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ちんじゃらじゃら物語

1962年、松竹京都、若井基成+柴田夏余脚本、堀内真直監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

名古屋のとあるパチンコ店。

一人の男性客(藤山寛美)が、出口の景品引き換え所で、いつものやつと言って景品を受取る若い美女に気づき、彼女の真似をして、自分もいつものやつと言って景品を受取ってみるが、それは女性用のパンティであった。

それを、先ほどの美女に渡そうと後を付けて行くが、彼女、山田マリ子(島かおり)も近づいて来た見知らぬ男からいきなりパンティを差し出されビックリ。

出かけようとして、その様子を間近で目撃した彼女の父親山田太助(伴淳三郎)も、腰を抜かしてアパートの階段を踏み外す始末。

その頃、その太助をキャバレーで待ち受けていたのは、かつて、カンボジア戦線の同じ園芸分隊で、共に辛酸を舐めて来た戦友の山田太郎(千秋実)であった。

園芸分隊とは、戦況悪化と共に、現地での食料が払底して来た戦争末期、自らの食料を栽培せんと、急遽作られた分隊であった。

分隊長(加東大介)の指揮の元、いつも、同姓である事から何かと間違えられていた二人は、良く一緒に作業をやらされたものであった。

しかし、苦労して育てた大根なども、土が合わないのか、貧弱なものしか収穫できず、彼らの餓えを満たすような収穫はなかったが、人参が喰いたいと連れて来られた餓死寸前の通信兵を見た太助は、思わず救急箱の赤チンを取り出すと、それで細い大根に赤色を付け、死ぬ間際の男に喰わせてやったりもしたと言う。

二人はその後、太助馴染みの韓国人の鄭さん(山茶花究)がやっているホルモン焼き屋に河岸を変え、大いに盛り上がるが、内心、太郎は、太助の今の不遇に同情的であった。

戦後、太郎は、轟モーターズという自動車会社の副社長になり、一方、太助の方は、「パチンコの神様」と言われる程の釘師になっていたが、生活は苦しく、マリ子の母である妻で、今や名古屋でも指折りの名伎と言われるようになった吉弥(月丘夢路)とは、別居していた。

そんな吉弥は、時折、マリ子を訪ねて来ては、自分と一緒に暮さないかと説得するのだが、マリ子は、なかなか父親を見捨てる事が出来なかった。

ある日、太助が働いている店に、背中に赤ん坊、さらにもう一人の子供も連れた貧相な男が入って来て、じゃんじゃん弾を出し始める。
手袋をした左手をさかんにガラス面に押し当てているので、怪しいと睨んだ天主の大森(玉川良一)は、太助を連れて来ると、その男を問いつめるが、妻に逃げられと泣かれたため、つい同情心を出した太助は、わざと、釘を甘くした台を教え、大量の景品を男に持たせてやる。

ところが、後で、その男が、エレキの哲(三木のり平)という泣き落しのプロであった事を知った太助は、自分の甘さを後悔するのであった。

そんな太助、近所のお滝さん(星美智子)が、高利貸しから借りた金が返せず、立ち退きを迫れれていると聞き、鄭さんらと共に金を掻き集め、彼女の元を訪れるが、後、16万程必要なのだと言う。

何とか、その金を作ろうと、山田太郎の会社に出かけた太助だったが、会社での太郎は超多忙で、秘書(黒柳徹子)が、どうしても面会を許してくれない。

そんな太郎と面談をしていたのは黒田(須賀不二男)と言う男。
彼は、太郎に、今度の市長選挙に立候補しないかと説得に来たのだった。
黒田が言うには、駅裏の整理を選挙公約として立てば、当選間違いなしなのだと言う。

にわかにその話には興味を持たなかった太郎だったが、その後、今度は社長(有島一郎)自らが、東京からいきなりやって来たのにはびっくり。

実は社長は、名古屋の愛人である吉弥と会うために来たのであり、外で待っていた太助と吉弥は、思わぬ場所にやって来た妻と久々の対面と相成り、双方とも気まずいばかり。

さらに、吉弥と社長が公然といちゃつき出した副社長室に、社長の娘、志麻子(岩下志麻)が現れたから大変。

志麻子は、東京からバイクを飛ばして来たとヘルメット姿。

もちろん、愛人の事は良く知っており、現場を押さえた事もあり、父親から口止め料を要求するちゃっかりさを見せる。

一方、料亭で仲間たちと会合をしていた黒田は、やって来た芸者代理の、ちょっと頭が弱そうな女、蝶子(宮城まり子)が近くにいるのも気にせず、駅裏の整理を利用して大きな利益を得ようとする自分達の計画を話しはじめる。

