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赤胴鈴之助

1957年、大映京都、竹内つなよし原作、岡本繁男+松村正温+吉田哲郎脚本、加戸敏監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

常陸の国、金野鉄斎屋敷に一人の赤ん坊が捨てられていた。
赤い剣道具の中に置かれて…。

鉄斎の元で育った鈴之助(毛利充宏)は、元気いっぱいの男の子。
ある日、木刀を持って屋敷の前に飛び出してみると、妹分のしのぶ(江村久美子)が泣いて帰って来るのを目撃し、訳を尋ねると、金太や三太たちにいじめられたのだと言う。

怒った鈴之助は、悪童たちの待つ林に駆け込んで行くが、先に彼らが仕掛けていた紐に足を取られて転んでしまう。

しかし、今日の鈴之助は違っていた。
悪童たちに木刀をふりかざして行ったのだ。
これには悪童たちもたじたじ…。

その後、屋敷に戻って来た鈴之助としのぶの泥だらけの姿を見て、爺やは驚く。
そんな爺やに、鈴之助は、悪童たちが自分の事を父なしといじめるが、両親はどうしているのかと尋ねるが、爺やは、亡くなったお父様は、江戸の千葉道場の門弟で、北辰一刀流の名手だった立派な方と答えるのみ。

実は、今、江戸の千葉道場に身を置く鈴之助の母親お藤(朝雲照代)は、夫の鉄之助亡き後、生まれたばかりの鈴之助を父親形見の赤胴に入れて、父親鉄斎の屋敷に捨てたものの、その後も度々、鈴之助恋しさに父の元を訪れていたのだが、親子の縁を切った鉄斎は、二度と自分の娘に、鈴之助を会わせようとはしなかったのであった。

その後も、鈴之助は悪童たちにいじめられ続けていたが、歯を食いしばって「負けるものか!」と自らに言い聞かせていた。

そうして数カ年が過ぎて行った…。

青年に成長した鈴之助(梅若正二)が、ある日、屋敷の道場で留守番をしていると、宝蔵院岳林坊(光岡龍三郎)と火京物太夫(尾上栄五郎)と名乗る怪し気な二人組がやって来て、師範と勝負したいと言い出す。

先生は今留守だと、鈴之助が答えると、では、お前たちが相手でも良いと言う。

他流試合は禁止されていると、重ねて鈴之助が断わると、では、勝手に道場の看板を持って行くと言う。

その頃、鉄斎は川で夕食用の鯉を釣っていた。
そこへ駆けつけたのは、こちらも成長したしのぶ(中村玉緒)。

慌てた彼女の報告により、道場破りが来たと知った鉄斎は慌てて道場に引き返し、鈴之助と戦おうとしていた二人組を制して、自ら相手になる。

最初に対峙した宝蔵院岳林坊には勝ったものの、その後に立ち上がった火京物太夫の卑怯な手に破れた鉄斎は負けを認め、手を付くが、火京物太夫はそんな鉄斎の額をさらに打ち据えるのだった。

二人組が去った後、鉄斎は鈴之助に対し、あれほど禁止していた他流試合をやったので破門すると突然言い出す。

しのぶが、どんなに鈴之助をかばっても受け入れられなかった。

失意の鈴之助が屋敷を去ると鉄斎は、成長した鳥は何時かは巣立たねばならぬもの、あれの行く先は江戸の千葉道場だと思うから、村はずれまで見送って来いとしのぶに言い聞かせるのだった。破門は、今こそ鈴之助を旅立たせようとする鉄斎の愛情から出た言葉だったのだ。

そうと分かったしのぶは、村はずれに差し掛かった鈴之助に追い付くと、自分だと思って大切にしてくれと、自分の簪を渡すのだった。

江戸に着いた鈴之助は、さっそく千葉道場を訪れるが、応対しに出て来た門人は、容易に見知らぬ若者等に先生は会わせられぬと頑固な態度。

そんな鈴之助は、悠然と道場に入る竜巻雷之進(林成年)という門弟を見つける。

自分の持っているこの赤胴は、かつて千葉先生の弟子だった父のものだと、必死に説明している鈴之助の元へやって来た千葉周作(黒川弥太郎)は、鈴之助の顔を見るとすぐさま、明日から、この者に掃除の仕方を教えるようにと門弟に命ずるのだった。

