1961年、東映東京、高岩肇+岩井基成脚本、関川秀雄監督作品。
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アリゾナ州、ツーソンのとある草原。
ペドロ(ダニール・ミナーレ)というメキシコ系の男と合っていた警官助手のチャーリー(ジョン・エバース)は、突然、何者かに射殺される。
やがて、草むらから姿を現した二人組に、ペドロを撃ち殺されてしまう。
二人組は、ペトロが乗って来た車の後部座席や天井を、ナイフで切り裂き、必死で何かを探しはじめる。
その頃、自宅で、バーベキューの用意をして、遅れて来るはずのチャーリーを待っていたのは、モーガン警部(ジョン・ブロンフィルド 声-若山弦蔵)と、助手のトム刑事(ジェームス・グリフィス)、そして、チャーリーの婚約者のメリー(テリー・スタンホード)だった。
そんあモーガンの家に電話が入り、受けたトムにチャーリーの死が知らせられる。
現場に到着したモーガン警部とトムは、荒された車内を念のため、もう一度、再調査。
すると、後部座席の後側に隠されていた造花を発見する。
その造花を分解してみると、茎の部分からこぼれ出たのはヘロインの粉だった。
その造花の製造元が香港だと知ったモーガン警部とトムは、ワシントンの連邦麻薬保安局へ出向くと、この事件は自分の管轄内で起きたものだから、最後まで自分に捜査させてくれと訴えでて、許可がおりる。
飛行機で香港へ向ったモーガン警部は、夜間、息抜きの為、ラウンジへ独り向うが、それを追うように近づいて来た男から、いきなりナイフで斬り付けられる。
揉み合う内に、相手は自分のナイフで自分の胸を突き、即死。
モーガン警部は、乗務員に身分を告げ、香港警察への連絡と後処理を任せるのだった。
香港に到着したモーガン警部とトムは、バイヤーのモーリスとトミーと名乗る事にするが、町中に出た二人は早くも自分達を尾行する男たちに気づく。
かかって来た地元のチンピラを叩きのめして、香港警察に連れて行ったモーガン警部は、署長(ハロルド・S・コンウェイ)に、飛行機で死んだ殺し屋が着ていた服が日本製だった事を聞く。
さらにモーガン警部は、その男の遺留品であったマッチに記された「クラブ トレヤード」という店名をヒントに、その店に向う事にする。
クラブ「トレーヤード」では、裏でカジノを開いており、用心棒の男(山本麟一)が、壁の隠し穴から、クラブ店内の様子を伺っていた。
そんな店へ現れたのは、マラッカのカミカゼと呼ばれている謎の男(鶴田浩二)。
同じく店内にいたモーガン警部は、怪し気な男を追って、店の奥へ踏み込むが、そこには、大量の木箱が積み重ねられていた。
カウンターで飲み始めたその男は、店内でサキソフォンを吹いていたピエロを目で追って行く内に、一人のチャイナ服の女に目をとめる。
その女は、クラブの裏側の部屋に入ろうとして、用心棒に止められる。
お嬢さんが入るような所ではないと言うのだ。
そこに割って入って来たのがカミカゼと言う男、女を押し返そうとしていた用心棒をいきなり殴りつける。
懐から十字手裏剣を取り出した用心棒を押しとどめたのは、マネージャーの張(河野秋武)。
帰りかけたチャイナ服の女が落とした造花を拾って渡してやったのは、モーガン警部。
その女が言うには、造花は自分で作ったらしい。
そのモーガン警部の事を、アメリカから追跡して来たもう一人の殺し屋が、張に報告していた。
トムと落ち合ったモーガン警部は、トムの報告から、香港の造花の大半は、香港孤児院と言う所で作っていると知り、さっそく、その場所へバイヤーを装って出かけるが、そこで、夕べのあのチャイナ服の女と再会する事になる。
彼女の名前は麗華と言い、香港公司とクラブ「トレヤドール」の両方を経営している父親を持ち、今度、その父親に付いて東京へ向うと言う。
造花は、慈善協会東京支部へ送るのだとも。
そんな麗華と、モーガン警部とトムが、香港でドライブを楽しんでいる所を殺し屋は狙撃しようとするが、チャンスを逸する。
