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サザエさんの脱線奥様

1959年、宝塚映画、長谷川町子原作、笠原良三脚本、青柳信雄監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

家を描いた書き割りの前に、画面両端にいる二人のサザエさん(江利チエミ)が掛け合うように、タイトルソングに茶々を入れる。

朝、マスオ(小泉博)を送りだしたサザエさんは、卓袱台の上にピースの箱が乗っているのに気づき、忘れ物だと思い込みバス停で並んでいるマスオに走って届けるが、それは単なる空箱。

おまけに大声で「あなた」と呼んでしまったので、バス停に並んでいたサラリーマンたちが全員振り返ってしまい、バスを一台乗り過ごしてしまう始末。

その事がきっかけになり、並んでいたサラリーマンたちの女房談義が始まるが、大体どこも同じようなものだと結論が出て、全員照れ笑い。

久々に実家に帰ったサザエさん、ちょうど、カツオ(白田肇)、ワカメ(猿若久美恵)、フネ(清川虹子)らがくじ引きごっこをしているので、自分も混ぜてくれと言い出し、一番に当りくじを引く。

ところが、そのくじ引きは「誰がどぶ掃除をやるか」を決めるためのもので、それを知った時はもう手遅れ。

頬被りした上に波平の仕事着を着てどぶ掃除をはじめたはいいが、カツオがいたずらで「東京都の清掃人」と書いた貼り紙を背中に貼っていったので、それを見た多胡婦人(一の宮あつ子)は、本当の男の清掃人と間違えてサザエさんに声をかけてしまう。

カツオのいたずらを知ったサザエさんは、彼を追い掛けて見知らぬ屋敷に所へやって来るが、そこで殊勝にも、カツオが、柿を二個プレゼントして謝って来たので、それに免じて許してやると、何とその柿は、その屋敷の木から盗んだものだったので、サザエさんは屋敷の主人(沢村いき雄)に平謝り。

サザエさんが、実家にやって来た本来の目的は、引っ越し祝いとして会社の同僚を呼ぶので、その料理の手伝いをフネにして欲しいと頼むためだった。

フネは快く承知したが、サザエさんの家の近くには最近強盗が出ると言う噂なので早く帰った方が良いといわれ、帰宅したサザエさんは、いたずらのつもりでマスオが化けた強盗の扮装に目を回してしまう。

慌てたマスオが医者を呼びに行っている間、気絶のフリをしていたサザエさんが、今度は自分が脅かす番だと、シーツを被って玄関で待っていると、そこに現れたのは仲人をしてくれた山中さん(柳家金語楼)。

医者を連れて帰って来たマスオさんは、玄関先ですっかり腰を抜かした山中さんを見てビックリ。
でも、医者が無駄にならずに済んで良かったとばかりに、医者が注射をしようとすると、山中さんは嫌がってそのまま座敷に飛び込んでいく始末。

そんな山中が来るとは思ってもいなかったサザエとマスオは、二人の夕食用に出前の寿司を頼んでいたのだが、それを遠慮を知らない山中さんに全部食べられてしまいげんなり。

いよいよ引っ越し祝いの当日、ごちそうになるのを喜んでいる同僚たち、梶木(由利徹)、鯖江(南利明)、雲丹(八波むと志)の前に、先ほど呼ばれた花村専務(森川信)の部屋から浮かない顔のマスオさんが戻ってくる。

関西商事の大岩(大江真砂夫)という人物の接待を仰せつかったので、今夜は家に帰れそうにもないと言うのだ。

自分達はかまわないとばかりに、サザエさんとフネが準備をして待つ社宅に出かけた同僚たちをしり目に、マスオは花村と大岩のお供をしてはしごをさせられ、麻布のナイトクラブにまで連れていかれる。

ところが、その店で唄っていた歌手が花村の娘むつみ(雪村いづみ)だったから、さあ大変。
そんな娘のアルバイト等全く知らなかった花村専務は、マスオに調査を頼むのだった。

接待でマスオさんが帰って来ないので、同僚たちの相手を一人でやっていくうちにヤケになったサザエさんは、自らやけ酒をのみ寝込んでしまう。
夜遅く帰宅して発見したマスオは、そんなサザエさんを起こし、明日から大阪出張しなければならないと告げると、サザエさんは寂しさのあまりさめざめと泣くのだった。

マスオさんの出張で、さぞ寂しがっているだろうからと様子を見にきたカツオとワカメは、夫婦の甘い会話を一人芝居しながら時間つぶしするサザエさんの姿を発見、呆れてしまう。

そんなサザエさんに、カツオが郵便屋から受取ったと言う手紙を渡すと、それには、出張が長引きそうだし、おじさんの了解も得たので、大阪に出て来ないかと書かれてあったので、大喜びするサザエさんであった。

