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石井のおとうさんありがとう

2004年、現代プロダクション、横田賢一「岡山孤児院物語」原作、青木邦男+松井稔脚本、山田火砂子脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

ブラジル、サントスにある「サントスホーム」という老人ホームで、今、一人の日本人老人が息を引き取ろうとしていた。

彼を見舞いに来た孫娘の日系ブラジル人ニシヤマ・ヨーコ(今城静香)に、祖父は一枚の写真を渡す。

そこには、ヨーコの見知らぬ日本人が写っており、裏には「石井のおとうさんありがとう」と記されていた。

その人物の素性を調べるために、ヨーコは、単身、祖父の生まれ育った日本の宮崎にやって来るのだが、そこの児童養護施設の園長(大和田伸也)は、明治時代、まだ「福祉」という概念すらなかった日本の岡山で孤児院を始め、3000人もの孤児達を救った石井十次(松平健)という人物の話を始めるのだった。

医者になる事を目指し、妻品子(永作博美)と二人で、岡山の小さな診療所で働いていた十次は、近所の祠に、貧しい巡礼の二人の子供が腹をすかせて身を潜めている様子を毎日観ており、つい同情心から、握り飯を持って子供に与えに行く。

そう言う行為が何度か繰り替えされたある日、母親である巡礼が、彼の元を訪ねて来て、いつもの好意に熱い礼を述べると共に、誠に身勝手なお願いだが、もはや、次文意は二人の子供を育てる事は出来ないので、せめて足の不自由な兄の貞一をここで預かってはもらえないかと言い出す。

妻と共に承知した十次の話を聞き込んだ別の老婆が、今度は足の悪い自分の孫杢次を連れて来る。

こうして、病院には、徐々に、近所の孤児や浮浪児たちが収容されていくようになる。

親のいない彼らに、腹一杯食事を与える「満腹主義」という考えを実践しはじめた十次だったが、台所を預かる妻には毎日が薄氷を踏む思いであった。

その苦労を知っている十次は、牧師(牟田梯三)の協力の元、近所の岡山教会の日曜学校で講演を行い、孤児達への支援協力を願い出る。

こうした中、十次の言葉に感銘を受けた醤油屋や薬屋(小倉一郎)、そして自分も孤児だったと言う芸者の炭谷小梅(竹下景子)らの知遇を得る事になっていく。

その後、橋で物乞いをしていた浮浪児にも、孤児院で勉強しないかと声をかけた十次だったが、知的ハンデのある八郎が率先して付いて来るのだった。

そうした中、十次の今後を心配していたのは彼の恩師であった。

医学の道を進むはずだった十次がとんでもない道に足を踏み入れていく事を注意するが、十次はやがて、持っていた医学書を焼き捨て、聖書を読む暮らしに活路を見い出すのだった。

そんな十次に必死に付いていこうとした品子だったが、あまりに一人で突き進む夫の態度に憤りを感じた彼女は、自ら、孤児院を後にしようと決意する。

しかし、そんな彼女の行動を敏感に察知した子供達は、必死に彼女を引き止めようとする。
その中には、八郎の姿があり、そうした子供達の純粋な思いやりを感じた品子は、孤児院から出ていくのを思いとどまる事に。

しかし、それでも現実は厳しく、子供達の食事が粥ばかりと言う毎日が続く事になり、一部の子供から「満腹主義」なんて嘘だった、自分は騙されたと不平を洩らす者が出始める。

そんな子供は、近所から物を盗んで喰うようになるのだが、それを体罰で懲らしめようとする十次を止めたのは品子だった。

それからと言うもの、十次は決して子供達に体罰を加える事を止める事にする。

子供を誉める時も、叱る時も、常に一対一で、個室でやる事にする。

人前で叱れば、その子はコンプレックスを持つし、人前で誉めれば自惚れてしまうからだ。

そうした中の1891年、濃尾大地震が起こり、大量の孤児達が生まれる。

そうした子等も、皆、孤児院で引き受ける事になる十次だったが、それを、近所の口さがない人々は、何を始めるつもりか、子供をだしにして金儲けを考えているのではないか等と悪口を言い出すが、そうした人々の浅はかさを、十次の考えに共感する五郎兵衛(ケーシー高峰)は、きつくたしなめるのだった。

しかし、孤児院暮らしの子供達を差別する風潮は、親の口からその子たちにまで伝わり、塀のふき掃除をしていた八郎が、村の子供達にからかわれ、それを助けに来た孤児たちが、喧嘩騒ぎを引き起こす一幕まで起こる。

村人達は、怒って、孤児院に乗り込んで来るのだが、子供の喧嘩に親が出て来るその態度を、十次はいかがなものかとたしなめる事になる。

やがて、200人以上に膨れ上がった岡山の施設だけでは、子供達を収容し切れなくなり、十次に師事する山室軍平を先頭に、何人かの子供達が宮崎へ引っ越す事になる。

その後、今度は、妻品子が病に倒れる。

彼女は、自分の快癒を願う子供達の歌を聞きながら、夫、十次の腕の中で息を引取る。享年30才。

それからしばらくして、十次は周りの勧めもあって、孤児院で働いていた吉田竜子と再婚。

そんな十次は、大原孫三郎(辰己琢郎)という富豪の理解者を知り、彼の援助の元、住み慣れた岡山を離れ、宮崎に新しい施設を作ると言う計画を支援者達に打ち明けるのだった。

その後、孤児院には、飢饉で生まれた新たな800人もの孤児達がやって来て、もう収容人員の限界を超えようとしていたからだった。

当然ながら、岡山で支援して来た地元の協力者達からは反対の声が上がる。

それでも、結局、十次の理想を信じて、最後には、彼の思い通りに進めさせる事にする。

そうして、宮崎に出来た新しい施設に移り、新天地での活動に新たな意欲を見せる十次たちだったが、その十次の身体には知らぬ間に病魔が忍び寄っていたのであった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

一時は1200名以上もの孤児を預かり、世界でも指折りの収容者数を誇った施設を作り上げて夭折した石井十次の一生を描いた感動作。

一見、フィルム作品のように見えるが、実はこれビデオ作品だそうで、その進化したビデオの高画質には驚かさせる。

実際のキリスト信者等も、役者として参加しているようで、見慣れない顔もちらほら見受けられるのだが、松平健、長作博美はじめ、草薙幸二郎、堀内正美など、渋い脇役陣が、しっかり物語を支えている。

何よりも、子役達が素直な演技をしており、観ていて嫌味な感じは全くない。

特に、大きなドラマや見せ場が用意してある訳ではないため、映画としては、やや淡々とした印象もあるが、実話がベースなので違和感はない。

「はだしのゲン 涙の爆発」(1977)にも出ていたケーシー高峰が元気な姿を見せてくれるのが嬉しい。

身体を悪くされ、入院為さっていたと聞いていたからだ。

確かに、顔つき、体つき等に若干病気の影響が観られるようだが、それでも元気な姿に安心。

「ケンちゃんシリーズ」のお父さん役でも有名だった牟田梯三氏の、お元気そうな姿が観られるのも貴重だと思う。