やがて、港に横付けされた船に、モーガン警部とトムが乗り込むのを見届けた、あのカミカゼと呼ばれる男は自分もその船に乗り込む。
船には、すでに、麗華と、その父親の周(山形勲)が乗り込んでおり、食堂で食事を始めようとしていたが、そこに現れたモーガン警部とトムを御一緒にと同じテーブルに誘う。
その後、甲板に独り出たモーガン警部は、用心棒の投げた十字手裏剣で、危うく大怪我をする所だった。
その用心棒を追う途中、見失ったモーガン警部は、甲板にいた麗華と、そこに近づくカミカゼと言う男の姿を目撃する。
バイヤーと名乗っている二人の外国人には近づかない方が良いと忠告して来たカミカゼは、トレヤドールで会った時、麗華を誰かにそっくりだと言っていたのだが、その場で彼女がその事を尋ねても、何も答えようとはせず、ただ「戦友」の唄を口笛で吹きながら姿を消すのだった。
やがて、船が到着した港で、トラックに積まれた周の荷物の行く先を調べるため、トムは、トラックと一緒に走り去る車の後部にしがみつく。
一方、残ったモーガン警部に近づいて来たのがカミカゼ。
何故か、モーガン警部を毛嫌いしているかのようで、いきなり、二人は取っ組み合いの喧嘩となる。
やがて、現場に到着したパトカーで警視庁に連れて行かれた二人は、各々、身分証明書を確認されるが、外国人の方はすぐにモーガン警部と判明したので、警部(神田隆)に接見し、今までのいきさつを全て説明する事に。
日本にいる不良外国人の名簿や、科学工場のリスト等を要求するモーガン警部であったが、マラッカのカミカゼという男も、マラッカから南支那海まで股にかけ、しかも大金を持っている得体の知れない男なので要注意と言う話を聞いた部長は麻薬関係者の疑い有りと、一旦、留置され、その後、釈放されたカミカゼに、刑事の中川(中山昭二)を尾行に付かせる。
ところが、皇居あたりで、その尾行者の中川を振り返ったカミカゼは、俺の事を思い出せないのかと、いきなり言い出す。
中川が怪訝な顔をして相手の顔を確かめていると、カミカゼは、かつて戦友だった風早だと名乗る。
かつて、沖縄から特攻隊の一員として待機しながら、一人生き残った男だった。
その日は、中川の家に泊まる事になった風早だったが、彼の服をたたんでいた、中川の妻が、ズボンのポケットから落ちた一枚の写真を見つけ、それをそっと夫に見せるのだった。
そこには、セーラー服姿の、麗華そっくりの女性が写っていた。
風早の亡くなった妹だった。
風早は、今でも、その妹の事が忘れられないのだ。
翌日、その素性を警視庁にいたトムらに報告した中川だったが、当の風早は、町の麻薬中毒者から、ヤクの購入先を独自に聞き出していた。
その様子を観察していたのは、モーガン警部。
やがて、その麻薬の闇屋の元締め、栃木組に単身乗り込んだ風早は、親分の栃木に大金を見せつけ、直にヤクを手に入れたいと申し入れる。
そのふてぶてしい態度を気に入った栃木は、風早を、中央ビルの中にある「E・ブラウン商会」という会社へ連れて行き、社長のエド・ブラウン(フランク・レイノルズ)に、用心棒として雇ってくれないかと、彼を紹介するのだった。
もちろん、ビルに入った彼らの様子も監視していたモーガン警部は、トムに、ブラウンの身元調査とロス向けの汽船の調査を本国に通達するように電話する。
しかし、これと言った結果は得られず、壁にぶちあたったモーガン警部は、麗華を利用してみようと、盗聴器付きの人形を、呼出した麗華に渡すと、彼女は喜んで、それを父親がいる部屋の棚に置くのだった。
その頃、社長室に入り込み、机の中等を漁っていた風早は、突然帰って来たブラウンにとがめられる。
その場は何とかごまかしたものの、そこへやって来たのが、香港の張。
彼は一目で、風早がマラッカのカミカゼだと見抜き、ブラウンに告げたので、それを知ったブラウンは、机の中にあった銃を用心棒に渡すと、風早を外へ連れ出して消すように命ずる。
