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鋼鉄の巨人

1957年、新東宝、根岸伸介原作、宮川一郎脚本、石井輝男監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

世界各国で原水爆実験が繰り返され、その影響で迷惑を被っているのは地球だけではなかった。

かくして、エメラルド彗星に各星の代表者たちが集い、宇宙人会議が開かれる事になる。
協議の結果、エメラルド彗星で一番優れた人スーパー・ジャイアンツ(宇津井健)を地球に派遣し、原水爆実験の中止を働きかけてもらう事にする。

彼には「地球計」という腕時計型の新兵器が渡される。

その地球が描かれた文字盤の右側のボタンを押すと空をとぶ事ができ、左のボタンを押すと、ガイガー計数管のような役割を果たすのである。

さっそく、地球へ飛来したスーパー・ジャイアンツは、嵐の中で方向舵が故障したまま飛行している旅客機を発見、ただちに、尾翼に舞い降りると、方向舵を修理して飛行機を救うのだが、その際、地球計の反応から、旅客の中に放射性物質を持っている人物がいる事を突き止めたスーパー・ジャイアンツは、瞬時に黒いソフト帽に黒背広と言う紳士に変身して、旅客の一人として機内に潜入するのだった。

羽田に着いた旅客機から降り立った一人の外国人の後をつけたスーパー・ジャイアンツは、その外国人を待ち受けていた車に一緒に乗り込むと、有無をいわさず、近くの草むらに誘うのだった。

車の運転手M6号と外国人M7号は、草むらで、このおかしな男に拳銃を向けるが、男は笑っているだけ。

その様子を、近くから覗いていたのが、蒲田にあるイマヌエル教会の子供達。

彼らは、スーパー・ジャイアンツが相手の撃つ拳銃にもびくともしないのに驚くと共に、彼らが格闘している間に、男たちの手から落ちたカバンと拳銃を拾うとすばやく逃げ出してしまうのだった。

しかし、そんな中、逃げ遅れた弘(大沢幸浩)は、M5号とM6号に拉致されてしまう。

そんな事とは気づかない子供達は教会の側まで来ると、拳銃をいじりはじめるが、そこに現れたのがスーパー・ジャイアンツ、彼は、子供達を優しく諭すと、そのカバンと拳銃を貰い受けるのだった。

そこへ近づいて来たのが、教会で子供達の面倒を見ているシスター敏子(池内淳子)、彼女は、拳銃を手にした不審な紳士にちょっと身構えるが、スーパー・ジャイアンツは、手品を見せるつもりだったといい、一瞬にしてその拳銃を丸めてしまうのだった。
そして、しばらくこのカバンを預かって欲しいと敏子に託すと、スーパー・ジャイアンツはどこかへ立ち去る。

その後、子供達の友人であるれい子と、その兄で刑事である岡本(中山昭二)がやって来たので、子供達は夢中になってこれまでの経緯を話すのだが、半信半疑で聞いていた岡本も、曲げられた本物の拳銃を見せられて事の重要性を察知、直ちに本部に戻る事になるが、子供達は仲間の弘の姿が見えない事にようやく気づくのだった。

スーパー・ジャイアンツは、X-14ウラニウムが入ったカバンを奪われたM5号が、副団長から殴りつけられていたメラポリア大使館に潜入する。

一方、世界征服を目論むアトムAB団は、とある孤島の中に建設された秘密基地で、超強力兵器のボース爆弾の製造を急いでいた。

アトムAB団の団長(ジャック・アバンティ)は、アジア1の工業国である日本から、まず征服する計画である事を部下たちに説明していた。

その頃、外国人のM6号に連れ回されていたひろしは、自分が暮している教会の場所をいわされてしまう。

仕事のミスの責任を取らされ、死刑が宣告されたM5号が閉じ込められている部屋に潜入したスーパー・ジャイアンツは、組織に絶望した彼の口から、弘が、現在、列車に乗せられて興津へ向っているとの情報を得、侵入者に気づき駆けつけて来た大使館員たちとの格闘の後、ただちに、その列車に飛ぶと、M6号を殴って気絶させると、弘を救出するのだった。

しかし、その時既に、教会へ侵入していたアトムAB団員は、殺人光線銃を神父(高田稔)、敏子、子供達に突き付け、カバンの在り処を問いつめていた。

さらに、その教会から帰宅途中だったれい子も又、待ち伏せていたアトムAB団に拉致されるのであった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

弾丸よりも早く、鋼鉄より強いスーパーヒーロー「スーパー・ジャイアンツ」の活躍を描く、おそらく国産初の子供向け空想特撮ヒーロー映画。

続く「続鋼鉄の巨人」と前後編になっており、本作はその前編に当る。

主人公のスーパー・ジャイアンツを演ずるは、若き日の宇津井健、そして、その最初の相手役となる特撮ヒロインは、何と、池内淳子である。

スーパー・ジャイアンツに協力する刑事役は、「ウルトラセブン」のキリヤマ隊長で有名な中山昭二。

一見、SF風の設定に思えるが、良く観ていると、むしろ「江戸川乱歩の少年探偵団」の世界にそっくりな事が分かる。

石井輝男監督は、晩年にも「少年探偵団」をシリーズ映画化したがっていたという話があり、もともと、乱歩の世界に執着があったのだろう。

唯一、冒頭に登場するエメラルド彗星での宇宙人会議の描写は、子供達が作った学芸会の芝居でも観ているようで楽しい。

何故か、日活の「宇宙人東京に現る」(1956)で登場した、岡本太郎デザインのパイラ星人そっくりの宇宙人も登場。

宇宙からはるばるやって来たスーパーヒーローが活躍するにしては、蒲田辺りの限られた地域が舞台で事件が起こると言うスケールの小ささや、スーパー・ジャイアンツが、子供達にあっさり自分の正体を明かしてしまう真っ正直さも御愛嬌。