、ボスがこっそり、強奪して来た大金を隠していたらしいのだ。

中西に付き添われて、新二の自宅を訪れた並木だったが、風邪で床に臥せっていたはずの新二の姿はなかった。

彼らがやって来た気配を感じ、札束の詰まった箱を抱えて逃げ出したのだ。

中西らギャングたちは、並木も車に同乗させ、町中を捜しはじめる。

その頃、上野駅では、光子が二人分の切符を持ったまま、やって来ぬ並木を待ち続けていた…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

第一回日本レコード大賞を受賞した大ヒット曲を元に作られた歌謡映画。
上映時間は比較的短い。

歌手だった水原弘は、この作品以外にも、役者とした何本か映画出演をしている。

いわゆる、「無垢な子供を絡めたサスペンスもの」になっている。

キャバレーが登場する設定でありながら、水野久美が踊らず、全編、純朴な女を演じているのも珍しい。

新二の母親役を演じている菅井きんが、貧困でぎすぎすした性格になった雰囲気を良く醸し出しており、印象に残る。

ギャング団のボスを演じている太宰久雄は、「男はつらいよ」シリーズのタコ社長として有名だが、この作品は、彼の映画出演作としてはかなり初期のもの。

かなり肥満が目立つ独特のキャラクターになっている。

通俗サスペンスといってしまえばそれまでだが、コンパクトに纏まっているし、後味も悪くない。