1960年、日活、熊井啓脚本、牛原陽一監督作品。
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羽田空港に降り立った旅客機から出て来た一人の男を待ち受けた男たちが、一斉にカメラで写真を撮りはじめる。
待ち受けていたのは、警視庁の刑事達。
飛行機から降り立った男は、8年前から麻薬の運び屋として暗躍し、400億もの純益をあげていた志村(待田京介)であった。
その志村、宿泊先である東京ステーションホテルから出かけた所を刑事達に尾行されるが、その志村が、突然、路上に停まっていた車の中から発射された拳銃で射殺されてしまう。
志村を撃ったのは、表向きトラック運送会社を経営する傍ら、麻薬を売り捌いている岩瀬(金子信雄)の部下横倉(内田良平)だった。
会社に戻って来た横倉は、2、3日前から、事務所に転がり込んで来たものの、いつまでも仕事を覚えようとせずゴロゴロしている秋津(赤木圭一郎)という若者に小言を言う。
最近警察に張り付かれヤバくなった志村をバラした事を岩瀬に報告した横倉だったが、岩瀬は、麻薬の供給源であるクレイグ・バンドーと志村の関係を警察に嗅ぎ付けられないか、又、志村に素性がばれるような前科がなかったかどうか心配する。
しかし、志村には前科はなく、呼出して尋問をしたクレイグも、志村の事は全く知らないと答えるだけだったので、行き詰まった警察では、ヤクザの根城になっている新橋、銀座辺りに探りを入れてみる事にする。
その新橋、弁天橋にあるバー「モロッコ」では、チンピラの佐川(野呂圭介)が、一見流しに見えるロカビリーのマサをからかっていた。
それを見かねて、佐川に喧嘩を吹き掛けたのが、マサの兄貴分を自称する「ヤサグレのアキ」こと秋津だった。
さらに、横倉も姿を現し、島荒らしをしていた佐川の仲間達と、店内で大乱闘になる。
それを、店に潜入していた刑事の松田(葉山良二)らは、そ知らぬ振りで見守っているだけ。
その後、岩瀬は、死んだ志村の代わりの仕事を、拳銃の腕が立つらしい秋津に任せてみようかと、横倉や、仕事仲間の真島(松本染升)に打ち明けるが、真島は、念の為、自分の子分の長塚(穂積隆信)と言う男を、秋津と組ませる事を提案する。
人気のない自動車解体工場で、銃を渡された長塚と秋津は、互いに銃の腕前を披露しあうが、腕は両者共ほぼ互角と言った所だった。
そうした中、岩瀬は、自ら、警視庁に電話し、「モロッコ」の二階で博打をやっていると通報、さらに、佐川のいる組の親分(高品格)にも電話を入れるのだった。
何を吹き込まれたのか、電話に誘われてモロッコにやって来た佐川一味は、秋津の姿を見つけると、再び、店内で大乱闘が始めるが、結局、たれこみで踏み込んで来た警察によって、二階で博打をしていた長塚たちも含め、店内にいたチンピラ達は全員捕まってしまう。
警察で取り調べを受けていた秋津を、網走帰りの凶悪犯だと見抜いたのは松田刑事だった。
立川での殺人事件の犯人だったと言うのである。
そうして、個室に連れ込まれ、身体検査された秋津の上着のポケットから転がり出た弾を調べた結果、それは、志村の体内から見つかったブローニング32口径の弾と同一だと言う事が分かる。
この事で、マサたち、一緒にパクられた仲間達は、すっかり秋津の事を見直す事になるが、唯一人、長塚だけは、秋津の事を疑いの目で見る様になる。
しかし、警察でも、一切余計な事を話さなかった秋津は使えると判断した岩瀬は、横倉の反対も聞かず、彼をレポとして使う事を決意する。
秋津は、マサらと連れ立って、女の子と一緒にバイクを飛ばし、海へ遊びに出かける。
その頃、長塚は、自動車解体工場で、以前、拳銃の腕試しをした際、秋津が階段の手すりに打ち込んだ弾を取り出そうと出向いて来ていたが、その弾は、すでに何者かに抜き取られた後だった。
モロッコで秋津に対面した長塚は、秋津がいたと言う網走刑務所の様子をネチネチと聞き出す。
自分もあそこにいたが、お前の顔は見た事もないとか、お前がいたと言う北の12号房などないはずだとカマをかけて来る。
網走帰りだと言う言葉は、刑事の方から言い出した事に疑念をぬぐい去れない長塚だったが、結局、秋津が警察の犬だと言う確証もつかめなかった。
やがて、東京ステーションホテルに泊まっていたクレイグが動きだし、刑事達が尾行する中、とあるバーへ入ると、そこのママ厚子(渡辺美佐子)に麻薬をさり気なく手渡す。
厚子は、受取った薬を素早くマッチ箱に入れると、店にいた他の外国人客のタバコに火をつける振りをしながらさり気なく渡すのだった。
麻薬の元締めジャックは、岩瀬の所に電話を入れ、新しいブツが手に入った事を知らせてくる。
岩瀬は、レポとして秋津を使う事にするが、一方、長塚にも秋津を尾行させ、万が一ドジったら始末しろと命ずるのだった。
かくして、とある海辺で厚子と出会った秋津は、「龍」の字を書いた割り符を見せて互いを確認しあうと、ブツを受取るのだが、どうした訳か、取引が終わった後、その厚子を執拗に追い掛けはじめる。
とうとう、彼女のバー「ESPOIR」まで付いて来た秋津を、尾行して来た長塚が追い返す事になる。
その長塚と厚子は愛人関係だったのだ。
