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逆襲大蛇丸

1955年、新東宝、賀集院太郎脚本、萩原遼+加藤泰監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

永禄7年

越後、柏崎城の城主、鯨波将監照忠(市川男女之助)は、寝所に突如出現した尾形弘澄の亡霊から、14年に及ぶ呪いを今ここにはらす時が来たと迫られ、あの裏切りは諏訪光明が誘ったのだと言い訳する。

しかし、その直後、恐怖のあまり、あっと声を上げ目が覚めたので、今のは夢だったのだとホット胸を撫で下ろす。

そこに、今の照忠の声を聞きつけたお八重の方が心配して顔をのぞかせたので、こわばった肩をもんでくれと照忠は頼む。

八重はすぐに近づき肩をもみ始めるが、何気なくその手を見た照忠は驚愕する。

肩に手をかけているのは巨大な蝦蟇の手ではないか。

飛び退いて人を呼ぶ照忠だったが、駆けつけた息子照高はじめ家臣たちには、寝所にいるのは、呆然としているお八重の方だけだった。

恐怖が生んだ幻覚だったかと思った照忠だったが、次の瞬間、庭先に大蝦蟇がいるのに気づく。

その大蝦蟇の吐く毒煙を浴びた家臣たちは次々と倒れて行く。

その頃、信濃諏訪城では、まだ幼き満王丸が饅頭を食べながら、腰元たちが奏でる事を聞いていた時、別室では重臣たちが、当家をも狙っている児雷也対策に頭をひねっていた。

家老高遠多聞之助(香川良介)の息子弓之助(若山富三郎)は、こちらには降魔の力を持つ名刀朝霧丸があるのだから、恐れず、この際、鎌倉の足利義輝に乞い願い、鯨波討伐の許可を受ければ、周馬の誤解も解けるのではないかと進言する。

しかしそれでは、鯨波家の子息照高との婚礼を間近に控えた明科姫の気持ちはどうなると、父、多聞之助は苦慮するのだった。

結局、弓之助は鎌倉に出立する事になり、児雷也こと兄周馬を説得に針木峠に戻る深雪(新倉美子)が途中まで見送り、別れる事になる。

針木峠で兄と再会した深雪は、諏訪城の事情をこんこんと説明し、側で聞いていた綱手も針木太郎も、皆で恨みを解くように周馬を説得するが、今や「復讐の鬼」と化した児雷也は聞く耳を持たなかった。

その頑な態度に涙した深雪は、弓之助には大恩を受けたと説明した後、一人諏訪城に戻る事にする。

児雷也は、そんな妹深雪に対し、もう顔も見とうないと言い放ち、そっぽを向いてしまう。

それからしばらくして、鎌倉に出向いていた弓之助とお供のものたちが晴れやかな表情で諏訪に戻って来る。

鯨波への追討令状を、首尾よく書いてもらう事に成功したからだった。

弓之助らが山中の吊り橋を渡ろうとした時、にわかに空がかき曇り、気がつくと、彼らが渡っていた吊り橋が巨大な大蛇になっている事に気づく。

弓之助ら一行は、全員、大蛇の背中から谷底に墜落してしまう。

その後、大蛇の姿は消え、吊り橋は元の姿に戻っていた。

谷底に横たわっていた弓之助に近づいて来た大蛇丸の子分たちは、その懐から、持っていた追討令状を奪い取ってしまう。

だが、その時、目の前に巨大な蝦蟇が出現したので、肝をつぶした子分たちは逃げてしまう。

蝦蟇は口から煙を出し、その力で弓之助は気がつく。

気がついた弓之助に対し、児雷也は、ただ妹が受けた恩を返しただけと冷たい態度。

そんな児雷也に、弓之助は、鯨波一族への追討令状をもらって来たと伝え、一瞬、児雷也も喜びかけるが、その追討令状を今なくしてしまったと聞くと、偽りもの!と怒鳴りつけ、その場を去ってしまう。

