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恋の季節

1969年、松竹大船、田波靖男脚本、井上梅次監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

守谷洋子(奈美悦子)、幸子(早瀬久美)姉妹は、練馬区でつましく両親と暮す高校生、洋子の唯一の自慢は、人気アイドルのピンキー(今陽子)が、クラスメイトで大の仲良しである事。

今日も、ピンキーのヒット曲「恋の季節」に合わせて、姉妹が踊っている。
3年で卒業間近な洋子は、4月から会社勤めを始めるというのに、まだのんきなままなので、母親(月丘千秋)はつい小言をいってしまうが、当の洋子は、今日、ダンパに来て行く服をピンキーに借りに出かける。

一方、そんな洋子が遊びに来たピンキーのマンションには、朝からバスに乗ったキラーズ(パンチョ加賀美、エンディ山口、ルイス高野、ジョージ浜野)の面々が迎えに来て、何か喰うものをくれとピンキーにねだる。

一方、ホテルで開催された東西大学のダンスパーティに出向いた洋子だったが、奥手の彼女たち高校生グループは壁際の花状態になってしまい、なかなか相手を見つける事が出来ない。

そんな洋子に声をかけて来たのは、さっきまでバンドのドラムを叩いていた青年、安村圭介(森田健作)だった。

洋子が、踊りが出来ないのかと教えはじめた圭介だったが、そんな心配を吹き飛ばすように、洋子は達者なゴーゴーを見せ始める。先ほどまでは、ちょっと場の雰囲気に飲まれて畏縮していただけだった。

その後、圭介の車に向った洋子は、彼の車というのが、スポーツカーではなく、楽器を運ぶために購入したというライトバンであったのにちょっぴりがっかり。

さらに、乗り込んだ洋子に対し、いきなり圭介がキスをして来たので、洋子は思わず車から降りて逃げ出してしまう。

そんな洋子が、追い掛けて来る圭介から隠れるために、たまたま無我夢中で後部座席に飛び込んだ他人の車に、すぐ後から見知らぬ男女が運転席に乗り込んで来てしまったため、洋子は降りるに降りられなくなってしまう。

しかも、運転席に乗って来た男女は、濃厚なキスをしているではないか。

仕方なく、洋子は、その二人が向った女の自宅前まで、姿を忍ばせて同乗して行くはめになる。
その後、女を家に送り届けて車に戻って来た男に、黙って乗り込んだ事情と詫びを行った洋子は、ここが田園調布である事を聞くと、自分の家がある練馬区とは離れているのかと聞く始末。

仕方なく、練馬区まで、洋子を送り届けて来たその男は、洋子の自宅はどこかと尋ねて来るが、用心深さと羞恥心から、洋子は、たまたま見つけた「松下」という豪邸の前で下ろしてもらう事にする。

さらに、車から降りて来そうな気配だった男に驚いた洋子は、見知らぬその豪邸の門の中に、さも自宅であるかのように勝手に侵入してしまう。

ようやく、男の車が立ち去った後、門を出ようとした洋子であったが、番犬が、彼女のスカートに噛みついてしまい、とうとう、彼女のスカートはずたずたにされて自宅に戻る。

それを見た母は、てっきり、痴漢に乱暴されたと思い、父親(牟田梯三)を呼び、二人でおろおろしてしまうが、洋子はそんな二人の様子に逆に呆れて訳を話す。

そんな洋子は、出席日数が足らず、追試を受ける事になったと学校から通知が来る。
同じく、追試を受けるのは、仲良しのピンキーと二人きり。
これで、互いに答えが見せ合えると机を隣り合わせて喜んでいた二人だったが、監視係の先生(ミッキー安川)がやって来て、二人の席を話したのでがっかり。

それでも、洋子は、鏡を使って、自分の書いた答えを後ろにいるピンキーに見せようとする。

ところが、それを見たまま書き写したピンキーの答えは鏡文字になっていたためチンプンカンプン。
途中で、居眠りをしていた教師は、洋子の鏡に反射した光で目が醒め、何となく違和感を感じて、ピンキーの答案を覗き見ると、訳が分からない文字が書いてあるので、自分が高血圧でおかしくなったと思い込み、そのまま医務室へ行ってしまう。

こうして無事追試を終えたピンキーを、パンチョたちがバスで校庭に迎えに来ていた。
今日は、新宿のジャズ喫茶でこれから演奏があるのだ。
それについて行った洋子は、再びそこで圭介と再会する。
圭介の方は喜ぶが、洋子の方はあまり嬉しくない。

それでもその後、何となく彼女について来た圭介は、途中で洋子の母親と出会い、そのまま図々しく自宅まで上がり込む。
たまたま、風呂場の蛇口が壊れたというので、それを修理している所に父親も帰宅。

