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伴淳・森繁のおったまげ村物語

1961年、松竹大船、須藤東起原作、馬場当脚本、堀内真直脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

かかあ天下と空っ風で知られる上州赤城山の麓、通り過ぎる馬上の花嫁を、うらやましそうに眺めているのは、仕事を終え、住んでいるおったまげ村に帰る途中のおわい屋の馬糞の九さん(伴淳三郎)。

その九さんを追いこして行ったのは、何故か毎晩、夕方になるとおったまげ村にバイクで向う、化粧品屋の息子、西向きの三八(渥美清)。

家に帰りついた九さんは、二人暮しの母親お熊(沢村貞子)に、自分も嫁が欲しいと言うが、お熊は、ここの村の娘は気が強くていけないから、前々から、嫁をもらうなら、自分の村から連れて来ると答えるだけ。

今日は、亡き父親の命日だと言うので、珍しく白米の御飯を焚いていたお熊だが、本来、大の倹約家で、金貸を副業としてやっているくらいで、金の使い方に人一倍厳しかった。

そんな母親の目を盗み、九さんは、馬屋の桶の蓋の裏に隠しておいた紙幣を洗って匂いを取ると、その金を持って馴染みの小料理屋に出かけようとしていた。

そんな所に急に現れたのは、隣村に住む金造(桂小金治)、金を見つかるのではないかと慌てた九さんに言うには、自分は今度結婚するので、間もなく行われる相撲大会では自分に勝たせてくれないかと事。

昨年の試合で負けているので、二年連続負けてしまうと、彼女の手前示しがつかないのだと、九さんに土産に持って来た一升瓶を渡す。

今日はその相手の女性も同伴なのだと紹介された九さんだったが、八百長には気が進まない。

その後、出向いた小料理屋では、女将のおとら(若水ヤエ子)の姪っこで、東京からやって来たと言う小夜(高千穂ひづる)を相手にビールを飲みはじめた九さんだったが、二階に居座っている三八に気づくと、機嫌が悪くなる。

二人ともお目当ては同じ、小夜だったからである。

当の小夜は、九さんにも三八にも、各々、相手に知られないように甘えかかっていた。
九さんに対しては、今度の相撲大会で絶対勝ってねとしなだれかかる。

そんな小料理屋で飲んでいた富山の薬売りなる人物(浜村純)の眼光は妙に鋭かった。

別の日、テレビで大鵬、柏戸戦を観ていた九さんは、遅れてやって来た三八の前で、大鵬が勝ったのを見届けると、八百長はやらないと決めるのだった。

そして迎えた神社の境内での相撲大会の日、五人抜きの試合で優勝すれば、米一俵に賞金5000円、さらに、東京のハゲ山部屋のスカウトとしてやって来たと言う熊坂先生(森繁久彌)から、1万円も贈呈されると言う。

賞金目当てのお熊は、息子の活躍を必死で応援している。

そんな中、九さんは、四人をあっという間に負かし、最後の相手の金造も、近く嫁さんになる女性の眼前で上げ飛ばしてしまう。

その頃、集まって来た近隣の女性たち相手に、化粧品の啖呵売をしていた三八は、近くに芝居小屋を開いていた市川座の座員(平凡太郎)から、座長が急病になったので薬はないかと尋ねられ、義侠心から、自分がバイクで買って来てやる事にする。

そんな神社の裏手で出会っていたのは、熊坂と小夜。

熊坂は、小夜から怪し気な薬売りの話を聞くと、本庁の塩田だろうと察しをつける。

実は二人は、夫婦の詐欺師だったのである。

しかし、そんな事はおくびにも出さず、熊坂は盆踊りの櫓の上で、良い調子で唄を披露してみせたりする。

後日、三八は、近所の呉服屋で買い、定価より高い値札をわざと付けさせた反物を、桐生のデパートで買ったと嘘を言い小夜にプレゼントするが、小夜が、その反物にしみがあるので、デパートへ持って行って現金に変えて来ようかと言うと慌てる始末だった。

そんな三八に、自分の母親が病気で、どうしても今10万必要なのだと持ちかけた小夜は、赤城駅に持って来て欲しいと付け加える。

同じく自分に気がある事を承知している九さんには、同じ話をして、利根駅に持って来てくれと場所を指定する小夜だった。

何とか、小夜に気に入られようと、十万手に入れたい三八だったが、道楽息子の自分に、親(中村是好)が金を出してくれるはずもなく、自分で営業して何とか稼ごうと、大量のクリームを持って行った市川座で、その場にいた国定忠治の五代目、馬五郎一家の登り竜の辰(諸角啓二郎)に、ここの座長が病気で舞台に出れなくなったので、あんたがその代理をやっちゃくれまいかと相談を受ける。

ギャラは、2万5000円出すと言われた三八は、渡りに船で承諾してしまう。

一方、同じく、小夜の為に金を用立てしてやりたい九さんだったが、母親と2万円出す出さないで大げんか。

結局、小夜同伴で出かけた芝居の舞台に、見た事のあるような男が国定忠治を演じているのを発見した九さんは、酒の力も手伝って、その舞台に飛び入り参加し、絡まれて困った三八からギャラの半分を受取る約束を取り付けるのだった。

そんな二人、ある日、路上でやっている煙草の箱を使った博打に参加、サクラを使った単純なイカサマだったのだが、それに気づいて、チンピラ二人(由利徹、南利明)ともめそうになった所に通りかかった熊坂が仲裁に入り、全員、料亭で盛大に飲み食いやって手打ち式をやったは良いが、気がついてみると、そこの請求書1万8000円分は、みんな九さんと三八に回されていた。

