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雲ながるる果てに

1953年、重宗プロ+新世紀映画、八木保太郎+直居欽哉脚本、家城巳代治脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

昭和20年4月、九州南端の前線基地に、カミカゼ特別攻撃隊として集まったのは学徒出身の若者たちだった。

その一人、大瀧中尉(鶴田浩二)は、故郷の父、母、妹のヨッちゃんを思い出していた。

飛行場で立ち小便をしようとしていた秋田中尉は、敵機襲来に気づき、他の仲間たちと避難するが、銃撃に倒れ帰らぬ人となる。

大瀧中尉の学友、深見中尉も左腕を負傷するが、大瀧に助けられる。

4月9日、村山飛行隊長(原保美)は、第一飛行隊全員に明朝出撃の命令を出し、毎晩、料亭に通っている松井中尉(高原駿雄)に、今夜だけは抜け出すなと釘をさすのだった。

しかし、無礼講となったその夜、やはり松井は、寄宿舎を抜け出し、馴染みの芸者富代(利根はる恵)と最後の別れをする。
同じ頃、その料亭の女将の部屋では、特攻隊員を消耗品くらいにしか考えていない飛行長(神田隆)が、金儲けをしたい女将と何やら密談をかわしていた。

ところが、翌日4月10日は朝からの雨で、出撃は中止。
大瀧は一人風呂に浸かりながら、故郷の事等思い出していた。

寄宿舎として使用している地元小学校の音楽室では、隊員たちが、瀬川先生(山岡比佐乃)と共に、オルガンを弾く真似事等して暇つぶし。

そんな所に、突然、秋田の妻(朝霧鏡子)が、赤ん坊を連れて訪ねてくる。

最初に応対した松井は、つい松田の位牌を隠し、その死の事実を告げる事が出来ず、音楽室にいた仲間たちにも召集をかけ、最初はすでに南方に飛び立ったなどとごまかしていたが、笠原中尉(沼田曜一)が、そんな芝居に耐え切れなくなり、妻も夫の異変に勘付いてしまい、無言のまま帰る事になる。

さらに、良く11日も雨。

気勢を削がれた事もあり、何となく、部屋で待機している隊員たちの間にも焦燥感が浮き出てくる。
腕を負傷したため、出撃のメンバーから外された深見を松井がからかった事から、大瀧が松井に詰め寄ったりする。

そんな中、笠原が戦艦大和撃沈のニュースを携えてくる。
これで連合艦隊全滅だと、全員の意気は消沈する。

ピリピリした雰囲気は待機兵たちの気持ちをささくれだたせ、明日の天気の予想を巡って喧嘩騒ぎも起きかけるほど。

その翌日は、ようやく快晴。

しかし、状況の変化を理由に出撃機は大幅に減らされ、松井が先に行く事になる。

こうなると、もはや、松井と深みの間のわだかまり等も霧散し、互いに最後の別れを告げるのだった。

松井は、出撃の朝もやはり、料亭へ出かけているらしく遅刻するが、無事出撃には間に合い、帰らぬ人となる。

その夜、料亭にくり出した第一飛行隊全員は、どんちゃん騒ぎをするが、そんな中、大瀧は、北と富代が別室で向かい合っているのを発見、二人の中に疑惑を感じるが、実は、松井が残して行った辞世の句を、北が富代に渡していたのであった。

生来の不精のため、垢だらけの身体で死んで行く自分の事を自虐的に書いたその句を読んだ大瀧は、一人、大笑いをするのであった。

その後、特攻部隊は、燃料不足を理由に出撃は当分取り止め、名目だけの自己鍛練に明け暮れる毎日が始まる。

小学生たちと遊び戯れるもの、尊敬していたドイツ人牧師に戦争の是非を問うたら、アメリカが悪いので、それを殺すのは良い事だと答えられ、相手を信じられなくなった過去を友人に打ち明けるもの、架空の自宅へ訪問する夢想を楽しむもの、そんな中、かねてより、互いを意識しあっていた深見と教師の瀬川は、海岸で一時の逢瀬を楽しんでいたが、帰りがけたまたま出会った飛行長から下品な罵声を浴びせられ、二人とも深く傷付くのだった。

その後、大瀧は、明朝5時、父母(原緋紗子)と妹が故郷からやって来るとの知らせを受け、大喜びで仲間たちに酒を振舞うと言い出す。

しかし、その頃、本部には倉石参謀(岡田英次)が到着し、沖縄方面への可動機全機出撃の指令を指令(加藤嘉)に伝えていた。

その夜、何時の間にか姿を消していた大瀧を探しに出かけた深見は、林の中で号泣している大瀧の姿を発見、自分一人がこの戦争に疑問を感じ、苦しんでいたのではない事を悟り、自ら飛行隊長の元へ向うと、自分も連れて行ってくれと出撃に志願するのだった。

かくして、4月16日、全員の攻撃機は基地を飛び立ち、特攻へと向う。

基地には、再会間に合わず、遠ざかる編隊を見送る大瀧の両親と妹の姿があった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

カミカゼ特攻隊として召集された学徒兵たちの、出撃するまでの最後の葛藤の数日間を描いた作品だが、独立プロ製作の作品だけに、学生を消耗品扱いし、影で巧い汁を吸っている飛行長や、酷薄な参謀の姿も余す所なく描いており、反戦色の強い内容になっている。

木村功の母親として回想シーンにちらり登場するのは山田五十鈴。
こちらは、見た目、かなり若々しい感じで、老けメイクをしているように見える。

一方、鶴田浩二の母親として最後に登場するのは原緋紗子(ひさ子)である。
髪が黒い以外は、かなり老けて見え、その後のおばあちゃんのイメージとさほど違いはない。

特攻隊員として、西村晃、金子信雄らも登場している。

一見、死を恐れず、戦争にも疑問を感じず、悠久の大義のために死ぬ事に微塵の疑いも抱いていないかに思えた大瀧が、最後、人知れず見せる足掻きの姿が印象的。

数カットながら、円谷研究所が担当している特撮の水準は高い。