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初笑い底抜け旅日記

1955年、東宝、高木恒穂+山本嘉次郎脚本、青柳信雄監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

♪アホ〜アホ〜とカラスが鳴くよ〜♪

…と唄いながら、気楽な一人旅をしていた風来坊の金太(榎本健一)は、とある村で騒いでいる農民たちの姿を発見、訳を尋ねてみると、又、年貢を納めろと言うおふれを見て嘆いているのだと言う。

呆れて、ちょっと侍たちの悪口を言って旅を続けていた金太は、突然現れた黒頭巾姿の侍二人に襲われ、気が付くと、裃姿のきれいな衣装に着せ変えられ、大きな部屋のまん中に座らせられているではないか。

さては、悪口を聞かれ、首を斬られるのかと察した金太は、その部屋をトンズラしようとするが、やって来た腰元たちに、豪華な菓子と茶を出され、いよいよ処刑前のごちそうかと観念する。

しかし、その後部屋に入って来たのは、眼鏡姿のC調な侍(トニー谷)。

彼が言うには、自分達の身分は開かせないが、とある好奇な身分の方の為に、旅の知識が豊富な金太に、あれこれ講議をして欲しいのだと言う。

訳を知れば他愛無い事、金太はあっさり承知して、御簾の向こうにいる相手に、あれこれ旅の知識を教える。
特に、甘い言葉で近づいて来る女には気をつけろ…などと、面白おかしく唄って聞かせるのだった。

その話を興味深気に聞いていた高貴な人物とは、実は、漫遊記に出発する前の水戸黄門こと光圀(柳家金語楼)であった。

水戸黄門は、その講議を参考に旅に出発する。

一方、自由の身になった金太の方も、又一人旅を始めるが、何しろ金がないので、路上でルーレット賭博の店を開いたり、草競馬の予想屋などをやって日銭を稼ごうとするが、どれもあまり儲からない。

実は、彼に近づいた美人姉妹のお銀(旭輝子)とおナミ(竹屋みゆき)の本業はスリだった。

三日も何も食べておらず空腹の金太、あぜ道で休息している農民に銭の裏表を賭けないかと持ちかけ、「裏が出たらあんたの負け、表が出たら俺の勝ち」と、いんちきルールで、まんまと農民の持っていた芋を一つ頂戴する。

その芋をたき火で焼いていると、休んでいたお堂の中から、刀が伸びて来て、その芋を寄越せと声がかかる。

仕方なく芋を渡すと、食べ終わって満足したような若侍が、お堂から出て来て立ち去ろうとするので、呆れた金太は、礼ぐらい言ったらどうかと叱りつける。

素直に謝った熊太郎(榎本雅夫)というその若侍に事情を聞くと、自分の父親が昔、鹿田馬太郎(丘窮児)と将棋をしている時、勝負を巡ってもめた結果、斬られて死んだので、その敵討ちの旅をしているのだと言う。
父親の遺言によると、旅の途中も必ず鼬小憎次郎吉という男が助けてくれるはずなのだとも。

