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色ぼけ欲ぼけ物語

1963年、松竹京都、富田義朗+小林久三脚本、堀内真直脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

スカウト屋の金さんこと段原金作(伴淳三郎)は、住んでいる共同アパートで、朝な夕な、軍隊ラッパを吹くのが日課。

そんな金さん、演芸劇場「アフリカ座」でラインダンスを踊っているマリ(姫ゆり子)を見に行くが、彼女は踊りが苦手で舞台上で転んでしまう。

それを心配げに袖で観ているのは、彼女に気がある平さんこと勝木平一(柳沢真一)。

金さんは、さっそく舞台がはねたマリに声をかけ、今の給金の二倍以上払うからと、彼女をバー「きんぎょ」のホステスとして引き抜こうとする。

そんな金さんに文句を言いかけていた平さんの前に、戦時中、北支の森山部隊で副隊長をしていた倉本元中尉(伊藤雄之助)が突然現れ、重要な話があるので、今度の日曜日の10時に靖国神社前に集まってくれと言い残して去って行く。

実は、金さんも平さんも、同じ森山部隊にいた戦友だったのだ。

その後、倉本副隊長は、同じ部隊にいた朴(大泉滉)、サンドイッチマンをしている永田(石井均)、大根灸で商売をしている八田元軍曹(藤原鎌足)などに声をかけて廻る。

さて、約束の日に、高級車に乗り付け、みんなの前に現れた倉本は、その後、中華料理店に全員を集め、そこで始めた話によると、森山部隊長と山田伍長が、戦後、北支で手に入れた3億円相当のダイヤを国内に持ち込み、それをどこかに隠匿したらしい。

山田伍長の方は、すでに10年前に死亡しているので、今や、そのダイヤの在り処を知っているのは、森山部隊長だけと言う事になる。

ついては、その森山部隊長を見つけだして、彼が隠匿したダイヤを皆で山分けにしたいと思うが、その計画に参加したい者はいるかと言う。

さらに、森山部隊長を最初に発見した者には、100万円出すのだとも。

その話の間中、貿易会社をやっていると言う倉本の元へ、景気の良い電話が頻繁にかかって来る事もあり、すっかり彼を信用した平さんら、十数人の出席者たちは一斉に手をあげる事になる。

翌日、朴は、当日来なかった永田に事の次第を教えると、亡くなった山田伍長が隠している可能性もあるので、彼が住んでいたアパートを探せば、ダイヤが見つかるかも知れないと持ちかけ、二人して、さっそく、そのアパートの屋根裏を調べはじめるが、そこでばったり出会ったのは、こっそり溜めた小銭を入れた壺を隠しに来ていたアパートの管理人、李(藤村有弘)だった。

慌てた朴らは、屋根裏を突き破り、下で寝ていたおぼん(嵯峨三智子)の部屋に落ちてしまう。

一方、金さんは、靖国神社にも行かず、マリを無事スカウトできたバー「きんぎょ」で、ママ(淡路恵子)相手に酒を飲んでいた。

そんな金さん、ある日、森山俊作の名を書いたプラカードを持って、人探ししている永田と出会うが、そんな二人の前に現れたのが、スリのおぼんを追い掛けていた川田刑事(菅原文太)。

そんなおぼんを逃してやった金さんは、その後アパートで彼女から結婚を臭わせて甘えられたので、すっかり鼻の下を伸ばし、このアパート内に3億円隠されているかも知れないと、永田から聞き込んだ話を打ち明けてしまう。

一方、戦時中、慰安婦として懇意だった晴美(若水ヤエ子)が働いているらしいとの情報を受けた平さんは、さっそく、その競輪場へ出かけるが、すっかり、倉本の話に乗り気になった金さんもその後を追う。

競輪場で出会ったのは、すっかり老け込んだ晴美だったが、彼女からは、かなり以前、羽振りが良かった森山部隊長と出会った事があると言う情報を得る。

その頃、八田も独自に、今は従業員5万8000人を抱える会社社長となっていた青木元一等兵(三木のり平)を訪ね、森山部隊長の消息を聞くが、こちらも、部隊長は、何でも小豆に手を出して失敗したらしいという、断片的な情報を得ただけだった。

朴さんも、独自に森山部隊長捜査を続けていたが、怪し気な新興宗教の教祖に出会って面喰らうだけ。

すっかり金儲けの話にのめり込んだ金さんは、バー「きんぎょ」のママに倉本に参加したいと伝えてくれと頼み込むが、その話を聞いた倉本は、今後、この計画は株式化する事になるから、10万円出せば、特別に、自分の分を回してやると金さんに持ちかけるのだった。

実は、倉本は、ヤクザのサルビアの健(八波むと志)、哲兄弟と組んだ詐欺師で、元部隊仲間に架空の株を売って儲けた倉本は、バー「きんぎょ」の権利書も手に入れ、それを健に渡す約束をしていた。

