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ちゃらんぽらん物語

1963年、芸映プロ、若井基成脚本、堀内真直監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

大阪、天王寺。

バトントワラーとしてパレードの洗湯を歩く池田園子(中島そのみ)。

一方、つくば兄弟がギター演歌を唄っている「角座」の舞台袖には、始めて漫才を披露しようとして緊張しているはんじ(若井はんじ)とけんじ(若井けんじ)がいた。
彼ら二人を励ましているのは池田種子(北あけみ) 。

その頃、自宅でバレエの練習をしていた池田克子(香山美子)は、恋人の春田と一緒に楽器の練習をしている姉の池田花江(冨永ユキ)をうるさがっていた。

この四人姉妹は、個人芸能プロダクション社長池田亀造(伴淳三郎)の娘たちだったが、皆、母親が別と言う腹違い、克子に至っては父親も違うと言う子供達だった。

芸人の実態を知っている亀造は、娘たちは絶対に芸人の女房なんかにはさせないと恒日頃から宣言していたが、実は、はんじ、けんじが角座の採用試験に合格したら、晴れて、園子ははんじと、花江はけんじと結婚する約束をしていたのだった。

しかし、結果は敢え無く不合格。

その頃、亀造は、千葉に巡業に出かけていた。
上方芸能人を舟橋ヘルスセンターに送り込もうとセスナで降り立った亀造の前に、一人の見知らぬ男が声をかけて来る。

聞けば、しろうとの芸人志望で、秋風亭頓橋(三木のり平)だという。

相手にせず、目的地に向っていた亀造は、踏み切りの前で、三味線芸を見せていた物乞い風の男を目にとめる。

かつて、自分の最初の女房ときと一緒に逃げた男(山茶花究)ではないか。

昔はいっぱしの芸人だったのだが、今は零落してしまったらしい。

そんな男に、大阪に来る際は又寄ってくれと言い残し、百円を渡す亀造だったが、当の男は、亀造と分かれた後、車の側で待っていた節子という女の元へ戻ると、ここでは見入りがないので場所を変えようと相談していた。

その後、亀造は、衆議院議院の加西(加東大介)なる人物とホテルの食堂で会うが、その男が忙しいと立ち去った後、その加西が親し気に話をしていた水野なる人物から同席を薦められる。

聞けば、その人物、かつて陸軍憲兵大尉で、加西の上官だったのだと言う。

日頃から、芸人の老後の事で不安を持っていた亀造は、その事を水野に打ち明けると、それならちょうど自分が今、国会に働きかけて養老年金法を設立しようとしている所だから、その運動資金として30万ほど出せないかと言う。

すっかり水野の話を信用した亀造は、大阪に帰った後、友人で、正調安木節を教えている角大作(フランキー堺)に会いに行き、金を出してくれと相談する。

角は心当たりがあると、すぐさま、恋人のかね子(環三千世)に会いに行くと、いつものように、結婚話をダシにして金を出させようとする。

亀造の家には、ひょっこり、あの頓橋がやって来て、家に居座る事になる。
彼は、すっかり末娘の克子が気に入った様子。

そんな亀造の家に、急遽、ストリッパーを一人用意して欲しいと電話があり、すぐさま承知した亀造は、側にいた頓橋に娘を一人探して来いと命ずる。

そんな頓橋が近くの天王寺公園から連れて来た素人娘ゆき(神谷泰子)を角の所へ連れて行った亀造は、即席で踊りを教えてくれと頼み込むが、そんな所へやって来たのがかね子。

彼女は、恥ずかし気もなく、若い娘にストリップ踊りを指南していた角を軽蔑してすぐさま帰ってしまう。

後日、政界のドンだと言う橋田長老と名乗る男と水野が待つ料亭に出向いた亀造は、娘たちが結婚資金として貯金していた金を無断借用して集めた30万を、そっくり彼に渡す事になる。

