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喜劇 団地親分

1962年、関西喜劇人協会+松竹京都、花登筐脚本、市村泰一監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

大阪、十三一体を仕切る13代目大川重五郎(伴淳三郎)の代貸、茂三(芦屋雁之助)とその子分格の保吉(芦屋小雁)は、今日も、肩で風を切って、地元の商店街の見回りをしていた。小料理屋「まつ」の三人娘(かしまし娘)から声をかけられるうちは良かったが、菓子屋(杉狂児)の妻からは大きな饅頭を貰い受け、次に訪れた寿司屋の主人(曽我廼家明蝶)には酒を振舞われるし、果物屋の主人(南都雄二)にはバナナを持たせられ、二人はもう満腹状態。

それでも、果物屋からは「南神対阪海」戦の野球の切符をもらったので内心大満足。

そんな二人を途中で待っていたのは、重五郎親分が呼んでいると知らせに来た平吉(大村崑)。

しかし、茂三は、断わると男が廃るよんどころのない用事があるので、それを済ましてから伺いますと返事をする。

それを聞かされた重五郎親分は、仕方がないので、平吉らに、久々に東京の大学から帰って来る娘のエリ子(環三千世)を駅まで迎えに行かせる。

しかし、その話の途中、子分たちが見ていた野球場の実況中継のテレビ画面に写った茂三、保吉を見つけた重五郎親分は大激怒。

そんな中、駅に到着したエリ子は、出迎えた平吉らを振りきり、一人で帰ってしまう。

その頃、何も知らず、重五郎親分の元へやって来た茂三は、嘘をついて野球場に行っていた事をとがめられ、その場で指をつめろと重五郎親分から迫られるが、ちょうどそこへ帰って来たエリ子から、そんな野蛮な行為は止めてと、重五郎親分、茂三共々叱責される。

その後、恥をかいた茂三は、怒りの持って行き場がなく、自分達を映し出したなにわテレビ局へ、保吉と供に殴り込みに行く。

たまたまそこで芝居の練習をしていた役者(夢路いとし、喜味こいし)を、テレビ局の偉いさんだと勘違いして因縁をつけたのを、たまたまその場に居合わせた警官(曽我廼家五郎八)に目撃された二人は、その場で現行犯逮捕される事に。

一方、帰って来たエリ子がふさぎ込んでいる理由を問いつめた重五郎親分は、自分がヤクザ家業を辞めないばかりに、彼女が大学でも形見の狭い思いをしている事を知り、すぐさま、飛行機で東京へ飛ぶ事にする。

東京で旧友の江戸原親分(榎本健一)に会いに行き、娘の事を相談した重五郎親分は、その場に集められた江戸原親分の舎弟(由利徹、南利明、佐山俊二)らの話から、たまたま、彼らが歌手のアイ・ジョージの唄を聞きに行った喫茶店で、エリ子が若い恋人風の男性に別れを告げている現場を目撃したと知る。

さらに、彼女が通う城南大学の学生食堂へ出向き、学生たちから得た情報によると、エリ子が付き合っている男性は相原と言うが、エリ子自身は、自分がヤクザの娘であることを深く恥じて悩んでいるとの事。

思いきって、その相原なる男性の自宅を訪れた重五郎親分は、出迎えた相原竹夫(森繁久彌)が、かつて、自分も世話になった検事だった事に気づき、旧交を暖めようとするが、検事の方の態度はすげなかった。

何と、エリ子が付き合っていた相原敏男(佐々木功)とは、その検事の息子だったのだ。

事の次第を悟り、一大決心をした重五郎親分は、すぐさま大阪へ戻ると子分たちを全員集め、今日限り組は解散し、今後は全員、文化人になるよう、各自エリ子の配る本を読んで励んでくれと通達する。

その事態を知らなかったのは、ムショで、隣の房にいた鼻の悪い詐欺師(渥美清)と見栄の張り合いをしていた茂三と保吉。

そんな彼らの元にも、エリ子が送った文化人になる心得を書いた本が送られて来るが、二人にはさっぱり事情が分からない。

その後、エリ子の実家を訪ねて来た敏男は、出て来た女性(ミヤコ蝶々)から、前の住人なら、もうどこかへ引っ越したと聞かされるだけだった。

やがて、出所した茂三と保吉は、重五郎親分の新しい住所と知らされた付近までやって来るが、目的の家が見つからない。

通りがかりのサラリーマン風の男(藤田まこと)に聞くが、要領を得ない。

たまたま、そんな二人の近くを通りかかったのが、クリーニング屋になっていた平吉。

妙な英語まじりの会話をするようになった彼に教えられた重五郎親分の新しい住まいとは、虹ヶ丘団地と言う巨大団地の一室だった。

再会した重五郎親分はすっかり紳士風になっており、茂三たちにも一室用意してあるので、これからはそこで暮し、一日も早く文化人になれと言う。

早速管理人室で、所長(堺駿二)や所員(茶川一郎)に仁義を切った後、部屋の鍵をもらった二人だったが、はじめて入った文化住宅の部屋の作りにはどうしても馴染めず、洋式トイレの使い方さえ分からず戸惑うばかり。

しかし、今では近くの幼稚園の先生になっていたエリ子を喜ばすためならと、無理にでも文化人になろうと決意する茂三だった。

さっそく、団地内のナイトクラブへ重五郎親分に招待された二人は、そこの支配人(三木のり平)も、かつての重五郎一家の身内だった事を知る。

その頃、娘のために団地内に保育園を作る事にした重五郎は、その計画を実現するために、団地内の有名文化人が集っていると言う「虹の会」なる親睦会に自分も参加したいと願うようになる。

