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社長漫遊記

1963年、東宝、笠原良三脚本、杉江敏男監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

日本化学工業同友会欧米視察団の一員として海外旅行から帰って来た太陽ペイントの社長、堂本平太郎(森繁久彌)は、すっかりアメリカかぶれになってしまい、羽田に迎えに来た妻のあや子(久慈あさみ)、秘書の木村進(小林桂樹)、山中部長(加東大介)、そして、九州支社からはるばるやって来た多胡課長(三木のり平)らを煙に巻く。

一緒に帰宅する車の中で平太郎、あや子に、自分はアメリカで痔の手術をしたのだが、その際、アメリカ人の血を輸血されたので、もはや今の自分の半分はアメリカ人のようなものだ…と、訳の分からない自慢をする始末。

家に帰ると、そんな平太郎を驚かす出来事が待っていた。

周二(江原達怡)と結婚した娘の可奈子(中真千子)に赤ん坊が生まれていたのである。

まだ49才だと言うのに「おじいちゃん」呼ばわりされるようになった平太郎は、ちょっと抵抗感を露にする。

翌朝、出社した平太郎は、さっそく、エレベーターの前で出会ったBGの上野勝子(雪村いづみ)に、レディファーストの姿勢を示してみせる。

部課長クラスを集めた朝の会議で、平太郎は、さっそく、アメリカ的合理主義の会社内での採用を発表。

今後、互いを呼び合う時は、年齢の上下や役職に関わりなく、名前で呼ぶ事。
レディファーストの精神を尊び、女性社員にお茶汲み等をさせてはいけない事。
営業用の接待、虚礼、贈答品などの廃止などを全員に言い渡す。

その席に出席していた多胡課長は、塗装に太陽ペイントを使用した北九州の若戸大橋が開通するので、その式典に社長も出席して欲しい旨連絡する。

地元の販売店を招いて「パ〜っと!」宴会をやるつもりだった多胡課長は、社長直々に接待禁止令が出たため、もう一つ盛り上がれない。

地元の芸者〆奴(池内淳子)から預かって来た土産の雲丹も山中部長に渡して、愚痴るばかり。

その山中部長から月産自動車へ納品した塗料に関してクレームが来たとの報告を受けていた平太郎は、アメリカのジュピター社の顔料が良いらしいとの話を聞き満足顔。

実は、アメリカでそのジュピター社の社長とも会って来たと言うのだ。

それで、その極東支社長と提携に付いて具体的な話し合いを持とうと、木村に先方に電話をかけさせるが、出て来た相手は英語。
木村も、電話を変わった平太郎もチンプンカンプン。

ちょうど、その時、平太郎が、昼食用のざるソバをフォークで食べたいと我がままを言い出したため、ビル内の食堂からそれを持って来た上野が、とっさにその電話を受取り、流暢な英語でアポイントメントを取り付けてしまう。

すっかり、彼女の英語力に感心した平太郎は、現在、手取り1万3000円だと言う彼女の給料を、木村と同じ3万8000円に値上げしてやると言い出す。

喜ぶ上野に対し、ふて腐れる木村だったが、さらに、平太郎から、今後は時間厳守も徹底するので、5痔の定時になったら、例え、仕事の途中であっても、すぐさま帰社するように命じられる。

これまで通り、社長のお供で、キャバレー通い等しなくても良くなった反面、すっかり暇をもてあますようになった木村は、恒日頃から気があった上野に退社後のデートを申込むが、先方には既に予定があるとかで、あっさり振られてしまう。