その事を知った娘たちは大激怒。

そんな亀造の家にひょっこり姿を現したのが、千葉で出会ったあの三味線弾きの男。

その姿を観て、てっきり、最初の女房時を連れて来たと勘違いした亀造は、張り切って娘たちを紹介するが、男が連れて来たのは見知らぬ女。

自分の母親とはじめて会えると期待していた園子は、軽はずみな亀造の言葉に心を傷つけられてしまう。

そんな気まずくなった家に、四菱電気という大会社から電話が入ったと頓橋が言う。

何でも、三橋美智也を用意できないかと言っているのだと言う。

困った亀造を尻目に、その場にいたあの三味線引きの男が、三橋美智也なら、自分がかつて世話した男だから、その話を受けてあげましょうと言って、電話を取り上げる。

さらに、三橋美智也が今出演中のはずの大劇へ電話して話をまとめてみせると言い、本当に大劇へ電話してみせる。

その結果、電話に出たマネージャーは、手金として10万円寄越せと言っていると亀造に伝える。

実はこれ、全部、三味線引きの男と連れの女が仕組んだ詐欺だったのだが、そんな事とは気づかない亀造は、せっかくの大チャンスを潰したくないと焦る。

そんな亀造の姿を観た頓橋は、自分が千葉でアサリを掘って溜めた5万円を出すと言い出す。

では不足分は、自分が何とか説得してみせると言い残し、金を預かって出かけた男は二度と戻って来なかった。

騙されたと悟り、すっかり意気消沈した二人だったが、そんな彼らの最後の希望は、拾って来たゆきが、ストリッパーとして人気が出始めた事。

そんな彼女を競りで高く買う相手を見つけようとした二人は、熊本の劇場主(木田三千雄)に決める。

ところが、ゆきを連れて出向いた熊本で、開場前になって、当のゆきがいなくなったと言う。

どうやら、一緒にやって来た浪曲師天中軒半月の弟子、三日月と駆け落ちしたらしいと言う。

その頃、その三日月と国道まで逃げて来ていたゆきは、通りかかったトラックを止めようとして、その運転手がかつて、同じ孤児院にいた知り合いだった事に気づき、さっさと独り乗り込むと、三日月を置いて去ってしまう。

泣く泣く劇場へ戻って来た三日月や頓橋らと共に、何とか、舞台で芝居を勤め上げた亀造だったが、劇場主から、違約金を請求されてしまう。

すでに、警察にも連絡したと知った亀造と頓橋は、その場を逃げ出すが、周囲は警官らが張り込み逃げる場所がない。

苦し紛れに潜り込んだ葬式の家で、通夜をして過ごした二人は、翌日、葬儀の列に紛れている所にパトカーが駆けつけて来たので、もはやこれまでと自首する事にする。

ところが、そのパトカーの目的は、騒擾罪、共同謀議のの指名手配犯としてこの地に逃亡していた水野と橋田長老を逮捕するためだった。

しかし、亀造らも結局、留置されるが、種子が違約金を持って大阪から駆けつけ、何とか釈放と成る。
亀造は、その種子に見せられた新聞記事によって、水野たちも詐欺師であった事を知り愕然とする。

皮肉な事に、牢から出る頓橋の代わりに入って来たのが、あの三味線引きの男だった。

その後、けんじ、はんじら春田らも交え、バスで移動していた亀造は、長浜駅と言う所で、あのゆきと出会い、彼女が孤児院出身の、まだ15才の子供だった事実を知る。

さらに、住民たちから歓迎を受けて、列車で到着した大臣となった加西と再会する。

しかし、そんな加西が、長時間待っていた孤児院の子供の出迎えに無関心なのを観た亀造は、思わず、群集の中から飛び出て、加西に面と向って注意するのだった。

その後、地元の孤児院に寄付をする事にした亀造は、園長(黒柳徹子)から感謝の言葉を受けるが、さらに彼を訪ねて来た加西から、先ほどの言葉は身にしみたし、水野から被害を被ったらしいので、その詫びを込めて受取ってもらいたいと50万円を渡される。

そんな金はいらないと辞退した亀造だったが、それなら、この学園に寄附したらと言う加西の言葉に従い、そのように取りはからう事になる。

やがて、大阪、道頓堀祭りの日。

はんじ、けんじコンビは舞台で、「森の石松」のネタを成功させる。

同じ頃、克子は、白鳥の湖のプリマを勤めていたし、園子も又、パレードの先頭で、バトンを軽やかに回して行進するのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

伴淳自らが企画して製作した芸道喜劇。

社会で不遇な弱者たちに対する思いやりを喚起する、強いメッセージ性を打ち出した作品になっている。

各々、母親が違う難しい年頃の三人娘を一人で育てながら、なおかつ芸人たちの生活も守ろうと理想に燃えながらも、生来の額のなさからつい人に騙されてしまうお人好しな個人芸能プロダクション経営者を伴淳が巧みに演じている。

ユーモア部分は、もっぱらフランキーと三木のり平が笑いが受け持っている感じ。

この作品で貴重なのは、若井はんじ、けんじコンビが、現実と同じような漫才師役で出ている事。

この兄弟漫才コンビは、テレビの「ダイビングクイズ」の司会や、大映作品「妖怪大戦争」などにも出た人気コンビであったが、兄のはんじの方が早くこの世を去り、惜しまれながらも、消えて行った芸人である。

後半、実際にバレエのプリマを演じてみせる香山美子も珍しい。