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丹下左膳餘話 百萬兩の壺

1935年、日活京都、林不忘原作、三村伸太郎脚色、山中貞雄構成+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

二万三千石の柳生の城では、百萬兩の隠し金が埋められている場所を記した絵図面を、こけ猿の壺に塗りこめてあることが判明。

これで、西国一どころか、日本一の金持ちになれると家老は喜ぶのだが、城主対馬守(阪東勝太郎)は何故か浮かぬ顔。

そんな事とは知らないから、江戸へ養子にいった源三郎(沢村国太郎)の婚礼の引き出物として持って行かしたと言う。

早速、家臣高大之進(鬼頭善一郎)がその壺を江戸の不知火道場にいる源三郎にもらいに行くと、兄の頼みと言う言葉を聞いて、源三郎は断わってしまう。日頃から、自分に対する待遇の悪さに腹を立てていた事もあり、へそ曲がりの気持ちからの返事であった。

勢い余って、汚く疎ましく感じていた壺を新妻萩乃(花井蘭子)にいいつけ、たまたま通りがかりのくず屋(高勢実、鳥羽陽之助)に十文で売ってしまう。

貧乏長家に帰って来たくず屋の二人は、妻に先立たれた七兵衛(清川荘司)の独り息子安吉(宗春太郎)に、買って来たばかりの壺をあげてしまう。金魚を入れるためであった。

その七兵衛、最近、夜な夜な、矢場に通っては憂さ晴らしをしていた。

しかし、たまたま、その店に因縁をつけていたヤクザ二人組をちょっとからかってしまった所から、帰宅時に待ち伏せされ、刺し殺されてしまう。

矢場の主人をしているお藤(喜代三)と、その店の用心棒を兼ねて居候していた丹下左膳(大河内傅次郎)は、ヤクザの仕返しを用心して七兵衛を送ってやった手前、最悪の結果を招いてしまい何ともバツが悪い。

七兵衛の最後の言葉「安を宜しく頼む…」が気になり、二人して探した結果が幼い子供だったため、結局、店に連れて帰って面倒を見るはめになるのだが、その子供、ちょび安こと安吉は、金魚の入った壺だけを大事そうに持っていた。

そんな矢場の可愛い看板娘お久(深水藤子)に惹かれ、常連のように通い詰めていたのが、百萬兩の価値があるとも知らずくず屋に売ってしまったこけ猿の壺を探し歩いていた源三郎だったのだが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

お馴染み「丹下左膳」の「こけ猿の壺」のエピソードである事は一目瞭然である。

しかし、山中監督は、これを、実に微笑ましいホームコメディに作り替えてしまっている。

子供嫌いなはずのお藤と左膳が、言葉とは裏腹に、どんどんちょび安を可愛がって行くようになる様。

客からおだてられるほど歌好きなお藤の三味線に、飽き飽きしている左繕の子供っぽいからかい。

新婚ホヤホヤにもかかわらず、早くも浮気心発揮の源三郎。

外出してお久(確かに、演じている深水藤子が、新妻を演じている花井蘭子より可愛い所が憎い)に逢えるのが嬉しくてたまらないくせに、「(壺を探し当てるのは)十年かかるか、二十年かかるか…、まるで敵討ちじゃ」と、辛そうに幾度も妻の前で呟くのがおかしい。

ちょび安の愛らしい仕種。

これがあるから、お藤や左膳の行動に観客も笑いながら共感できるのだ。

この子はどうなるんだろう?という心配心を抱く観客の緊張感が、唐突な展開をする次の画面で笑いに変わる。

心暖まると同時に、つい笑ってしまう。実に見事な演出である。

冒頭、ナレーションを担当しているのは、劇中、くず屋としても登場している高勢実乗だと思うが、この人の何とも奇妙なキャラクターと動作も又愉快。

「あのね、おっさん、わしゃかなわんよ」という有名なギャグ以外で、彼の面白い芸を観られる貴重な作品でもある。


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