早速その日から、新参者として、出歯川鰐太郎(藤崎正雄)や雨川傘太郎(内海透)ら先輩たちからこき使われるようになった鈴之助は、朝早くから、掃除、洗濯、まき割り、風呂焚き、飯炊き、布団の上げ下げと、目の廻るような下働きを始める事になるが、持ち前の「負けるものか!」という自身への気合いで乗り越えて行く。

ある朝、いつものようにふき掃除をしていた鈴之助は、千葉周作の娘さゆり(浦路洋子)と出会う。

彼女は、なかなか練習をさせてもらえないと嘆く鈴之助に同情し、たまたま傍を通りかかった雷之進に稽古を付けてやってくれと進言するのだった。

それではと、すぐに道場に呼出された鈴之助だったが、道場一の使い手と言われている雷之進の前には手も足も出ず、叩きのめされて気絶するだけだった。

そんなある夜、外出から帰る途中の千葉周作は暴漢に襲われる。
その暴漢の正体は、弟を周作に斬られ、その恨みを晴らそうとする火京物太夫と、宝蔵院岳林坊ら一味だった。

しかし、周作は彼らを寄せつけない。

その後、周作は、一人、稽古に励む鈴之助の姿を発見し、腕試しのつもりで、木片を闇の中から鈴之助めがけて投げ付けてみるが、殺気を感じた鈴之助は、見事にこれをはたき落とすのだった。

翌日、お宮参りに出かけると言うさゆりを、雷之進は送って行くと申し出るが、さゆりは鈴之助に送ってもらうからと断わる。

そして、鈴之助とお宮に着いたさゆりは、その場で、先日拾った簪を鈴之助に渡して、簪を渡した人物の事を聞き出そうとするが、その時現れた暴漢たちに、あやうく誘拐されそうになる。

又しても、火京物太夫一味だった。

彼らは、直接、秀作に襲いかかってもかなわぬと悟ったので、その代わりにさゆりを誘拐しようと待ち構えていたのだった。

鈴之助はさゆりを守らんと必死に応戦するが、多勢に無勢、危機一髪の所に通りかかったのが、千葉周作道場の師範代で、しばらく旅に出ていた横車押之助(南条新太郎)だった。

横車の応援で、無事道場へ帰宅した鈴之助とさゆり。

一方、横車は、鈴之助の実力を見抜き、千葉周作と相談して、昇段試合を開こうと提案する。

その知らせを受けた門弟たちは、さっそく練習に励もうとするが、独り冷笑的だったのが雷之進。

腕に自信がある彼は、試合の前であるにもかかわらず、お供の者を従えて、悠然と酒を飲みに外出するのだった。

そんな道場に訪ねて来たのがしのぶだった。

しかし、彼女に応対したさゆりは、「金野鈴之助なる人物等ここにはいない」と追い返してしまう。

がっかりして帰りかけるしのぶの姿を横目に見ながら、道場に帰って来たのは鈴之助の母親お藤だった。

やがて、試合が始まり、雷之進の相手として横車から指名されたのは、意外や意外、鈴之助だった。

そして、横車の想像通り、鈴之助は見事に雷之進を打ち破ってしまう。

この結果に涙していたのは母、お藤であった。

今こそ母子の名乗りをしてはどうかと薦める周作に対しお藤は、子供を捨てた自分が、立派に成長したわが子に今さら母子の名乗りをあげる資格等ない、ただ、おばさんと呼ばれているだけで十分だと答えるのだった。

その後、いつものようにまき割りをしていた鈴之助の元へ、雷之進が、酒場で浪人ものたちと喧嘩になっていると家人が知らせに来る。

慌てて、その場に駆けつけた鈴之助は、酔った雷之進は、酒場で出会った浪人たち、実は火京物太夫一味に対し、刀を抜きかけていた。

それを何とか食い止めようと、雷之進の腕を押さえ「このままでは千葉道場の名に傷がつきます」と諭す鈴之助だったが、もはや、試合の遺恨に心を乱した雷之進に聞く耳は持たなかった。

その場に現れた千葉周作の姿を見ても、雷之進は、自ら道場を辞めてやると息巻く始末。

そんな現場に通りかかったのがしのぶ。

彼女を伴い道場へ戻った鈴之助と周作は、鉄斎が結局、火京物太夫に受けた傷が元でなくなったと言う知らせを、しのぶから聞く事になるのだった。

周作は、遠路はるばる訪れて来たしのぶに、ゆっくり江戸見物でもして行きなさいと慰めるのだが、この言葉を障子の外から聞きながら、複雑な表情をしていたのは、恋敵の出現に動揺するさゆりだった。