話を聞き感心した金太は、自分も彼と一緒に目指す仇を探す旅をする事を決意する。

その後、道で出会う虚無僧や六部、ヒゲ面の豪傑等を疑ってみるが、どれも人違い。

その後、空腹に堪え難くなった金太と熊太郎は、お稲荷様に備えてあった油揚げを見つけ、これ幸いとばかり、夢中になって食べてしまう。

しかし、それを発見した農民たちは怒り心頭。

袋叩きにあいそうな気配を感じ、苦し紛れに、金太は、我こそは正一位稲荷大明神だと言ってしまう。

それを聞いた農民たちは、さらに怒り、だったら、自分の娘の狐憑きを治してくれと、自分の家に連れて行く。

見れば、まだうら若き娘(楠トシエ)が、「♪キャラカリコンカリコン…」などと、奇妙な歌と踊りを舞っているではないか。

その父親太郎兵衛(沢井三郎)が言うには、近くにいる金利教の教祖様の言い付けでやっているのだと言う。

面倒な事になって来たので、本心は逃げ出したい金太であったが、成りゆき上仕方ないと、その娘と早口歌合戦をやり、何とか負かしてしまう。

これで、娘の病気は完治したと喜んだ父娘は、腹が減ったという金太とお供の熊太郎に、またまた大量の油揚げを差し出すのだった。

しかし、これを聞いて激怒したのは、金利教の教祖(木戸新太郎)、仲間を引き連れ、旅を再び始めた金太の元へ因縁を付けに行く。

しかし、その時、どこからともなく現れた股旅姿の男(小堀明男)が、二人を逃してやるのだった。

その頃、川越えの船の出発を茶店で待っていた校門一行は、路上で歌と踊りを披露しているお銀とおナミに遭遇、油断している隙に、まんまと大量の小判が入った袋をすられてしまう。

近くにいた岡っ引が、姉妹の行動を怪しみ取り調べようとするが、黄門は、若い娘に恥をかかせたくないと思い、それを制止する。

しかし、文無しになった黄門は、空腹のまま旅を続けなければならなくなる。

見かねた助さん格さんが、とある農家に立ち寄り、一個の握り飯を恵んでもらうが、それをゆっくり食べようと、黄門が積んであった米俵にうっかり腰掛けてしまったものだから、農民に叱り飛ばされ、平謝り。

一方、金太と熊太郎の方は、金がないので、お地蔵様の前で一夜を明かす事に。
夜露は身体に悪いからと、ボロ傘を広げて、その下で寝る事にするが、朝起きた金太、夕べ、手に触れたものが何でも金になる術を仙人から教わった…と夢の話を熊太郎にする。

単なる夢の話と、熊太郎が笑っていると、彼らの足元に、小判がこぼれた袋が落ちているではないか。

実は、以前、金太に近づいた美人姉妹が、自分達が疑われないようにと、こっそり彼らにボロ傘に隠して持たせていたのだが、金太にそんなトリックが気づくはずもない。

そんな金袋を取り戻そうと、二人を探し求めて旅を続けていたお銀とおナミ姉妹は、権八(柳沢真一)という若者が美声の歌で客よせをしている狸屋という旅籠の前を通る。

実は、そこに逗留して、大量の食事を注文して、むさぼり喰っていたのが金太と熊太郎。

彼らを呼び込んだ権八も、店の主人(三木のり平)も、粗末な身なりの彼らの正体を怪しみ、気が気ではなかったのだが、そんな二人が狸屋に泊まっているのを、窓の外に干したボロ傘で気づいたスリ姉妹、自分達もその宿に泊ろうとして、店の主人たちが、用心の為、役人を呼ぼうかと相談しあっているのを聞き付け、そうなったら、自分達が彼らに預けた金を見つけられると、急遽、この辺りに、とあるお大尽様がお忍びで滞在しているらしいと嘘を言い出す。

それを聞き、さらに、心配になって座敷を訪ねた権八が5両もの大金を金太からもらって来た事もあり、いきなり主人は態度を急変させると、金太らをお大尽様として最上級の扱いを始める。

そんなこんなで、すっかり調子に乗った金太は、独り庭先で寂し気に唄っている権八の姿を観て、金を出すから、あの若者を国へ返してやれと、主人に頼むのだった。

そんな宿に、急に代官鼻下長衛門(森川信)が現れ、近くに水戸黄門様が来ているらしいので、臨検すると言う。

お忍びのお大尽の機嫌を損ねてはならじと考えた宿の主人は、代官に袖の下を渡して、金太たちの部屋の検査を見逃してもらうが、続いて訪ねた美人姉妹の部屋では、すっかり、妹のおナミに一目惚れしてしまった代官、あれこれ彼女に言い寄るが、そのしつこさに耐えかねたおナミは、金太たちの部屋に逃げ込むのだった。

気まずくなった鼻下は、他に、黄門一行のような客はいないかと主人に正すと、そういえば、布団部屋に、年格好が似た客を泊めているというので、さっそく様子を見に行くが、どう観ても、田舎の貧乏老人。

