1955年、大映京都、長沖一原作、伏見晁脚本、斎藤寅次郎監督作品。
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大阪は大都会ですので、変わった人もいます。
その中でも特に変わった家族を御紹介しましょう…とナレーションが始まる。
しかし、キャメラが映し出した商店街の店には、どこも「結婚式のため休業」と貼り紙がしてあり締まっている。
そのころ食堂「千成」では、食料品店を営んでいる藤本家の次男清次(夏目俊二)と、木村家の長女スミ子(峰幸子)の結婚披露宴が始まっていた。
両家の仲人を勤めてくれた藤本家の隣家の主人でさえ、全部の名前を覚え切れないと言うほど、子沢山の藤本家の紹介を、藤本家の主人、阿茶太郎(花菱アチャコ)自ら始める。
まずは、13人の子持ちの妻のおちえ(浪花千栄子)、続いて、その子が生まれた土地にちなんで付けられて行ったと言う子供達を紹介して行く。
東京に嫁いでいて今日は出席できなかった京都生まれの長女、京子(朝雲照代)。
戦争未亡人で次女、大津生まれの乙子(桜むつ子)とその一人息子一郎()。
未だ独身の米原生まれの長男、米太郎(伊沢一郎)。
次男、清洲生まれの清次。
双子で三女、熱田生まれの熱子(三浦政子)と、四女で豊橋生まれの豊子(三浦秀子)。
三男、浜松生まれの浜三。
五女、静岡生まれの静子(中村玉緒)。
四男、沼津生まれの沼吉(西岡タツオ)。
五男、横浜生まれの横之助。
六女、品川生まれの品子。
七女、新橋生まれの新子。
六男、これを最後にと言う願いを込めて留吉。
その紹介を、とんでもない部分で素頓狂に笑ってリズムを狂わしているのが、スミ子の兄の木村精之助(堺駿二)。調子に乗って、浪曲など唄い出す。
紹介を途中からおちえに変わってもらった阿茶太郎、千成を抜け出して小須井質店に入り、着ていた服を売って手にした現金を、そのまま千成に取って返し、待っていた清次の新婚旅行費として手渡す忙しさ。
そんな阿茶太郎に、千成の前で出会った見知らぬ娘が、この結婚式は止めてくれないかと突然言い出したから阿茶太郎は困惑。
聞けば、彼女は正代(阿井美千子)の友達で、彼女を捨てて違う女性と結婚する米太郎とその親は許せないと息巻く。
どうやら、今日の結婚式を、長男、米太郎の結婚と勘違いしているらしい。
次男の結婚だと訳を話しすと、彼女は、自分の早合点を恥ずかしがって帰ってしまう。
清次らが新婚旅行に出発した後、家に戻った阿茶太郎は、さっそく、隣の二階を新婚家庭に貸してくれると言うので、その間の壁を取り壊していた米太郎を呼び、正代という娘とはどう言う関係なのかと問いかけると、好きは好きなのだが、先方は、洋品店の一人娘と言う事もあり、自分が養子にでも行く以外に、相手が承知しないだろうと、諦めたような返事。
その頃、二階では、静子が、弟や妹たちに面白い踊りを教えてやろうかと言い出し、「♪マンボ、ジャパニズ、エッサッサ♪」と奇妙な歌を唄いはじめたから、さあ大変!
子供達が全員二階で浮かれはじめたので、隣の二階の床に穴が開いてしまう。
そんな阿茶太郎の元に清次から電報が届き、気持ちが良いので、もっとこちらに滞在したい。ついては、もっと金送れと催促され、夫婦あきれ顔。
数日後、おちえと共に、米太郎の為に、先方の親元へ出かけた阿茶太郎だったが、正代の母である文子(初音礼子)は、米太郎に養子に来てもらう以外に、二人は一緒にさせられないと頑固一徹な返事。
さすがに、そのあまりに頑な態度にカチンと来た二人は、土産も渡さずに帰って来てしまう。
それを観た米太郎は、話が纏まらなかった事を悟り、がっかり。
翌日、スイカの出前に行く途中、正代と落ち合った米太郎は、互いの不遇を嘆きあうのだった。
ある日、階段から転げ落ち額にたんこぶをこしらえた一郎の手当てをするために訪れた石橋医院での事。
同伴して来た母親の乙子が、独り身である事を知った医者の石橋(益田喜頓)は、自分も妻を亡くした独身である事を強調しはじめる。
その乙子と一郎が帰った後、病院へやって来たのは、石橋の伯母である文子だった。
そんな彼女に、石橋は、乙子を嫁にもらいたいと相談する。
後日、再び文子を説得に出かけた阿茶太郎とおちえは、乙子を甥の石橋の嫁にもらう事を確約してくれるなら、正代を米太郎の嫁に出そうと交換条件を出される。
これ幸いと、その条件を胸に帰宅した阿茶太郎とおちえは、その事を乙子に打診するのだった。
乙子は、弟の結婚ができるなら、自分は石橋の元へ嫁いでも良いと返事をする。
