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1957年、松竹京都、松本清張原作、井手雅人+瀬川昌治脚色、大曽根辰夫監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

草津駅に停車中の東京行き各駅列車に、一人の男が乗っていた。

九州佐賀に生まれ、労働争議の委員長をやったばかりに会社を解雇されてしまった石岡三郎(大木三郎)だった。

同じプラットホームを通過する上り急行列車から、一人の男が飛び下りて、そのまま徒待っていた各駅停車に乗り移る。

驚く駅員は、ホームに、今の男が落とした洋酒の瓶が落ちて割れているのに気づく。

走り出した各駅列車の車内を歩く男は酔っていた。

彼は、座席に座っていた一人の女を発見すると、有無をいわさず、彼女を洗面所へ連れて行く。

その頃、咽が乾いた石岡は、洗面所へ出かけるが、誰か使用しているようでカーテンが閉まっている。

酔った男は、大阪まで来ていたのなら、どうして神戸にいると分かっているはずの自分に会いに来ないのかと、ネチネチと女に食って掛かっていた。
どうやら、二人は旧知の間柄らしい。

そんな所に、再びやって来た石岡は、二人の顔を確認しながら、洗面所を占領するのはよせと言って帰る。

その後、デッキの所へ移動し、もみ合いになった男は、酔っている事もあり、思わず開いたドアの外へ身体が傾き、そのドアを女が占めてしまったので、男はそのまま走行中の列車から外へ落ちてしまう。

その時、女は自分のコンパクトを床に落としていた事を気づいていなかった。

その後、列車から墜落したけが人を収容する所に調査に訪れた老いた刑事の長谷川(笠智衆)は、そのけが人が、無免許で堕胎を繰り返し、数十人の死者を出した手配犯、飯島である事に気づき本庁に連絡させる。

飯島の事故は、他殺ではなかろうかと考える飯島に対し、本朝からやってきた石渡課長(松本克平)は、何お根拠もないと否定するのだった。

手術の結果、何とか一命を取り留めたものの頭蓋骨骨折で意識喪失状態だった飯島の病院に、一人の女が立っていた。

あの時の女であった。

記憶をなくし、朦朧とした意識の中、ベッドで運ばれていた飯島は、廊下に立っているその女の顔を確認した後、容態が急変し息を引取ってしまう。

女は、病院からの帰り道、一件の花屋を見つけ、何かを思案する。

その後、霊安室へ出向いた長谷川刑事は、そこに花屋がもって来たばかりの献花が置いてあるのに気づき、慌てて、花屋に、誰から送られたのだと詰問するが、女の声で電話があって、子供が金を持って来たとしか分からなかった。

人気モデル三村容子(宮城千賀子)を擁したファッションショー。

モデルの着替え室では、出番前の容子が、お気に入りのアクセサリーがないと言っていらついていたが、それをすぐに見つけだし手渡した女がいた。

新人モデルの水原秋子(岡田茉莉子)であった。

そんな良く気のつく秋子を、容子は可愛がっていたが、いまだにまとわりついてくる元恋人でカメラマンだった牧野(細川俊夫)や、新人の娘にすぐ手を出したがるパトロンの加倉(小沢栄)には露骨な嫌悪感を示していた。

そんな容子から、しつこく迫られている加倉を追い払ってもらった秋子だったが、一緒の車で帰らないかとの容子の誘いには乗ろうとしなかった。

実は、お好み焼き屋で、昔世話になって以来、付き合っている一杯飲み屋の女将(千石規子)と会う約束があったからである。

野心家の秋子は、今付き合っているスパロウズの選手江波(森美樹)には、自分をスターダムに押し上げてくれそうな甲斐性もないから別れるつもりだと本音を吐露していた。
彼女は、自分に興味を持ったらしい加倉を巧く利用して、モデルの世界でスターになろうと考えていた。

秋子こそ、死んだ堕胎医飯島に、女性たちを斡旋していた張本人だったのだ。
そんな過去も良く知っている女将は、自分と同じように不遇な過去を持つ秋子が有名になるよう、影ながら応援していたのだ。

その頃、競輪場で落ちた外れ車券を漁っていた石岡は、同情した男からもらった焼き芋を包んだ雑誌の紙に、飯島死亡を報じた記事を発見する。

警視庁にいた石渡部長刑事や長谷川刑事は、飯島事件の目撃者が現れたとの連絡を受け、この事件が、飯島がかねてより主張して来たように、他殺である可能性が出て来たに色めきだす。

そんな動きを、たまたま加倉と待ち合わせていた旅館のラジオで聞いた秋子は、急にその場を逃げ出し、不安に苛まれるようになる。

石岡は、確信ありげにモンタージュ写真の作成に立ち会うが、その、あまりにも鮮明な記憶に、長谷川はかえって疑問を抱く。

石岡の様子を観察していると、取材で近づいた毎朝新聞の社会部記者前田(内田良平)に、金を出させてキャバレーに連れて行ってもらったりしている。

そんな石岡の様子を、キャバレー内でジッと観察していたのは、警察だけではなかった。

秋子と女将もその店で張っていたのだ。

その後、そんな石岡を手紙で放送塔の上に誘い出し、墜落死させようと計画した秋子だったが、用心深い石岡は、その手紙を前田に売って、金にしようとしていた。

その事を前田から知らされ、手紙を押収した長谷川たちは、手紙の鑑識の結果、使われたトレーシングペーパーに、かすかにファッション画が転写されている事を知り、犯人はファッション関係者ではないかと突き止めるのだった。

そんな事とは知らず、加倉の後ろ楯もあり、秋子は今正に、三村容子を押し退け、期待の新人モデルとしてスターダムに躍り出ようとしていた…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

松本清張原作のミステリの映画化で、どこか「砂の器」(1974)を連想させるような内容である。

ただ、こちらの方は倒叙形式で描かれているため、犯罪者の姿は、最初から観客には分かっている。

その犯人が、どうやって警察に捕まるに至るかと言うサスペンスが見所。

二十歳をちょっと過ぎたくらいの岡田茉莉子が、そのコケティッシュな美貌を武器に、貧しさから這い上がってスターダムに登り詰めたいという野心に燃える若い女を見事に演じている。

対する捜査側の中心となるのは、笠智衆扮する老刑事。

口下手という事もあり、上司に言葉で強く反論できないので、人のいない所でぶつぶつ独り言を言うような、ちょっと変わり者として描かれている。

見た目があまりにも柔和なので、鬼刑事と称されているようには見えないのだが、ベテランらしくなかなか強かで、粘り強いキャラクターを、それなりに良く演じている。

もっと巧いのは、秋子を助ける飲み屋の女将役の千石規子。

いかにも下品な境遇で育ったはすっぱな中年女に見えるその演技力は確か。

目撃者となる大木実も巧い。

本来は、田舎の正義感溢れる真面目な青年だったのだが、要領が悪いために人生を転落してしまい、結局、都会で小悪人みたいな生き方を選択してしまう役柄であるが、大木実は、正に、そんな役にハマり役であるかのように見える。

国鉄スワローズを連想させる、帽子にKの字が入ったユニフォームを着た選手たちが出てくるのも、時代を感じさせる。