秋津が持ち帰って来た薬は、岩瀬等によってさっそく谷村診療所と言う所に持ち込まれ、そこの谷村(浜村純)が化学分析した所、純度の高い上物だと分かり、ジャックが吹き掛けて来た値段も適正だった事が分かる。
その頃、厚子の部屋に泊まっていた長束は悪夢にうなされていた。
実は、長塚は昔、刑事だったのだが、麻薬の売買に手を染めてしまったばかりに、自らの自宅、妻敏子(高田敏子)の目の前で逮捕される醜態を見せてしまうと共に、その妻が、絶望のあまり、自宅であったアパートの踊り場から身を投げ自殺してしまったのを、自ら目撃した記憶が蘇って来たのだ。
一方、その頃、秋津は、関東甲信越麻薬取締事務所に姿を現していた。
そこの所長に、麻薬の取引は明日である事を報告した秋津は、実はそこの取締官だったのであり、彼は、麻薬捜査の為、独断で、潜入捜査をしていたのだ。
先日、バイクに乗せて、海に出かけた女性は、そこの事務員で、将来を誓いあっている道子(清水まゆみ)だった。
しかし、そうした秋津の動きを陰ながら探っている一味があった。
佐川の一味だった。
彼らは、まず、谷村を脅迫してクレイグの所に案内させると、すでに、岩瀬達のルートは厚生省に押さえられているので、自分達と組めと脅しにかかる。
こうした動きに敏感なジャックは、新たに持ち込まれたブツを正直に岩瀬に渡す代わりに、プラスチック爆弾を渡して、相手を抹殺してしまおうと計る。
こうして、時限装置を付けた爆弾の入ったバスケットボールを、ジャックから託された厚子は、渋谷のプラネタリウムに持っていくが、秋津に渡す前に、たまたま同じバスケットボールを持って近くを通りかかった女子高生たちの一団が彼女がベンチに置いていたボールにぶつかり、一緒に持ち帰ろうとしたので、慌てて取りかえし、やって来た秋津に手渡すのだが、彼女を見張っていた高津共々、その現場で張っていた松田ら刑事に捕まってしまう。
しかし、厚子は、秋津に渡したバスケットボールと女子高生が持ち帰ったバスケットボールの区別が付かなくなり、パニックに陥ってしまい、それを問いただした刑事達によって、女子高生達が持っていったボール二次元爆弾が仕掛けてあるかも知れないと分かり、緊急手配が敷かれる。
女子高生達を乗せた観光バスは、築地方面に向ったところでパトカーに発見され、押収されたバスケットボールは空き地で銃撃して爆破処理しようとさせるが、爆発は起きなかった。
時限爆弾が仕掛けられたボールは、やはり、秋津が自動車解体工場に持って帰った方だったのである。
すでに、工場の周囲を取り囲んだ捜査班たちに、その事が通達される。
そんな事とは知らず、無事、岩瀬にボールを渡した秋津は、これで自分の用事は済ませたと一旦帰りかけるが、それを横倉が止める。
長塚が帰るまで待てと言うのだ。
そして、ボールに岩瀬がナイフを突き立てようとした時、あらかじめ、工場に身を潜めていた佐川と親分が姿を現す。
そして、秋津が、実は麻薬捜査官で、長塚も元刑事なのだと言う事をばらしてしまうのだった。
しかし、疑り深い横倉は、自分達を仲間割れさせようとする嘘だと信じない。
こうして、工場内は、岩瀬の一味と、佐川の一味の銃撃戦が始まる。
こうした中、工場に駆けつけて来た松田刑事は、拡声器で工場内にいる者たちに、ボールには時限爆弾が仕掛けてあるから触らず、全員出て来いと呼び掛けるが、うろたえるチンピラ達とは裏腹に、横倉だけはその言葉さえ信用しようとしなかった。
時限装置のスイッチが入る時間は5時きっかり、後数分しか残されていなかった。
そうした最中、その現場に連れて来られていた長塚は、工場中にいる秋津を救うため、周りの制止を振り切って一人で突進していくのだった…。
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赤木圭一郎主演三作目。
いわゆる「潜入捜査もの」なのだが、熊井啓のオリジナル脚本はなかなか良く出来ており、最後まで飽きさせない。
ただ一つ欠点があるとすれば、主役であるはずの赤木圭一郎があまり目立っていない事だろう。
確かに主役と言えば主役なのだが、全体的に見せ場に乏しく、観ていて、ヒーローっぽい感じが希薄なのだ。
逆に、冒頭、あっさり殺されて画面から消えてしまう待田京介や、ライバル的存在を演ずる穂積隆信の方が遥かに存在感がある。
はっきり言えば、この作品の本当の主役は穂積隆信の方だと思う。
過去があり、頭が切れ、拳銃の腕も確かな陰のある用心棒的存在。
これほど魅力的な設定があろうか。
一方、赤木圭一郎の方は、甘いマスクで恋人がおり、バイクに乗って遊ぶ若者代表みたいな存在以上のものではない。
後半、特に目立った活躍をするでもないし…。
劇中、赤木自身が歌う歌も流れるが、これも何だかパンチ不足でドラマとは不釣り合いと言うしかない。
一応、新人赤木を売り出そうとする姿勢は見えるのだが、このドラマに限っては、彼の演じるキャラクターがさっぱり生きていないのだ。
だから、赤木目当てでこの作品を観る人は、若干物足りなさを覚えるのではないだろうか。
逆に、特に赤木目当てでなければ、それなりに楽しめる通俗娯楽作品になっているのではないかと思う。
