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サザエさんの新婚家庭(スイートホーム)

1959年、東宝、長谷川町子原作、笠原良三+蓮池義雄脚本、青柳信雄監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

夏休み、庭でサザエさん(江利チエミ)が水撒きをしていると、帰って来たカツオ(白田肇)がそのホースをいたずら、道に出て御近所さんと話していたサザエさんは、急に止まって、その後いきなり吹き出した水を自分の顔だけでなく、ちょうど道を歩いている人たち全員にかけてしまう。

マスオさんは、会社の上司富岡(伊藤久哉)から、友人がテレビの月賦販売をはじめたので、奥さんのために1台買わないかと薦められ、その気になる。

一方、マスオは、蛭田課長(沢村いき雄)にも社宅の申込をしていた。

その頃、サザエさんはといえばすっかり若奥様稼業も板につき、愛するマスオさんのためには、刺身を特別に一人前注文するほどの熱愛振り。

カツオは、近所の小平さんちの愛犬コリーを毎朝散歩に連れていっては、1時間20円のアルバイト料をもらっていた。

そんなサザエさんちにとうとう、念願のテレビがやってくる。

好奇心で集まって来た近所の人たちに、鼻高々のサザエさんは、皆さんも宜しかったら観にに来てくださいとつい言ってしまったからさあ大変。

テレビ観賞を楽しみに早く帰って来たマスオは、二階に上がってビックリ。
そこには、御近所中の人たちが集まっていたからだ。
夜の10時になり、いつまでもテレビにかじり付いているカツオとワカメ(猿若久美恵)を追い出したサザエさんだったが、今度は波平が興味津々上がって来る始末。

結局、テレビは下の居間に設置する事にしたサザエさんであった。

そうした中、フネが体調不良を訴えるが、サザエさんも波平もあまり気にしていなかった。

なかなか二人っきりになれないサザエさんとマスオは、カツオやワカメに知られないようにこっそり抜け出してキャンプへでも行かないかと相談するが、これも巧く行かず、ちょうど訪ねて来たマスオの妹タイ子(白川由美)が偶然にもキャンプに誘いに来たので、結局、カツオ、ワカメも同伴と言う事に相成る。

そのキャンプ上で、彼らに近づいて来たのが城南大学の学生だという辰野(江原達怡)と鈴木(加藤春哉)。
二人は、キャンプ生活が長過ぎてすでに食料がなくなったといい、結局、態のよいたかり状態。

そんな中、同じキャンプ場で、タイ子は友人でマスオの会社の花村専務の娘でもある花村むつみ(雪村いづみ)と出会う。

何となく、気の晴れないサザエさんであったが、むつみと二人で「木曽節」をデュエットするのだった。

くたくたになって帰宅したサザエさんを驚かしてのは、フネが心臓を弱らせて入院したと言う知らせ。

結果、磯野家の家事一切を一人で切り回さなければならなくなったサザエさん、ちゃっかり、御用聞きのメンバー(伊藤素道とリリオリズムエアーズ)にやらせるのだった。

病院にフネを見舞ったサザエさんは、フネから、マスオさんの浮気に気をつけるよう忠告される。

病室にあった見舞いの品をちゃっかり譲り受けたサザエさんは、それを手みやげにして蛭田課長の自宅へ、社宅の軒に関して挨拶に行くが、ちょうど掃除をして真っ黒な顔になっていた蛭田を、ますらお派出夫の人間と間違えてしまい、大恥をかくことに。

その頃、マスオは、同僚の鯖江(八波むと志)、梶本(逗子とんぼ)、草谷(藤村有弘)らに誘われて久々にバーに飲みに行くが、そこで、偶然にも九州支社時代、同僚だっったが、その後亡くなった宮部の妻鮎子(北川町子)がホステスとして働いているのに出会う。

