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キング・コング('05)

2005年、ピーター・ジャクソン監督作品。

映画史に惨然と輝くモンスターエフェクト映画の金字塔、1933年「キング・コング」の、1976年版に次ぐ二度目のリメイクと言う事で、正直、期待度は低かったのだが、観てみて驚いた。

良く出来ている。

キャラクター設定等、細部を若干変えてある以外は、基本的にはオリジナルとほとんど同じ展開と言って良い。

リメイクものに良くありがちな、オリジナルとの差別化を計るために余計なエピソード等はほとんど加えてないのだ。

その分、冒頭からラストまで、有名な各エピソードを少しづつ膨らませてある感じ。

1930年代当時の大不況の様子から髑髏島へ到着するまでのエピソードは、主要メンバーの人物紹介、後半への伏線など、オリジナルより丁寧に撮られているため、やや冗漫にも感じるが、髑髏島に到着してからは、怪奇とサスペンスとアクションの連続で息つく暇もない。

圧巻なのは、コングとアン・ダロウが心を通じ合わせる中盤部分。

ここは、驚異的なVFXアクションの連続で見せながらも、同時に、観客もアンと同じように、コングに感情移入していけるよう実に巧みに考え抜かれている。

この部分が巧く描かれているので、後半の感動が生きてくるのである。

怪獣映画やモンスター映画の魅力の一つは、主役のモンスターに感情移入できるかどうかだと思う。

そういう意味では、本作は見事に成功している。

この作品でのコングは、オリジナルでの、ゴリラに人形的な魅力が加わった独自の生き物ではなく、かなり現実のゴリラに近く、その分見た目的にはモンスターらしさは希薄なのだが、それでも、十分怪物的な迫力と感情移入できる魅力を兼ね備えている。

原作に惚れ込み、その作品へのリスペクトに溢れながら、なおかつ、最先端の技術で、オリジナルとは全く違った魅力と迫力を生み出している、いわば本作は、リメイクのお手本とも言うべき作品ではないだろうか。

あえて難を言えば、監督の原作への思い込みが強い分、編集で思いきった刈り込みが出来なかったとみえ、もう少し尺を短くしていれば…とも感じるが、これはこれで十二分に見ごたえはある。

「ジュラシック・パーク」が、すっかり過去のものと感じられるような驚異のVFX技術にも注目。

願わくば、天国にいるオブライエンやクーパー、シュードサック、フェイ・レイ、円谷英二たち先達たちに、この作品を観てもらいたかった…。