さらに、マリにも興味を示した倉本は、彼女に「きんぎょ」の新しいママをさせてやると約束するのだった。

倉本が得ていた情報では、森山部隊長は、昭和20年8月に既に亡くなっており、誰がどんなに探しても、本人が出て来る心配はない事から、今回の詐欺計画を思い付いたのだった。

そんな詐欺行為が進行中だとは全く知らない川田刑事、今日は、恋人のひろ子(鰐淵晴子)のラーメン屋台でを訪れ、彼女にプレゼントのマフラーを渡していた。

そんな川田に手袋のお返しをしたひろ子は、身体が弱った父親に代わって、一人、屋台をやっている健気な娘だった。

そんな川田刑事は、いつものように追っていたおぼんが、金さんの懐に掏った財布を潜り込ませたのを発見し、事情聴取の為、金さんを警察に連れて行く。

全くの濡れ衣に困惑する金さんだったが、そんな署内に、やって来た出前持ちの親父の顔を観て驚愕してしまう。

何と、その男こそ、捜しまわっていた森山元部隊長ではないか!
彼は生きていたのだ。

しかし、懐かし気に声をかける金さんに、森山は、昔の話なんかしないでくれと突っぱねて、姿をくらましてしまう。

信用のない金さんに、警察が、彼の情報を教えてくれるはずもない。

その頃、バー「きんぎょ」の用心棒で、おぼんの愛人でもある九さん(芦屋雁之助)は、これまた、どこからともなく聞き込んだ隠しダイヤを探そうと、共同アパートの敷地内を仲間たちと一緒に掘り、壺を掘り当てるが、それは、李さんが埋めた小銭の入った壺だった。

金さんは、その後も、懸命に森山部隊長の消息を探し、屋台関係を捜しまわり、ようやく、ひろ子と暮している森山の家を突き止める。

その金さんから、隠匿ダイヤの話を聞かされた森山は激怒する。

自分は、確かに、戦後、幾らかの物資を日本に持ち込んだが、それらは全て進駐軍に摂取されてしまい、その中にダイヤ等なかったと言う。

聞けば、戦後、森山はずっと独身なのだと言う。
ひろ子の母親の事を聞いても、口を濁すばかり。

その頃、バー「きんぎょ」は、サルビアの健と哲の手に落ちてしまっており、ママとマリは大げんか、健と九さんもピストルを持っての決闘騒ぎと成るが、警察がやって来て、みんな逃げ出す始末。

とにかく、全て、倉本の詐欺だった事を知った金さんは、他の仲間たちに事情を話して、自分達が欲を出したばかりに、まんまと騙された事を打ち明ける。

話を聞かされた永田などは、改めて、戦時中、女と一緒に部隊を脱走しようとした所を、森山部隊長の恩情で助けられた事を思い出し、自らを恥じるのだった。

そんな彼らの元へやって来た「きんぎょ」のママは、マリと一緒に逃亡した倉本の所在が掴めたと言う。

さっそく、その事を警察に連絡して、香港へ向う途中だった倉本とマリは、海上で逮捕される事になる。

こうして、騙された金の一部が戻って来て喜ぶ彼らだったが、金さんは、この金を、貧しくて娘のひろ子の嫁入り道具さえ買えない森山部隊長の為に使おうと言い出す。

金さんは、戦時中、幼い娘のひろ子を頼むと言い残して死んで行った坂本三吉(アイ・ジョージ)の事を思い出せと言う。

そう、実は、森山部隊長が自分の娘として育てていたひろ子とは、その坂本の娘だったのだ。

彼らの資金提供で、無事、川田刑事との結婚式を上げられる事になったひろ子は、式に出席した全員の前でその事を打ち明けようとした森山に対し、自分は昔からその事を知っていたのだと打ち明けるのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

戦後、不遇な生活を送っている戦友たちが、一獲千金を狙って各自ドタバタを演じるが、最後に、大切なものを思い出す…という人情話。

怪し気な副隊長を見事に演じている伊藤雄之助と、対称的に人情味溢れる隊長役を好演している有島一郎が共に達者なので、全般的に安心して観ていられる。

この作品で珍しいのは、菅原文太は、真面目な青年刑事役で登場する所だろう。

新東宝が潰れた後、しばらく、松竹作品に出ていた時期があるようだが、実際にその姿を見るのは今回がはじめてである。

実直そうな好青年というステレオタイプな役柄以上の強烈な印象はない。

その恋人役を演じている、鰐淵晴子の可憐な愛らしさ、美しさは絶品。

スリの女を演じている嵯峨三智子とバーのママを演じている淡路恵子は、手慣れた感じだが、共に色っぽい。

一時期、テレビ等にも出ていた石井均の姿も珍しいが、あまり印象に残るような役柄ではない。

最後の方に、ゲスト的にちらりと登場する、歌手のアイ・ジョージの方が印象的。

回想で登場する戦闘シーン等も、なかなか本格的にロケをやって作られている様子で、ちゃちさはあまり感じない所が見事。

通俗な設定と言えば言えるが、最後はじんわり熱いものが胸に込み上げて来る、なかなかの名品である。