TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

課長 島耕作

1992年、「課長島耕作」製作委員会、弘兼憲史原作、野沢尚脚本、根岸吉太郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

初芝電産広告製作部の課長島耕作(田原俊彦)は、吉原初太郎会長(三木のり平)の娘婿、大泉専務(津川雅彦)のお供で出張していた京都から自宅に帰るなり、点灯していた留守番電話を再生する。

相手は、娘のナミを連れて家を出て行った妻の怜子(鳥越マリ)だった。

妻は、仕事一筋で家庭を顧みなかった耕作についていけなくなったのだ。

しかし、一人娘の幼い海赫子だけは、父親の事を、今でも慕ってくれているように思えた。

翌日、本社に出社した耕作は、印刷屋の矢部(螢雪次朗)と、新製品「ロボムービー」の宣伝ポスターの打合せを済ませた後、上司の福田部長(原田大二郎)に呼ばれ、一緒に、宇佐見専務(佐藤慶)の部屋に向う。

宇佐美専務は、ライバル関係にある大泉専務の隙を見つけようと、耕作から、彼の京都での行動を逐一報告させる。彼は、大泉専務のお声掛かりで課長になったと噂されている耕作を、何とか自分の派閥に引きづり込みたいのだ。

しかし、耕作は、別に何事もなかったと報告するだけ。
彼には、派閥等には一切興味がなかったからだ。

その後、やがてハイビジョンの時代になるとソフトの需要はますます増大するので、コスモス映画を80億ドルで買収したいと言う持論を持つ大泉専務は、初芝アメリカ社長となって渡米する事になる。

そんな大泉に呼ばれた耕作は、自分がニホンを留守にする間、今付き合っている銀座のクラブ「クレオパトラ」の典子(麻生祐未)という女性のお目付役として、時々様子を見に行ってもらえないかと依頼される。

耕作を選んだのは、大泉の秘書役で大学時代からの親友、樫村(豊川悦史)の推薦だと言う。

その夜、愛人で宣伝媒体部に所属する鳥海赫子(森口瑶子)とベッドを共にした耕作は、彼女を送って品川パシフィックホテルへタクシーで行くが、帰り際、彼女の忘れ物に気づいたので、急ぎ、ホテル内に入って彼女を探していると、その赫子が、印刷屋の矢部から何かを受取っている現場を目撃してしまう。

翌日、出社した耕作は、部下の田代(渡辺満里奈)や江口(坂上忍)から、朝刊を見せられる。

そこには、一面に、先日、矢部から見せれれたばかりの絵柄が、ライバル会社の「ソーラー電気」の名で出ているではないか。

同じような商品を作っていたライバル会社に、こちらの情報を洩らしたスパイがいると言う事だ。

耕作は、福田課長からの指示で、田代と江口に、至急、代案作りに取りかからせると同時に、怪しい人物の調査も依頼する。

その夜、銀座の「クレオパトラ」に出かけた耕作は、典子とはじめて出会うが、その典子、その日から積極的に耕作に甘えてかかり、盛り上がったあげく泥酔して、耕作に西麻布の自宅まで送ってもらう始末。

翌日、出社した耕作は、田代と江口から、矢部がソーラー電気の宣伝部長とあっている写真を見せられ、彼から情報が漏れた事が明らかになる。

耕作はすぐに赫子を呼出し、情報を矢部に売ったのは君だろうと問いつめるが、赫子は、その情報は全て、耕作の寝物語から得たものだから、それをみんなにばらせばあなたもどうなるか…と開き直る。

耕作には、赫子の女としての苦悩等何も理解していなかった事を、その時になってはじめて知るのだった。

さらに、赫子は、社内には矢部が抱き込んでいるもう一人の黒幕がいると打ち明ける。

3時、赤いコーヒーカップに注目して…という彼女の謎の言葉を聞いた耕作は、約束の時間、社内で、コーヒーを配っている彼女の行動をそれとなく目で追うが、最後に彼女が、自分の退職届と共に赤いコーヒーカップを置いたのは、宣伝媒体部の庭部長(鶴田忍)の席だった。

数日後、耕作は、久々に公園で妻子と再会していた。

その日は、一日、娘のナミの相手をして過ごす。

翌日、上層部の会議の席、福田部長は、この中に、先日の広告漏洩事件のスパイがいると暴露。

副社長(高城淳一)らの許可が出て、自らの名前を指摘された庭部長は、その後、辞職。
その直属の上司であった水野専務(鈴木瑞穂)も責任を取らされ失脚してしまう。

ライバルの一人が消えた宇佐美専務は上機嫌で、今回のスパイ発見の功労者である耕作を慰労する。

水の専務が消えた後を埋めるため、急遽、大泉がアメリカから帰国する事になったため、宇佐見専務の腹の中には、耕作をそちら陣営に付かせたくないと言う計算もあったからである。