重五郎が出席したその「虹の会」には、デザイナーの山中女史(初音礼子)や経済学者岡田、美術大学講師川北、テレビ作家川崎など、錚々たるメンバーに混じって、ゲストの谷山(立原博)なる人物も出席していた。

挨拶が済み、すんなり彼らの仲間に入りかけた重五郎だったが、何やら外が騒がしい。

メンバーたちがベランダに出て様子を見ると、洋服屋(トニー谷)に派手な洋服を新調させてめかしこんで帰って来た茂三と保吉が、子供達からからかわれているのだった。

ベランダに重五郎の姿を発見した二人は、大声で「親分!」と声をかけてしまったため、メンバー全員に彼の素性がばれてしまう。

バツが悪くなった重五郎が帰った後、残りのメンバーたちに、谷山は、近くにデパートを作る計画を話しはじめる。

全員乗り気になり、さっそく「虹のデパート」と名付けられたその計画には、一つ問題があり、土地買収に反対している農家が一件だけ残されていると言うのだ。

そんな話が進んでいた時、団地の近くで、一人の子供が、他の子たちからいじめを受けている所を発見した保吉は、その子供を助けたため、相手の子供らから石をぶつけられ、頭に大きなコブをこしらえてしまう。

その保吉を看病してくれたのが、先ほど助けた子供の家だった。

実は、その家こそ、「虹のデパート計画」のための立ち退きを反対している農家だった。

そこには、父親(花菱アチャコ)、その娘はる江、そして保吉が助けた弟の三人暮し。

保吉は、彼らの優しさに触れ、その後も親しく付き合うようになって行く。

そんなある日、エリ子は子供を送って行く途中で、危うく子供の一人を轢きかけた車の運転手を見て驚愕する。

何と、エリ子を探すため、独り、大阪の電器店で働いていた相原敏男だった。

一方、虹の会への入会をあきらめ、独り、バーで飲んでいた重五郎に、あの谷山が近づいて来て、実は、虹の会が進めている計画の邪魔をしている家があるので、その問題解決に力を貸してくれないかと言うではないか。

すっかり、自分が頼られていると思い込んだ重五郎は、二つ返事で、その立ち退き交渉を請け負い、茂三、保吉同伴であの農家へ乗り込んで行く。

立退料として300万出すと言う谷山の言葉にも耳を傾けない父親に対し、重五郎はヤクザ時代の態度で脅しにかかるのだった。

結局、父親は、重五郎の言葉に従うと言い出す。

対面していたはる江から、軽蔑の眼で睨まれた保吉はいたたまれなくなり、弱いものいじめするのが文化人だと言うのなら、自分はヤクザの方が良いと決心し、翌日から、父親やはる江からは相手にされないまでも、農家の軒先きに勝手に用心棒として泊まり込む事にする。

そんな保吉は、その後、立退料を持って来た谷山とその仲間が、うまい事行ったと話しながら帰って行く姿を目撃する事になる。

実は、谷山は、虹の会のメンバーたちから、言葉巧みに架空のデパート建設話へ出資金を出させ、それをそっくり横領するつもりの詐欺師だったのだ。

そんな谷山の後をつけて行った保吉は、近くの洋酒喫茶店で、谷山が落ち合ったもう一人の男を見て頭をかしげる。

どこかで見た顔なのだ。

その頃、一仕事成し遂げ、これで自分も晴れて虹の会の仲間入りができ、高級文化人になったとほくそ笑んでいた重五郎は、秘かに、虹の会のメンバーから、エリ子も幼稚園を辞めさせられ、自分も、元ヤクザと言う事で、入会を断わられた事を知り愕然とする。

利用するだけ利用されていたのだ。

逆上した彼は、偽善的な虹の会のメンバーたちをどう喝に行く。

その頃、茂三、平吉に連絡し、洋酒喫茶に戻った保吉は、問題の男が、ムショの隣の部屋にいたあの詐欺師である事を発見する。

この事を、重五郎に知らせ、彼らの詐欺行為の一切を暴き出した一行は、元のヤクザ仲間に急遽集合を呼び掛け、団地内から、車で逃亡しようとする犯人グループを自分達で捕獲しようとする…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

関西喜劇人協会が製作、それに関東喜劇人協会も協賛しているとあって、当時の人気者たちが一同に会した人情喜劇。

身分違いの恋に悩む娘の為に、文化人なるものになろうと努力するヤクザの親分の悲喜劇を描いてあるが、同時に痛烈な文化人批判にもなっている所がミソ。

主役というか、話の中心は一応、伴淳なのだが、本当の主役は、むしろ、芦屋雁之助、小雁兄弟の方。

無知ゆえに、ただひたすら雲上人のように文化人に憧れる親分に対して、彼らは、無知ゆえに文化人崇拝の身持ちが最後まで理解できない。

頭では理解できないながら、エリ子へのひた向きな愛ゆえに、志を曲げようとする雁之助。

同じく、はる江への秘かな愛ゆえに、ヤクザの道を正しいと信じて選ぶ小雁。

二人の苦悩が、そのまま、人間性のかけらもなく、ただ見栄と特権意識以外には中身のない文化人の姿を暴き出すテーマに繋がっていく。

本作の見所は、やはり、エリ子の恋人を演じている、若き佐々木功の姿だろう。

ゆる目のリーゼントヘアで、泣き顔の甘いマスク。

和製プレスリーと呼ばれたロカビリー歌手時代だと思われる。

森繁は、登場場面は少ないながら、いつもながらの達者な演技を見せてくれる。

エノケンはちらりとしか出ないのがちょっと残念ではあるが、あくまでのこの作品は関西喜劇陣の方がメインンなので仕方ない所か。

たえず鼻をクンクンしている、ちょっと癖のある小悪党を演じている渥美清にも注目したい。