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アワモリ君西へ行く

1961年、宝塚映画、秋好馨原作 、長瀬喜伴+新井一脚本、古沢憲吾監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

商店街をアワモリ君(坂本九)が「倒産整理 全品半額」と書いたプラカードを掲げて歩いている。

その文句に釣られて、アワモリ洋品店の前までやって来た大勢の人だかりを見て驚いたのが、アワモリ君の父親で洋品店の主人(有島一郎)。

プラカードの言葉は単なる宣伝だという息子の言葉に、倒産等縁起でもないと激怒する。

その後、公園にいたアワモリの所へやって来た友人のダイガク(ジェリー藤尾)は、今度、轟商事の社員になったんだと辞令を自慢げに見せる。
それには、大阪支社勤務を命ずると書いてあったので、自分も一緒に連れて行ってくれないかとアワモリ君は言い出す。

大阪には、ホテルをやっている伯母がいるので、宿泊費はただになるはずだと言うのだ。

それを聞いたダイガクも、自分もそこへ泊めてもらえるのなら大助かりと承知する。

そこへやって来た加代子(森山加代子)も、今まで勤めていたパチンコ屋を辞めて、御前様の秘書をする事になったのだと報告する。

自宅に帰ったアワモリ君は、大阪に商売のコツを学びに行きたいと親を説得する。

その頃、ダイガクの家では、両親(丘窮児、都家かつ江)が、息子の門出を祝って、御陽気に踊り明かしていた。

加代子の見送りを受けて、東京を出発した二人は、車中で、チャイナ服姿のすごい美人(筑波久子)と出くわす。

そんなところへやって来た車掌が切符の検閲をすると、二人とも特急券ではないので、追加料金が必要なのだと言われる。

ここぞとばかり、アワモリ君は、こっそり、自宅から持ち出していた衣料類を社内販売して金を作ろうと知るが、車掌に見つかり、次の名古屋駅で下ろされてしまう。

ダイガクの方はと言えば、腹巻きにおふくろさんが縫い込んであったはずの虎の子を出そうとするが、そこにあったのは、父親の詫状だけ。

いつものように、父親が先に競馬代として抜き取ってしまっていたのだ。

困ったダイガクに救いの手を差し伸べてくれたのは、例の美女の隣に座っていた見知らぬ男性、自分に料金の不足分を払わせてくれと太っ腹な事を申し出られる。

一方、名古屋駅に置いてきぼりを食らいそうになったアワモリ君は、車掌の目をくらまし、再び列車に乗り込むと、目的地の大阪まで、ずっとトイレの中で隠れ通す事になる。

大阪駅に迎えに来てくれた伯母(初音礼子)のオート三輪に乗って到着した「大浪ホテル」とは、旅館に毛が生えたようなもの。

おまけに、隣が精神病院という立地の悪さ。

それより、アワモリ君たちが驚いたのは、二人からきっちり宿泊費を取ると言われた事。
払う金がないのなら、明日からここで働けと言う。

かくして、そのホテルから会社に通う事になったダイガクは、大阪支社で意外な人物と出会う。
列車内で金を払ってくれたあの男、実は、ここの高田課長(高島忠夫)だったのだ。

すっかり奇遇を喜んだダイガクだったが、彼が連れて行かれたのは、東京本社の時と同じ給湯室。
正社員としても彼の役目は、やっぱりただのお茶汲みだったのだ。

高田課長は、とある休日、公園で落ち合った恋人の幸子(浜美枝)から、近々、見合いをするかも知れない時かされる。

その後、轟商事の大阪支社長(藤田まこと)に呼出された高田本人も、見合いをやってみんかと誘われる。
何でも、支社長の妻が仲人好きで、今まで99組も結婚させているので、もう一組どうしても成立させたがっていると言うのだ。

その頃、大浪ホテルに、あのチャイナ服姿の美女がやって来て、泊めて欲しいと言う。
あいにく満員だと断わろうとしても、四菱電気の高山の紹介だと言われ、急遽、アワモリとダイガクが泊まっている部屋を提供する事になる。

部屋を奪われた形のアワモリ君たちは、その夜から、廊下に布団を敷いて寝るはめになる。

そんなアワモリ君、泊まり客の部屋から聞こえて来た「600円しかないので、これから死のう」という声に、慌てて止めに入るが、声の正体はラジオドラマだった…などとい失態も演じてしまう。

さらに、アワモリ君、件の美人から部屋に誘われる事になる。

恐る恐る部屋に向うと、相手が言うには、自分はある人物の調査を頼まれている者で、その手伝いをしてもらいたいと5000円を渡される。

一方、高田課長から5000円をもらい、見合いの代理人となったのがダイガク。

目印の黄色いハンケチを胸に、約束の大阪城へ来てみると、何と相手はとんでもないブス。

しかし、こちらも、幸子の代理としてやって来ていたその小柳ルミ(双葉京子)という娘は、すっかりダイガクの事を気に入ってしまい、どう断わっても言い寄って来られるダイガクは大弱り。