圭介も交え、全員で夕食を食べているとき、テレビでピンキーの歌を見ていたら、画像の調子が悪い。

父親が、近所に高層マンションが出来てから写りが悪くなった、という言葉を聞いた圭介は、電子工学を学んでいるというだけあって、すぐさま、それだったら、アンテナの向きを変えれば直るはず、と率先して屋根に上って修理を始める。

おかげでテレビはすぐに直ったが、足を滑らせた圭介が屋根から落ちる際、雨樋を壊してしまったので、父親はかえって高くついたとため息をつく事に。

その後、入社予定の山崎商事で身体検査を受けた洋子は、帰り際、以前、車で送ってもらった中年男と出会う。

このビルに用事があるのかと洋子が聞くと、男は何となく言葉を濁すが、後でホテルで会おうと約束して別れる。

実は、その男は、山崎商事の総務部長黒川(入江保則)だった。
彼は、会社のエレベーターガールや、営業の女性社員とも関係しているプレイボーイだったが、表面的には、社長(内田朝雄)の娘、奈津子(松岡きっこ)の婚約者として、将来、社長の後を継ぐ男として知られていた。

先日、車でキスをしていたのは奈津子だったのだ。

今日も、その奈津子とホテルで抱き合っていた黒川だったが、洋子との約束の事は忘れかけていた。

そんな事とは知らず、同じホテルのロビーで、黒川の来るのを待っていた洋子は、一旦帰りかけるが、見覚えのある黒川の車が駐車しているのに気づき、その後も待ち続ける。

ようやく黒川とロビーに降りて来た奈津子は、知り合いの歌手のジャッキーとその取り巻き連中に出会い、赤坂のゴーゴークラブに誘われたので、そのまま黒川に別れを告げ去って行く。

その後、車に戻って来た黒川は、洋子が待っていたのに気づき驚く。

そのまま車でドライブに出かけた二人、しきりと自分の素性を聞き出そうとする黒川に対し、洋子はつい、自分も何人もの男がいるプレイガールだなどと嘘をついてしまうが、ホテルに誘おうとする黒川には応じなかった。

その後寄ったとある郊外のレストランで、洋子は、ジュークボックスにあったピンキーの新曲をかける。
そんな洋子に黒川は愛を告白するのだった。

喜んだ洋子は、その後二人で向った海辺で「恋の季節」に合せ、いつまでも踊る。

その日も、黒川から松下家の家の前まで送ってもらった洋子だが、又、犬に襲われるのを恐れて、今日は近所にある別のマンションに帰ると言い出す。

ところが、洋子が車から降りた後、スカーフを忘れている事に気づいた黒川は、そのマンションンに入ろうとするが、管理人にここには「松下」などという住人はいないと追い返されてしまう。

その様子を、洋子はマンションの屋上から見守るのだった。

黒川との恋に浮かれ気味の洋子に、ピンキーは、ちょっと疑問を投げかける。
相手の言葉が本物かどうか疑わしいし、洋子の気持ちも本当の恋なのかどうか分からないというのだ。

それからしばらくして、幸子と圭介と一緒に、かねてから予定していたスキーに出かけた洋子は、宿泊先で、たまたまグラビアの仕事できていたピンキーとキラーズに再会、さらに、先日、車の中で、ここに来る事を打ち明けていた黒川もやって来たのを目撃する。

嬉しくなった洋子は、夜、部屋から黒川を呼出し、明日の朝6時に山頂で会いましょうと約束する。

翌朝、一人で山頂に向った洋子は、本当にそこで待っていてくれた黒川の姿を発見、感激する。

一面の雪の中で交わされるはじめての口づけ。

スキーから帰って来た後、頻繁におめかしして出かけるようになった娘の洋子を心配した母親は、どこに出かけているのかと聞くが、それに対し洋子は、圭介と遊んでいると答えて出かけてしまう。

しかし、その直後、当の圭介が自宅に訪ねて来る。

母親から訳を話された圭介は、洋子の後を追う事になる。

バスで池袋に向った洋子を、タクシーで追い掛けた圭介は、黒川の車に乗り込む洋子の姿を目撃する。

再び、海辺にやって来た洋子は、いきなり黒川から押し倒される。

彼女の名字が松下ではない事や、マンション住まいではない事を知った黒川は、彼女が自分でいうようなプレイガールなんかでもない事を見破って、彼女の本当の正体を知ろうと挑んで来たのだった。

