1963年、日活、下飯坂菊馬+田坂啓+吉田憲二脚本、野村孝監督作品。
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ゴルフのショットからタイトル。
土手沿いの道を、後ろに、町医者である父(信欣三)を乗せて自転車をこぐ三原ひかる(吉永さゆり)。
森田製作所の工場内にサイレンが鳴り響き、男子工員たちが一斉に一室に集まる。
好例の社内検診なのだが、彼らのお目当ては、可愛い看護婦のひかる、通称ピカちゃんであった。
何とか、彼女の気を惹こうと、あれこれ仮病を申告する工員たち。
そんな中、親し気に口を聞いてきたのは、ひかると同じ定時制高校に通う工員、木村勝利、通称カッちゃん(浜田光夫)だった。
同じ頃、道路をひた走る「日の出貨物」のトラックの運転席では、トランジスタラジオから聞こえて来る「潮来笠」に合わせて名調子で歌う運転手の岩下留次、通称トメやん(橋幸夫)に、今日は、わが町の太陽三原ひかるが来る森田製作所の診療がある日だから、工場へ寄ってくれと頼む、助手の金造(野呂圭介)の姿があった。
金さんがその娘に気があるらしい事を察し、自分もちょっと興味を持ったトメやんは、承知したとばかり、猛スピードで曲り角を曲るが、それに煽られて転倒した自転車に乗っていたのが、当のひかると父親だった。
気が強いひかるは、猛然と、曲り角で徐行しなかったトメやんを怒鳴り付けるのだった。
その気の強い娘に言い返そうとしたトメやんを必死に止めるのは金三。
その言葉で、トメやんは、始めて、その娘が「わが町の太陽ピカちゃん」その人である事を知る。
その後、森田製作所に入って来たトメやんの車に危うく弾かれそうになったのが、工作機械の調子が悪くなったため整備係りを呼びに外へ飛び出した勝利だった。
今度は、トメやんの方が先に勝利を怒鳴り付け、つい気後れして謝ってしまった勝利を、案外気が弱い男だと見抜いてしまう。
夕方、夕食の準備を済ませて、馴染みの住職、玄海(中村是好)と碁に興じていた父親に、この後予定されている三軒の往診を忘れないようにと念を押して学校に出かけるひかる。
その姿を観て、感心したのは玄海だった。
実は、栄養失調状態の孤児だったひかるを拾い、医師の三原に幼女として預けたのは玄海だったからだ。
いわば、三原と玄海は、共にひかるの育ての親といっても良かった。
一方、やはり定時制高校に行く途中、辞書を忘れた事に気づき、家に取りに帰った勝利は、弟の和平(市川好郎)が一人で食事の準備をしている姿を発見する。
内職をしている母親が、部品を取りに出かけたと言う。
彼らの父親は、山師と言うか、うさん臭いブローカーまがいの仕事をして、家族や母親に迷惑ばかりかけどうしだったため、ある日、勝利と大げんかをして、そのまま行方不明になっていたのだが、その父親が、最近又東京に買って来たらしいと言う和平の言葉を聞き、勝利は不機嫌になる。
彼は、いまだに、どうしても父親を許す事が出来ず、二度とこの家の敷き居はまたがせないと誓っていたからだ。
その後、学校へ戻りかけた勝利の自転車がパンクしてしまう。
それに気づいたのが、たまたま貨物会社がそばにあったトメやんだった。
彼は、以前、森田製作所で怒鳴った青年が、定時制の学生だと知り、感心して、洗ったばかりのトラックに乗せて学校まで送ってやる。
無事学校に間に合った勝利は、担任の黒木先生(内藤武敏)から、働く者の権利等を学ぶが、授業後、現実にはそんなものはない。自分は、こんな夢のない所で一生職工として終わるのではなく、一流会社のサラリーマンとして出世したいと、ひかるを相手に夢を語るのだった。
それに対しひかるは、この町にいても夢はあると主張し、同じクラスのアキちゃんこと秋子(松原智恵子)や他の級友たちも、そのひかるの言葉に賛同するのだった。
そして、全員揃って「寒い朝」を合唱しながら帰宅するのだった。