その頃、太助は、新しいパチンコの権利を売った金で、お滝さんを助けていた。

やがて、黒田の口車に乗り、山田太郎は市長選に立候補。

その公約である「駅裏整理」を聞き知った太助たちは、自分達の住む場所がなくなると大反対運動を開始する事になる。

この反対運動を潰そうと、黒田一派は、大阪から稀代のパチプロ「なだれのサブ」(フランキー堺)を呼び寄せる。

店にやって来た彼に、たちまちの内に全ての台を打止めにされそうになった太助は、釘師の名を賭け、彼にその場で勝負を挑み、かろうじて勝利をおさめる。

その頃、太郎に久々に会いに来た分隊長は、太郎が戦時中、現地で付き合っていたパピーナという娘の間に、パブロという息子が生まれており、彼は近々、日本に来る事になっていると切り出す。

しかし、それを聞いた太郎は真っ青になる。

選挙中の今、自分にそんな息子がいたと世間に分かっては、大打撃である。

やむなく、太助の元を訪れた太郎は、事情を話し、君がパブロの親だと言う事にして対面し、すぐ彼に日本を嫌になって帰るように仕向けてくれと虫の良い依頼をする事になる。

悩んだ太助であったが、生来のお人好しと、太郎が駅裏整理の公約を止める事を条件に、その申し出を受けてしまう。

かくして、日本へやって来たパブロ(芦屋小雁)と太助のぎこちない対面は、新聞記事を賑わす事になる。

その記事を見て、ショックを受けたマリ子は、その事を母の吉弥にも知らせ、自分は軽蔑すべき父の元を去り、母親の元へ身を寄せる事にする。

その頃、太助は、町内の歓迎パーティや、名古屋の名所案内にパブロを連れて行ってやっていた。

すっかり、太助の人柄に打ち解けたパブロは、自分はあちらで、バイクのレーサーをやっているのだと身の上話を聞かせる。

さらに、マリ子の勤めるデパートで買った靴をプレゼントされた太助は、パブロが、地元で、日本人が置いて行った尋常小学校の教科書等を熱心に勉強しており、今の日本人以上に、高い理念と美しい心を持った立派な青年である事を知るのだった。

そんな二人は、隣のアパートのテレビを窓越しに見せてもらっていたが、そのテレビに選挙公約を発表する山田太郎が写り、何と、太助との約束を無視して、駅裏整理をぶちまけはじめる。

実は、黒田の脅しによって、太郎は無理矢理、その公約を言わされていたのだが、そんな事とは知らない太助はパブロを伴い、生放送中のテレビ局に乗り込み、スタジオで演説中の太郎ともみ合いになる。

その様子をテレビで見ていたマリ子と吉弥は、太助が太郎に対し叫んでいる言葉から、パブロの本当の父親は太郎であった事を知り、自分達の早合点に気づく。

また、彼女らと一緒にテレビを見ていた蝶子は、太助をスタジオからつまみ出そうとして画面に写った黒田たち一派の姿を見て、彼らが駅裏整理を隠れ蓑にして暴利をむさぼろうと計画していたと言い出す。

テレビ局に駆けつけて来たマリ子は、太助と太郎に事情を話し、太郎は立候補を辞退する事になる。

やがて迎えたバイクの日本選手権レース会場。

そこには、自社バイクを出場させる太郎とパブロ、応援に駆けつけたマリ子同伴の太助、さらに轟モーターズの社長も志麻子と吉弥を連れて来て、吉弥には、太助と元の鞘に戻させるのだった。

ところが、轟モーターズから出る予定だったレーサー立花が、急遽、事故で出られなくなったと言う。

出場を棄権しては、これまで、この試合での優勝に社運を賭けて来た太郎たちの計画は水の泡になってしまう。

話を聞いていた太助は、パブロに選手として出るよう説得し、パブロも快く承知するのだった。

しかし、レース場に向う彼らの前に、黒田一派が待ち受けていた…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

お人好しの釘師という珍しいキャラクターをメインに据えた人情ドラマ。

笑いを狙った喜劇と言うよりは、味わいのある下町人情ものと言った感じ。

見所は、ヘルメットに、赤い革ジャン姿で登場して来る岩下志麻であろうか。
活動的な大学生という設定が、ちょっとミスマッチにも思えるが、若い彼女はそれなりにすまして演じている。

もう一つの見所は、芦屋小雁が、後半、バイクレーサーとしてかっこいい姿を披露する所。

最初は、ちょとコミカルな印象だった彼だが、最後は二枚目風に決めてみせるのが珍しい。

出演者の顔ぶれや、テーマソングが、何やら、植木等が唄っているように聞こえる事もあり、一瞬、東宝映画を見ているような気分になるが、この時期、松竹は、主演の伴淳を助けるように、東宝からお馴染みのメンバーを招いて、この種の作品を何本も作っていたようだ。

冒頭に登場する藤原寛美だけでなく、ブーチャンこと市村俊幸や八波むと志などもゲスト的に顔を見せている。