その頃、馴染みのクラブ「マリリン」のママれん子(淡路恵子)から久々に電話をもらっった平太郎は、今夜限りと自分に言い訳して出かける。

ここでもアメリカかぶれを出して、飲みなれぬバーボンを注文する平太郎だったが、ホステス(塩沢とき)相手に格好を付けてみせて、一気飲みをしたため大変な事に。

ちょうどその時、別のグループ席から立ち上がった一人の男が、バンドの音楽に合わせて、珍妙な芸を披露しはじめる。

その目立ちたがり屋根性を嫌った平太郎は、露骨にその男を悪し様に罵るが、それを目ざとく見つけた日系三世だと言う相手も平太郎のテーブルにやって来て、彼を英語でからかったりしたため、二人はあわや掴み合いの喧嘩になりかける。

そんな騒ぎも知らず、一人自宅で寝転び、力道山のプロレス中継等見ていた木村は、母親(英百合子)から、見合い話を持ちかけられる。

山中部長の奥さんからの話だといわれ、全然乗り気ではなかった木村だったが、渡された写真を見ていきなり態度が変わってしまう。見合い相手はすごい美人だったからだ。

一方、喧嘩騒ぎから逃れ、れん子と場所を変えて飲んでいた平太郎は、彼女から夜の誘いを受け御満悦。

調子に乗った平太郎は、その場で、今後はクラブ通いは止めるつもりなので、れん子に店の共同出資金として渡していた50万を返して欲しいと伝えると、相手は怒って、すぐさま帰ってしまう。

恋愛と仕事の話は別物だと、自分の都合だけで考えていた平太郎は、そんなれん子の態度に調子を狂わされるが、それではと、帰って妻に挑むも、こちらも空振りに終わる。

後日、通訳係として上野、さらに木村と山中部長を伴ってジュピター社極東支社を訪れた平太郎は、出迎えた相手の顔を見て驚愕する。

何と、先日「マリリン」で掴み合いになった、あの三世ウィリー(フランキー堺)ではないか!

相手も驚いたようだが、立場上、平太郎が先に謝らる事に。

しかし、良く話を聞くと、相手の三世も支社長本人ではなく、単なる代理人だと分かる。
支社長は、今、香港に出かけていて不在なのだと言うのだ。

その後、木村は、山中部長の妻(東郷晴子)がセッティングしたお座敷天ぷら屋で見合い相手の大浦タミエ(藤山陽子)と会うのだったが、その場に遅れてやって来た山中部長は、その後、「マリリン」へ客の接待に出かけ、社用でこういう所に来てはいけなくなったのではないかと皮肉を言うれん子から、最近、ウィリーがライバル会社の東西塗料の人間と良く店に来ると言う話を聞かされる。

その頃、すっかりタミエの事が気に入った木村は、相手が、北九州の若松の生まれで、大浦屋という料亭の娘だと知り、実は今度、自分も社用でそちらに行く事になると喜んでいた。

ところがその木村、彼女との結婚話を翌日報告した平太郎から、見合い結婚は考えものだ、やはり、結婚はアメリカ式の恋愛に限ると忠告されたため、迷いはじめる。

いよいよ、九州への出発の朝、平太郎の家では、いつものごとく、あや子が着物の着付けでぐずぐずしている。
それにいらだっていた平太郎だったが、あげくの果てに、可奈子から電話があり、赤ん坊が熱を出してひきつけを起こしたと言うので、結局、あや子の九州同伴は取り止めになってしまう。

その九州行きの飛行機の中で、木村は見合い結婚への迷いを隣に座った山中部長に打ち明けたため、社長の無責任な助言に呆れながらも、タミエを紹介した部長も微妙な立場に立たされ複雑な顔になる。

福岡に到着し、九州支社の多胡と合流した平太郎たちは、翌日、若戸大橋の開通式に出席する。

その後、若戸博なる催しのイベントとして行われていた「ミス若戸博」を、平太郎と一緒に見物していたた木村たちは、そのミス若戸博に選ばれた女性を見てビックリ!

