TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

肉体女優殺し 五人の犯罪者

1957年、新東宝、中田勇+三輪彰脚本、石井輝男監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

新聞の「浅草ロック座」の宣伝文に「殺人事件あり」との文言が載る。

その日、女性ダンサー二人と男のダンサー一人で踊っている最中、女性ダンサーの一人、ベティ桃園(三原葉子)が、もう一人の女性ダンサー浜野千鳥(北令子)めがけて銃を撃つと言う芝居をした所、千鳥の胸から血が溢れ、そのまま絶命してしまう。

小道具だと思われた銃は本物だったのである。

現場検証中のロック座に滑り込んだのは、毎朝新聞の記者西村(宇津井健)、彼は捜査課長に食い下がろうとするが相手にされない。

仕方なく、二階に上がろうとした西村は、そこで踊子の水島かほり(三ツ矢歌子)とぶつかってしまう。

彼女から事情を聞こうとすると、殺された千鳥は彼女の兄嫁だと言う。

兄の徳島輝治は、劇場でドラムを叩いている楽士だったが、彼が千鳥と夫婦喧嘩していた事が分かり、しかも、拳銃から彼の指紋が発見されたので、重要参考人として拘留されてしまう。

さらに、千鳥は麻薬常習者と言う事も判明する。

「殺人予告」のような宣伝文に関しては、劇場の支配人が「ストリッパー貫通事件あり」との文言を依頼したつもりが、いつの間にかそうなっていたというし、宣伝会社に聞くと、誤植に気づいた後も、面白いからそのままで良いと言う30才くらいの男からの電話があったので、そのまま掲載したと言う。

拘留された徳島は、当日、あちこちで酒を飲んでいたと証言するが、その裏が取れない。

そういう事もあって、新聞には徳島が犯人であるかのごとく掲載され、かおりは再び取材で訪れた西村に抗議するのだった。

そんなかおりは、舞台がはねた後、先に入浴していたベティが、誰か男と会話しているのを立ち聞きしたと西村に伝え、西村はその事をベティに確認しようとするが、逆に、今、小屋で何が起こっているか見に行ってごらんと、意味ありげな言葉を吐かれる。

その頃、小屋では、天野(天知茂)から踊りの個人レッスンを受けていたかほりが、あまりの厳しさに疲れて倒れ込んだ隙に、天野から襲われていた。

様子を観に来た西村に助けられたかほりは、彼に少しづつ心を許すようになって行く。

翌朝、かほりの住むアパート隅田荘を訪れた西村と、カメラマンの野村(杉山弘太郎)は、彼女が、窓から川に浮かんだフネにザルを下ろして買い物をしている様を見る。

江戸時代から続く、「くらわんか船」という商売だと言うので、雑誌の記事にでもなるのではないかと写真におさめた西村らは、それを編集長に見せる。

しかし、取材に行き詰まった編集長は、そんな余計なネタの取材をしている西村を怒鳴り付けるが、とっさの返事に、西村は、このくらわんか船を使った麻薬の取引があったのではないかと、急場の思いつきを口にするのだが、その説に脈がありそうだと感じた編集長は、その線での調査を続行するよう命ずる。

その後、ロック座では、ガラス張りの板に乗ったベティが、空中に引き上げられながら裸体を見せると言う「空中ストリップ」の趣向が演じられるが、その途中、ガラス板を引き上げていた綱のストッパーが壊れ、ガラス板は舞台に落下、ベティは死亡してしまう。

調査の結果、何者かが、ストッパーに細工をしていたらしいと分かる。

その後、取材中の西村は、自分を尾行している男に気づき、その後を追い掛けるが、ある街の中で姿を見失ってしまう。
どうも、その男は、振り付け師の天野のようだった。

ロック座の近くの喫茶店で、道化役のハチノキ(小倉繁)が、新聞記事に夢中になっている姿を目撃した西村は、その新聞記事の中から、隅田川で発見された水死体の記事に注目し、さっそく、監察医務院へ出かけ、遺体を確認しにいく。

西村の予想通り、その遺体は「くらわんか船」に乗っていた森元武夫(御木本信介)と判明。
西村は、一足先にその遺体を確認に来たと言う妻らしき女性の住む安アパートへ出かけ、幼い一人娘悦子と暮す房江(城実穂)から、事情を聞こうとする。

彼女の口から、馬車道3丁目にある関根肉屋という店と森元が接触があったと言う事を知った西村は、先日、天野を見失った場所もその近くだった事を思い出すのだった。

その頃、ロック座では、かほりが、兄を保釈させるため、良い弁護士を紹介すると誘い出され、関根肉屋に連れて行かれ監禁されていた。

一方、馬車道のマンホールが怪しいと睨んだ西村は、呼出した野村と一緒に、下水道を伝って関根肉屋へ侵入するのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「肉体女優」とはストリッパーの事で、いかにも新東宝の作品らしく扇情的なタイトルなのだが、内容はいたってオーソドックスな犯罪捜査もの。

そもそも、肉体女優の一人を清純派の三ツ矢歌子が演じているくらいだから、いかがわしくなりようもない。
その三ツ矢歌子は、まだほんの少女と言った感じで、初々しくかわいらしい。

エロティズムと言っても、キャバレーで、水着姿の踊子が踊っている程度のもの。
それでも、当時としては、かなりきわどい描写だったのかも知れない。

真面目一筋のイメージの宇津井健と、どこか屈折した振り付け師を演じている天知茂の対比が面白い。

江戸時代から続く、川舟に食料品などを乗せて、川岸の住民など相手に商売している「くらわんか船」の登場が、ちょっと新鮮。

当時の浅草を中心とした下町描写なども、興味深く観る事ができる。