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高校生無頼控
突きのムラマサ

1973年、国際放映、小池一雄+芳谷圭児原作、小池一雄脚本、江崎実生監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

雪の三月、全国指名手配中の兄を捜して度を続ける、男ムラマサ事、村木正人(大門正明)は、福島県のとある川で全裸になり、褌を洗っていた。

着るものがないので、素肌に直接、剣道の防具を着てごまかしていたが、ちょうど、そんな所に自転車に乗った若い女性が通りかかり、ムラマサの股間から覗くものに気を取られて転倒してしまう。

どうやら、その女性、男性のシンボルを見たのは生まれて初めてだったようで、その事に気づいたムラマサは、持ち前の図々しさで彼女に言い寄り、あっさり仲良くなると、その自転車に乗せてもらう事になる。

しかし、運転する自分の腰に回していたはずの腕が、何時の間にか胸に上がり、さらにあからさまにそこを揉み始めたムラマサの行為にあきれた女性は、自転車を止めるとムラマサを下ろして、そのまま一人立ち去ってしまうのだった。

一人になったムラマサは、帰宅途中の可愛い女子高生に思わず目をとめる。

懐を探ってみると、所持金はたった500円。

どうにかなるだろうと、ムラマサは、その有り金全て使ってピンク映画館に入る事にする。

売店で買ったパンをむしゃぶりつきながら画面に見入っているムラマサの音に文句を付けて来たのは、隣に座っていた男子高校生らしき三人組。

一旦は、その注意を聞いて、食べるのを中断したムラマサだったが、性欲と食欲を一緒に満足させる事を旨としている彼は、しばらくすると、今度はせんべいをかじりはじめる事になる。

さすがに、その迷惑行為に切れた三人組は、ムラマサに食って掛かるが、そのもめ事の間に、肝心の映画は終わってしまう。

せっかくの映画観賞を台なしにされて、完全に頭に来た三人組に誘われるまま表に連れ出されたムラマサは、人気のない草っ原で、その三人組の一人からいきなりパンチを見回れるが、その拳骨を平手で受けとめたムラマサ、もし自分が、この拳骨を一瞬で開かせる事が出来たら、飯と宿泊を世話してくれないかと言い出す。

勿論、そんな事ができるはずがないと思う三人組は承知するが、ムラマサは、合気道の要領で、あっさり相手の手首の急所を掴み手を開かせてしまう。

これに困ったのは、相手の三人組。
彼らとて、手持ちの金等ほとんどなかったからだ。

彼らは、地元の東華学園に通う金村淳一だったのだが、ムラマサは勝手に「こんちゅうさん(畠山麦)」「いちゃやま(赤松直人)」「ジロー(河原裕昌)」などとあだ名を付けてしまう。

すっかり、彼らを見くびってしまったのだ。

そうなると三人組ももはや抵抗する気力もなくなり、仕方なく、ムラマサが勝手に入ってしまったスナック「タンボ」に付いて行くはめに。

それでも、何とかこの仕返しをしようと、三人組は、明日から新学期が始まる高校空手部の崎山(森烈)らに手を回しておこうと、こっそり相談するのだった。

さて、そのスナックには、女性の店員が一人しかおらず、「ラストオーダーだから、注文は早くしてくれ」と、何だか態度が刺々しい。

ピザしか出来ないと言うので、それを頼んだムラマサ、料理ができるまでに、三人組に、あの女店員のパンティの色を当て合いっこしようと言い出す。

乗った三人は、めいめい色を言い合うが、ムラマサは白だと言う。

そして、テーブルにあった砂糖の小山を床に三ケ所作って、彼女がピザを運んで来るのを舞っていると、やがて、やって来た彼女は、砂糖に小山に足を滑らせそのまま三人組の方に倒れ込んでしまう。

その時見えたパンティの色は、確かに白!