何と、それはタミエだったからである。

その後、多胡は山中部長と二人で、すでにセッティングしてある販売店接待の場に行こうとするが、平太郎もとっくに事情は察しており、一緒に出かける事になる。

そこは、タミエの実家、大浦屋であった。

あれほど接待は禁止と言い張っていた平太郎自身、馴染みの〆奴に、後で「河童屋」という気のおけない場所で落ち合いましょう等と言い寄られると、もう人目もはばからずデレデレ。

そんな社長の勝手な姿に、山中部長と多胡課長はあきれ顔。

その頃、宴席を抜け出して、タミエを探していた木村は、出会ったタミエが、すっかりよそよそしい態度に変わっていたので驚く。

宴席に戻って山中に訳を尋ねると、君が迷っているので、この話は白紙に戻したと、タミエに伝えたのだと言うのだ。

それを聞き、すっかりヤケになった木村は、酒をがぶ飲みしはじめ、酔った勢いを借りて、平太郎に文句を言いに行く。

しかし、若が分からない平太郎は、帰りの「カー(車)」を呼べと木村に命ずるが、その言葉を「かかあ」と聞き違えた木村は、東京のあや子を呼出し、明日朝、こちらに来て欲しいと社長が呼んでいると伝えてしまう。

そんな事とは知らない平太郎、店の車で「河童屋」へ出向き、待っていた〆奴と、しっぽり夜を迎えようとキスをしかけるが、その肝心の時に、サイレンの音が聞こえ、それを聞き付けた〆奴は窓をあける。

遠くに火の手が上がったのを発見した〆奴は、取るものも取りあえず、その場から火事場へ出かけてしまう。

地元の芸者たちは「消防芸者」と呼ばれ、火事を見つけると助太刀に駆け参じるのが習慣なのだと言う。

またもや、浮気のチャンスを逃した平太郎は面白くなくなって、宿泊先の博多帝国ホテルに戻るが、そこのバーで一人飲んでいる所へ、どうした訳か、東西塗料の社長(河津清三郎)を伴ったウィリー一行と、一緒にやって来たれん子を発見する。

ウィリーが伴っている外国人は、ジュピター社の支社長と聞かされ、彼らに近づく平太郎であったが、ウィリーから、あなたは、塗料会社の社長にしては、もっと「色」の道を勉強した方が良いと皮肉を言われた事に腹を立て、部屋に戻る事になる。

そんな平太郎に電話をして来たのが、同じホテルにと泊まっているのだと言うれん子。

明日は、一緒に別府へでも行って羽を伸ばしましょうと誘われ、平太郎の機嫌は直るのだった。

ところが、翌朝、レストランでれん子を待っていた平太郎の前に現れたのは、前日、勘違いから木村が呼出していたあや子の姿であった。

少し遅れて、当のれん子もやって来たから、平太郎は大慌て。

目配せで、まずい事になったとれん子に知らせると、ふて腐れた彼女をおいてけぼりにしたまま、すっかり旅行気分に酔って上機嫌になったあや子を伴い、成りゆきに任せて、太郎は別府へと旅立つのであった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

社長シリーズの一編。

毎度お馴染みのメンバーによるお馴染みの展開だが、今回のポイントは、すっかりアメリカかぶれして、何でも英語で話したがる社長が巻き起こす珍事件の数々。

フランキーも、怪し気な英語と広島弁を交えて話す三世というお馴染みの役所。

今回の宴会芸は、三木のり平がレコードの曲に合わせて踊る天草四郎の舞。
グニャグニャに変型した古いLPレコードを使ったため、唄が途中で遅くなったり早くなったり、又、針が飛んで同じ箇所を何度も繰り替えしたり…というお馴染みのコント芸で笑わせる。

舞台は、ちょうど、北九州の若松と戸畑を結ぶ「若戸大橋開通」の年だったようで、それに合わせて、東京から九州へと移る。

ちなみに、この「若戸大橋」、翌年には、同じ東宝の怪獣映画「宇宙大怪獣ドゴラ」(1964)によって、早くも(劇中で)破壊される事になる。