帰宅した勝利は、和平が、他の子供達がみんな持っているローラースケートを欲しがっている事を母親から聞かされるが、遊び道具を買う金等出せないと突っぱねる。
翌日、工場の仲間たちから、今夜、歩合引き上げの相談をするから残ってくれと言われた時も、学校を理由に断わる勝利。彼は、このままズルズルと工員の生活に馴染んで行く事に興味が持てなかったのだ。
ある日、三原医院に、指を怪我したと言う金造を連れたトメやんがやって来る。
実は、金造がひかるに会いたかったためというのが分かり、急にひかるは無愛想になる。
しかし、トメやんは、この病院が、貧しい患者からは治療代も取らず、仕入の薬代さえ苦労していると言う言葉を待ち合い室から聞き、急に義侠心を出して、自分の退職金をこの病院に寄附すると言い出す。
その後、そんなさっぱりした所のあるトメやんと三原父娘は意気投合するのだった。
学校でローラースケートも出来ない和平は、友人二人と何とか金を作る手立てはないかと考え、河原でやっているゴルフのロストボールを拾いに行くが、キャディに見つかり逃げる内に、道ばたでばったり懐かしい父親(織田政雄)と再会するのだった。
食堂でラーメンを食べさせてもらいながら、近況報告をしあった二人だが、父親の方も、家にこのまま戻るには勝利に気兼ねがあるらしく、もう一山当てて、纏まった金をこしらえたら戻ると和平に伝える。
そんな事は知らない勝利は、学校で、かねてから狙っていた東洋物産の営業職の募集が貼り出されたのを観て張り切るのだった。
成績も良い勝利なら大丈夫だろうと、黒木先生をはじめ、他の教師たちも喜んで太鼓判を押してくれる。
そんな中、紡績工場で働いていた秋子が喀血したという噂がクラスに飛び交う。
もともと身体が弱いのに、母親と弟という母子家庭で育った秋子は、無理をし過ぎていたのだった。
そんな秋子を見舞った黒木先生とひかるは、できるだけの援助はするから、安心して養生するように慰める。
翌日、秋子のために、江南区の福祉事務所に寄っていたひかるは、たまたま通りかかったトメやんから声をかける。
事情を聞いたトメやんは、あちこち駆け回っていたひかるをトラックに乗せてやるのだった。
そんなトメやんがやけに機嫌がよくトラック洗浄をやっていた姿に気づいた金造は訳を聞くが、今日はひかるの誕生日で、その誕生会に招かれたのだと言う。
土産持参でうきうき気分で三原医院に到着したトメやんを出迎えたのは、ひかるだけではなく、近所の子供達だった。
さらに、少し遅れて、勝利までやって来たではないか。
勝利の方も、トメやんも招かれた事を知り、ちょっと機嫌が悪くなる。
互いに、ひかるへのプレゼントの品定めなど牽制しあうが、最後は二人とも唄を歌って仲良くなるのだった。
そんな二人を送って外に出たひかるは、自分の不幸だった子供時代を話して聞かせる。
その後、飲み屋で飲み直していたトメやんと勝利は、今後互いにひかるに対しては、デモクラシー「対等」にアプローチしあおうと誓いあうのだった。
上機嫌で帰宅して来た勝利だったが、家の中でローラースケートしている和平の姿と、卓袱台の下に落ちていたタバコの空き箱から、父親がこっそり帰って来て、弟にローラースケートを買い与えた事を知る。
勝利は、4年前、母親が肺炎で苦しんでいるのに、芸者を揚げて遊んでいた父親が憎くないのかと、もう忘れて許してしまったような母親に詰め寄るのだった。
やがて、やって来た入社試験日。
朝、家を出ようとする勝利に、プレゼントを持って来てくれたのはひかる。
会社について、待機時間中、ひかるからのプレゼントを開けてみた勝利は、へそに貼ると落ち着くと言われる「梅干し」が入っていた。
その梅干しのおかげで、勝利が無事試験を終えたある日、
その日は三原医院の休診日と言う事もあり、外出しようとしていたひかるの前にやってきたのは、トメやんと彼の母親という老女(飯田蝶子)。
自分は仕事で時間が取れないので、代わって東京見物に連れて行ってくれないかと言うのだ。