呆れて、鼻下は帰ってしまうが、その老人こそ、本物の黄門だった。

そんな事は知らず、すっかり調子に乗った金太は、宿の人間を全部集めてどんちゃん騒ぎをしようと言い出す。

泊まり客だけではなく、従業員まで全て招いての大宴会になり、この隙を狙って、お銀とおナミは、金太の懐から、金袋をすり取ろうと近づくが、偶然にも、金太の横に座った黄門が、その様子をしっかり監視しており、旅立つ前に、当の金太から教わっていた「♪近づく女には気をつけろ〜」という歌を唄い出したので、金太は急に用心しだし、姉妹の目的は果たせなくなる。

さらに金太は、黄門を信用し、金袋を彼に預かってくれと言い出す。
とはいえ、もともと、その金袋は、黄門のものだったのだから皮肉である。

すっかり夜もふけ、宿の従業員たちも全員酔っぱらってしまったため、風呂を焚く人間がいなくなったとこぼす主人に、女房が、布団部屋に泊まっている貧乏人たちにやらせれば良いと言い出し、本当に黄門に風呂焚きを命ずる事になる。

そんな風呂に入るため、大切な仇討ち赦免状を、金太に教えられ、床の間に隠して出かけた熊太郎と金太のいなくなった部屋に忍び込んだお銀は、金目のものと勘違いして、その赦免状を盗んで行くが、途中で気づいて、外へ放り投げてしまう。

それを偶然拾ったのが、風呂焚きをさせられていた黄門様。
彼は、その赦免状を読むと、若侍、熊太郎の使命を知り感心するのだった。

さらに、風呂の中から聞こえて来た、今度は自分から金袋を盗もうと相談している姉妹の話を盗み聞いた黄門は、彼女たちに一層用心する事になる。

一方、大切な赦免状がなくなっているのに気づき慌てる熊太郎に、誰かからか手紙が届き、この街のヤクザ一家に般若の石松と言う用心棒がいるが、そいつが仇の鹿田馬太郎なのだと書いてあるではないか。

そんあ熊太郎の為に、一晩中、なくなった赦免状を探しつづけていた金太の元へ、一人やって来たおナミは、彼の事を本当に好きになったと告白する。

翌朝、黄門は、熊太郎に赦免状を返してやる。

その頃、夕べ、賭場で勝ち逃げするのかと因縁を付けられていた次郎吉が、自分が泊まっている宿で、盛大に賭場を開こうじゃないかと言い、誘き寄せていたヤクザ一味が、狸屋に集合していた。

その中に、宿敵、鹿田馬太郎の姿を発見した熊太郎は、金太や黄門様の援護もあり、仇討ちを始める…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

エノケンが、自分の長男榎本雅夫と親子で共演した、オペレッタ時代劇。

あだな姿の女スリお銀に扮している旭輝子とは、神田正輝の母親である。
この作品では、彼女も見事に唄ってみせる。

鼬小憎二郎吉に扮している小堀明男が初登場する場面で、三度笠を取り、名も名乗らず、ただ画面に向ってにっこり微笑むのは、当時、「次郎長三国志」(1952〜)シリーズの「清水の次郎長役」で大衆に絶大な人気を誇っていた証だろう。

後に役者専門みたいな印象になる柳沢真一なども、この頃は、明らかに歌手がゲストとして映画に出ていると言う感じ。
今聞いても、その美声には惚れ惚れとする。

しかし、何と言っても、本作で一番印象に残るのは、熊太郎役として、準主役のようにエノケンと同伴する若侍を演じている榎本雅夫の存在だろう。

どう見ても、しろうとそのものと言う感じで、セリフ回し等もたどたどしい。

始終、ニコニコしているような表情も単調で、いかにも、エノケンが親バカ精神で出しているとしか思えないのだが、その妙に浮いた存在が逆に変でおかしい。

しかし、この頃の喜劇には必ずと言って良い程出ているトニー谷、それだけ売れっ子だったと言う事だろうが、映画では少しも面白くないのが可哀想。

それにしてもこの作品、基本がナンセンスコメディなのに加え、フィルムが古くて、あちこち欠損しているようで、話のつながりも分かりにくかったりもするのだが、その辺は何となく想像で穴埋めするしかない。

後半の、音楽のリズムに合わせたアクション演出は、ちょっと面白い。