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日本一の男の中の男

1967年、渡辺プロ+東宝、笠原良三脚本、古沢憲吾監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

神社で一人、剣道の練習の余念がない小野子(おのこ)等は、丸菱造船の営業第一課に勤務するやり手のサラリーマン。

今だ独身なのは、亡くなった母親(浅丘ルリ子)に似た、おしとやかで男性に献身的な女性を理想としていたからであった。

今日も、出社するなり、15トン級の船を欲しがって東南アジアからやって来たミスター・ジャンボと商談をまとめるために会いに出かけようとする矢先、小野子は課長(人見明)に食堂に誘われ、近々、君は係長に内定していると伝えられると共に、さり気なく、課長の奥さんの妹だと言う女性の見合い写真を見せられる。

しかし、自信家であり、女性に対する理想も高い小野子は、そんな話は歯牙にもかけず、あっさり断わってしまう。

その後、仕事先の船に出向いた小野子は、現場をうろついている老人を見かけ、ヘルメットもかぶっていないその態度を注意する。

実は、その老人こそ、丸菱造船も含めた大コンツェルンの会長、大神田剛之助(東野英治郎)だったのだが、その正体を知っても、小野子の態度は変わる事がなかった。

その後、人事部長(田武謙三)に呼出された小野子は、「世界ストッキング株式会社」に転勤を命ずるという思ってもみなかった辞令を受取る事になる。

瞬間、造船畑一筋だったプライドもあり、女性の下着なんか売れるかと息巻いて帰った小野子であったが、不思議な事に、母親の写真立てが宙に浮き、そこから、亡き母親の姿が浮かび出してきたではないか!

やがて、懐かしい母親の姿が写ったアルバムを見直していた小野子は、あの大好きだった母親も、若い頃はストキングをはいていたのだと知り、心機一転、その販売に意欲を燃やす事になる。

かくして気分も新たに出社した新会社で、人事部長の春山(牟田梯三)から、銀座にある「世界ストッキングショールーム」で働くように命ぜられた小野子は、張り切って出かけると、主任の花岡(水谷良重)への挨拶もそこそこに売り場に立つと、どんどん、やって来た女性客たちに弁説巧みに商品を売りはじめるのだった。

その様子を近くで観ていたのが、会長の孫で、世界ストッキング会社のお目付役とも言うべき秘書課長を勤めていた牧野未知子(浅丘ルリ子)。

彼女は会社に戻ると、さっそく社長(十朱久雄)に掛け合い、敏腕な小野子を本社の宣伝部に回すべきだと主張する。

すぐに、宣伝部に回された小野子は、高野宣伝部長(藤岡琢也)が押し進めている未知子提案の春の宣伝企画「イレブンAM」のカバーガールに協賛するという契約をまとめて来るよう命ぜられる。

ところが、テレビ局に出かけ、カバーガールたちのマネージャー吉川(荒木保夫)と条件を話し合った小野子は、条件があわないと分かると、あっさり自分の方から契約を止めて帰って来る。

それを知って激怒した高野に対し、小野子はひるまず、自分だったら、今までの十分の一の予算で十倍の効果が上がるアイデアがあると言い出し、さっそく社内放送を通じて、全女子社員を屋上に集合させると、来月1月からテレビで始まる、我が社提供の「パラランショー」に出演してもらうミスパラランを選出する才能コンクールをするので、今からそれに参加してもらうと説明するなり、音楽に合わせて、女子社員全員に行進をさせると、自分は脚線美のきれいな女性を選別しはじめるのだった。

かくして選ばれた女子社員の木の実ナナや伊東きよ子、奥村チヨらを使い、小野子自らも、歌いながら出演した日曜夜9時テレビ番組「パラランショー」の番組視聴率は、3週平均32%という大当り。

小野子を抜擢した未知子の眼力も、重役会で再評価される事になる。

そんな会社にやって来た会長は、今度は、小野子を営業の方へ回してみろと命ずるのだった。

信賞必罰を旨とする会社訓に則り、未知子は、個人的な気持ちも込めて、小野子に特製の腕時計をプレゼントするが、パラランガールたちからもちやほやされていた小野子に、その意味する深い部分は十分に伝わらなかった。

その後、社長室にやって来ていた社長の息子で、会社とも取引があるデュパン社に勤めている岡本敏夫(岡田真澄)が、近々、デュパン社東京支社長が来日する予定だと言う情報を、旧友の未知子にも知らせる。

宣伝部に回された小野子は、営業部長(藤村有弘)から、今の所、特に仕事はないと言われるが、ないなら作りましょうと言い出し、今、現在、うちが付き合っていない大手会社はどこかと尋ねる。

松越デパートの名を聞いた小野子は、すぐさま、先方に出向くと、下着売り場で、世界ストッキングが欲しいと店員に告げる。

うちでは取り扱ってないと言う返事を聞いた小野子は、開き直ったように責任者に会わせろと迫り、結局、仕入課長(谷啓)の部屋に案内される事になる。

客だと思っていた小野子が、世界ストッキングの社員と知るや、仕入課長の態度は硬化し、かつて付き合いもあった世界ストッキングの態度が大きくなったので、付き合いを止めたのだと言うこれまでの経緯を説明する事になる。

