TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

天下の大泥棒 白浪五人男

1960年、東京映画、八住利雄脚本、佐伯幸三監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

天保末期、八丈島の牢の中、五人の男が、シャバの話をしている。

利吉(フランキー堺)は、恋人お光(八千草薫)の思い出、力松(花菱アチャコ)は五人の子供の事、十三(有島一郎)は、恋人、花魁の高尾太夫(乙羽信子)が来年3月に年期明けになる事、菊助(加東大介)は、まだ見ぬ母親に会ってみたいなどと各々の未練を語るが、そんな思い出話を鬱陶しいと嫌うのは竜太(森繁久彌)だった。

彼は、同じ牢内に病気で寝込んでいた老人(汐見洋)が洩らした「壺栄」の壺の中に、宝の在り処を記した書状を入れてあると言う言葉を聞き、思いきって、今夜、自分と一緒に牢破りと島抜けをしないかと、他の四人に誘い掛ける。

竜太が言うには、老人は、かつて稀代の大泥棒だったので、その言葉は信用できる。
自分達五人で、その壺を見つけだし宝を山分けにすれば、全員大金持ちになれるのだと。

そして、自らの髪の中に隠しておいた小判を取り出してみて、当座の資金はあると見せるのであった。

それから、しばらく時が過ぎ、本土に舞い戻ることに成功していた五人は、芝居小屋で「白浪五人男」を見物していた。

舞台で、日本駄右衛門(森繁久彌-二役)、忠信利平(フランキー堺-二役)、南郷力丸(花菱アチャコ-二役)、赤星十三郎(有島一郎-二役)、弁天小僧菊之助(加東大介-二役)の五人の大泥棒を演じているのは、皆、自分達にそっくりな事に気づき、自分達も、彼らにあやかって頑張ろうと誓いあうのであった。

その日は、仕事前の息抜きにしようと、全員自由行動が許される。

利吉は、料亭に勤めているお光を訪ねるが、昇天の熊五郎(上田吉二郎)という悪質十手持ちが、最近足しげく通って来て言い寄るので困っているという。

料亭「壺栄」にお帳場さんとして入り込んだ竜太は、大嫌いな大根がおかずに出ているので苦りきっていた。
女将のお栄(淡島千景)の好物なのだと言う。

逆に、お栄が大嫌いな蛸が、竜太の大好物なのだった。

力松は、久々に五人の子供の待つ長家に帰りつくが、長年放っといた女房(浪花千栄子)が彼を許すはずもない。一旦は、彼女に追い出されて家を後にした力松だったが、ちょうど、自分の家に押し売り(丘窮児、沢田清)が入り込んで脅しているのを見かけ、戻ってそれを追い出した事により、女房の気持ちは和らぐのだった。

元の職場である染物屋の主人(桂小金次)に会いに行った十三は、その主人から、花魁との約束なんか当てにならないから諦めろと説得されるが、そこへやって来たのが、当の高尾太夫。

彼女の、十三に対する気持ちは本物だったのだ。

晴れて、気持ちを交わし合おうとする二人だったが、気の効かない主人のせいで、その家では落ち着かない。
外へ出て、改めてムードを高めようとした二人の前に邪魔に入ったのが、菊助だった。

聞くと、つてを訪ねてみたが、母親には会えなかったのだと言う。

そんな二人はヤケになり、コンビを組んでゆすりをしようと、呉服問屋の浜松屋へ乗り込む。
菊丸は女に化けて、ここで買った着物のせいで、転んで顔に怪我をしたと芝居を打つのである。
最初に相手に出た番頭たち(由利徹、南利明、八波むと志)は、対応にしどろもどろ。

やがて出て来た、女主人(吉川満子)は、あっさり百両の詫び金を払うが、油断した力松は帰り際に、男である事を番頭たちに気づかれてしまい、慌てて逃げる。

その際、力松が落として行った守り袋を拾った女主人は驚愕する。
それは、かつて分かれた我が息子に自分が与えた品物だったからである。

その頃、竜太は、夫に先立たれて独り身のお栄に取り入り、 利助を腕利きの板前として店に雇わせる事に成功していた。

そんな壺栄にも足しげく通っている嫌な客が二人いた。

一人は、お栄に大金を用立てている事で彼女に迫ろうとする昇天の熊五郎と、同じく、お栄にぞっこんの与力の梅本春之進(田中春男)。

実は、この二人、江戸城改築の時、便宜を計ってやる代わりに賄賂を要求すると言う関係でもあった。
彼らは、店に入り込んだ五人の素性を怪んでおり、何故か自分達の方でも壺を奪取せんと焦っていた。

