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水戸黄門漫遊記

1958年、松竹京都、冨田義朗+森田竜男脚本、福田晴一監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

秋だ!祭りだ!

…と、大賑わいになるはずの東海道小田原宿の祭りの当日、人出を目当てに店を張っていた占いの慶雲堂(伴淳三郎)、ガマの油売り吉兵衛(天王寺虎之助)、平吉(大泉滉)の三人が、何故か人っ子一人いない境内で途方に暮れていると、道の双方から二組のヤクザ一家が現れた。

すぐに「出入り」が始まる事を察知し、近くに避難する三人だったが、双方相乱れての大立ち回りが始まった瞬間、不思議な老人と二人の若者が登場し、天下の副将軍水戸光国と名乗って、やくざたちの暴挙をたしなめる。

その威光のあらたかさを見て感心していた慶雲堂は、その後、旅の途中で黄門様を紹介するセリフを他の二人に聞かせていた所、近くにいた侍たちが、自分達に向って土下座をしたので、あたふたと逃げ出す事になる。

しかし、その事が慶雲堂に名案を思い付かせる。

偽黄門一行に化けて旅を続ければ、酒も食い物も不自由しないと言う訳だ。

さっそく、偽黄門として旅を始めた三人は、知的ハンデのある美しい娘八重(富士真奈美)とそのお供の清二郎(小笠原省吾)ら旅人たちをせき止め、その荷物を改めている侍一行に出会う。

慶雲堂、さっそく黄門の名をだし、事の子細を聞いた所によると、侍たちの親玉らしき人物は赤松大五郎(大邦一公)といい、奪われた品物を探しているのだと言う。

とりあえずは、旅人たちの迷惑になるので、こういう行為は止めるようにと注意して侍たちと別れ、その夜、旅籠三嶋屋に宿泊した慶雲堂一行、案の定、黄門様御一行として大歓待を受ける事になる。

皮肉な事に、同じ宿に泊まっていて、そのとばっちりを喰う形となったのが、本物の黄門様(澤村國太郎)。
助さん(近衛十四郎)格さん(林彰太郎)共々、ちびた浴衣に粗末な部屋と、さんざんな扱い。

慶雲堂一行、豪勢な食事の後は、大広間いっぱいに敷き詰めた紙の上に、大量の絵の具をぶちまけて前衛書道などと称する、どんちゃん騒ぎに御満悦。

宿の亭主は、そんな慶雲堂たちに、心ばかりと、小判の包みを進呈する。

そんな慶雲堂に近づいて来たのが、お綱(嵯峨美智子)と称する粋な姐御。

夜は寝床で、そのお綱に足を揉まれ、鼻の下を伸ばす慶雲堂だったが、その様子を隣の部屋から覗き見て悔しがっていた吉兵衛と平吉には、宿からのサービスの按摩と称し、力士のような大男がやって来たからさあ大変。

翌朝、宿を出立した慶雲堂たち一行は、海岸で身ぐるみ剥がされ、倒れている一人の男を発見し助ける。

聞けば、九紋竜の長次(北上弥太朗)というごまのはいに身ぐるみ剥がされて、三日間何も食べてないのだという。
しかし、実はその男は、江戸、小間物屋の越前屋を騙した慶雲堂、吉兵衛、平吉らの人相書きを持って追い掛けて来た岡っ引、下谷の半八(宮坊太郎)だったのだが、助けてくれた三人組がその追っている張本人たちだとは全く気づいていない様子。

小判を持っている事で気が大きくなっている慶雲堂は、そんな半八を、近くの飯屋に連れて行き、自分達も一緒にたらふく飲み食いするが、その様子を怪しむ店の女主人お熊(堺駿二)に差し出して見せた小判の包みの中身は、何時の間にか石ころにすり変わっていた。

同封されていた書き置きによると、夕べのお綱が盗んで行ったらしい。

逆上したお熊は、吉兵衛を台所に呼び込むと、持っていた包丁で、髪を全部剃ってしまう。

おまけに、全員の身ぐるみも剥がされ、下着姿で放り出された一行は、田んぼの立っていたかかしの衣装を借りて着る始末。

川越えの船着き場前で、再び、旅人たちの荷物調べをしている赤松大五郎一派に再会した慶雲堂一行、前と同じ要領で、彼らを止めさせるが、そこに現れたのが、慶雲堂と顔なじみのスリの長次。

赤松たちの前で、懐かしそうに声をかけて来る長次を何とかごまかし、慶雲堂一人は、あの美しい狂女八重と一緒に船に乗り込むのだった。

しかし、船に乗せてもらえなかった吉兵衛と平吉は、川沿いの街道を走って随行する事になる。

そんな所へやって来た道中師のお綱は、赤松に、慶雲堂たちの正体をばらす。

同じく、半八も、長次から慶雲堂たちの正体を教えられる事になる。

そんな事は知らない三人組は、休息していたお堂で、八重とお供の清二郎から、自分達は、四国の丸亀に向っているだと教えられていた。

そんな話を、偶然、そのお堂の中にいて、聞いてしまうのは本物の黄門トリオ。

その頃、丸亀藩では、御世継ぎを巡って、お家騒動が起こっており、楓の方(高山裕子)の生んだ鶴松を後継ぎに押す家老黒田内記(戸上城太郎)は、反対派の中山を牢に幽閉していた。

