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喜劇 命のお値段

1971年、松竹、満友敬司脚本、前田陽一脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

刑務所から同時に出所して来た二人の中年男、福田清造(フランキー堺)と加東一郎(財津一郎)は、長年コンビを組んで詐欺行為を働いてきた仲間同士だった。

さすがに40を目の前にした清造は、今度こそまともな仕事に付こうと決心し、一郎にコンビ解消を告げて、別れるのだった。

その後、スクラップ工場で真面目に働いていた清造だったが、仲間が熱射病で倒れたりすると、いつもの悪い癖が出て、医者の真似事をやってしまっていた。

そんな清造は、ちょっと小銭がたまったので、久々に、墓参りをする為、故郷の緑ヶ島へ一週間ばかり帰る事にする。

その島へ渡る船の中で、清造は、一人の男から声をかけられる。

小学校時代の同級生で、今は洋服屋をやっている桜井新吉(桜井センリ)だった。
今何をやっているのかとの新吉の問いに、見栄もあって、つい、清造は医者をやっていると答えてしまう。

新吉は、てっきり、今日、島で行われる小学校時代の同窓会のために清造が帰って来たと思っているらしかった。

結局、その同窓会に出る事になった清造だが、会の途中、同窓生の一人畠山の娘が急病になったと言うので、無医島である現状を考えると、成りゆき上、清造が診てやるはめになってしまう。

花子というその娘の腹痛は大した事なく、浣腸をした結果、翌朝には全快したが、そんな花子の様子を診察していた清造は、花子を見舞いに来た小学校の先生の顔を見て驚愕してしまう。

何と、刑務所前で別れた一郎ではないか。

訳を聞いてみると、各種公文書偽造は、一郎の得意分野、色んな免状を偽造している中に教員免許もあり、すんなり今の仕事に付けたのだという。

この島を選んだのは、清造の郷里だと知っていたので、ここにいれば、いつか又再会できるだろうと思っていたのだという。

さらに、偽造免状の中の医師免許を物欲しそうに見つめていた清造の気持ちを見抜いたように、それを使って医者にならないかと持ちかけてみる。

両親の墓参りをするまで、そんな誘いを拒絶していた清造だったが、医者がいなかったばかりに、病気で助からなかった両親の事を思って、ひたすら医者になりたかった子供時代なども思い出し、とうとう偽医者になる決心を墓前でするのだった。

東京に舞い戻った二人は、新聞の医者募集の記事の中から、目立たなそうな町医者を選ぶ。

出かけてみると、そこには、老母(北林谷栄)と暮す、帝大医学部の生徒だという独り息子明夫(萩原健一)が待っていた。

明夫は、来年卒業予定なのだが、何故か、医者になるのが嫌になったのだという。
そんな明夫は、無医島からやって来たという二人を、理想に挫折し、医者を金儲けと割切って生き方を変えた男たちと勝手に思い込み、自分も割切って、すんなり、この病院を任せる事になる。

かくして、清造は、長年の念願であった医者として商売を始めるが、本から得た知識を元にした危なっかしい診断ながら、客は少しづつ増えて来て、商売は波に乗りはじめる。

すっかり、彼らの手腕を買った明夫は、ろうあ者だけでやっているというおかしなバーに二人を連れ込んで、税金逃れや金儲けの方法を堂々と伝授するのだった。

清造の方も、何でも本音が言えるこのバーが気に入り、口がきけないというママ日野信子(岡田茉莉子)を、いつか治療で直してやる等と、無責任な事を筆談で伝えるのだった。

そんなある日、清造は、近隣の医師たちが集める医師会に出席しないかという連絡を受け、あっさり出席する事になる。

そこで、医師会会長(石山健二郎)の音頭通り、ストライキの決行にもあっさり賛成してしまう。

ところが、指示通り、病院を休んだ当日、そんな事とは知らない一郎が、喫茶店で腹痛を起こした男を見つけたと、担架で運び込んで来てしまう。

見ると、ストライキを決めたあの医師会会長本人ではないか。

清造は、ストライキ破りになるし、看護婦もいないからと尻込みするが、会長の容態は想像以上に悪いらしい。

苦しむ会長本人が洩らす言葉をドイツ語辞典で調べてみると、「腸閉塞」だから、すぐに手術せよとのことらしい。

手術の経験等、昔、悪らつな手配師から朝鮮戦争に一郎と行かされた時、簡単な医療活動の真似事をやった程度しかない。

さんざん迷ったあげく、最後に清造は、本を見ながら、老母を看護婦代わりに手術を決行する事にする。

そして、何とか無事、手術は成功するのだった。

この事以来、彼の医者としての名声は揺るぎないものとなり、医師会会長の信頼も勝ち取る事が出来た。

すっかり調子づいた一郎と清造は、いつものバーで、自分達が「偽医者」であるのに商売が成功した事を大っぴらにしゃべりあう。

そんした中、あのバーのママも治療と称して、清造の病院に足しげく通って来るようになる。

実はバーのママとホステスは、どちらも健常者であり、ろうあ者というのは嘘だったのだが、ママは、偽医者と分かって以後も、清造個人の人柄にちょっと興味を惹かれていたのであった。

