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女体棧橋

1958年、新東宝、佐川滉脚本、石井輝男脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

ニューブロードウェイといっても、日本の話。
銀座の裏には、日本であって日本ではない東京租界のような一角がある。

東京通信社がある通りは、ポーカーストリートと呼ばれ、そこに停めてある高級車には桃色のカードが差し込まれ、そのカードを使うと外国人女性も自由に買う事ができると言う話である…とナレーションが騙る。

そのポーカーストリートに停まった一台の高級車の窓枠に、噂通り、一枚の桃色のカードが差し込まれる。

そのカードに気づいた黒背広の紳士風の男、吉岡圭三(宇津井健)は、「金髪女性とおつき合いをしませんか」と書かれたそのカードを持って、電話番号が記されたクラブ「アリゾナ」へ向う。

そこでは、近づいて来た男からホテルパークの222号室の鍵を渡され、その部屋へ向った吉岡は、誰もいないので、声をかけながら浴室を覗くと、そこに金髪女性サリー西条(ジーン・谷)の遺体が湯舟に浸かっていた。

さっそく、警察が動き出すが、西条の夫の西田がすぐに首吊り自殺の遺体として発見される。

一方、羽田にいた吉岡に近づいて来た麗華と名乗る美女から、どこへ行くのかと尋ねられ、神戸の会社に戻るのだと答えると、彼の現在の仕事から過去の履歴まで、徹底的に調べられている事を知らされ、いつでも「アリゾナ」ヘ来いと誘われるのだった。

その頃、捜査に行き詰まっていた捜査課では、現場から姿を消した黒背広の男の事が話に登ったが、その会議室に現れたのが、当の黒背広の男、吉岡だった。

実は、吉岡、麻薬グループ摘発のため、大阪警視庁を偽装退職した敏腕刑事だったのだ。

彼は、日本人女性を、香港やマカオ、シンガポール等に送る秘密のコール・ガール組織があり、その拠点「女体桟橋」とでも呼ぶべき場所がクラブ「アリゾナ」である事を、捜査員たちに説明する。

その「アリゾナ」には、ローズ・ルミ(三原葉子)という女が香港から戻って来ており、彼女がボス、トムソン(コン・ウェイ)の情婦だった。

そんなルミには、支配人黒川(植村謙二郎)も興味を持って近づいていたが、彼女は「アリゾナ」に再びやって来た吉岡と再会する。

実は、ルミと吉岡は、かつての恋人同士だったのだ。

そんなルミが、シンガポールの孤児院で拾い、今や成長して「アリゾナ」のピアノの弾き語りをやっているのが、「坊や」と呼んでいる照夫(旗照夫)だった。

その頃、交際会「希望の友」という集団見合いを主宰している会社に参加希望者を装って話を聞きに行ったのが、捜査課の速水(浅見比呂志)、一方、同じく刑事の大野(小倉繁)は、グランド・ファッションクラブの佐田晴子(筑紫あけみ)に近づき、二人は、速水の恋人美恵(葉山由起子)がいる喫茶店で情報交換をした後、渋谷で大野は吉岡と接触する。

その後、吉岡は身分を偽り、ボスのトムソンと接触する。

そんな吉岡にダンスの相手として近づいて来たのが佐田晴子だったが、吉岡は、彼女の正体が実は港新聞の女性記者である事に気づく。
彼女から、情報を記した紙切れを受取った吉岡の様子を見ていたのが、ピアノを弾いていた照夫。

その頃、速水は、希望の友社から知らされたホテルで、コール・ガールを待ち受けていたが、そこへ現れたのは、何と美恵だった。

彼女は、授業料を1年も滞納している弟、二郎のために、コール・ガールをしていたのであった。

その事実を知り、捜査員として苦悩する速水に、事情を察した大野は、先輩として力付けるのだった。

ルミのアパートで照夫は、吉岡と佐田が警察のまわし者だと警告する。
彼は、ルミが吉岡に思いを寄せている事に対し、嫉妬心を燃やしていたのだった。

ルミは、新宿のグランド・ファッションクラブ主催で水着ショーに出演していた佐田晴子をスカウトする振りをして近づき、照夫と共に彼女を拉致すると、自宅アパートで換金状態にしてしまうのだった。

一方、どうしても、ルミの心が吉岡から離れない事にやきもきした照夫は、支配人黒川に吉岡の正体をばらすのだった。

照夫の嫉妬心を見抜いた黒川は、彼に消音ピストルを渡し、吉岡暗殺を命ずるのだった。

その頃、ホテルの一室で、追憶の甘い時間に浸っていた吉岡とルミの前に、支配人と照夫たちがやってくる。

そして、二人を連れて、第五桟橋に入港中の、プリンゼント・クリーブランド号に向う黒川。

その船には、ボス、トムソンに騙されて、外国へ売られて行く女性たちが多数、乗船していた。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

日本から海外へ派遣される大掛かりなコール・ガール組織を舞台にした、一種の潜入捜査もの。

三原葉子が、宇津井健の元恋人と言う設定で、大人のロマンス要素も絡めてある所がミソなのだが、この辺の処理が意外と冗漫で、全体のテンポを間延びさせているのが惜しい。

テーマ自体も意外に暗く、やはり今観ていても気持ちが重くなる設定であり、あくまでも娯楽映画として作られているにしては、観ていてちょっと辛いものがある。

この作品で一番印象に残ったのは、「大阪警視庁」という言葉が出てくる所。

実は、昭和22年から29年頃まで、現在の大阪府警が実際にそう呼ばれていた時期があったらしい。

何故、その呼び方が1958年のこの作品で使われているのかちょっと分からないが、ひょっとすると、まだこの当時まで、一般的にその呼び方の方が馴染みがあったのかも知れない。

歌手の旗輝夫が、その三原葉子に拾われた孤児と言う設定で、重要な役所を演じているのも見所。