そんなことは知らないサザエさんは、大変な家事の毎日から解放されたいために電化生活を夢見ていた。

その後、再び、フネを見舞ったサザエさんは、フネを診察に来たインターンを見てビックリ。
キャンプ地で出会ったあの辰野であった。

その辰野から、実はタイ子を好きになったのだと相談を受けるサザエさん、一応、その事を当のタイ子に伝えるが、タイ子の方は気が乗らない様子。

ある日、磯野家に電報があり、マスオが忙しくて帰れないと言う知らせが届く。

しかし、実はマスオ、富岡課長の家で徹夜麻雀をしていたのである。

すっかり、電化台所になっているのを見学させてもらった鯖江と梶本は、その台所と、居間がインターフォンで繋がっている事にも気づかず、あれこれ奥さん(安西郷子)の気が効かない事への嫌みをしゃべって、筒抜けになる失態を犯す。

翌日、近所のタバコ屋の赤電話でマスオに連絡して見たサザエさんだが、それを受けた鯖江と梶本が、うっかり、麻雀と鮎子のことをしゃべってしまう。

すっかり騙されていた事を知って、会社に出かけたサザエさんは、バスの中から、仲睦まじく歩いているマスオと鮎子の姿を発見、慌てて途中下車するが、そこでばったりであったのが、いつの間に付き合いはじめたのか、同じタクシーに乗って、むつみ開催のパーティへ出かける途中のタイ子と辰野。

彼らに薦められるままに、そのパーティに連れていかれたサザエさんであったが、マスオの事が気になるあまり、むつみに薦められるまま、つい飲みなれぬ酒を飲み過ぎてしまうのだった。

翌日、二日酔いになったサザエさんはマスオにからむが、マスオの方も鮎子との事をすっかり誤解しているサザエさんに怒ってしまう。

気持ちがおさまらないサザエさんは、もう離婚しようと決心し、仲人の山中(柳家金語楼)の家に相談に行くが、そこでは耳の遠い奥さん(森川信)と大げんかの最中。

結局、二人の仲を取り持っただけで引き上げるサザエさんであった。

その後、自宅に職の世話をしてもらった礼を言いに来た鮎子と会ったサザエさんは、自分の誤解を知り、その後、マスオと二人で、空いた社宅へ引っ越すのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

江利チエミ主演のシリーズ第6作。

東宝が製作する最後の作品、これ以降のシリーズは宝塚映画が引き継いでいる。

今回の見所は、テレビが磯野家にやってくるエピソードがある事。

それまで磯野家にはラジオはあったが、テレビはなかったのだ。

当時のテレビを巡る状況が巧く描かれており、その頃を知る者としては懐かしいやらおかしいやら。
テレビは子供に良くないと長らく購入に反対だった波平も、実際にテレビが家にやって来ると、ころりとその魅力の虜になってしまう辺り、その後のテレビの興隆と映画の衰退を考えあわせると、あまり笑えなくなる。

テレビだけではない。

当時の磯野家には、扇風機以外の電化製品がほとんどないのだ。

洗濯も、風呂場でたらい桶に洗濯板でやっている。

事情があって、家事に忙殺される事になったサザエさんは、電化暮らしを夢見るのも当然に思える。
トースターとミキサー、電気冷蔵庫が揃っているくらいの部長の台所を、電化台所だとして、珍しそうに見学している部下たちの姿が、逆に今観ると珍妙なのだが。

磯野家には電気冷蔵庫もないから、当時は買い置きが出来ない。

だから、毎日、各家庭に近所の店から御用聞きがやって来ていたという事情も分かる。

脱線トリオ(由利徹、南利明、八波むと志)に加え、藤村有弘や逗子とんぼといった若手も参加、さらに御用聞きのメンバーが、ダークダックスから伊藤素道とリリオリズムエアーズに交替しているのも見所。

実写で観てみると明らかなのだが、新婚夫婦が幼い兄弟がいる妻の実家で甘い新婚生活等送れるはずもなく、シリーズ中、フグ田夫婦が磯野家に同居しているのはこの回だけになる。

シリーズとしては、今回から、タイ子の恋人役として江原達怡がレギュラーに加わる。

毎回のように違う役で登場する森川信の、今回の役所もなかなか面白い。