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闇に光る眼

1960年、日活、島田一男「俺は見ている」原作、阿部桂一脚色、春原政久監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

夜の新宿で、東西組の二代目が射殺される。

警視庁では待機していた刑事たち全員に緊急召集をかけ、暴力団狩りを始める。

刑事の庄司(高原駿雄)と、その家に居候している後輩の遠藤(梅野泰靖)も迎えに来た警官の後、すぐに家を飛び出すのだった。

そんな庄司の弟で、高校生の繁夫(川地民夫)は、兄の希望で大学の医学部に入学すべく毎日図書館に通っている事になっていたが、実際は、安月給の兄の世話になって大学に行くのを苦にしており、自分でバイトで稼ごうと、音楽喫茶「ロンバート」でボーイとして働いていたのだが、兄たちが出かけてしまったので、留守番をせざるを得なくなり、休む事を「ロンバート」のマダム(楠郁子)に電話で連絡するが、実は、そのマダムこそ、殺された東西組の二代目の妻だったので、ボーイで組員の三ちゃん(木下雅弘)という若者に、警察の手配がある事を組に知らせに行かせるのだった。

その知らせを受けた東西組政吉(深江章喜)は、警察の眼が他に向いている今こそかねてより計画の麻薬強奪のチャンスとばかりに組員全員を集めていた。

そんな組事務所にやって来たのが、脳硬塞でからだが不自由になった初代親分の御隠居(山之辺閃)、彼は、まだ跡目を譲った訳でもないのに勝手な事をしようとしている政吉を諌めに来たのだが、清吉は聞く耳を持たない。

そんな両者をなだめるのは、温厚な組員兼松(草薙幸二郎)だった。

その頃、区内の兼高組や東西組にガサ入れをした捜査班だったが、不思議と東西組には人がいなかった。

当の政吉たちは、南片町2丁目にある三光製薬の倉庫を襲撃していたのだが、隙を見て非常ベルを押そうとした守衛長で元捜査一課の刑事部長でもあった能勢勇造(嵯峨善兵)は、数々昔の恨みも込めた政吉によって射殺されてしまう。

もう一人の守衛も撃たれるが、一命を取り留め、五人組の強奪団の内、若い一人が足を引きずっていたと証言する。

さらに、犯行現場に落ちていた拳銃型のライターが証拠品として押収される。

かくして、先輩刑事の弔い合戦の捜査が始まるが、遠藤は庄司に、どうも東西組がこちらの動きを察知しているのではないかとの疑問を打ち明けていた。

しかしその後捜査は難航し、刑事たちは帰宅できぬ日々が続く。
そんな捜査一課に、父親の中村部長刑事(大町文夫)の替え着を持って娘の貴美子(中川姿子)がやってくる。
実は、彼女と遠藤は好意を寄せあう仲だった。

そんな中、久々に帰宅した庄司は、アルバイトして自分で学費を稼ぎたいと言い出す繁夫と口論のあげく、繁夫が不審な大金を持っている事に気づき、つい手を上げてしまうが、繁夫はそのまま家を飛び出してしまう。

事情を知ったロンバートのマダムは、繁夫に当座の生活費を渡すが、店に戻った繁夫は、ボーイ仲間の三ちゃんが足をひきづっているのに気づく。繁夫も新聞記事で、麻薬強奪犯の一人の足が悪いと言う記事は読んでいたのだった。

一方、拳銃型ライターの足取りを追っていた刑事たちは、十文字屋という店に目をつけるが、お礼参りを恐れる店主(紀原耕)の口は堅かった。

東西組では、政吉が気のあるマダムに言い寄っていたが、マダムは、兼松に頼んで二代目殺害の犯人を秘かに探らせており、どうもその犯人は意外に身近に入るらしいともらし、きっぱり政吉を拒絶するのだった。

その兼松とマダムが良い仲らしいと気づいた政吉は、嫉妬と口封じを兼ね、麻薬の取引に運転手として同行させた兼松を、帰り道、河川敷きで射殺するのだった。

中村部長刑事は、部下の庄司、遠藤と共に町で捜査中だったが、ばったり帰宅途中の貴美子と出会ったので、気をきかせて遠藤に娘との休息時間を与える。

そんな遠藤は、群集の中に、偶然、足をひきずっている青年を発見、その男が「ロンバート」とおう喫茶店に入ったので自分達もそこへ入り込むが、そこで働く繁夫を発見してしまう。

繁夫は繁夫で、店の様子がおかしい事に気づき、秘かに内情を探ろうとしていた所を三ちゃんや組の連中に見つかってしまい、固く口止めをされていたので、遠藤に色々質問されても何も答える事が出来なかった。

この朝日通りにある「ロンバート」と十文字屋が向い合せに位置にある事を知った遠藤は、東西組と麻薬強奪事件の関係、さらにどうやら、繁夫を通じてこちらの動きが相手方に伝わっていたらしいと気づき、それを庄司や上司に報告する。

その後、粘り強い説得の末、ようやく十文字屋の協力も得られた捜査本部は、東西組とロンバートへの一斉捜査に踏み切るが、事情を知った庄司は辞職願いを残して捜査本部から姿を消していた…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

初期のテレビの刑事ドラマや事件記者ものを彷彿とさせるような、コンパクトに纏まった犯罪捜査ドラマ。

この手のサスペンスものは、登場するパトカーの形などを観ると、大体作られた年代が分かるが、川地民夫が高校生役をやっていたり、渋い中年イメージしかない草薙幸二郎なども、まだチンピラ役をやっているというのが珍しい。

作品の出来としては、普通なのではないだろうか。

ミステリーとして特に大胆なひねりとか、意外性が用意されている訳ではなく、刑事の兄弟愛とサスペンスを絡めた、どちらかと言えば通俗犯罪人情もの。

身体が不自由になり、若い者にバカにされている元やくざの親分とか、仕事熱心が行き過ぎ、無実の人間を追い込んで自殺させてしまい、退職して警備員になった元刑事とか、チンピラに絶えず脅されつづけている小売店主など、不遇な年輩者たちの描写も印象深い。

特にハッキリとした主役がいないので、映画としては地味な印象だが、テンポが良いので退屈はしない。

この時代の犯罪ドラマの典型例と言えよう。