翌日、再び、介抱するお紺(春風しのぶ)の心配もよそに、飲み屋で酔いつぶれていた雷之進の元へやって来たのは、昨日、周作の姿を見て逃げ出した火京物太夫一味。

彼らは、雷之進に対し、3年越しの仇である千葉周作殺害に加担しないかと持ちかける。

それに対し、雷之進は、自分はまず、鈴之助を倒して後、その計画に加担すると答えるのだった。

その頃、千葉道場で、仲良く、洗濯物を干そうといちゃついていた鈴之助としのぶの元へ、手紙を持って来たのはさゆりだった。

その手紙には、護国寺で待つと言う雷之進からの果たし状が書かれてあった。

一人、護国寺に乗り込んだ鈴之助だったが、そこに待っていたのは雷之進ではなく、火京物太夫一味だけ。

計られたと悟った鈴之助は必死に応戦するが、そこに駆けつけて来たのが、鈴之助の身を案じたしのぶ。

二人は、暴漢たちの剣をかいくぐり、寺の中に逃げ込むが、そこに現れたのが竜巻雷之進だった。

そのライバルの呼ぶ声に答えて、鈴之助が屋根の上に姿を見せるのだが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

竹内つなよし原作(厳密に言うと、最初の原作は福井英一が描きはじめたのだが、1回を描き終えた段階で急逝、後を受け継ぐ形で、当時、新人だった竹内つなよしが描き継ぎ、人気を得るに至った)の人気マンガ(1954)のラジオ化(1956)に次ぐ実写映画化作品に当る。
この後、同作品はテレビ映画化(1957)、テレビアニメ化(1972)にもなっている。

さらに、どうも地方のテレビ局では、この実写映画版を15分番組に編集し直して放映していた所もあるようだが、詳細は定かではない。

人気を泊したラジオ版で、千葉周作の娘千葉さゆりの声を担当して芸能界デビューしたのが、吉永小百合であるというのも有名な話。

その千葉さゆり、当然ながら、この映画版にも登場する。

しかし、演じているのは吉永小百合でもなければ、何だか、今一つ影が薄い存在になっている。

それと言うのも、この作品には、鈴之助の幼馴染みとして、中村玉緒演ずるしのぶという別のヒロインが登場しているからである。

このしのぶというキャラクター、同じ、鉄斎老人の道場で兄妹のように育てられており、子供時代、しのぶが鈴之助を「お兄ちゃん」と言っている事からすると、実の兄妹なのだろうか?

しかし、劇中、母親お藤が夫の死後、父、鉄斎の道場に捨てたのは赤ん坊時代の鈴之助一人に見える。

妹とするなら、その後に生まれた事になる。

では、父親が違うのだろうか?

しかも、成長して娘になったしのぶが、鈴之助を「鈴之助さん」と他人行儀に呼んでいるのも奇妙。

この辺、原作に詳しい世代でないだけに、詳細が分からずもどかしい。

ストーリーは至って単純、子供時代、周りから父なし子といじめながらもたくましく成長した名剣士の血筋を引く青年が、親と同じ道場で修行し、腕に慢心した先輩に勝った事で逆恨みされる話である。

逆恨みされたままでは、すっきり終わらないではないかと思われるだろうが、その通り、この作品は、「第一部」なのだと言う事が最後に分かる仕掛けになっている。

はっきり言えば、続きものの最初のエピソードなのだ。

だから、そんな知識を持たずに観ると、最後に騙されたような気分になる。

一番盛り上がる部分で終わっているからだ。

しのぶを演じている中村玉緒は、当時18才くらいだったようで、取り立てて芝居が巧いとか、器用だと言った印象はない。

ごく普通の娘さんが、一生懸命演じていると言う感じである。

仇役の名前が、火京物太夫(ひきょうもの だゆう)…などという駄洒落になっているのも、昔のマンガらしい。

又、出歯川鰐太郎や雨川傘太郎といったキャラクターが、ディフォルメされたマンガそっくりに、特殊メイクされているのも、今観るとおかしく見える。