その夜、帰宅した洋子を呼び止めた父親は、彼女が真面目な付き合いをしているのかどうか確認し、優しく行動を注意するのだった。

やがて、黒川は常務に任命され、個室を持たされる事になる。
もう、奈津子と社長のロボットにされたも同然であった。

そんな中、人事部長(柳沢真一)から渡された今年度の新入社員の履歴書を確認していた彼は、その中に、洋子の写真を発見して驚愕する。

その黒川に面会に来た男がいた。

圭介だった。

彼は、洋子が付き合っている男が黒川だという事を突き止め、結婚する気がないのなら、洋子と付き合うなといいに来たのだった。

そんな中、洋子は、ピンキーらと共に高校の卒業式を迎える。

その後、久々に、馴染みの郊外のレストランで食事をした黒川は、洋子に別れを告げるのだった。
一人、涙に暮れる洋子。
静かにその場を去る黒川。

一方、結婚が決まった黒川に対し、奈津子は、今付き合っている会社のエレベーターガールや営業の女は、すぐさま首にしてくれと言い出す。

そして、山崎商事に入社した洋子は、挨拶に寄らされた常務室で、黒川の姿を発見、ショックを受け、その場から逃げるように廊下に走り出る。

それを慌てて追って来た黒川は、すぐに会社を辞めるという洋子を必死で止めようとするのだが、その騒ぎをたまたま見ていた奈津子は、二人の関係を察知し、すぐさま、そんな女は辞めさせろと命令する。

そんな奈津子のわがまま振りに堪忍袋の緒が切れた黒川は、自分が会社を辞めると宣言する。

その言葉に驚く洋子に対し、黒川は、人生をやり直すために、友人から誘われていた別の商事会社に入り、ブラジルに行くつもりだと打ち明けるのだった。

その後も、どうしても黒川の事をあきらめ切れない洋子は、自分も彼についてブラジルに行く決心をし、圭介と共に羽田に向うのだった。

しかし、出発間際だった黒川に声をかけたのは、一瞬早く、奈津子の方であった。

彼女は、自分のわがままを反省し、すっかり人が変わったように黒川に従順になっていた。
これからも自分について来るという奈津子の言葉に頷いた黒川は、晴れやかな顔でブラジルへ出発する事になる。

その様子を離れた所から見ていた洋子は、所詮、自分は相手にされていなかったのだと気づき、思い出の海岸に行くと、二人の恋の象徴だったスカーフを海に捨てるのだった。

しかし、そんな彼女を追って来た圭介の姿を見つけた洋子は、明るい表情を取り戻して踊り始める…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

1968年度日本レコード大賞グループ新人賞を受賞した、ピンキーとキラーズの大ヒット曲「恋の季節」を元にした歌謡映画。

一見、ピンキー主演のアイドル映画のようだが、実は、奈美悦子主演の失恋ドラマになっている。

ピンキーは売れっ子らしく、エピソードの所々で、ちらっと顔を見せているゲスト的扱い。
後は、テレビ画像やジュークボックスから流れる音楽という形で歌が流れるだけなのだが、当時、いかにピンキーが人気絶頂であったかは、エキストラと思しき素人衆が出ているシーンで分かる。

高校に追加試験を受けに来たピンキーが、迎えに来たキラーズの面々とバスに乗り込もうとするシーン。

グラウンドには高校生役の女の子が数人ピンキーを取り巻いているのだが、彼女たちは、本当の素人らしく、演技ではなく、実際にはしゃいでいる。

スキーのホテル内で、サインをねだっている客たちも、本当の素人ファンのようで、皆、見るからに浮ついている。

体格の良いピンキーのニックネームが「関取」だった事を、この作品を観ていて思い出した。

ストーリー的には、「♪夜明けのコーヒ〜 二人で飲もうと〜♪」という曲のイメージに合せようとしたためか、卒業間近の女子高生がプレイボーイの中年男性と恋に落ちてしまうという、ちょっと大人向けというか、アイドル映画にしては、かなりノリにくい展開になっている。

ノリにくい原因は、メインの二人の恋が何となく不純っぽく感じてしまう事もあるのだが、奈美悦子と入川保則という二人のキャラクターが、共に何となく「華がない」ためだと思う。

奈美悦子は、西野バレエ団出身の歌って踊れる新人としてマスコミに登場した一人だが、同期の由美かおるや原田糸子らに比べると、ちょっと大人っぽく見える分、人気的には二番手、三番手的なイメージがあり、容貌も、取り立てて「美人」というほどの人でもなく、今一つ、主役を張るようなタイプには見えにくい。

さらに、そのお相手が、こちらもどこか中途半端な二枚目風のおじさん役者では、恋の展開に魅力を感じないのだ。

画面的には、タイトルで(新人スター)と紹介されている森田健作や、奈美悦子の妹として出ている早瀬久美の方が輝いて見えるのだが、その二人が脇扱いでは、盛り上がるはずもない。

ただし、これはあくまでも、キャスティングや企画に問題があるのであって、役者本人に何等落ち度がある訳ではない。

逆に考えると、映画的には主役タイプでも脇役タイプでもなかった奈美悦子が、今、テレビのバラエティ番組などで活躍している姿を見ると、良く、自分の個性のポジションを見つけだしたものだと感心してしまうくらい。

ダンパのシーンで、いきなり踊り出す彼女の動きのキレには、今観ても驚かされる。
本当に彼女は踊りが巧かったのだと、改めて思い知らされた。