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サザエさんとエプロンおばさん

1960年、宝塚映画、長谷川町子原作、笠原良三+蓮池義雄脚本、青柳信雄監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

何故か、磯野家の表札の横に「フグタ」の表札が並んでおり、いつの間にかサザエさん夫婦と3才児くらいになったタラちゃんは、実家に帰った設定になっている。

サザエさん(江利チエミ)は、今日はタラちゃん(小串丈夫)の誕生日で、おまけに大阪の出張しているマスオさん(小泉博)も20日振り帰って来ると言うので、マスオさん用の酒のつまみと、ビフテキを買って買い物から帰ってくる。

誕生日用のデコレーションケーキは?と問いかけるフネ(清川虹子)に対し、誰かが持って来るだろうと、ちゃっかり人の土産を当てにしているサザエさん。

ところが、そのサザエさん、財布をどこかに落として来た事に気づき大慌て。

フネが、いくら入っていたのかと尋ねると、買い物のお釣が18円だと言う。

そのくらいだったら諦めなさいと言うフネに対し、大事な写真が入っているので諦めきれないと、表に飛び出したサザエさんだったが、ちょうどそこに、炭屋の男(世志凡太)が、財布の中に名刺が入っていたのでここが分かったと、財布を拾って持って来てくれる。

中には、大切な九州への婚前旅行の写真が入っていたので、喜んだサザエさんは、フネに金を包ませて、謝礼として、その男に渡そうとするが、男は遠慮して逃げ帰ってしまう。

その頃、ちょうど帰宅して来た波平(藤原釜足)が、出会った多胡婦人(一の宮あつ子)から、最近、目黒さんちに泥棒が入ったと教えられていた。

ちょうどそこへ、その人を捕まえて!と、男を追い掛けて来るサザエさんの姿を見た波平は、その男を転ばして捕まえてしまう。

しかし、その男はサザエさんの恩人の炭屋だった事を知った波平は平謝り。

結局、サザエさんは、その炭屋から豆炭を一袋買う事で、丸くおさめる。

一方、タラちゃんが郵便ごっこをして、波平に渡したのは山中さんからの本当の手紙。
しかも開封してあり、タラちゃんの誕生日祝いとして一句したためたとの文書があるだけで、肝心の俳句がない。
その内、山中さんが来て、きっと感想を聞くに違いないが、これでは返事のしようがないというので大騒ぎ。
やがて、案の定、山中さん(柳家金語楼)がやって来たので、適当に誉めてしまう波平とフネだったが、実は、山中さん、俳句を同封し忘れたので持って来たとの事で、波平たちは赤くなる。

そんな磯野家に、辰野(江原達怡)、タイ子(白川由美)夫婦がやって来て、デコレーションケーキを持ってくる。

さて、サザエさんに大阪のマスオさんから電話があり、出張が長引きそうで当分帰れそうにないとの連絡を受けがっかり。

しかし、気持ちを切り替えたサザエさんは、大阪の叔父叔母の経営する旅館「西の家」に行く事にする。
いとこのタマ子(竹野マリ)は中学生になっているし、ノリ吉(頭師正明)は京都で下宿生活していると言う。

そんな西の家に久々に戻って来た長女のユリ子(環三千世)は、亭主の松原(早川恭二)が仕事ばかりで自分をかまってくれないので、もう別れたい等と泣き出すが、そこへ二人の幼子を連れた松原が訪ねて来て、たちまち仲直りしていちゃつく姿を見せつけられたサザエさんは、居ても立ってもいられなくなる。

その頃、マスオは、斡旋屋の丸星(立原博)と一緒に、敷地買収を進めていたが、ただ一件、エプロンおばさんこと敷金なし(三益愛子)が経営する素人下宿屋だけが頑として承知しないので、仕事が進捗せず、大阪にも東京へも帰れないでいた。

そんなマスオさんに会うために、京都までやって来たサザエさんは、事情を知ると、その下宿屋に単身乗り込み、ちょうど掃除中だったエプロンおばさんの手伝いをしながら直談判しようと試みる。

ところが、エプロンおばさんはそんなサザエさんを、たまたま募集していたお手伝いさん募集でやって来た娘と勘違いし、サザエさんの方も、それを利用して持久戦で説得しようと考え、鶴屋亀子と名乗り、そのままお手伝いさんとして住み込みはじめる事になる。