それを聞いた小野子は、すぐさま、その仕入部長を赤坂の料亭やクラブに案内し熱心に接待を始める。

さらに、そこで知り合った芸者も伴って、仕入部長と接待ゴルフに出かけていた現場を、たまたま敏夫と一緒に来ていて目撃した未知子は、翌日、アメリカ式の合理主義を旨とし、社用接待禁止のはずの我が社でどう言う事なのかと、宣伝部を責める事になる。

そんな話は寝耳に水だった営業部長は、小野子を呼び出すと、山のように自分の所に送り込まれた請求書を差出しながら、接待攻勢等うちの社風にあわないので、即刻やめろと説教しはじめるが、小野子は意に介さず、かけた金の何倍も儲ければ良いのではないかと持論を展開するのだった。

その話を、自宅で報告された会長は、それは未知子の方が悪いと断定し、小野子を今度新設される外国部の部長に抜擢するよう、社長に命ずるのだった。

事実、その後、松越デパートのみならず、小野子が接待した南海商事、角紅物産などから次々と注文が殺到する事になり、改めて、小野子の才能が高く評価される事になる。

さて、いよいよ外国部長に抜擢された小野子は、身分的に、部下になった未知子を通訳として伴い、デュパン社に乗り込むが、そこの副社長から聞かされた所によると、今まで、世界ストッキングとの間で締結していた特許契約の10年延長を確認するのみならず、御社の製品を我が社のブランドとして販売したいので、製造売上げの50%を寄越せと言う。

デュパン社のブランドで売り出されれば、我が社の製品にも箔が付き、売上げも伸びるに違いないと喜ぶ未知子とは裏腹に、この契約を飲めば、我が社が乗っ取られるに違いないと呼んだ小野子は、支社長が来日する明後日まで、自分は帰らないからと言い残して、一人どこかへ出かけてしまうのだった。

その足で、京都工場を訪れた小野子は、工場長(清水元)から、今ではデュパン社の技術に頼らなくても、独自の技術を開発していると聞き、意を強くするのだった。

かくして、来日したデュパン社東京支社長ファウンド夫妻を出迎えた小野子は、ミスター・ファウンドが日本の武道に興味を持っている事を知るや、自ら、毎日鍛練に勤しんでいる神社に案内し剣道で勝負したり、相手が得意だと言う柔道の相手をしてやったりする。

もちろん、馴染みの料亭「大春日」での接待も忘れない。

こうしたサービスで、すっかり気を良くしたファウンド夫妻を、翌日、京都見物と称して、京都工場に案内した小野子は、彼らに、原料を注ぎ込むだけで、30秒後には包装されたストッキングになって出て来ると言う自慢の機械を見せるのだった。

ところが、翌日、こうした小野子の行動を、プライベートとビジネスを混同しただまし討ちだとして、ファウンドから抗議の電話が会社にかかって来る。

全て、小野子の判断ミスとして、未知子も彼を見限り、彼は即刻首を言い渡される事になる。

しかし、その後、意外な展開が…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

植木等主演で人気を呼んだ「日本一の〜男」シリーズ第5弾。

ヒロイン役が、浜美枝から日活の浅丘ルリ子に変わっているのが特長。(五社協定にはひっかからなかったのか?)

今回も、毎度お馴染み「今太閤記」風というか、寓話的なトントン拍子出世話が展開されて行く。

出来としては安定しており、いつも通り素直に楽しめるのだが、この作品で特に驚かされたのは、劇中で、主演の植木等が、当時、東宝のもう一方の看板であったゴジラと共演するシーンがある事。

小野子が接待目的で、松越デパートの仕入部長(谷啓)を連れて行ったクラブには、何故か巨大なスクリーンがステージの背後に備え付けられており、イメージ映像みたいなものが流れている。

ステージでは、ミリタリールック調のミニスカートを着た女の子に囲まれて、平尾昌晃が唄っているのだが、彼が歌い終わると、小野子たちに付いて来ていた芸者たちが、「今度は、小野子さんが歌って!」とねだる。

「まいったな〜」とか言いながらも、植木はすでに店の中央へ。

バンドは、当然のようにメロディを奏ではじめ、植木が歌いはじめるのだが、その時、背後のスクリーンの映像が、急にゴジラの映画に変わるのだ!

つまり、植木等が、ゴジラの映像をバックに歌っている訳。

正に高度成長期、東宝を支えた二枚看板スターの共演と言うしかない。

ミニラも写っていたから、おそらくこの作品の半月前に公開された「怪獣島の決戦・ゴジラの息子」の映像だったのではないだろうか。

物語の最初の方で、下宿に戻った小野子の目の前で、母親の写真を飾った写真立てが空中に浮かび、そこから母親役の老けメイクをした浅丘ルリ子の姿が浮かび出してくるという、ファンタジックな合成シーンもあるので、特撮ファンとしても見のがせない一本ではないだろうか。

この頃の浅丘ルリ子は、痩せ過ぎでぎすぎすした感じもなく、瑞々しく魅力的。

ファンファン(岡田真澄)も、文句なくかっこいい。

明るく陽気で、かつパワフル、何時観ても安心して楽しめ、さらに元気までもらえるプログラムピクチャーの見本のような佳作だと思う。