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黄色い風土

1961年、ニュー東映、松本清張原作、高岩肇脚本、石井輝男監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

週刊東都の記者、若宮四郎(鶴田浩二)は、婦人問題研究家島内輝秋(柳永二郎)に原稿依頼しに行く目的で、彼が投宿している熱海の鶴田ホテル目指して、東京駅から下り列車に乗り込んでいた。

彼が乗り込んだ列車は、「新婚列車」と言われるだけに、乗客は新婚カップルだらけ。

そんな中、どこからともなくカトレアの香が漂って来たので、その匂いをたどって行くと、美しい女性(作間良子)が一人窓際に座っていたので、若宮はその隣に座ることに。

その出発間際の車両に飛び込んで来た一組の男女がいた。

新婚カップルにしては、誰一人見送り人がいないのを訝しんだ若宮だったが、列車はすぐに熱海に到着してしまう。

熱海通信所の村田(春日俊二)と合流し向った鶴屋ホテルでは、満室だと知らされ失望した若宮らだったが、先ほど列車で見かけたカップルもそこへチェックインする所を目撃する。

幸い、一室だけ空きがあったことが判明、若宮は618号室に落ち着くことになるが、島内からの連絡で、打合せは明朝9時に、屋上の喫茶室でやることになる。

そんな若宮の部屋に、服を届けに来たと入って来た見知らぬ男があった。

どうやら、部屋を間違えたらしい。

その晩、ホテルのバーで飲んでいた若宮は、先ほど服を届けに来た男が、太りぎみの男性と二人で飲んでいる所を発見する。

翌朝、島内との打合せを終えて、独り食堂に向った若宮は、警官の姿を観て、何か事件があったのかとウエイトレスに尋ねると、613号室の客が錦が浦で自殺したのだという。

613号室と618号室の類似に気づいた若宮は、夕べの服を間違えて届けに来た男を思い出していた。

さっそく、現場に駆けつけた若宮が見た水死体は、あの列車で見かけたカップルの男の方だった。

警察の調べでは、寺田武夫というその男の妻らしき美奈子という女は、一人でさっさとホテルをチャックアウトしたと言う。

二人が泊まった613号室には、何故か、カトレアの花が飾ってあったが、ホテルのフロント係春田(増田順司)は、全く心当たりがないと言う。

東京に戻った若宮は、編集長(丹波哲郎)から、その事件の追跡を求められる。

久々に銀座のバー「トリオ」に飲みに出かけた若宮は、馴染みのホステス珠美(小林裕子)から、同じアパートに住む友達の谷川由美(八代万智子)が4日前からいなくなったと聞かされ、その写真も見せられるが、その女こそ、熱海で死んだ男とカップルだった女だった。

店のマダム(荒川さつき)がいうには、由美は、この店が「あじさい」という名前だった頃から勤めていたホステスだったらしい。

その後、鶴屋ホテルの春田が殺されたという情報を知った若宮は、さっそく、名古屋の現場となった旅館西山を訪ねるが、その部屋にもカトレアが飾ってあり、経営者の老夫婦の証言では、春田は年の頃22、3の女連れだったと言うので、若宮はそれは由美ではなかったかと疑う。

その頃、編集長は、ライバル誌の週刊毎朝に掲載された日本中に出回っている精巧な偽札事件の記事を読んでいた。

若宮は、同じ部署の田原(曽根晴美)とコンビを組むことになるが、事件の背後にカーネル大佐という名前が浮かび上がってくる。

後日、別件で、再び島内輝秋の自宅を訪れていた若宮は、帰り際、あの列車内で隣り合ったカトレアの女を発見、その追跡を開始するのだが、すぐ間近まで接近した狭い十字路で、横から走って来た車にぶつかって怪我を負ってしまう。

見舞いに来た田原が持って来た新聞記事で、真鶴岬で発見された倉田敏夫(大東良)という惨殺遺体の写真を見た若宮は、その倉田が、鶴屋ホテルで、服を間違えてもって来た男であることに気づく。