そんな中、清造の患者に、尻が痒いというタクシーの運転手(左とん平)がやって来る。

さらに、女優の真田ユリ(加賀まり子)も同じ症状で、夜中こっそり訪れて来たのに気づいた一郎は、性病の一種なら彼女を脅迫できると感じ、嫌がる清造を抱き込んで、偽の診断書を書かせ、撮影所にいる彼女から60万円搾取しようとする。

しかし、往診の途中、街のあちこちで、尻を書いている人々の姿を目撃した清造は、これは性病ではなく、別の病気だと確信し、撮影所にいた一郎の脅迫行為を止めさせる。

その後、清造は、医師会会長の計らいで、鎌倉に住む皮膚科の女医小田由美子(日色ともゑ)と見合いをする事になる。
真面目な清造に惹かれた由美子とは、馬が合いそうだった。

逆に、その見合いの事をバーで聞かされたママは、憂鬱な日々が始まる。

やがて、痒い痒い病と名付けた新しい皮膚病の調査を進めた清造は、川上食品を食べた人間が発病している事から、その食品添加物が怪しいと見込み、自らモルモットにならんと、川上食品の製品を毎日食べ続ける事にする。

最初は、純粋に社会悪の告発のつもりだった清造だが、川上食品の食堂に調理師として潜り込んだ一郎から、川上食品の社長(太宰久雄)と言うのは、実は昔、横須賀で靴磨きをしていた自分達二人を騙して、朝鮮戦争に送り込んだ手配師と同一人物だと言う意外な話を聞かされて以後は、自らの復讐心も込め、患者たちと結束して、川上食品を糾弾しようと立ち上がる事になるのだった。

しかし、県の食品衛生課等は、どんなに検査しても、川上食品の添加物は法律で決められた基準内であるとして相手にしてくれず、清造自らの身体にも、不思議な事に何の症状も出なかった。

こうして、すっかり壁にぶつかってしまった清造に、さらなる追打ちをかけるように、あれ程、交際が巧くいっていた由美子から、家族が興信所で彼の身元を全て調べ上げてしまったので、これ以上おつき合いは出来なくなったと、別れを告げられてしまう。

すっかり気落ちした清造は、バーのママとデートした折、本当は彼女を愛していた事に気づいた事と、もう緑ヶ島へ帰ろうと思うと弱音を吐くのだが、それを聞いたママは、自分が実は健常者であった事を告白し、二人ははじめて互いの愛を確認しあうのだった。

その後、清造と喧嘩別れしていた一郎は、ばったり外で出会った明夫と看護婦の弘子(小川ひろみ)から、自分達が偽医者である事は、とっくの昔から知っていたと聞かされ、清造にそろそろ逃げ時だと忠告しに行く。

逃げる前に、どうしても、川上食品に一泡吹かせたいと考えた二人は、明夫に大学から赤痢菌を持ち出させて来させると、それをシュークリームに混入し、一郎に食べさせる事にする。

川上食品の従業員から赤痢菌患者が出たとなれば、会社が被る被害は甚大だと計算した上での決断だったのだが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

フランキー堺と財津一郎という、力のあるベテランコメディアン二人を組ませた風刺劇。

ただし、そうした役者たちや、タイトルにある「喜劇」という文字から、この作品に笑いを期待していると、肩透かしを喰う事になる。

ストーリーや演出に、何ら「笑い」を狙ったような部分はない。

あえて言えば、後半、役者たちが尻をかく下ネタ描写があるくらいだが、そんなもので笑うのは子供くらいではないだろうか。

コメディアンが演じている、普通のドラマと割切って観る方が無難である。

身体の不自由な人をネタにしたような設定があるのも、何だか観ていて笑えない要因。

重要な役所を演じている岡田茉莉子が、厚化粧で、あまり魅力的に見えないのも残念と言うしかない。

見所と言えば、若いショーケンが出ている事くらいか?

小山ルミとか、白木みのるなどといった懐かしい顔が登場するのも貴重かも。

別に笑えないが、コント風の濃い老けメイクをして、とぼけた演技をしている北林谷栄は、それなりにインパクトがあり、印象に残る。