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サザエさんの結婚

1959年、東宝、長谷川町子原作、笠原良三脚本、青柳信雄監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

サザエさん(江利チエミ)が、風呂の薪に火をつけようとしているが、なかなか巧く行かない。
その様子を観ていた中年男(沢村いき雄)が、おせっかいにも火の付け方を伝授してくれるが、火種用に破った新聞に「放火犯、さらに三軒焼く」との見出しがあり、それを見たサザエさん、その中年男を放火犯だと疑うが、男はただのくず屋だといってホウホウの態で逃げていく。

友達と帰って来たカツオ(白田肇)、おっちょこちょいの姉の実態を見せてやるといって「火事だ!」と叫ぶと、その声に驚いたサザエさん、場所も分からず通りに飛び出し、ちょうど帰宅して来た波平(藤原釜足)と正面衝突。

その夜の家族会議で、波平は、今年自分とフネ(清川虹子)とは、結婚25年目の銀婚式だと恥ずかしそうに打ち明ける。

そこで、久々に夫婦水入らずで日光当りに旅行に期待と言い出し、全員、それは良い事だと大賛成。

ところが、二人が出かけた後、外出していたサザエさんに、寿司珍(由利徹)とウナギ屋(南利明)の店員が、先ほど大阪弁を話す50くらいの夫婦がそちらの家を訪れていたからうちの出前をとって欲しいと言葉をかけてくる。

客は、大阪で旅館をやっている叔父西野万造(花菱アチャコ)と叔母ちえ(浪花千栄子)だった。
二人は、磯野家に居候をしている息子のノリオ(藤木悠)の様子を見に来たのだという。

二階のノリオの部屋の様子を見に上がった二人は、本棚の本のカバーに隠したウイスキー瓶やパチンコ玉を見つけ、ノリオのだらしない生活を見破っただけではなく、見知らぬ女性とノリオのツーショット写真を見つけてしまう。

それは、家庭教師だとごまかしていたノリオだったが、ちょうどそこに、写真の女性がやって来て、自分は太陽大学経済学部3年、浅利はま子(横山道代)だと名乗る。

さらにごまかそうとするノリオの態度に嫌気がさした彼女は、自分達は婚約していた仲で、近いうちに結婚したいと両親に切り出すのだった。

それを聞いたちえは、学生結婚等とんでもないと激怒し、はま子も両親のつれない態度に怒って帰ってしまうが、その様子を陰ながらうかがっていたサザエさんは、ちえに、愛しあっている者同士にもっと理解を示して欲しいと助言をし、ちえも、その言葉にちょっと反省し、そういえば自分達夫婦も今年で結婚30周年、久々に旅行気分でも味わいたいが、旅館商売の自分達が他人の旅館に泊まっても気分が出ない。ついては、この家でしばらく水入らずの新婚時代を思い出したいので、サザエさんたちは全員日光へ行ってくれないかと言い出し、日光で久々の二人だけの時間を満喫しようとしていた波平とフネのところへ、サザエ、カツオ、ワカメらが全員合流してしまい、旅行は台なし。

くたくたになって帰宅して来たサザエさんたち一家は、ちょうど通りかかった花嫁行列を見て、サザエさんも早く結婚したいと願うのだった。

そんな磯野家に、一人の女性が現れる。

波平がかつて大恩を受けた方の娘さんで、朝日いづみという芸名で東宝のニューフェースになった平目スナ子(雪村いづみ)だという。

正式採用されるまで家に置いてくれないかというのだが、恩返しはしたいがあいにく部屋はふさがっていると、波平が困っていると、ノリオとはま子がその声を聞いて部屋に入って来て、自分達は二人で暮しはじめるので、二階を使ってくれと言い出す。

かくして、磯野家の二階に住むようになったスナ子は、さっそく「素晴らしき結婚」という音楽映画の主演として、東宝第8スタジオで撮影を開始し、それを見学に行ったサザエさんとワカメも、うっとり見とれるのだった。