さらに、同じく見舞いにやって来た、ぶつかった車の所有者、アジア商事の社長桜井(神田隆)の姿を見た若宮は、彼こそ、鶴屋ホテルのバーで、服を間違えて届けに来た男と一緒に飲んでいた太り気味の男だったことに気づき、今回の事故は意図的なものだったのではないかと疑念を持つ。

その後の調査で、殺された倉田の本名は横尾敏夫という生きている英霊で、偽札事件で指名手配中だったと判明する。

真鶴に調査に訪れた若宮は、近所の奥田印刷所が火災で全焼したと知り、偽札事件とかかわりがあるのではと感じ、印刷屋の主人奥田孫三郎なる人物の身辺調査を始めるが、後日、その奥田は、木曽川の下流で遺体となって発見される事になる。

現地に飛び、死ぬ前日に泊まっていた宿で、奥田が旅館西山に「昨日は大佐が留守だったので会えなかった」という電話していたこと、さらに女から電話を受けていたことも聞き込んだ若宮は、近所の久岡小学校で島内輝秋の講演会が開かれていることに気づき、その符合を怪しむと共に、その場に行って張込むことにするが、そこへタクシーで現れたのが、あのカトレアの女。

その女の車が走り去った直後、講演が行われていた小学校で騒ぎが起きたことに気づいた若宮が駆けつけてみると、講演中の島内が青酸性の毒物で急死したのを目の当たりにするのだった。

さらに、奥田との関係を求めて向った旅館西山は、すでに店を閉鎖してしまっており、足取りを失った若宮は、名古屋にやって来た島内の未亡人の乗る列車に同乗し、カトレアの女が再び現れるのではないかと車内を探していたが、出会ったのは意外にも桜井であった。

その桜井が愛用している薬のカプセルから、島内殺害の方法もカプセルを使った時間差工作ではなかったかと推測した若宮は、島内の葬儀に出かけてみる。

案の定、その場に現れたカトレアの女と、桜木町で再会した若宮は、彼女から「あじさい」を調べてみろとの謎めいた言葉を聞かされる。

女から、「あじさい」がバーの名前でも、花言葉でもないとのヒントをもらっていた若宮は、「ア-231」という旧陸軍の部隊名ではないかと気づき、防衛庁付きの記者を訪ねるが、戦時中、偽造工作を専門にしていた「アジサイ工作」という名前があったと聞かされる。

その工作を担当していた第9部隊に奥田大佐と言う人物がいたと知った若宮は、その奥田大佐こそ、印刷所の主人奥田の関係者であり、さらに、そのアジサイ工作の事を調べていたという岩渕なる人物こそが、錦が浦で自殺したとされる男だったのではないかと推理し、再び、熱海へ向うのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

大掛かりな偽札事件を背後にした連続殺人事件を負う雑誌記者の姿を描いた推理もの。

人気作家だった松本清張の量産期の原作だけに、謎解きものとしては、御都合主義的なヒント等が随所に登場したりする不自然さもあるが、それなりにぐいぐい物語に引き込む力は感じられる内容になっている。

石井監督は、独特のケレン味に頼る事もなく、オーソドックスな撮り方で全体をまとめている。
全体的に、地味と言えば地味な印象だが、出来としてはそう悪くないように感じた。

聞き込み中心の単調な展開になりがちな捜査ものを、カトレアの女なる謎めいた存在で引っ張って行く手法は、通俗と言ってしまえばそれまでだが、映像的にはロマンチックな彩りくらいにはなっている。

鶴田浩二の雑誌記者役は、観てみると、さほど不自然な感じもなく、それなりに器用にこなしているのに感心させられる。

編集長役の丹波哲郎も同様。

俳優はベテランになると、結構、役柄のイメージが固定されてくる傾向があるが、こうした若い頃の、珍しい役柄を発見してみるのも一興である。

鶴屋ホテルの屋上喫茶なるものが、回転ラウンジ方式であるのが、今観ると、時代を感じさせる。