高遠多聞之助は柏崎城に出向き、鯨波照高と明科姫との婚礼を断る事にしたと伝える。

しかし、その直後、もう一人の高遠多聞之助がやって来たと言うではないか。

鯨波照忠、照高親子の前に現れたのは、今、口上を述べた多聞之助と瓜二つの人物であった。

どちらが本物で、どちらが偽物なのか。

後から来た方の多聞之助は、これが証拠だと追討令状を出してみせた後、呆然とする本物の多聞之助の前で大蛇丸の姿に戻る。

大蛇丸の言葉と追討令状によって、諏訪が裏切った事を知った照忠は、諏訪と一騎打ちする事を決意し、大蛇丸に協力を依頼する。

それを聞いた大蛇丸は、協力するには条件があり、それは明科姫と名刀朝霧丸、さらに日本中の山の支配権をすべて頂戴する事だと申し出る。

途方もない条件だったが、勝つためには仕方ないと、渋々照忠は承知するのだった。

ところがその夜、家臣たちと今後の対応策を密談していた照忠の部屋に怪しげな賊が入って来る。

その頭領と見られる女朝雲()は、自分たちが役に立つはずと、今、宝物蔵から盗んで来たばかりの宝を出してみせ、売り込みを始める。

女頭領の条件は、自分たち用の天下ご免の住処が欲しいと言うだけだった。

隣の部屋では、大蛇丸がその話に聞き耳を立てていた。

崖から落ちた弓之助は満身創痍の状態ながら何とか諏訪城にたどり着き、深雪がそれを迎え入れる。

その直後、明科姫の部屋に、またしても大蛇丸が出現する。

大蛇丸は4人の姿に分身し、明科姫を術中に落としてしまう。

異変を察知した家臣たちが駆けつけるが、明科姫を肩に抱えた大蛇丸は平然と庭から脱出しようとする。

怪我で思うように動けない弓之助は、名刀朝霧丸を持って行くように深雪に命じる。

深雪は言われるがまま、朝霧丸を抜いて構えると、その刀身の先から霧が吹き出し、大蛇丸は術が破れ、苦しみながらも、姫を抱えたまま逃亡を図る。

弓之助は、満王丸の部屋に駆けつけるが、その間、朝霧丸を持って大蛇丸を追いかけていた深雪は、待ち伏せしていた女賊一党に襲われてしまう。

深雪は縛られ、名刀朝霧丸は女賊朝雲一党に奪われてしまい、大蛇丸は明科姫諸共姿を消す。

姫が誘拐されたので、それを追う家臣たち、一方、その騒ぎに乗じて、鯨波一族が諏訪に攻め込んで来る。

そうした中、一軒の民家に女賊が入り込み、抵抗する家主を斬り殺して、そこに居座る。

朝雲は、その家の仏壇の中に朝霧丸を隠す。

諏訪城の前に到着した鯨波照忠は、人質として連れて来た高遠多聞之助に、無益な抵抗をせずに開門するよう家臣たちに伝えろと命じ前に出すが、多聞之助は、一歩も退くな!自らの屍を超え戦え!と檄を飛ばしたので、鯨波の鉄砲隊にその場で射殺されてしまう。

それを城壁の上から見ていた弓之助は驚愕するが、父の言葉に従い、他の家臣と共に門から走り出ると、鯨波一族と戦い始める。

鯨波一族には、大蛇丸一党も加勢していた。

多勢に無勢、形勢不利な諏訪軍はろう城し、その城の周りでは、鯨波軍が戦勝の宴を始めていた。

城の中では、深雪が負傷者の手当をし、弓之助が老中たちと善後策の打ち合わせをしていた。

城の外では、鯨波照忠が座興として、追討令状の「満王丸」と「鯨波照忠」の部分を逆にして読み上げ、家臣たちの喝采を浴びていた。

そんな照忠の側に、酔った大蛇丸が近づいて来て、約束の明科姫と名刀朝霧丸はどうしたと詰め寄る。

照忠は、朝霧丸なら朝雲に盗ませたと言い、その女賊朝雲は、その名刀ならある所に隠してあると言うばかり。

一応、了解した大蛇丸の前で、朝雲は唄い始める。

その後、どこからともなく現れた顔を隠した踊り子が、指人形を使った舞を披露し始める。

家臣たちは、誰もそれを不審に思わなかったが、突如、その踊り子が児雷也に変身し、宴の場の真ん中に火の輪を出現させたので腰を抜かす。

それを見た大蛇丸は、術でその場に水を降らし鎮火、児雷也と戦い始める。

それを好機と見た諏訪軍が乱入、にわかに合戦が再開されるが、児雷也、大蛇丸はそれぞれ蝦蟇と大蛇に変身して戦い続けていた。

蝦蟇に変身した児雷也が大蛇の妖力に押され気味になるが、その時、大ナメクジに乗った綱手が助勢に駆けつける。

すると、大蛇丸の術が弱まってしまう。

綱手に助けられ、針木峠の住処に連れて来られた明科姫は、児雷也に、諏訪家の過去を詫び、味方になってくれるように頼むが、意固地になっている児雷也は、諏訪、鯨波両家に戦い合わせて共倒れにしてやる事こそ、本懐を遂げる事になると言って聞かない。