そんな二人の様子をうかがっていたのがアワモリ君。
彼が、美女から依頼されていた調査人とは、幸子の見合い相手の事だったのである。
事の意外さに面白がりながらも、つい、ダイガクを助けようと、二人の間に入ってダイガクの嘘の悪口を並べてみせたが、ユキの態度は変わらなかった。

その夜、調査対象者の前に姿を出してしまったアワモリ君の軽卒さを叱った美女だが、今度は、相手の女性が暮している白百合ファッションスクールの寄宿舎に侵入しろと命ずるのだった。

他方、高田課長から、見合い相手から彼女を守ってくれと頼まれたダイガクの方も、掃除婦に変装して、同じ寄宿舎に入り込むはめに。

アワモリ君の方は、出前に化けて寄宿舎に潜入。

二人を怪しむ舎監の目をかいくぐりながら、二人はばったり、寄宿舎内ではち合わせ。

そんな事とは知らない幸子は、寄宿舎の部屋までやって来た厚顔な見合い相手(茶川一郎)を冷たく追い返していた。

その頃、高田課長はといえば、かねてより契約が進んでいた黒田産業から送られて来た商品が約束のものとは全くの別物で、問い合わせようにも、肝心の黒田産業が逃げてしまう事態に遭遇、支社長と共に、善後策として、高山繊維に協力をあおごうとしていた。

しかし、その高山繊維の会長に連絡が取れない事が分かり、高田課長は支社長と共に真っ青になる。

その高山繊維の会長(左卜全)に同伴して大阪にやって来たのは、秘書役の加代子だった。

彼らは、大浪ホテルに泊まる事になるが、そこでまき割りをさせられていたアワモリ君とダイガクの歌声を聞き付けた加代子は、久々に彼らと再会する。

すっかり、高山会長と意気投合した二人は、その夜、思いっきり飲み明かすのだった。

その翌日、会社に出社したダイガクは、会社内が騒然としているので訳を聞くと、高山繊維の会長を全社上げて探している最中なのだと言う。

それを聞いたダイガクは、その人なら、うちのホテルに泊まっていると報告、ただちに、高田課長と共に、ホテルに戻るが時既に遅し、会長と加代子はどこかで出かけてしまったと言う。

高田から事情を聞いた幸子は、その高山繊維の会長と言うのは自分の祖父だと説明し、自分も祖父探索の為、神戸港に出かける。

荷物を積むべき船が出発する午後5時までには、もう時間がわずかしかない。

そんな中、高山会長の特長である「猿の干物みたいな顔」を連呼しながら捜し廻っていたアワモリ君とダイガクは、その言葉を自分の事を言ったと思い、怒ったおじさんから追い掛けられるはめになり、つい停まっていた車の荷台に隠れてしまうのだが、その車は六甲山ホテルの車で、二人はそのまま、六甲山ホテルまで連れて来られる。

しかし、偶然にも、車から降りた二人は、そこを通過していた高山会長と加代子の乗った車を発見する。

さっそく、会長に、仕事の依頼をしようとするダイガクだったが、今日は私用で来たので、仕事の話は一切しないと、会長は頑固一徹。

困ったダイガクは、目配せで、アワモリ君に、高田課長と連絡を取らせ、彼が到着するまで、自分は会長をホテルに足留めするため、あれやこれやの演芸サービスに努める事になるのだが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

坂本九が、秋好馨のマンガの主役「アワモリ君」を演ずるシリーズ第3作目。

江利チエミ主演「サザエさん」シリーズと同様、東宝製作で人気を獲得したシリーズの後半を宝塚映画が引き継ぐ形で作られている。

ストーリー自体は他愛無いものだが、宝塚映画らしく軽快な音楽映画になっている。

舞台も、宝塚映画らしく大阪、神戸、六甲…と、観光映画風の展開もあり楽しめる。

轟商事の万年平社員(15年勤務)として、夢路いとし、喜味こいし、新入社員として、パラキン(パラダイス・キング)もいつものごとく登場。

支社長役を演じている藤田まことも若々しい。

この作品の一番、見所は、やはり、チャイナ姿の謎の美女として登場する筑波久子だろう。

なかなかかわいらしい容貌なのだが、日活、東映作品等を中心に活躍。

その後、アメリカに渡り、ジェームズ・キャメロンを発掘、「ピラニア」(1978)や「フライング・キラー」(1981)などを製作したプロデューサー、チャコ・ヴァン・リューウェンとして有名。

劇中、ジェリー藤尾などが「スクスク」と、独特の調子でおどけてみせるが、これは当時流行ったリズム。