喜んで老女を東京見物に連れ出したひかるに同行した勝利は、母親を使ってアピールしようとするトメやんの作戦をデモクラシーに反すると不機嫌になるのだった。
帰宅した勝利を待っていたのは、東洋物産からの「不採用通知」だった。
直接、会社の人事課長に事情を聞きに行った黒木先生は、「定時制の生徒は世間ズレしているから」という理由を聞き出し愕然とする。
落ち込む勝利を励まそうと、飲み屋に誘い、唄を歌って盛り上げようとしたトメやんだったが、それが逆効果になり、いたたまれなくなった勝利は店を飛び出してしまう。
その姿を見つけたひかるは、後を追い、何とか勝利の気持ちを沈めようと言葉をかけるが、今の勝利に、その言葉を素直に聞き入れる心の余裕はなかった。
28回も免許取得出来なかったと言う落ちこぼれの経験者である金造から、今日の慰め方はまずかったと諭されたトメやんは、何とか、勝利に詫びようと機会を待つ事になる。
その夜、一人布団の中で、勝利を慰める事が出来なかった自分に涙していたひかるは、隣の部屋から聞こえて来る父親の言葉を聞く。
彼も又、昔、自分が治療して全快したはずの患者が退院後、自殺してしまった事を告白する。
身体は直せても、心に勇気を与えられなかった自分の落ち度に気づいてから、酒を飲むようになったのだとも。
名古屋出張で二日も東京を離れていたトメやんは、勝利の事が気になり、帰京のトラックを急がせていた。
一方、工場を訪れたひかるは、勝利がもう三日も休んでいる事を仲間たちから聞く。
心配になって、自宅に出向いたひかるは、勝利がふて寝をしているのを知り、何とか、彼を力付けようと励ますが、そんなひかるを、勝利は襲いかかろうとする。
たまたま、帰って来た和平のおかげで、ピンチを救われたひかるは、勝利を荒川の土手に誘い出すのだった。
そして、療養所に見舞った秋子が、すっかり元気を取り戻しつつある事、その彼女から教わった詩を、ひかるは勝利に聞かせる。
しかし、それでも勝利の心は溶けず、たまたま土手を帰りかかったトラックの中から彼の姿を発見して近づいて来たトメやんと取っ組み合いの喧嘩になってしまう。
勝利が、もう学校なんか行かない、工員に学問なんて何の役にも立たないと捨て鉢な言葉を吐いたからだった。
そんな所に、和平が駆け寄って来る。
何と、あの父親が車に轢かれて入院したと言うのだ。
病院で対面した父親は、片足がもう一生元に戻らないという。
あまりに不幸な一家の姿を観たひかるとトメやんは、言葉もなく廊下に出るが、勝利が病室から出て行く姿に驚く。
しかし、二人を振り返った勝利の顔は晴れやかだった。
今後は父親の分も稼がねばならないから、これから直接工場へ出かけると言う。
その言葉に安心する二人。
こうして、勝利、トメやん、ひかるの新しい生活が始まるのだった…。
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橋幸夫、吉永小百合のデュエットで、1963年度の日本レコード大賞を受賞したヒット曲を元にした歌謡映画。
下町を舞台に、いつもの小百合、浜田コンビの貧しくも清らかな青春物語が展開するが、今回は、当然ながら、それに御三家の一人、橋幸夫が絡む形になっている。
デビュー3年目の橋の演技もなかなかのもの。
伸び伸びと演じているようで、特に歌手だから、芝居が一人不自然と言った感じは全くない。
それに、この作品で意外と得な役を演じているのは野呂圭介だろう。
脇役ながら、印象に残る重要なポジションを任されている。
信欣三や中村是好、内藤武敏、飯田蝶子など、味のあるベテラン脇役陣も貴重。
その飯田蝶子演じる老女を東京見物に連れて行くシーンでは、当時の活気溢れる東京の様子が良く分かる。
随所で流れるヒット曲の数々も魅力。
「潮来笠」は、もちろん、橋幸夫のデビュー曲。
「寒い朝」もヒットした名曲である。
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