その頃、耕作は、典子との逢瀬を重ねるようになっていた。
大泉専務が典子に買い与えたマンションで寝る事もしばしば。

そんな中、出世のため、頻繁に吉原会長の御機嫌伺いに別邸の方へ足を運んでいた宇佐美専務と福田部長は、いつものように上がり込んだ屋敷内でとんでもないものを発見してしまう。

突然死した吉原会長の動かぬ身体であった。

すばやく頭を回転させた宇佐見は、本社にいる耕作に福田から電話を入れ、こちらの指示通りに動けと命ずる。

訳も分からず、上司の命令通り、専務の自宅を訪れ、その金庫内から、自社株の束を取り出すと、それを別の女性が済む家に持って行き、その女性が持っていた株と交換すると、それを兜町へ持って行きその日の内に打ってしまう。

翌日、会長の死がマスコミ発表され、初芝株は暴落。

宇佐美に呼ばれた耕作は、同室していた福田部長から、黙って金を渡されようとするが、自分がやらされた行動は、インサイダー取引の手伝いだったと知った耕作は、その受け取りをきっぱり拒否する。

やがて、大泉がアメリカから帰国。

耕作との仲を知らない彼は、昔のように「クレオパトラ」に出かけ、典子と再会するのだった。

その後も、その典子と付き合っていた耕作は、橿原から、とんでもないものを見せられる。

自分と典子が同じマンションにいる現場を、自社製品「ロボムービー」で撮影したビデオだった。

それを種に、典子と分かれて、大泉派に入り、自分と一緒に働いてくれと詰め寄る樫原だったが、耕作は毅然と、その申し出を断わる。

ビデオは、大泉に見せてもかまわないと。

すると、樫原は、更にとんでもない告白を始める。

何と、自分は学生時代から、お前の事が好きだったのだと。

驚いた耕作だったが、樫原を、疲れているだけだと静かに慰めるだけ。

そうした中、いよいよ運命に日を迎える。

新副社長指名の日だ。

重役会議の席で、新社長の口から名前を呼ばれたのは大泉だった。

がっくり、落ち込む宇佐美と福田。

その二人から、お前は器用な男だと皮肉を言われた耕作は、その後、大泉の部屋を訪れる。

副社長になった大泉は、耕作に、典子を愛しているのかと尋ね、耕作はハイと答える。

その耕作に、副社長から渡されたのは、京都勤務を命じる辞令だった。

大泉は、耕作が、その境遇から這い上がって来れる男かどうか、見極めるつもりなのだ。

耕作は、妻との離婚届に捺印をすると、新しい職場に向けて旅立って行くのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

弘兼憲史原作のコミック( 「週刊コミックモーニング」連載)の映画化作品。

一流企業に入りながら、宿命とも言うべき派閥争いに巻き込まれるのを嫌い、一人で納得のいくサラリーマン生活を続けようとする有能社員の、恋愛と仕事に明け暮れる毎日を描いた内容になっている。

今でも連載が続いている初期のエピソードをまとめただけに、長い物語の序章を観せられた印象で、一本の映画として見ごたえ感があるとは言い難い。

又、語られるエピソード自体も、会社内の派閥を巡る人間関係のごたごたと愛人との付き合いだけにほぼ限定されているため、スケール感に乏しく、全体的にちんまりとした印象。

ちょっと面白いエピソードを並べてみましたと言う印象で、特別大きなサスペンスとか盛り上がりや山場があるではなし、どちらかと言えばテレビドラマ向きの素材だったように思う。

例えば、情報漏洩事件にしても、産業スパイの内幕をリアルに描いた「黒の試走車」(1962)などを知っていると、全くタイプが違う作品とはいえ、やはりそのあまりにもあっさりした描き方には物足りなさを感じないではない。

あくまでも、トレンディドラマの映画版みたいなもの…と割切って観る方が正しいのかも知れない。

電器メイカーが、来るべきハイビジョン時代に備え、ソフト獲得の為、映画会社を手中にしようと画策する話等は、当時の現実の動きと連動しているようで、興味深かった。

主演を演じるトシちゃんは、バイタリティ溢れる切れ者というには、若干、線が細いと言うか、少し迫力不足だが、思ったより健闘していると言うべきだろう。

典子役を演じている麻生祐未は、化粧品のキャンペーンガールとして登場した女性、本作では見事な裸身も見せる体当たり演技で挑んでいるが、こちらも正直、画面から受ける印象は意外と弱い。

トヨエツも面白い役所を演じているが、いつも通りの安定した脇役を演じている津川雅彦や佐藤慶らベテラン陣同様、この作品では、今一つ強烈な存在感があったとは言い難い。

興行的に成功すれば、シリーズ化があるような終り方だが、この地味な内容ではとても大ヒットするとも思えず、結局、映画版として続編が作られる事はなかったようだ。

ドラマとして、特につまらないと言う訳でもないが、映画としては、やはりストーリー、キャスティング共に、何かもう一つインパクト不足だったのではないだろうか?