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月は地球を廻ってる

1959年、日活、大川久男脚本、春原政久監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

夜の銀座、道行くちょっと頭髪方面が寂しい中年男は、「もうユル・ブリンナーは流行りません。これからは胸毛の時代。胸毛や頭髪には丸九製薬のケハエ〜ル」というPRアナウンスに足を止めていた。

そのPRアナウンスをしていたのは、零細広告会社「ハート広告社」の渡辺雅子(中村万寿子)だった。
彼女は、金曜日と言う事もあり、同僚で恋人の市村(岡田真澄)とのランデブーに遅れまいと、早々に会社を後にする。

「ハート広告社」では、社長(西村晃)が胃薬を飲むと、会社の経営上大河悪い証拠だと社員たちが察しており、今日も、その社長が胃薬を飲んでいるのを見てため息を付くのだった。

その頃、ハリキリ社員の市村の方は、お得意である月星デパートの宣伝課長手塚(小沢昭一)に貼り付いて、最新の広告に付いてあれこれ接待アンド営業に勤めている真っ最中だった。

おかげで、雅子とのデートの場所に現れたのは、約束を1時間も過ぎた頃。

3年間も結婚を待たされている雅子は、ようやく二人きりになった嬉しさにキスを求めるが、その唇を見たとたん、「あなたの唇を甘くする口紅!」という宣伝文句を思い付いてしまい、「私と仕事とどっちが大切なの?」という雅子の問いかけに、つい「仕事…」と口走ってしまった市村は、さらに「明日、結婚式があるから、打合せに行かなければ…」と、とんでもない事を言い残して去って行ったので、一人残された雅子は泣いてしまうのだった。

翌日、ふて寝をして遅く起きた雅子は、テレビをつけてとんでもないものを見てしまう。

市村が、中村あゆみ(中島そのみ)という女性と、上野の西郷さんの銅像の前で結婚式を挙げており、その席には社長まで出席しているではないか。

鹿児島生まれの市村が、まず宣誓の言葉を読み上げ、続いて、花嫁が読みはじめるが、途中で、彼女、しゃっくりが出始め、宣誓文が読めなくなってしまい、放送は大混乱。

結局、その放送は途中で打ち切りとなってしまい、出席した社長は大激怒、即座に市村を首にしてしまう。

さらに、雅子の家に会いに来た市村は、雅子に追い返されてしまうのだった。

その後、酒場でやけ酒を飲んでいた市村は、PRアナウンスを聞き「ケハエ〜ル」を使ってますます禿げてしまった中年男と出会い、宣伝の是非論を戦わせるのだった。

ところが、翌日、ハート宣伝社にやって来た月星デパートの手塚は、社長に対し、昨日のテレビ放送がいたく気に入ったので、今後、御社の市村君に宣伝一切を任せたいといいだす。

社長は喜び、すぐさま市村を呼ぶように社員に命ずるが、市村は社長自身が首にしてしまったので来てないと聞き、手塚は機嫌を損ねてしまう。

そんな会社にやって来たのが雅子、彼女は退職届を手にしていたが、それを見た同僚が、昨日の結婚式はPR用の芝居だった事、雅子から冷たくされた市村は絶望して自殺しているかも知れないと言い出す。

その頃、トシ坊という一人の子供が草むらに横たわっている市村を発見する。

市村は泥酔して外で一晩明かしたらしい。

起き上がった彼は、トシ坊が他の子がやっているフラフープが欲しいけど持ってないと言うのを聞き、自分が作ってやると言い、竹で模造品を作ってやるが、すぐに壊れてしまい、結局、デパートへ買いに行く始末。

ところが、そのデパートの玩具売り場で働いていたのが、昨日、上野の結婚式で花嫁の介添え人を勤めていた女性。

彼女は市村の姿を見るなり、昨日、あなたから手酷く叱られたので、中村あゆみは今頃悲観して自殺しているかも知れないから、急いで様子を見に行って来いとせかされる。

渋々、あゆみのアパートへ行き、鍵穴から中の様子をうかがうと、下着姿になったあゆみが、胸に刃物を突き立てようとしているではないか。

慌てた市村はドアを破り中に侵入するが、あゆみが言うには、コルセットのチャックが壊れたので、ナイフで切ろうとしていただけなのだと言う。

その後、彼女は自分の身の上話をはじめ、歌手を夢見てコンクールに出たはいいが、決勝戦まで進んだのに、肝心の本番で客の多さに緊張してしまい、思わずしゃっくりが出てチャンピオンになれなかったこと。
その後、結婚しようと許嫁と付き合ったが、これまたキスしようとすると、緊張してしゃっくりが出て台なしになった事などを切々と聞かせるのだった。

その話を真剣に聞いていた市村を気に入ったのか、あゆみは彼に迫ろうとする。
驚いた市村は土手から転げ落ち、助けに来た彼女と二人でしゃっくりを始めるのだった。

翌日、何ごともなかったかのように出社した市村は、社長に、月星デパートのPRとして、ミス・フラフープコンテストと言うのを開催して、一等にはアベック日本一周空の旅という思いきった商品をつけたらどうかと提案し、すぐさま了承される。

ビルの屋上で、互いの誤解を解いて、再びいいムードになっていた市村と雅子の元へやって来たのがあゆみ。

彼女は、すっかり市村に恋をしてしまったようで、今度のフラフープコンテストにあなたと出場して、日本一周旅行へ行こうと言い出すのだった。

それに対し、曖昧な返事しか返せない市村に対し、またまた絶望した雅子はその場から逃げ出す。

かくして、フラフープ大会は開始されるが、猛練習して来たあゆみは、余裕でフラフープを回し続ける。

絶望的な気分でその様子を審査員席から見ていた市村は、参加者の中に、見知った女性がいるのに気づく。

何と、雅子が参加しているではないか!

がぜん、市村は雅子を応援しはじめるが、途中からいきなりフラフープの歌を唄いはじめたあゆみに驚き、とうとう雅子のフラフープは足元に落ちてしまうのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

一時期大流行した玩具「フラフープ」を取り入れた軽いタッチのラブコメディ。

上映時間は短く、テレビの1時間ものくらいの感覚。

一見、主役はファンファン(岡田真澄)のようなのだが、途中から、テーマソングも唄っている中島そのみのスター誕生みたいな雰囲気の音楽映画になって行く。

かん高い声が印象的な中島そのみは、数本、日活作品に出演した後、東宝の「お姐ちゃん」シリーズで人気を博し、その後も60年代前半の東宝作品に数多く出演している。

一方、岡田真澄のあの日本人離れしたバタ臭い風貌は、使う側にしてみれば、シリアスタッチの作品より、この手の軽いコメディみたいな作風の方が、まだ違和感が少なかったのかも知れない。

とはいえ、劇中で和服を着ているファンファンというのも、なかなかオツなもの。

しかし、本作で弱小広告会社の社長を演じている西村晃、シリアス作品からコメディまで何でもこなす器用な俳優さんだなぁ。

銀座のシーンが多いのだが、ネオンサインやビル等、大きなセットを組んで撮っている所も多く、最近では見かけない舞台演劇と映画の中間のような独特の空間になっていて、大変興味深かった。

冒頭のPRアナウンスで言っている「ユル・ブリンナーはもう流行りません。これからは胸毛の時代」というセリフが、いかにも、相撲の初代朝汐太郎や、ジャイアンツの長嶋茂雄の胸毛が話題になっていた当時を象徴している。