チンピラ二人も、熊坂の子分だったのだ。

騙されたと気づいた時には後の祭り。

金を作るため九さんは、自分の馬と馬力を売ってしまう。
それに気づいたお熊は、それでは今後生活が成り立たないと、泣く泣く1万9000円出す事になる。

一方、三八は、親に黙って金庫を開けようとするが、そうした行為も父親似は見透かされており、中は空っぽ。

しかし、何とか親からもらった2万円を、そっくり、駅で待っていた小夜に渡してしまう。

利根駅では、九さんも、約束通り、金を全部小夜に渡していた。

そんな小夜が、温泉宿で待ち合わせていた熊坂は、射的屋で見つけたお玉(国景子)という若い娘に早くも手を出していた。

実は、小夜の伯母おとらの亭主まで、彼女に2万円貸していたと言う事がばれ、夫婦喧嘩中だった小料理屋にやって来た九さんと三八は、団扇に残された小夜の置き手紙を読み、遅ればせながら、自分達が彼女に騙されていた事を悟るが、気持ち的にはどうしても諦め切れない。

その頃、宿泊している宿の別室にお玉を呼び込んでいた熊坂は、女房の小夜の目を盗んでお玉と浮気しかけるが、その現場を小夜に見つかり、しどろもどろ。

苦し紛れに、お玉の事を、大前田の親分の若奥さんだなどと、小夜に紹介する始末。

その頃、九さんのおふくろのお熊が急な腹痛を起こし、金がかかるの医者に行く行かないで大騒ぎ。

結局、大量の回虫がいたと言う事が分かり、協力して彼女を医者に連れて行った三八と九さんは脱力状態。

そんな九さんと三八を訪れて来たのが、登り竜の辰。

近隣の縄張りを巡って、大前田一家と、うちの馬五郎親分(榎本健一)が、博打勝負をする事になったので、相撲の腕前を生かして、用心棒役として手伝いに来てくれないかと言うのである。

賭博が行われる金萬寺では、さいころ賭博の台の下に、鉄を入れたさいころを自在に動かす電気仕掛けの磁石を仕込んでいるので、三八に、床下に潜っておいて、その操作をやって欲しいと言う。

やがて、やって来た大前田の親分(三井弘次)の背後には、熊坂が送り込んだあのチンピラ二人も随行していた。

こうして始まった賭博だが、折から雷雨が起こり、電気の調子がおかしい。

そんな中、何とか、磁石トリックは成功したかに思えたが、馬五郎親分のドジから、インチキがばれてしまい、場内は大騒動になる。

ここぞとばかり、部屋に乗り込んで来た九さんと、様子がおかしいので上がって来た三八は、相手方の中に、かつて料亭代を踏み倒されたチンピラ二人の顔を見つけ、のしてしまう。

その二人のチンピラの証言から、小夜と熊坂が泊まっている宿の場所を聞き出した九さんと三八は、取られた金を取り戻そうと、意気込んでその部屋に乗り込んで行くのだが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

純朴な地方の若者二人と、それをカモにしようと都会からやって来た詐欺師との話。

詐欺師を演じる森繁と高千穂ひづるが、なかなか巧みなのに対し、この頃の渥美清の芝居は、今一つインパクトに欠ける感じ。

あまり、うまくキャラが立っていないように思える。

あくまでも、主役で先輩の伴淳を立てるため、何となく遠慮気味に演じていたのか、設定に問題があったのか、事情は分からないが、逆に、そういう、何となくくすんだ印象の渥美清が観られる事が珍しいとも言える。

エノケンがゲスト的に登場するが、あまり目立った活躍の場面はない。

くせもの役者の三井弘次も、ちらりとしか登場しないのも、個人的には残念。

全体としては、ゲストの森繁を立たせるために作られた作品のように思える。
主演の伴淳自身も、若干、押さえて演技しているように見えなくもない。

森繁の芸達者振りを堪能できる作品と言っても良いだろう。

ちなみにこの作品、タイトルには「伴淳・森繁のおったまげ村物語」とではなく、「はったり野郎」と出る。

※追記

この作品は、升本喜年著「映画プロデューサー風雲録 思い出の撮影所、思い出の映画人」によると、当時、松竹の稼ぎ頭の一人だった伴淳が、個人的に親交があった東宝の森繁の「喜劇 駅前団地」に出ると、会社に無断で決めてしまったため、当時、伴淳が所属していた日芸プロの社長が、「駅前団地」の後に、この作品に森繁を出させると言う交換条件で出来た作品らしい。

ところが、いざ撮影間近になると、東宝側が森繁は3日しか貸せないと言い出し、当初予定していた「西向きの三八」役は出来ないと分かり、急遽、伴淳がかねてより見込んでいた渥美清さんを「三八」役に推薦して来たらしい。

その結果、森繁がペテン師の熊坂長吉役になったと言う経緯だったらしい。

主題歌の作曲をしたのも森繁らしく、彼は楽譜を書いたり楽器を弾くような事はできなかったが、同様等のメロディを即興でアレンジする才能があったらしく、有名な「知床慕情」が「夕焼け小焼け」のアレンジのように、「夏も近づく八十八夜」のメロディを少しずつアレンジして、この作品の主題歌も、即興で作ったと言う。

渥美清さんは、松竹作品としてはこの前に、井上和男監督「水溜り」と言う岡田茉莉子主演映画のちょい役で、ロケ1日に参加した過去があったらしい。