そんな中、大阪に出張中のマスオ(小泉博)から電報が届き、明日、久々に上京するという。

ようやく東京転勤が決まったのだと喜んだサザエさんだったが、翌日到着したマスオさんの口から出たのは、たまたま休みが取れただけで、転勤の予定はないとの事。

がっかりしたサザエさんだったが、マスオから、かつて九州旅行の時であった悦子(安西郷子)が、社長の息子で友人の富岡(平田昭彦)と結婚することになったので、ノリオの結婚式も含め、予行演習のつもりで、彼らの結婚式に出まくろうと決心する二人だった。

かくして、ノリオとはま子の学生結婚式、さらに、富岡と悦子の結婚式に出席し、友人代表として祝辞を頼まれたサザエさんは、ちょうどマスオの会社の社長である富岡の父親がいるのを幸いに、マスオを早く東京に戻して欲しいと切なる訴えを祝辞に込めてしまう。

後日、結婚式での自分のはしたない振る舞いにしょげていたサザエさんを励まそうと、スナ子はサザエさんを伴って、東邦商事の社長に直談判してみようと会いに出かけるが、受付では約束がないと会えないし、現在、社長は不在と断わられる。

あきらめきれないスナ子は、社長秘書の大川(森川信)が食事に出かけるのを見て、彼のレストランに社長が呼んでいると嘘の電話をかける。

慌てた大川、社長が人間ドックで入院中の病院に駆け付けるが、ちゃっかり、タクシーでその後を尾行していたスナ子とサザエさんは、看護婦に化け、社長に、マスオさんの転勤に付いてあれこれ問診する。

すると、すでに、マスオさんは、来月の1日から東京に戻ってくるよう手配しているという返事。

喜んだサザエさんは、東京に戻って来たマスオさんと、かねてより目をつけていた売り家を訪れてみるが、何とそこにはすでに人が住んでおり、二人だけの新居を持つ夢は早くも挫折してしまう。

住む所が見つからず困っていたサザエさんに朗報が届く。
二階に間借していたスナ子が、出ていく事になったというのである。

取りあえず、自宅の二階に住む事に決めて一安心したサザエさんは、結婚の準備のため、フネとデパートへ買い物に行くのだが、偶然にもそこで、美しい女性(白川由美)と親し気に買い物しているマスオさんを見かけてしまう。

あれは、ただの仲じゃないというフネの言葉もあり、すっかり落ち込んだサザエさんは、仲人の山中さん(柳家金語楼)の家で善後策を相談するが、山中さんも、マスオさんの実家の方から、結婚の日取りを伸ばしてくれという連絡が会った事を証し、この話はなかったことにした方が良いと言い出す。

そんな所へ、当のマスオさんが、例の美人同伴でやって来たから、サザエさんは大ショック。
そのまま、家を飛び出してしまうのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

江利チエミ主演のシリーズ第5作。

シリーズとしては区切りの意味もあってか、それまで登場した主要人物が一斉に会する、キャスティング的には豪華な一編になっている。

重鎮、志村喬まで出演しているのにはびっくり。

学生として登場する佐原健二、江原達怡、加藤春哉らが、サザエさんと一緒に、ノリオこと藤木悠の学生結婚式で歌を唄うシーン等、なかなか見られるものではない。

一番注目すべきは、チエミの盟友雪村いづみが参加している事。

映画のニューフェースとして彼女が出演していると言う実際の東宝撮影所や、当時東洋一の規模を誇った第8スタジオが写る楽屋落ちも楽しい。

スタジオ内で、ワカメがちゃっかり、休憩中の司葉子や加東大介らにサインをもらうと言うサービスシーンまである。

ストーリー自体はたあいないもので、なかなかマスオさんと結婚できないサザエさんをじらすように、彼女の周囲に結婚にまつわるエピソードがいくつも重なり、とうとう、しびれを切らしたサザエさんが、雪村扮する平目すな子と共に大胆な行動に出ると言うもの。

シリーズを観ている観客はみんな、サザエさんの乙女心に感情移入してしまうので、後半は、自然に彼女を応援する気持ちになってしまう。

当然、そのサザエさんが、波平とフネに結婚前夜挨拶する所等、ついこちらまで親戚のような気分になりもらい泣きさせられるくらい。

サザエさんとマスオさんの結婚式という、知っているようで良く知らない事実が後半明らかにされ、興味津々の一編になっている。