しかし、その銃は、先程、風早自身が、弾を抜き取って置いたものだったので、難を逃れた風早は、用心棒を叩きのめして逃げ延びるのだった。
その頃、麗華が置いたヌイグルミの盗聴器から、周と、彼を訪ねて来た張の会話が、警視庁のモーガン警部たちに届いて来る。
しかし、やはり、今一つ、重要な情報はつかめない。
その内、倉庫に置いてあった荷物を、用心棒たちがトラックで移動しはじめるが、その場に張っていたトムは、肝心の所で、その車を見逃してしまう。
そのトラックは、そある工場に運び込まれたのだが、それを近くで監視していたのが風早だった。
彼は、麗華の泊まっていたホテルを訪ねると、彼女に造花に仕込まれたヘロインを取り出してみて、父親周がやっている麻薬密輸の裏商売の事を教え、すぐに、この場から逃げろと通告する。
自分が必ず、あなたの事を幸せにしてみせるとも。
その言葉に従い、ホテルを後にしようとした麗華であったが、そこに現れたのがモーガン警部。
彼が言うには、今動くと、警察が身張っているので、ホテルに戻っていた方が良いと言う。
それで、再び、ホテルへ又戻りかけた麗華だったが、いきなり周の手下二人が現れ、彼女を無理矢理拉致して車に乗せ、秘密工場に連れて行くと、周は、何も言わず、彼女を密室に閉じ込めてしまうのだった。
一方、港で麗華の事を待っていた風早は、彼女が約束の時間になってもやって来ない事に不安を覚え、思いきって、警視庁にいる中川に電話を入れる。
そして、秘密工場の場所を教えると、自分は一人で工場に乗り込むのだった。
モーガン警部たちも、その知らせを受け、一路、秘密工場へ…。
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本国では1956年から、日本では1960年からテレビ放映された「モーガン警部」の主役コンビをそっくり日本に連れてきて作られた異色のテレビドラマの映画化作品。
実は、個人的に、すごくこの番組を記憶していている事があり、感慨深かった。
家にはじめてテレビがやって来た日、電器屋さんがスイッチを入れた瞬間に映し出された番組が、この「モーガン警部」というタイトルだったのだ!
もちろん白黒画面。
そのモーガン警部が、カラーで登場するのだからすごい!
しかも、吹き替えは、当時のテレビと同じ若山弦蔵!
昔のテレビ番組自体は、ほとんど記憶に残っていないのだけれど、この映画版のイメージが、かなり違う事は確か。
アリゾナ砂漠のど真ん中の小さな町で繰り広げられる、ちょっと西部劇っぽいポリスものという感じだったはずだが、本作では砂漠は登場しない。
最初から、高圧鉄塔が背後にある草深い場所にサボテンなんかが生えている。
どうやら、日本で全てロケをやったようだ。
続いて登場する香港も、夜景のシーンがワンカットは入る以外はセット。
途中、広大な公園のような場所が登場するので、少しはロケもやっているのかも知れないが。
モーガン警部が主役っぽいのは、この辺りまで。
日本に到着してからは、謎の男こと鶴田浩二の方が主役っぽくなる。
モーガン警部は、ただ、その鶴田の行動を、陰ながら監視している地味な立場になる。
周りに何もない原っぱに、ぽつんと安普請の建物が作られているので、これは後で爆破するのかな?と思っていると、実際その通りだったりする。
はっきり言って、日本での展開にアイデアがなさ過ぎる。
「戦友」を口笛で吹く特攻崩れの鶴田が暴走気味に突っ走るという発想も陳腐なら、その動機も実に曖昧。
彼がいまだに思いつづけている妹の説明もないので、ひょっとすると、妹を麻薬で亡くしたのか?と、観ているこちらが、勝手に想像してストーリーを補うしかない。
香港のクラブの用心棒を演じている山本麟一は、左目に白いコンタクトを入れた凝った容貌に、十字手裏剣が武器と言う珍妙さ。
張役の河野秋武が、なかなか無気味で存在感がある。
珍品と言えば、そのものズバリの作品ではないだろうか。