大阪に向う特急やまびこの食堂車で一人食事をしているサザエさんに、図々しくも同席して馴れ馴れしく話し掛けてくる男(佐々十郎)にへき易していたが、偶然にも、別のテーブルに座っている花村むつみを発見、彼女の席に移り、大阪に行く訳を訪ねると、クラブで唄っていたのがばれてしまったので、無理矢理、見合いをさせられに行くのだと言う。

何でも、見合いの相手は、道修町の薬問屋の御曹子で久地良(くじら)太という青年らしいが、全く気が進まないのだと、むつみは嘆くのだった。

やがて、大阪の叔父万造(花菱アチャコ)の家で旅館をやっている西野屋に到着するが、肝心のマスオは九州へ出張になったと言う。

それでは、彼が帰ってくるまで、旅館の手伝いをすると殊勝な事を言い出したサザエさんだったが、任せてみれば失敗の連続で、叔母チエ(浪花千栄子)から呆れられる始末。

そんなある日、サザエさんは、むつみの見合い相手と言う久地良家の様子を見に出かけるが、「七ふく屋」というその店には、小松(芦屋小雁)、一松(茶川一郎)、崑松(大村崑)という三人の丁稚どんたちと、雁七(芦屋雁之助)という番頭はんが店番をしていたので、それとなくボンボンの事を聞いてみるが、要領を得ない。

西野家の長女百合子(環三千世)は、すでに出産しており、その赤ん坊のために、牛乳を暖めていたサザエさんは、自分の赤ちゃんを育てる夢を見ているうちに、牛乳を吹きこぼれさせてしまう。

そんな西野家にやってきて仲人役の万造に見合いに気が乗らないと相談していたのは、誰あろう、当の久地良太(宝田明)、その事を知ったサザエさんは、むつみも太も共に見合いが嫌なのだったら、二人で相談して見合いをぶち壊せば良いのではないかと思い付き、二人を引き合わせる事になる。

ところが、互いにジャズ好きで親から睨まれていると言う同じ境遇だという事も分かり、二人はたちまち意気投合。

結局、見合いをセッティングした席に二人は現れず、互いの両親の手前、面目を潰した万造とチエは、帰宅後、それで良かったと喜ぶサザエさんの態度に逆上し、縁を切るから、今すぐこの家から出ていってくれと怒鳴り出すのだった。

ところが、そんな所へやって来たのが、結婚を誓いあった太とむつみ。

事情を知ったちえと万造は、ふくれるサザエさんに平謝りするのだった。

やがて、大阪に帰って来たマスオさんとようやく二人きりで奈良見物に出かけたサザエさんだったが、そこで、同じくカップルで遊びにきていた太、むつみコンビと出くわすのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

江利チエミ主演のシリーズ第7作。

今回は宝塚映画らしく、ダイラケコンビ(中田ダイマル、ラケット)など関西系のお笑い芸人が多数出演しているのだが、中でも注目すべきは、往年の人気テレビドラマ「番頭はんと丁稚どん」がそっくりそのまま登場して、サザエさんと共演している点。

若い頃の、芦屋雁之助(髪の毛フサフサ)、芦屋小雁、大村崑ちゃんらの懐かしい姿に再会できる。
「キャラメルもろた!、もろた!」という、崑ちゃんの懐かしギャグも登場。
哀愁漂うテーマソングまで唄っているのだから、びっくりしてしまう。
この歌を聞いたのは、何十年ぶりだろう?

しかし同時にこれは、現在「許されない表現」ギリギリのものであり、ディズニーの「ビビディバビディブー」を、毎回テーマソングのようにサザエさんが唄っている事等共考えあわせ、テレビ放映やパッケージ化は難しいだろうと考えてしまう。

さらに、この回注目すべきは、サザエさんのトレードマークとも言える、あの独特の髪型が変型している点。
前髪の特徴的な3つのダンゴ形がなくなっているのだ。

それでも、サザエさんに見えるから不思議だが、もはや原作を超えて、江利チエミ本人の映画になった証拠かも知れない。

若き宝田明が登場、雪村いづみとデュエットしてみせる。

これまでにも、レギュラーとして何度か登場しているのだが、サザエさんの大阪の叔父、叔母を演じている花菱アチャコと浪花千栄子コンビの独特の存在感と面白さも貴重。

特に、口うるさい大阪のおばちゃんキャラを演じる浪花千栄子の巧さは絶品。

毎回お馴染みの、サザエさんの空想シーン。
今回は、まだ見ぬ赤ちゃんを機械で育てる夢を見るのだが、マスオさん役の小泉博が、赤ちゃん姿で葉巻きとウイスキーを持っている所は妙におかしい。

レギュラーの一人で、サザエさん夫婦の仲人役山中さんを演じている柳家金語楼の髪型は、当初かつらでフサフサの状態だったのだが、この回辺りから急に髪の量が激減して、金語楼本来の禿頭に近づいた所にも注目したい。