その秋山を支援する秋山新之助(真木康次路)ら一派は、江戸から連判状を持ってやって来る密使を今や遅しと待ち受けていたのであった。

岡崎の宿にのんきに泊まっていた慶雲堂三人の前に、又しても現れたのはお綱。

さめざめと泣いてみせて、三人から盗んだ小判25両は、ごまのはいに奪われてしまったと言う。

懲りない三人は、またまたお紋の芝居に引っ掛かり、彼女を許してしまうのであった。

そんな宿へ乗り込んで来たのが、半八、しかし、地元の役人がやって来て、その半八を偽岡っ引として捕まえようとしたから、現場は大混乱、慶雲堂ら三人は、その間隙をぬって逃げ出すのだった。

町を上げて、そんな慶雲堂たちを探していた赤松とお紋の前に現れた長次は、自分も慶雲堂を探すので、先に自分が捕えたら、賞金をもらいたいとお紋に挑戦する。

そんな中、当の慶雲堂たちと八重、清十郎たちは、旅芝居の市村あやめ(島倉千代子)一座に紛れ込んでいた。

役者に化けた三人は、女三味線弾き(榎本健一)の歌に合わせ、「お富さん」の芝居を舞台で演じていたが、そこに赤松たち一派と役人たちが乗り込んで来たので、舞台上は上を下へをの大騒ぎになる。

ところが、そんな舞台下の奈落には、本物の黄門トリオが待っており、慶雲堂らは正体がばれたと観念するが、意外な事に、本物の黄門は舞台上に登場すると、自らが偽黄門と名乗り、役人に進んで捕縛される事によって、三人組を助けるのだった。

一方、清二郎の援護によって、赤松たち一派から逃げきった八重は、慶雲堂たち三人組と合流し、実は自分が狂女というのは芝居で、大切な連判状を運んでいる所なのだが、これ以上自分が持っていては危ない、これからは、慶雲堂たちに持っていてもらいたいと打ち明けるが、それを盗み聞いていたのはお紋。

それに気づいた八重は、十月十日の午の刻、再興寺で会おうと三人に告げ、自分は一人で立ち去るのだった。

泉州堺の港、祭りの雑踏の中、本物の黄門と再び再会した慶雲堂たち三人組は、秋山たちから発見され、連判状を奪われまいと、必死の逃亡劇を始める。

その後、八重は、清二郎と再会するが、赤松一派に発見され、捕まってしまう。

どうしても、四国への船に乗る事が出来ない三人の前に現れたのは、あの半八。
意外な事に、彼らを捕まえるのではなく、手伝いをしてやると言う。

実は、半八は、本物の黄門から、そうするよう秘かに依頼されていたのだった。

かくして、吉兵衛が平吉を肩車して、一人の大男に見せ掛け、慶雲堂と二人の罪人を連行する岡っ引という扮装をして船に乗り込む事が出来た三人は、丸亀藩中で、地元の農民らしき男に案内を頼んで、再興寺へ向うが、連れて来られたのは、赤松らが待ち受ける別の神社内だった。

案内役の農民は、実は、長次の変装だったのだ。

勝負に勝ったと、褒美を要求する長次が、目の前で赤松から斬られるのを見たお紋は、心を入れ換え、牢に入れられていた慶雲堂や八重たちを逃してやるのだった。

さらに、現れた謎の覆面姿の男二人(実は、助さん格さん)にも助けられ、一行はその場から逃走に成功する。

いよいよ、切腹を申し付けられた中山が、腹を斬ろうとする寸前、慶雲堂ら三人組と清二郎らが駆けつけて来て、赤松たちと大乱闘となる。

城主、京極高豊(市川男女之助)は、武器庫の隣に幽閉されていると言うので、そこへ乗り込んだ三人は、武器庫内でも大暴れ。

そこへ、本物の黄門が現れ、かねてより内偵から黒田内記らの悪事を暴き、事件は落着する。

そんな黄門、慶雲堂らに対しては、偽黄門に化けて人を騙していた罪は罪として、遠島を言い付けるが、その目的地とは、九州、鍋島藩だと言う。

実は、そこでも、お家騒動の噂があるので、慶雲堂たちに、今回と同じように、偽黄門として先に乗り込み、調査して欲しいと言う。

そして、公認の偽黄門として認められた慶雲堂たち三人は、黄門から与えられた立派な衣装を身に付け、船に乗り込むのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

タイトルからすると、お馴染みの水戸黄門の活躍を描く黄門もの…と考えがちだが、実は、偽黄門の方が主役で、本物は脇役的な扱いと言う、やや変則的な構成になっている。

四国丸亀藩のお家騒動を巡る話の骨格自体は、山手原作「桃太郎侍」を連想させる。

旅芝居での舞台上や、堺の港での祭り、さらに、クライマックスの丸亀城武器庫での大立ち回り等のシーンでは、大掛かりな仕掛け等も組まれており、あたかも「ドリフの全員集合コント」を観るようなドタバタ劇になっている。

この当時の松竹喜劇は、かなり予算をかけていたと見え、ドタバタ表現もそれなりに見ごたえがある。

特に、エノケンが三味線語りに扮し、舞台上のドタバタに合わせて、臨機応変のセリフを次々とくり出す様は、バカバカしくも抱腹絶倒の珍妙さ。

他にも、あたかも山姥のような扮装をした堺駿二が、吉兵衛をツルッ禿に頭をそってしまったため、その後、カツラをかぶって旅をする所等も愉快。

狂女に扮した八重と言う娘役が、あまりにもきれいな割に見覚えがなかったので、後で誰なのか調べた所、何と、富士真奈美ではないか!

若い頃は、あんなにきれいだったとは…。

旅芝居一座で歌を披露する島倉千代子も、声で、おそらくそうだろうと察しは付いたが、さすがに容貌だけでは見分けにくい程若い。

敵方の下っ端侍として、トニー谷なども出演して、ドタバタを演じてみせている。