その下宿屋には、2階に一人だけ学生が住んでいたのだが、何とそれがノリ吉君だったので、サザエさんは焦るが、あくまでも、他人の空似としてごまかそうとするのだった。

やがて、新しい下宿希望の学生(茶川一郎)がやって来るが、サザエさん、エプロンおばさん、その亭主(森川信)らの、徹底的な身元&思想調査に呆れ、帰ってしまう。

その後、今度はサングラスにヒゲヅラと言う、いかにも怪し気な男が下宿を希望しに訪れ、それとなる断わろうとするエプロンおばさんの言葉も聞かず、勝手に部屋に居座ってしまう。

しかも、その男、異様に、エプロンおばさんの趣味等に詳しい。

実はその男、学生時代、この下宿で世話になっていた鵜の目(高島忠夫)で、今は、興信所で働きはじめたので、ちょっといたずら心で変装していたのだと正体を明かすのだった。

そんな鵜の目、ある日、物干台で唄っているサザエさんの歌声に聞き惚れ、自分も物干台に上がってデュエットを始める。

ちょうどその時、なかなか戻って来ないサザエさんを心配して、下宿屋へこっそり忍び込んで来たマスオがはち合わせ、サザエさんは、慌ててマスオさんを外へ連れ出すのだった。

そのサザエさんは、ある日、表で泣いている幼子を見つける。
迷子だと思い、交番の巡査(藤田まこと)に届けるも、らちがあかない。

困って下宿屋に戻ってみると、何と、ここの子だという。
エプロンおばさんの孫のサブちゃん(頭師佳孝)だったのだ。

そのサブちゃんのチャンバラの斬られ役をしてやっていたサザエさんの迫真の演技を見て、食中毒に当ったと勘違いしたエプロンおばさんは、巡査を連れて来て、救急車まで頼む始末。

その夜、エプロンおばさんから、今、東京で独り息子の一郎(太刀川寛)が就職活動をしており、日の丸電気に入りたいらしいのだが、つてがなくて困って入ると言う話を聞いたサザエさんは、父親の波平がそこの課長なので、手紙を書いてやろうと言い出す。

さらに、賄い等で好きなだけ下宿人に食べさせている事もあったって下宿屋の経営状態が思わしくない事を知るや、サザエさんはノリ吉、鵜の目などに値上げをすると通達、人の良いエプロンおばさんの方が恐縮してしまうくらいの大胆さを見せる。

そんなサザエさんがノリ吉と京都見物に出かけた隙に、仲人趣味のエプロンおばさんは、鵜の目にサザエさんとの結婚を勧めてみるが、鵜の目は、彼女の本名がフグ田サザエで、子供まで一人いる事を独自の調査で知った事を明かすのだった。

その頃、西の家に久々に戻ったノリ吉からエプロンおばさんの仲人癖の事を聞いたマスオは、心配になり、サザエさんを連れ戻しに下宿屋へ向うが、そこでは、正体がばれ、エプロンおばさんに出て行けといわれながらも、ここが立ち退きを承知してくれないと、マスオさんが東京に帰って来れないのだと、開き直って居座るサザエさんの姿があった。

こちらも頑固一徹なエプロンおばさんは、そんなサザエさんとマスオさんをしり目に、断じて立ち退きはしないと亭主と、鵜の目に断言するのだが、ちょうど、その時東京から帰って来た一郎が、波平の口利きのおかげで、無事、日の丸電気に就職できたと聞くや、態度を変える…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

江利チエミ主演のシリーズ第9作。

通常このシリーズのタイトルバックは、サザエさんに扮した江利チエミが、書き割りの前で演技してみせるものが多いのだが、この回は珍しくアニメだけの構成になっている。

アニメの絵柄は、黒目だけのいわゆる初期サザエさんで、今のテレビアニメとはちょっと雰囲気が違っている。

シリーズ後半は、ほとんど宝塚映画が作っているせいか、今回も、関西を舞台にしたエピソードに比重が置かれている。

今回の目玉は、何と言っても、長谷川町子さんのもう一人の人気キャラ「エプロンおばさん」が登場し、サザエさんと共演している事。

この後10作目でも、この二人の共演は続く。

今回の見せ場は、高島忠夫が登場し、サザエさんとデュエットを披露するシーン。

エプロンおばさんが可愛がっている3才くらいの坊や、サブちゃんを演じているのは黒澤明作品「どですかでん」で、主役の六ちゃんを演じていた頭師佳孝の幼い姿である。

その頭師佳孝の実兄、頭師正明は、サザエさんの従兄弟、ノリ吉として本作にも出演しており、つまりは兄弟共演作品になっている。

そのノリ吉と京都見物に出かけたサザエさんが金閣寺を観て、「焼けた所ね」と洩らすのが時代を感じさせる。
ちなみに金閣寺が焼けたのは、この作品が作られた年の10年前の1950年。

冒頭、世志凡太などという珍しい芸人さんが出演しているのも懐かしい。