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霧笛が俺を呼んでいる

1960年、日活、熊井啓脚本、山崎徳次郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

夜霧の中、横浜港に停泊中の鈴蘭丸から一人の青年杉敬一(赤木圭一郎)が波止場に降り立つ。

彼は、ちょうど通りかかった車に乗せてもらい、エンジンが故障したので1週間足留めになったので、どこか遊ぶ所はないかと運転手に尋ね、船員相手の店「35ノット」に連れていってもらう。

店では、最近、馴染みのジミーが来なくなったと同情されているホステスのサリー(天路圭子)が、同席して来るが、彼女に気のある船員が因縁を付けて来て、たちまち杉も交えて、酒場は大げんかになる。

警察での事情聴取に呼ばれた杉は、身元保証人として、横浜荘に住んでいるはずの旧友浜崎守雄(葉山良二)の名を出す。

杉は、最近、その浜崎に手紙を出しても返ってくるので、住所を変わったのかと思い、彼の消息を訪ねる目的もあって下船していたのだった。

その名前を聞いて驚いた人間が、その事情聴取に同席した男たちの中にいた。
酒場「35ノット」の従業員渡辺(内田良平)だった。

その後、バンドホテルに泊まる事にした杉は、窓辺に立ち外の様子をうかがっている一人の女の姿を目撃する。
その女は、外で見張っている怪し気な男たちの姿を確認すると、一旦呼び寄せた車を断わり、このホテルに泊まる事にしたとホテルの従業員に告げる。

翌日、横浜荘へ出かけた杉は、浜田が神経衰弱で自殺したと管理人から知らされる。

死体は東防波堤の端に浮いていたと聞いた杉は、その突堤に花を手向けに出かけるが、そこに昨夜ホテルで見かけた女もやってくる。

彼女は、浜崎の愛人だった美也子(芦川いづみ)と名乗り、先ほどホテルに何者かから電話が入り、ここへ来るようにいわれたのだと説明する。

さらに、美也子は、浜崎の旧友だったと分かった杉に、浜崎の妹のゆき子(吉永小百合)も、股関節の手術を受けるために、北海道から浜崎が当地の病院に連れて来ているのだと教える。

さっそく、そのゆき子を見舞いに行った杉は、兄の浜崎は、死ぬ2日前に見舞いに来てくれ、手術が成功しそうだという話を喜んでくれていたので、そんな兄が自殺等するはずがないという彼女の言葉を重く受け止める事になる。

病院を出た杉を待ち構えていたのだ、ホテルで美也子の様子をうかがっていた二人の男たちであった。

彼らは、浜崎の死を調査していた森本刑事(西村晃)らだった。
ホテルの都に電話をしたのも彼らだったのだ。

森本は、杉に、死んだ浜崎は、実はペイ(麻薬)の密売人だったという意外な事実を教える。

美也子が歌手として出演している「35ノット」にやって来た杉の様子を監視していたのは、店の支配人柳田(二本柳寛)、渡辺、そして、殺し屋の勝(深江章喜)らだった。

ホテルに帰って来た杉は、先ほど、サリーから、浜崎について話があると電話があったと聞き、「35ノット」に出かけるが、すでに彼女は帰ったというので、ホステス仲間の和子(掘恭子)と一緒に、サリーのアパートを訪ねていくが、その部屋で見たのは、刺殺され床に転がったサリーの姿だった。

その後、海へドライブへ出かけた美也子から、浜崎の遺体が海に浮かんだのは、重しを結んでいた綱が切れたからだったと聞いた杉は、不審に感じ、自ら自殺現場の海に潜って沈んでいた綱を見つけだすと、どこから噂を聞いたのか、チンピラたちが絡んで来たので、彼らを全員海にたたき落とすと、平然と「35ノット」の和子に話を聞きに出かける。

チンピラを差し向けたのは渡辺だった。

結局、詳しい事を話さなかった和子は、店の帰り道、ナイフを持った勝から待ち伏せされていたが、それを予期して先回りしていた杉に助けられ、殺されたサリーは、以前馴染みだったジミーこと河出(弘松三郎)という男が、渡辺らに店から拉致される現場を目撃したと言っていた話を打ち明けるのだった。

その話を聞いた杉は、おそらく、その河出という男は浜崎の身替わりにされたんだろうと推理し、浜崎は今も生きているとの確信を得ると、美也子を鈴蘭丸の船室に匿い、ゆき子にも会いに出かけるが、手術が成功し、歩くリハビリをはじめたばかりの彼女をひた向きな姿を見ると、何も言えずに帰って来てしまう。

その後、「35ノット」の柳田の元へ出向き、浜崎に会わせろと詰め寄った杉は、翌日、病院からゆき子を連れ出すと、東京見物と称して車で出かける。

途中、勝らが乗った車と合流した杉の車は、とある屋敷に案内される。

そこには、杉が予測した通り、浜崎が待っていた。

杉は、昔、ニューヨークで出くわした自殺偽装事件の現場で、今回と同じように、綱がナイフで人為的に切られていた例をあげ、今回の事件を推理した経過を話すが、浜崎は、杉に250万の現金を見せ、この金を持って事件から手を引くか、仲間に入れと迫る。

ペイは、やる方同様、売る方も中毒になるのだと嘯く浜崎に対し、杉は、連れて来た妹のゆき子を窓から見せ、テーブル上の大金をぶちまけると、部屋を後にするのだった。

その後、「35ノット」の支配人室へやって来た浜崎は、店に乗り込んで来た森本刑事に気づくと、慌てて隠し扉から脱出してしまう。

鈴蘭丸で美也子に事情を話していた杉は、いきなりやって来た森本から、自分達も浜崎が生きていると察しを付け、杉を利用していたのだと打ち明けられる。

杉は、自首をさせたがったいる美也子と違い、浜崎を逃してやろうという気持ちになっていた。

そして、もう嫌な事は忘れ、船に乗って日本を離れようと考えていた杉がバンドホテルに戻ると、部屋で待ち伏せしていた浜崎から美也子を呼出せと言われるが、ちょうど、そこへやってきたゆき子に、浜崎は慌てて隠れる事になる。

兄には、自首して生きていて欲しいと言うゆき子の健気な言葉を、陰ながら聞いて苦悩する浜崎だったが、結局、翌日、貸し金庫に隠してあった麻薬を全てカバンに詰めて持ち出すと、一人、持ち逃げしようと企てる。

一方、その姿を監視していた勝は、浜崎が裏切りそうだと気づき、柳田に連絡を取る。

その頃、船に乗り込んでいた杉は、森本が預けていた麻薬被害者たちの写真を見て気持ちを変え、森本や美也子を伴い、浜崎が宿泊していたホテルへ駆け付けると、彼に自首を薦めようとするのだったが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

とある船員が、船が停泊している1週間の間に経験する、元親友にまつわる事件解明を絡めた通俗アクションものと言ってしまえばそれまでだが、それなりに、巧くまとまっている。

この作品のポイントは、何と言っても、親友の妹役を演じている少女時代の吉永小百合のキラキラした魅力につきる。

本当に純粋で健気な少女に見える彼女が、陰惨になりがちの暗黒街話に、一条の光を投げかけている。

赤木圭一郎は、素直に役を演じている感じで、好感が持てる。

それに対し、葉村良二の方は、若干インパクト不足と言った感じか。

芦川いづみや西村晃など常連所は、それなりの存在感を発揮している。