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恋は五七五!

2004年、東北新社、シネカノン、S・D・P、萩上直子脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

高山治子(関めぐみ)は、母校松尾高等学校が甲子園を目指して戦っている試合をあまり興味も持たず見に行くが、一点リードの最終回、逆転ホームランを打たれ、あっさり敗退する瞬間を目撃する。

その応援席には、チアガール部の中でも異彩を放っていた肥満女子内山マコ(小林きな子)と、ブラスバンド部にも、異色のウクレレ奏者の自称ピーちゃんこと田中弘美 (蓮沼茜)が参加していた。

実は、松尾高校、後2年で統廃合され、なくなってしまう運命にあった。

学校長(もたいまさこ)は、写真部の顧問だった高田先生(杉本哲太)を呼出し、何としてでも、学校の名前を後世に残すため、全クラブに、ありとあらゆる試合に出てもらい、優勝を果たすと言うとんでもない野望を聞かせる。

高田先生に指名されたのは、全く経験のない俳句甲子園出場の指令だった。

その頃、学校の廊下では、内山マコが、男子生徒から、足を引っ掛けられ転んだ所を、胸を鷲掴みにされると言う、悪質ないたずらの餌食になっていた。

それを目撃した治子は、むかつき、その男子生徒を、背負い投げで投げ飛ばしてしまう。

その様子を観て、いっぺんに治子に心酔したのがピーちゃんだった。

しかし、そんな正義感溢れる治子にも弱点があった。

帰国子女であったため、英語には強いが、感じがからきしダメで、日本語の文章はひらがなでしかかけないと言うもの。

国語担当の洋子先生(高岡早紀)は、そんな彼女の日本語教育の一環として、俳句を始める事を勧めるのだった。

一方、チアガール部では、内山マコが、他の女子生徒から、「男子からクレームが来ている」という理由で、いきなり解雇を言い渡されていた。

絶望した内山は、校舎の屋上から身を投げようとするが、怖さのあまり、縁にへばりついてしまう。

そんな彼女に、「何か、死ぬ前に言い残したい事は?」と言葉をかけて来たのは、こっそり屋上にタバコを吸いに来ていた写真部の土山義人(細山田隆人)だった。

その思わぬ問いかけに、即興で答えた文句が、偶然にも575になっていたので、土山は「辞世の句だ」と感心する。

その土山は、かねてより、治子のことが好きで、いつも、彼女の姿を遠くから写真におさめていた。
その現像を暗室で行っていた彼を呼びに来たのは、顧問の高田先生、何でも、部会を開くと言う。

部会と言っても、写真部員は自分一人だけのはずだが…と、怪訝に思いながら、部室に行ってみると、見知らぬ男子生徒と憧れの治子がいるではないか!

高田先生から訳を聞いた3人だったが、いきなり俳句等と言う年寄り臭い趣味を押し付けられた上に、俳句甲子園に出場する5人一組が規定人数すらいない現状に呆れてしまう。

前に来ていた男子生徒は、甲子園を目指して野球部に入ったものの、万年補欠というだけではなく、「お〜いお茶」の俳句コンテストに何度も投稿するほどの俳句マニアでありながら、今だ一度も採用された事すらないと言う山岸実(橋爪遼)だった。

全くやる気のない治子は、これでは参加人数も揃わないと、すぐにその場を立ち去ろうとするが、そこへやって来たのが、先ほどの出来事で、すっかり土山のことを好きになってしまった内山マコと、治子に憧れて入って来たピーちゃんだった。

治子や土山の希望とは裏腹に、何と、俳句甲子園出場規定メンバーが揃ってしまったのだ。

その瞬間から、彼ら五人は、山岸や高田先生の指導の元、全く興味もなかった俳句と言うものを一から教え込まれる事になる…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

ダメな学生たちがひょんな事からチームを作って、エリート選手たちのチームと戦う事になるが、はたしてその結果は…?という、いかにもありふれたスポーツドラマパターンを、俳句と言う文科系素材に置き換えた異色青春映画。

はっきり言って、単に素材が変わっただけで、展開そのものは良くあるパターン通りではないかという気がしないでもないし、俳句の優劣をつけると言う試合の行方も、素人には分かりにくい。

画面上は、審査員たちが白旗、赤旗を揚げて、どちらの学校チームが優秀だと思うか決定するのだが、そもそも、各々のチームから提出された俳句そのものの優劣が観客にとってピンと来ないため、旗の数の多さだけでは、勝った負けたという実感に繋がらないのだ。

だから、勝ったとしても、観ている方にはあまり爽快感がない。

そうした細かい事を抜きにして、単純な青春ドラマとして観れば、可もなく不可もなく、ごく普通に楽しめる、何やらコミックの映画化のような軽い雰囲気のドラマである。

俳句甲子園優勝常連校の顧問を演じているのは嶋田久作、そのメンバーでキャプテンを勤めている、いかにも嫌味なエリート学生といったキャラクターを演じているのは、「運命じゃない人」で主役を演じた中村靖日。

主要メンバーたちのキャラクターも、何やら良くあるパターン通りと言う中で、一番印象に残ったのは、ウクレレというちょっと脱力系の楽器を手放さないロリコン系のピーちゃんの調子っぱずれさ。

ヒロイン役の関めぐみが魅力的かどうかは、ちょっと微妙な感じ。

典型的な可愛い子ちゃんとか、ずば抜けた美少女という風には見えないので、地方の男子が憧れそうな、リアルなレベルの少女と言えるかも知れない。

取り立てて、感動すると言うほどでもないが、嫌みのない、素直な作品ではある。