一方、すす払いの手伝いと称して壺栄に入り込んだ五人は、必死に壺の在り処を探し出そうとするが、亡くなった先代主人は、道楽で大量の壺を自分で焼いていたらしく、屋敷内には膨大な壺が置かれており、目的の清水焼きの壺というのはどれなのか、見当もつかない。

立場を利用し、お栄と共に、倉の中に入る事が出来た竜太でさえ、目的の清水焼きの壺は五つ揃いであったが、今は散逸してどこにあるか分からないと言う事実を、お栄から教えられただけだった。

すっかりお栄とお熱い仲になった竜太を尻目に、お栄から掏摸とった鍵で勝手に倉に忍び込み、壺を漁っていた利吉も、何の成果も見つけられない。

かくなる上は、病気が重くなり、伝馬町へ戻って来たと言うあの老人から、もう一度、確かな証言を聞くしかないと判断した竜太は、自ら進んで伝馬町送りになる人物をくじ引きで決めようと言い出し、結果、利吉がその嫌な役を引き受ける事になる。

ところが、苦労の末、伝馬町の牢に入ってみると、当の老人は、病人溜まりに送られたと言う。
今度は、急な腹痛を装って、そこへ潜り込むが、苦いセンブリを大量に飲まされただけで、肝心の老人はどこかへ連れて行かれた後だった。

実は、その老人を自分の屋敷に連れて来ていたのは、梅本だった。

彼は、病床の老人から、書状を隠した壺の形を図面にして確認すると、口封じの為、その場で老人を斬り殺してしまうのだった。

その後、熊五郎が借金の方として、その壺をお栄から貰い受けている所を目撃した竜太は、急いで、舞い戻って来たばかりの利助を、梅本邸に忍び込ませ、その壺を奪い返して来させる。

結果的に、その壺には何も入っていなかったのだが、その壺を見ていた力松や十三、菊助はどこかで同じ形の壺を見た事があると言い出す。

やがて思い出した三人は、各々、壺を求めて、力松は長家の釘入れの壺、十三は染料を小分けしておく壺を鳥に戻るが、それらにも何も入っていなかった事が分かる。

一方、浜松屋にあった壺を取りに屋根裏に忍び込んだ菊助は、下の座敷で、女主人と菊助と名乗る謎の男が対面しているのを偶然聞いてしまう。

どうやら、幼い頃に行方知れずになった自分に成り済まして、店を乗っ取ろうとする詐欺師のようである。

女主人は、最後の証拠として、右の肩にあるはずの痣を見せてくれと言い出したので、もはや、これまでと開き直った相手の前に降り立った菊助は、相手を叩きのめして追い出すと、壺を持ったまま自分も恥ずかしそうに店を後にするのだった。

その走り去る姿を目撃していたのが、昇天の熊五郎。

結局、菊助が持ち出した壺にも、何も入ってはいなかった。

そんなある日、お栄の墓参りについて行った竜太は、偶然、そこで出会ったお栄顔なじみの歌舞伎役者(本郷秀雄)に、彼女が壺の一つを渡した事を思い出したといいだし、相手も、その壺なら、楽屋の床の間に今も安置してあると答えるのを聞く。

さっそく、五人揃って、芝居小屋へ潜入し、出前持ちに化けた菊松が、楽屋から問題の壺を奪い取ったまでは良かったが、墓参りの時の会話は、梅本の配下にも偶然盗み聞きされていたため、芝居小屋は役人たちによる厳重な警護に固められており、逃げ場を失った彼らは、あろう事か、舞台に出るはめになる。

やがて、芝居小屋の内外は、上を下へをの大立ち回りの現場と化すのだが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

歌舞伎の演題をモチーフにした、宝探し興味を加えた集団犯罪ものとでも言えば良いだろうか。

歌舞伎がモチーフだけに、その辺の知識を持っていれば、もっとあれこれ内容を楽しむ事ができるのだろうが、なくても普通に楽しむ事はできる。

森繁と淡島千景が艶っぽい仲になるのは、「夫婦善哉」(1955)以来お馴染みの設定。
この作品での森繁は、終始、二枚目を演じ切っている。

おとぼけ役は、フランキーがほぼ一人で受け持っている感じ。

子沢山の夫婦を演じるアチャコと波花千栄子も、「お父さんはお人好し」(1955)の設定をほぼそのまま踏襲している。

加東大介が女形を演じたり、有島一郎がモテる色男を演じているのが、ちょっと珍しい。

実はこの話、単なる集団犯罪ものではなく、最後に意外などんでん返しが用意されているところがミソ。

そのオチ自体は、昔から良くあるパターンなのだが、そのどんでん返しの後に、さらに、もう一段、正月映画らしい、粋なひねりが加えてあったりして、なかなか憎い演出になっている。