その後、平穏な日々を過ごしていた阿茶太郎に、警察から呼び出しがかかる。
正義派であるため、しょっちゅう喧嘩騒ぎを起こしている浜三がまた捕まったと言うのである。
日頃から迷惑をかけ通しの警察への手みやげとして、リヤカーにメロンを積んで出かけた阿茶太郎であったが、13回目の補導を詫び、浜三を伴って警察の玄関口に戻って来た彼は、メロンをすっかり盗まれている事に気づき呆れる。
空のリヤカーを引いて帰る途中、いつもは素直な一郎が、その日予定されていた身体検査を絶対受けないと先生に反抗し、廊下に立たされたと聞いた阿茶太郎は、慌てて学校に様子を見に行く。
本人に聞いても何も答えないし、他の先生たちも理由が分からない様子。
実は、その日の診断をしに学校に来ていたのが、母親と再婚するのではないかと言われているあの石橋だったのだ。
そんな一郎のささやかな抵抗心に、のんきな阿茶太郎が気づくはずもない。
ところが、ある日、復員兵の帰還を知らせるラジオ放送を聞いていた一郎は、父親の岸野為男の名前が呼ばれたと家族中に知らせて廻る。
ちょうど、その場にいた阿茶太郎は、ちょうど居眠りしていたので確認が取れない。
慌てて、新聞を捜しまわったり大騒ぎ。
同姓同名の恐れもあると、乙子は、すぐに舞鶴に出発する事になる。
その返事を待つ間、阿茶太郎は、おちえが、いつもは嫌いな夏ミカンを食べているのに気づく。
ひょっとすると、もう一人子供が出来たのでは?と恐れおののく阿茶太郎。
そんあ阿茶太郎の元へ、結婚式の時に会って以来のスミ子の兄の木村精之助が訪ねて来る。
店を広げて、アイスキャンデーでも始めないかと言う。
機械はレンタルで自分が借りて来るとも。
さらに、東京に嫁いでいたはずの長女京子が、夫と喧嘩をしたと言って急に帰って来る始末。
やがて、無事、本人と確認され、乙子と共に帰って来た岸野為男(星十郎)が、帰って来る船で知り合った貿易をやっている友人が、台湾バナナを安く仕入れる話があると言っていたので、それを買いませんかと阿茶太郎に持ちかける。
そんな所へやって来たのが文子、約束通り、乙子をもらう話がご破算になったので、代わりに米太郎を養子にもらうと言う。
その返事に窮しながらも、翌日、新しいアイスキャンデー製造機を、隣のスペースを譲り受けて設置した阿茶太郎は、心当たりから掻き集めて来た金を、台湾バナナの仕入代として為男に託すのだった。
そんな藤本の家に、京子を迎えに、夫の健作(上田寛)がやって来て、あっさり京子と仲直り、そのまま東京へ連れて帰る。
さあいよいよ、待望のアイスキャンデー販売の初日。
張り切って、スイッチを入れた精之助だったが、機械からは水が吹き出し大騒ぎ。
あげくの果てに、機械本体まで壊れてしまうと言う体たらく。
その後、精之助がこぐ自転車発電に切り替え、何とか、アイスキャンデーは出来はじめたが、そこへいきなりの雨が降り始め、列を作って待っていた子供達はクモの子を散らすように逃げ帰ってしまった。
ラジオの天気予報によると、雨は今後数日続くだろうと言う事。
すっかり、当てが外れがっくりする阿茶太郎を慰めようと、五男、横之助は、自分の貯金をはたいて、近所の子供達に、自分の家のアイスキャンデーを買って来るように頼むのだった。
後にそれを知った阿茶太郎の感激ひと塩。
ところが、そんな阿茶太郎の元へ、開場保安部の人間がやって来て、詐欺師関連の話を聞くために為男を連行すると言う。
あの台湾バナナの話は、全て詐欺だったのだ。
もはや、投資した金を返す当てもなく、倒産しかないと覚悟した阿茶太郎は、悲観のあまり寝込んでしまう。
そんな父親の姿を見た子供達は、何とか、家の危機を助けようと、全員が残業やバイト等を始めるのだった…。
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1954年の大晦日から始まったNHKの人気ラジオ放送劇の映画化作品。
斎藤寅次郎監督作品らしく、ユーモラスなドタバタがテンポ良く展開して行く。
13人もいる子供達に、毎日、手を焼いているお人好しの果物屋の主人を演じるアチャコが絶品。
両手の肘を広げて浮かせ気味によたよた歩く、得意のポーズが懐かしい。
キャスティング的に目を引くのは、クールな二枚目風の次男清次を演じている夏目俊二(後の夏目俊太郎)と、五女で中学生の静子を演じている中村玉緒。
中村玉緒は、歌って踊るシーンがある以外に目立った箇所はないが、セーラー服を着た、いかにもまだあどけない少女と言った感じ。
堺駿二のどたばた演技も楽しい。
ラストに、ちらりとトニー谷が出演している所にも注目したい。