そこにひょっこり朝雲が現れ、自分はあんたの舞に惚れた。自分が名刀朝霧丸を持っているので売りましょうか?と話しかけて来る。

怪しげな女の言葉に警戒する綱手たちをよそに、児雷也はまんまと朝雲の口車に乗り、一緒に朝霧丸を取りに行く事を承知する。

仕方がないので、一人、明科姫を諏訪城に送り届ける事にした綱手だったが、山中に仕掛けてあった罠に引っかかってしまい、大蛇丸の一党に捕まってしまう。

その頃、諏訪城では、まだ戦いが続いていた。

弓之助と共に、深雪も長刀で必至で戦いに加わっていた。

朝雲について民家にやって来た児雷也だったが、朝雲はじらして、なかなか朝霧丸を渡そうとしない。

ようよう、仏壇から朝霧丸を出して来て、これを使えば、大蛇丸の術も破る事ができるとからかう朝雲、その言葉に翻弄されていた児雷也は、その場に現れた彼女の子分から銃で撃たれてしまう。

その後、児雷也は、諏訪城の前で磷付にされる。

一方、綱手と明科姫は、共に塩蔵の中に吊るされていた。

さすがの綱手も、塩には弱かったのだ。

火あぶりにされそうになる児雷也を目前にした弓之助は、自分の命を差し出すので、児雷也を助けてくれと頼むが、鯨波照忠は躊躇なく磷付の下に積んだ薪に火をつけさせる。

塩蔵には、ナメクジの老婆が出現し、お前は嫉妬故に、身を滅ぼそうとしているが、自分の後継者だけに、もう一度だけ機会を上げようと言うと、二人の縛りを解き放って消える。

火にあぶられそうになった児雷也の前に、ナメクジに乗った綱手が駆けつけて来る。

磔台は根元から爆発し、児雷也は解き放たれる。

諏訪城天守閣の屋根の上に出現した大蛇丸は、満王丸を抱いており、その幼い身体を抱え上げると、眼下の堀に投げ捨てる。

しかし、それをガマに変身して救ったのは児雷也だった。

今日こそ勝負をつけるぞ!と叫んだ児雷也は、自らも天守閣の屋根の上に出現し、二人は大蝦蟇と大蛇の姿に変身して戦い始める。

城の下では、弓之助や深雪たちが、まだ鯨波一族との戦いを続けていた。

その頃、朝雲の住む家に忍び込んだ綱手は、朝霧丸を取り戻すため、朝雲とつかみ合いの戦いを始める。

しかし、最後は、綱手の小刀で突かれ、朝雲は息絶える。

朝霧丸を手にした綱手は、諏訪城に駆けつけ、天守閣で追いつめられている児也の姿を見るや、ただちに朝霧丸を抜き放つ。

すると、その先端から霧が発生、それを受けた大蛇は苦しみだし、そのまま空中へ逃げ去ってしまうのだった。

かろうじて勝利を収めた児雷也は、屋根の上で微笑む。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「忍術児雷也」(1955)の続編。

いかにものびのびと悪役を演じている田崎潤に加え、本作では、新たな悪役として、朝雲なる女賊が登場する。

劇中で歌を披露している所から見ると、宝塚系の人気女優だった人かもしれない。

色仕掛けで大谷友右衛門演ずる児雷也をたぶらかそうとする所など、とても子供向けとは思えない演出。

本作で気になるのは、児雷也が復讐の念に凝り固まり、諏訪藩を許すように説得する妹深雪の言葉も聞かない態度を取る事。

単純なヒーローものとして観ていると、この辺、児雷也の方に感情移入しにくい作りになっている。

また、児雷也を助ける綱手が、「嫉妬の念」で術を封じられてしまったと老婆に指摘される所なども、子供には意味が分からないのではないか。

元々、大人向けだった話を、きちんと子供向けとして咀嚼しないまま映像化したような印象があるが、当時の子供向けの時代劇は、概ねこうしたものだったのかもしれない。

「忍術児雷也」もそうだったのだが、本作でも続編を意識していたためか、エンディングが今ひとつすっきりしない展開になっており、中途半端な印象が残る事は否めない。