その行為に腹を立てた彼女の顔に、何と、ムラマサはピザを塗り付け、そのまま鏡に向かい合わせる。

それほど、先ほどからの彼女のいらだった顔は醜いのだと、教え諭すためだった。

その後、心を開き意気投合した彼女とムラマサたちは店を閉めて踊りまくる事に。

すっかり三人組が疲れ果てて寝てしまった中、彼女が付き合っていた男に愛想をつかし落ち込んでいる事を聞き知ったムラマサは、彼女を慰め、そのまま店の中で抱き合うのであった…。

翌朝、コンチュウ事、金村の自宅である金村クリーニング店には、勝手に泊まりに来たムラマサの姿があった。

それまでのいきさつ等知らない金村の両親(由利徹、九里千春)は、何の遠慮もなく朝食をかきこむムラマサの体育系の爽やかさにすっかり感心する。

ムラマサは、泊めてもらった礼だと言い、早朝のクリーニングの配達を淳一と手伝うことにする。

途中、川野病院という所に配達に行った淳一は、病室でいちゃついている医者と看護婦のあられもない姿を目撃する事になる。

その後、登校途中の女子高生(実は、前日、ムラマサが見初めた美少女)に出会った淳一が、妙に照れているのを見たムラマサは、コンチュウが、彼女の事を好きなのだと見破るのだった。

淳一の話によると、東華学園には、全男子生徒憧れの「コチコチコンビ」と呼ばれている二人のマドンナがおり、一人は、今の東風(こち)みどり(加藤小夜子)、もう一人は、生物の教師で古千谷先生なのだと言う。

その話に興味を持ったムラマサは、自分も淳一に付いて、新学期が始まった東華高校へ出かけてみる事にする。

校庭では、各クラブによる新入生勧誘合戦があちこちで繰り広げられていた。

クラブに入れば、新入生歓迎会でたらふく飲み食いができるとのいちゃやまの言葉に乗る形で、ムラマサは能天気に、空手部、柔道部、剣道部に次々と入部、さらに、あの東風みどりが勧誘していた演劇部にまで入ろうとする始末。

始業式に紛れ込んだムラマサは、壇上の校長(中条静夫)の挨拶の横に座っているメンバーの中に、昨日出会ったあの自転車の女性を発見、手を振ってみせる。

実は、彼女こそが、マドンナの一人、古千谷先生(ひし美ゆり子)だったのだ。

その後、歓迎会目当てで一人体育館に出かけたムラマサは、どうも様子がおかしい事に気づく。

各クラブの主将相手に勝負をし、勝てたら、歓迎してやるのだと言う。

いちゃやまらに計られた事に気づいたムラマサだったが、全く動ぜず、すんなりと仕合に挑む事になる。

その場には、あの古千谷先生も様子を観に来ていたので、ムラマサは大張りきり。

空手部主将崎山や、剣道部主将、二見五郎(山口昭)、さらに柔道部主将までも全員、あっさり負かしてしまったムラマサは、難なく、その後、部員たちが金を出し合ったすき焼きを喰わせてもらう事になる。

その部屋へ乗り込んで来たのが、東風みどり。

予算委員会の会長でもある彼女は、全く成績の振るわない運動部の予算を、今後削減すると一方的に宣言して帰って行く。

いきなり無茶な事を言われた各部長たちは、東風を追い掛けて翻意させようとするが、遠征の時、トルコ風呂に行った柔道部や、芸者をあげて遊んだ空手部、さらに、馬券を買っていた剣道部等のスキャンダルを逆に暴かれるのだった。

がっくりして戻って来た彼らの姿を見たムラマサ、資金調達の為、「キッスくじ」というのを発行したらどうかとアイデアを出す。

当ったら、全校生徒憧れの東風みどりにキッスできる権利が与えるという条件なら、男子はみんな買うはずだと言うのだ。

さらに、女子の事も考え、全校女生徒憧れのフォーク部の木村(本郷直樹)に対象になってもらう事にする。

さらに、新聞部に協力を頼み、その事を構内新聞ででかでかと載せてもらう事に成功。

かくして、一枚200円の「キッス券」は、飛ぶように売れて行く。
ムラマサは各主将たちに、やがて、この件に関し問題が起きた時の責任を全部自分が負う事を条件に、このアイデア料として、売上げの55%を要求するのだった。

そうした中、この事態を知り激怒したのが、勝手にキッスの対象にされた東風みどり。

彼女は、猛然とムラマサに抗議しに来るが、新聞部の部長でもある彼女には、新聞に書いた記事に対する記事に責任があるのではないかと、ムラマサから思わぬ反撃を食らい、渋々、引き下がらざるを得なくなる。

しかし、そのムラマサを外部過激派ではないかと疑って警察に通報する教師がいたため、学校に出向いて来た刑事(小池一雄、名古屋章)たちに、あっさり同行する事になるムラマサ。

彼は、教頭(仲谷一郎)に向って、生徒達は皆狼だが、狼にも狼なりの青春がある事を理解して欲しいと言い残して、学校を去って行くのだった。

そのムラマサ、身元引き受け人として古千谷先生が来てくれた事もあって、過激派の兄ではない事が分かり、あっさり釈放。

その古千谷先生が自転車で警察署から帰る途中、トラックに乗った労務者達から追い掛けられ、転んでしまったのを目撃したムラマサは、義憤にかられ、彼女の自転車を借り受けて、そのトラックを追い掛けると、労務者達(榎木兵衛、木島一郎)を引きづり下ろして、こてんぱんに叩きのめすのだった。

すっかりムラマサの男らしさに参った古千谷先生は、そのままムラマサと大空の下で抱き合うのだった。

その頃、東華学園の講堂では、キッス券の抽選会が行われており、女子の当選者「777番」はあっさり決まって、壇上で木村のキッスを受ける事が出来たのだが、東風みどりのキッスの当選者「935番」が見当たらない。

放課後、帰宅する東風みどりの前に立ちふさがったのはムラマサだった。

彼が差し出したキッス券は、当選番号「935番」、彼は当然のように、その場で東風みどりを抱き締めると、熱い口づけを交わすのだった。

かくして、町を去る事になったムラマサは、道で待ち伏せていた古千谷先生と東風ひどりと目をあわせる事もなかったが、唯一、町に思いを残すのは、キッス券のアイデア料をもらい損なった事だった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

小池一雄+芳谷圭児原作のコミック「高校生無頼控」の映画化第二弾。

沖雅也が、硬派なんだか軟派なんだか正体不明の主役ムラマサを演じた一作目とはうって変わり、この作品からは大門正明がムラマサを演じている。

もはや、ムラマサが追い求める兄、村木鉄人は名目だけの存在となってしまい、お気楽な高校生が、全国で女の子をナンパしまくるという軽薄そのものの展開になっている。

中条静夫、仲谷一郎、小池一雄、名古屋章、由利徹、小松政夫など、結構、芸達者な顔ぶれも登場するのだが、ただ、ゲスト的に顔を見せている感じで、特にストーリーに絡んで来ると言う訳でもない。

出て来る女優さんたちは、皆、最後には裸になるためだけに出ている感じで、無個性で印象も薄い。

特にヒロイン役の一人、東風みどりを演じている女優さんは、どう観ても、ヒロインたるほどの容貌でもないのだが、映画のラストになって、そのキャスティング理由が分かる仕掛けになっている。

「キッス券」などというアイデア自体も古めかしければ、ムラマサの、軽薄そのものの見せ掛けとは裏腹に、妙に説教じみた考え方も、観ていて違和感がある。

やはり、この辺は、無理して若者向けの話をひねり出していた原作者の限界だったのだろう。

警察署に足留めされていたはずのムラマサが、どうして、キッス券の当選番号を知っていたのかとか、ストーリー的には不自然な点も多々あり、あまり真面目に考えられた脚本とも思えないのだが、当時は、この程度の内容でも、裸さえ出せば客が来ると思い込んでいたのだろうか?

そんなこの作品の唯一の見所と言えば、「ウルトラセブン」のアンヌこと、ひし美ゆり子がヒロイン役を演じている事。

しかし、これもあくまでも「脱ぐ女優」の役柄の域を出ておらず、芝居的にはお粗末の一言。

しかし、さすがに、他の無個性な女優さんたちの中では際立っている事は確か。

ある意味、ひし美ゆり子は、70年代という時代と寝た女優の一人だったと言えるのではないか。

なお、この三部作全てに、キレンジャーこと畠山麦が出ているのにも注目したい。

「和製プレスリー」として売り出し中の歌手だった本郷直樹もゲスト的に登場しているが、今、彼の事を覚えている人が何人いる事やら。